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校歌

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匿名ユーザー

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校歌 03/03/03

  校歌をまともに歌うことが出来ない。

  大体校歌などどこでもたいして変わりがないので適当に組み合わせるとそれなりに繋がってしまう。メロディーも確かに違うのかもしれないが何故か無理矢理歌えてしまう。歌えてしまうが、それは確実に間違った歌詞で間違ったメロディーであることがわかっているから、校歌なんてどこでも一緒と思い出そうとせず、調べようともしないまま継ぎ接ぎの校歌擬きを口ずさんでいるうちに馬鹿馬鹿しくなってついに諦めた。

  通常であれば小学校、中学校、高校、もしかすると大学まで校歌があり、一人当たり三、四曲は触れているはずだ。手前の場合は小学校と中学校で1度ずつ転校しているので計六曲。行事毎に歌わされる小中高の校歌は覚えていて当然の気もするが、いっそすべて忘れてしまった方が気持ちいい。しかし、切れ切れに覚えているからここにオリジナルの校歌らしきものがでっち上げられてしまう。

  何故、切れ切れに覚えているあちこちの校歌を、適当に組み合わせてもそれなりの形になるかと言えば、これは日本の伝統のリズム「七五調」が猛威を揮っているからである。実際のところ七五調ならどんな言葉を組み合わせても何とかまとまってしまうもので、便利な反面すぐにそっぽを向かれてしまう。

  だからといって七五調を外した校歌はと言えば、これが更に覚えられないという悪しき循環。もともと校歌など喜んで歌うようなものではなく、むしろ「早く終われ」「早く終われ」「早く終われ」「眠い」としか考えられない状況にだけ於いて普段肩身の狭そうな音楽の先生がここぞとばかりに張り切ってピアノを弾いている姿を見ながら仕方なく口だけを動かしている。

  校歌というものは通常我々の世界ではあり得ない言葉すなわち「努力」「友情」「向上」「磨く」「輝く」「健やか」などに、その地域の特徴「なになに山」「なになに川」「なになに野」、そして無理矢理季節をぶち込む「青葉」「朝日」、そしてほぼ共通なのが「我ら」「嗚呼」「母校」、そして最後に校名を繰り返す。

  全部同じやないけ。いちいち覚えてられるかぼけ。

  大学の校歌などは入学式と卒業式以外に聞く機会がなかったからほとんど覚えていないのだが、何故か千日前のカラオケボックスでリストに載っていた。どんなに少ないグループでもそういうものを見つける奴が必ずいるもので、試しに入れてみたところ確かに聞いたような曲ではあるが、当然歌えない。「覚えられない」のか「覚えたくない」のか定かではないが、校歌の歌い出しが、あまりにもこっ恥ずかしくて笑えるのでその先をどうしても思い出せない。とても有名な作曲家の手によるものらしいが、どうせ莫大な金を積んだだけなのだろうというところに落ち着く。

  実を言うと校歌を完全に歌える人が少し羨ましいのだ。全く役には立たない校歌などというものを歌いながら目を輝かせて子供に戻れる人が羨ましいのだ。まだ昔を懐かしむような年ではないが、たちまち少年時代に戻ることが出来る歌を共有している人が羨ましいのだ。

  校歌とは、たとえ思い出すのが寒く退屈な体育館だったとしても、その時の心に戻ることの出来る魔法に思える。

  忘れてしまったのは校歌だけではないだろう。

  そしてそれは二度と思い出すことの出来ないものだろう。

  それは何か。だから忘れた。思い出せない。

 
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