カールスラント近海…日本海軍特務艦113号「攻龍」内。
「ねぇ、瑛花(えいか)さん。今どこ~?」
攻龍のブリーフィングルームで嘆く少女。
「これからブリーフィングが始まるんだから少し黙ってなさい」
瑛花と呼ばれた黒髪の少女が応えた。
「ぶーぶー!可憐ちゃんはどこか分かる?」
「今はカールスラントの辺りですね。
あと少しの辛抱ですよ、音羽さん」
そこに、ソニックダイバー隊の指揮官『冬后蒼哉(とうごうそうや)』と、
その横に情報処理担当の藤枝七恵(ふじえだななえ)が入ってくる。
「ご苦労さん。早速出悪いんだが…藤枝」
「はい。現在我々は、ブリタニアにいる第501統合戦闘航空団(ストライクウィッチーズ)の協力要請に応えるため、
カールスラント海上を航行中です。
なお、ブリタニア内でワームの出現率が増加しており、
現地のウィッチだけでは対処できないとの報告もあります。
あと気になる情報が…」
「気になる情報?」
「第501統合戦闘航空団が黒いソニックダイバーを目撃したとのことです」
「黒いソニックダイバーだ?おいおい、俺は何も聞いてないぞ」
冬后は七恵の方を見るとそう言った。
「あ、いえ…このブリーフィングで報告するって先程、ブリッジで話しましたよ?」
「あ~…そうだったっけか?悪ィ、悪ィ」
がははと大口を開けて笑う冬后を、瑛花たちは冷たい目で見ていた。
「で、そのソニックダイバーはどこへ?」
「それが、この辺り…カールスラント方面へ向かったとの報告が上がっています」
「だけど、レーダーには映っていないか…」
可能性としては色々と考えられる。
しかし、その可能性が正解ともいえないのが現状だ。
その時、七恵の連絡用端末に連絡が入る。
「今連絡が入りました。
あと5時間ほどでブリタニアに到着との事です」
「各員それまで待機だ。
黒いソニックダイバーについてはこちらで調査しておく。
いつ敵襲があるか分からん。
一条、園宮、桜野の三名は自室にて待機。
いつでも出られるようにしておけよ」
「「「了解!」」」
三人はピシッと敬礼をする。
冬后はブリーフィングルームから気だるそうに出て行った。
一礼して、その後に続く七恵。
取り残された三人はそれぞれに口を開いた。
「黒いソニックダイバー…なんでこんな時期に出てくるんだろうね」
「ソニックダイバーに時期も何もないでしょう」
「ですが、音羽さんの言う通りです。
よりによって、私達がブリタニアに向かう時期に目撃情報だなんて…」
と可憐が言った瞬間、船内が揺れた。
三人が持っている端末に、「緊急事態」の文字が。
端末から七恵の声がする。
「緊急事態です!
現在、ネウロイ2機に攻撃を受けています。
砲術士以外は持ち場にて待機。
ソニックダイバー隊も持ち場にて待機してください」
「私達も出撃させてよ!」
音羽が抗議する。
「アホなこと言わないで!
私達が出撃しても、私達じゃ手をつけられないことぐらい知っているでしょ!」
たまらず、瑛花が反論する。
「瑛花さんの言う通りです、音羽さん。
ネウロイの相手はウィッチでなければいけないんです。
私達が近付いたところで、侵食されておしまいです!」
「う~…わかったよぅ」
可憐の言葉に渋々頷く音羽。
「でも、本当に危なくなったら言ってください。
私達なら囮程度にはなるでしょうから」
「瑛花さん…」
「了解しました。
こちらとしてもその方が助かるかもしれません」
七恵がそう言った瞬間に、通信が切れた。
同時刻、ブリタニア…新SW基地内。
ミーナが作戦室で皆に方針を話していた。
「先程も述べたように、こちらに援軍に来てくれる…
ソニックダイバー隊と扶桑皇国海軍遣欧艦隊第50航空戦隊104航空隊は、
現在別方面よりこちらに向かっている最中とのこと。
それと本日1200、司令部からの連絡では、ソニックダイバー隊がネウロイと交戦中。
他方面からの104航空隊は、途中補給を済ませてからこちらに来るそうよ」
「普通の兵器じゃネウロイに太刀打ちは出来ないはずだ。
ソニックダイバー隊はどうやって逃げ切る気だ?」
バルクホルンが口を挟む。
もっともな質問だ。
「いくら最新鋭の装備でも、コアを壊さない限り、ワーム並みの回復力…だもんなぁ」
「とにかく逃げ切ってもらうしかないな。
私達が行こうにも、航続距離が足りん」
美緒がそう言うと、頷く面々。
「現地のウィッチは出られないのか?」
シャーリーが問う。
「現地のウィッチに現在要請して、向かってもらっているけど…
普通のウィッチの飛行脚の音ではないのを聞いているのよね?
