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匿名ユーザー
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眺める 05/02/21
手で掴み取れそうな雲がある。千切れて流れてくっついて消えてゆく雲を立ち尽くして眺めている。夕べに映える琥珀の空を漂う雲が輝いて見えた時、それを美しいと思う心を何処かに忘れていたことに気付く。日々繰り返される営みが存在して当然と無意識に考えるのか、やがてまた忘れてしまうのだろう。
列車の窓を伝う水滴を競争に見立てて物思いに耽る。水滴は少しづつ膨らみながら力を矯めて、ついに自らを支えられなくなると伝い落ちるが、それは途中の水滴を吸収したり、先に伝った道を辿ったりでなかなか真っ直ぐには進まない。かと思えば力を矯めていた大きな水滴と合体して一気に滑り落ちる。中には吸収されて消えてしまう水滴もある。ここにも世界があった。
深夜の空を和らげる灯の下で煙草を喫っている時、少し仰いで大きく煙を吐き出せば思いがけないほどの大きな煙の塊が離れて漂う。漆黒の空を背景に灯を受けつつ消え行く煙は不思議な魂のようだった。風に流れて完全に消えてしまうまで見ていたら煙草の本体が半分灰になっていて、動かした瞬間に落としてしまった。熾のように鈍く光る火に魅入られて煙が目に沁みる。誰かが傍を通ったが、これは涙ではない。
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