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禿対策
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匿名ユーザー
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禿対策 03/05/20
男にとっての禿の恐怖は女にとってのシミシワソバカス肥満のすべてを合わせた恐怖に勝る。反対に言うと禿以外にそれほど恐れるものがない。純粋に健康についてを除外しての話だ。禿げたいと考える男はまずいないだろう。いかにして禿げないかにあの手この手を尽くして尽くす。
まず父親が禿げていると実に不安である。祖父も禿げていると退路を断たれた気がする。それでもなんとか抵抗を試みる。禿は遺伝であるというが、禿げた父の下で育ち、父と似た性格で似た生活をしていれば当然禿げるだろう。禿も遺伝するだろうがそれより生活習慣が遺伝したことのほうが大きいのではないか。
そう考えない者は必死になって対策を講じる。手前の場合、まずリンスをやめた。リンスとは髪が痛まないようコーティングするものだが、頭皮にまで擦り込み、それを完全に洗い流すことが出来なければ毛穴をコーティングしてしまうのだ。それでは生えるものも生えなくなる。よってリンスをやめた。やがてシャンプーではなく石鹸で髪ではなく頭皮を洗うようになる。石鹸でなくともボディソープを使う。一時期資生堂の「セウ」を使っていたが、いつのまにか消えてしまった。環境配慮無害物は日本ではまだ早過ぎたらしい。耳を動かして頭皮を動かしながら深爪の指先で強めにこする。ホームレスに禿が少ないのは痒くてしょっちゅう掻き毟っていて頭皮の血行が良くなっているからだとの噂にさえ縋って、がしがし洗う。
一時期烏龍茶で頭を洗っていたこともある。缶やペットボトルは高いので水出し烏龍茶のパックを買ってきて使っていた。しかしこれを洗面器に張ってお茶になるまで待つというのも阿呆らしかったので、ある時発狂して湯船に水出し烏龍茶のパックをぶち込んだ。烏龍茶風呂である。これが意外に快適で体の油が適度に抜けてさっぱりし、仰向けに沈んで頭も洗っていた。ところが段々浴槽に茶渋が残るようになる。そして爪に茶渋を発見した時点で烏龍茶風呂に終止符を打った。同時に烏龍茶洗髪も終了した。
やがて髪そのものに冷たすぎる気がして椿油でも使いたくなるが、入手方法がわからない。オリーブオイルを使った。食用であるから体に害はなかろうとの判断だ。一度に数滴、桶に混ぜて髪に流す。頭を完全に下げないと肩が油っぽくなるのでよくふらついては肱を打っては痺れていた。
そうこうしていると突如「リアップ」が登場する。これで気が大きくなった男がどれだけいただろうか。いざとなれば普段使っているトニックをリアップにすれば生えてくるのだと思って油断した男がどれほどいたことか。
その後リアップの関連商品でシャンプーなども出る。当然買って試してみるのだが、レジの女性による頭への視線に耐えられないので二度と買うまいと誓った。なんとかリアップに頼らず砂漠化を阻止してみせる。
髪の薄い薄くないは髪の毛の太さによるともいう。子供のころから母の美意識に従って髪を伸ばしてあれこれ手入れしていた男は大人になってさぞや心細かろう。ずっと坊主やスポーツ刈りでいた子供は毛が繰り返し切株状になった結果、太く言う事を聞かないばさばさの髪になるが、何となく執行猶予の気分であろう。
ところで禿は古代エジプトからの男の悩みであったという。古代エジプトの禿対策に精液を頭皮に擦り込むという方法があったらしい。生きのいい精子が毛穴にもぐりこんでぴちぴち、老廃物を掻き出した結果毛髪活性化につながるのだという。これは頭皮でなくとも肌の手入れに応用出来そうなものだが、男にとってあまり気分のよいものではない。女にとってどうだかは知らない。それより大前提として活きが良くなければならない。活きが良くなければ禿げるだろうし生きが良ければ禿げてはいないだろう。このジレンマは解決不可能だ。
伊丹十三のエッセイに「髪を指で挟んで引っ張るとよい」ともあった。頭皮が頭蓋骨から引き剥がされる感覚がやがて血行が良くなった感覚につながるのだそうだ。最初はかなり抜けるが、弱兵は切り捨てて精鋭だけを残していくうちに自然と強者揃いになるという。
あれこれ情報を集めて、出来ることを片端からやっている手前も当然禿の恐怖に取り付かれている。母方の祖父は死ぬまで禿げなかった。母の兄弟である叔父も伯父も禿げず、白髪が頼もしい。ところが手前は実の父とそちらの祖父に会ったことがないので禿げているかどうかは格別気にかかる。タバコも酒も不規則な生活も不健康な食生活もすべての道は禿につながっている気がして、まるで安心できない。
不老林。カロヤンアポジカ。リアップ。どうしてもつい目がゆく。何をすればいい。何をしなければいい。禿げたらどうする。鬘か。剃るか。植毛か。悩みは尽きない。そして悩みすぎてストレスを溜めると禿げるともいう。
どうすればよいのだ。
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