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甲斐性
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甲斐性 03/04/17
「浮気は男の甲斐性」という言訳がある。
残念なことにこの用法は間違っている。大辞林定義に、甲斐性とは「しっかりしていて頼りになる気質」「満足のいく生活を営んでいく力。又そうしようとする気力。生活能力。経済能力を言うことが多い」とある。
浮気の定義もしなければならない。しかし「浮気は男の甲斐性」と言訳する事態に陥ったときの浮気とは大抵「頼りにならない癖に生意気にも浮気するか普通」という侮蔑が向けられた儚い浮気であることが多い。
商家の集中していた上方では商人の栄枯盛衰は常なる環境であったから、ある程度成功した旦那は妻の他に妾を囲う。そして妾には本業とは別の商売をさせておいて、いざ本業が潰れた場合にそのまま没落しないように妾の商売で再起の機会を窺うのである。妻の方もそれがわかっているから程々にしておくならば煩く言わないし、本業と一家を疎かにするならば自然と烈婦人になって亭主が穀潰しになってゆき、やがて浮気も出来なくなる。妻も妾も旦那もそれぞれ打算的に考えて最も為になる道、言わば運命共同体を形作っていたのだ。そしてその妻と妾を喧嘩させないように交通整理し、各々で上手くいくよう立ち回って、双方ともある程度満足している場合「うちの旦那は甲斐性がある」と評されるのである。
これを今の時代に当て嵌めてみると、税金対策兼息抜き兼没落に備える為に「愛人に料亭もしくはバー・スナックなどを経営させる」という仕組みがよくわかる。
ただしここで妻が「若い女に入れあげてあの薄ら禿」と言っているようならば、旦那の妻に対する立ち回りが失敗していることを示しており、それはすなわち家内運営能力の欠如であるから「甲斐性なし」と罵られても仕方がない。妻と妾の双方から不満が出ないようにする能力のある人間はやはりそれなりの魅力を備えているわけであり、何を手掛けても上手くいく種類の人と言える。そしてそういう人だからこそ不測の事態に備えて妾に商売をさせておくのであり、妾を囲っていながら妻にも気を使うから不満が出ず、ここに好循環上昇が発生する。
さて、妾を囲う程余裕がなく、商売をさせようとの気も回らず、家内は常々軋んでおり、鬱憤ばらしに適当な浮気を繰り返す男がいて、それが妻に知られた場合、
「この甲斐性なし!」 「浮気は男の甲斐性だ!」
喧嘩をしている時点で甲斐性がないのだから言訳にはなっていない。単なる売り言葉に買い言葉、反射的に出てくるだけなのだ。しかしそのことは男も判っている。妻も当然判っている。お互いに判っていることも判っている。でも喧嘩は止まらない。
気晴らし憂さ晴らしに一回だけした浮気で「甲斐性なし」と罵られるようでは先が見えている。甲斐性がないから罵られるわけだがこの場合、お互い選んだ相手が悪かっただけかもしれない。
また、純粋に男の立場から見ると、「もしかしてこの女は単に『甲斐性なし』という言葉を使ってみたいだけではないのか?」と思うときもたまにある。
甲斐性と言う言葉、肯定的にも否定的にも使ってよいが、言訳の際に使用することだけは避けねばならない。そしてそれより以前に言訳をする事態に追い込まれないようにしなければならない。それが出来るなら「甲斐性がある」と判断されるのだ。
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