サーニャさん」
「はい。ジェットストライカーの音でした。
カールスラントの軍服を着ていたので、多分現地に向かっているウィッチはその人だと思います」
「ジェットストライカーを履いたウィッチ?」
バルクホルンが眉を吊り上げた。
「最近賑わしてる、あの盲目のウィッチじゃないの?」
隣にいたハルトマンが気だるそうに言う。
盲目のウィッチ…ブリタニア特殊戦第4小隊に所属する、クロムウェル・ロザリエ中尉。
いつも一人で飛んでおり、誰も僚機を目にしたことがない。
「クロムウェル・ロザリエ中尉…圧倒的な強さから、軍司令部に一目置かれる存在。
ブリタニアにおける新戦力として、孤軍奮闘する姿は三日月の魔弾(クレッセント・ブリッド)と恐れられる…か」
エイラが資料に目を通しながらそう言った。
「でもさー、いくらその人でもさすがに二体のネウロイを相手にするのはキツイんじゃないの?」
ルッキーニの疑問に「キツくても切り抜けてしまうのが怖いんですのよ」とペリーヌが答える。
そう、圧倒的な強さでここまで来た実力者。
それが恐ろしいのだ。
「でも、任せるしかないんですよね。その人に」
「えぇ…ソニックダイバー隊にしても心強い味方であることには変わりはないですからね」
「せめて、私達が行ければ守れたのに…」
宮藤はぐっと拳を握り締める。
その様子を美緒は黙って見ているしかなかった。
「救援要請は…あそこかっ!」
カールスラントを航行中の戦艦がネウロイと交戦中との報告を受け、飛び立ったロザリエ。
素早く目標を捉えると、ロザリエは大きく叫ぶ。
「こちらブリタニア特殊戦第4小隊1番機、クロムウェル・ロザリエ中尉です!
これより貴艦(きかん)を援護します!!」
すると、攻龍から「援軍のウィッチですか?!助かります!」と通信が入った。
「ネウロイ…お前達がいなければ、『あの子』だって…!!
幸せになれたのに…消え失せろおぉぉぉっ!!!」
MG42を乱射し、ネウロイに突撃していくロザリエ。
わざと失速をし、敵の攻撃をやり過ごす。
そして、隙を見せたところに鉛玉を撃ち込む。
やがて一体目のネウロイのコアが露出する。
ロザリエは腰からダガーナイフを取り出す。
ゆるくバーティカルターンをし、コアに向けてナイフを投げつける。
コアにナイフが直撃するのと同時に、MG42を再び乱射する。
一体目は間もなく爆散した。
これが、三日月の魔弾と呼ばれる所以(ゆえん)だ。
すかさず、もう一体に向かいながら、弾倉を交換する。
狙いを定め、引き金を引き続ける。
二体目のネウロイは、装甲が厚く、MG42では威力が足りないらしい…傷が付く程度だ。
ロザリエはMG42の引き金を、肩掛け紐に引っ掛けると同時にネウロイに向かって投げつけた。
乱射しながら真っ直ぐ飛ぶ。
ネウロイの攻撃が来るとMG42は跡形もなく消されるが、
もう一本のダガーナイフを手にしたロザリエはその隙を逃さなかった。
魔力を指先に集中させる。
魔力を高め、ダガーナイフをもう1つの対ネウロイ用の武器に仕立て上げる。
「はあぁぁぁーっ!!!」
コアは見えずとも、魔力の塊を叩きつければ、ネウロイとて無事ではすまない。
ナイフの切っ先は、ネウロイの分厚い装甲を突き破り、やがてコアの周りの装甲を消滅させる。
ロザリエはナイフを持ち直し、コアに突きたて思いっきり押し込んだ。
すると、次第にネウロイは消滅していく。
「ネウロイの消滅を確認。ロザリエ中尉、感謝します!」
七恵がロザリエに感謝の意を伝える。
「いえ、至らぬ事ばかりで…」
「ソニックダイバー隊と攻龍一同、ロザリエ中尉に感謝しています。
ありがとうございました!」
(そうか…この人たちが、501の援軍ってワケね。
なら助けて正解だったのかもしれない)
苦笑いをしつつ、そう思うロザリエ。
「では、私はこれにて失礼いたします。
良い航海を」
クルッと体を反転させると、ストライカーに魔力を流し、全速力で轟音を残し、
その場からいなくなった。
「「「あれが…ウィッチ」」」
瑛花たちはそれぞれ、同じ言葉を漏らしていた。
圧倒的な強さで、蝶のように舞い、自分達には手を出せないネウロイを、
いとも簡単に撃破していく姿は衝撃的だったのだ。
ましてや、ウィッチを初めて見たのである。
仕方のないことだろう。
「よし!攻龍、ブリタニアに向け全速前進!合流を急ぐぞっ!」
冬后の号令で動き出す攻龍。
刻一刻とストライクウィッチーズとソニックダイバー隊の合流が近付いていく…
そして、5時間後…
遂にソニックダイバー隊がブリタニアに到着する。
基地の前には、501の面々が並び、先頭に立つミーナは静かに冬后の下へと歩き出していく。
「ようこそ、第501統合戦闘航空団へ。冬后蒼哉大佐」
「遅れてすまねぇな。ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐。
これより、ソニックダイバー隊及び攻龍は501との共同戦線を開始する。
なお、階級で呼び合うことは禁止とする!
堅苦しいのは嫌いだろ?お互いにな」
すっと手を差し出す冬后。
それに笑顔で応じるミーナ。
今ここに、第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』とソニックダイバー隊が合流した。
「只今を持って、ストライク・ガールズ隊をここに結成する!
一同、互いに敬礼!!」
ミーナの号令と共に、全員が「了解!」と敬礼するのであった。
ガルラ「今回出番なかったですね、私達」
スタット「しょうがないわよ。一応、今回はソニックダイバー隊と501の人たちの話なんだから」
ガルラ「と、とにかく次回予告ですねー!えーと…」
スタット「遂にストライク・ガールズとして、始動する501とソニックダイバー隊」
ガルラ「遅れている104は、研究所へと急ぐ。
そこで待っていた人物とは?」
スタット「次回、
ストライク・ガールズ~純白の魔女達と音速の乙女達~
第五話~白銀の魔女(ヴァイス・ヘクセ)~」
ガルラ「私達の翼(つるぎ)が今、舞い降りる…」
最終更新:2013年08月21日 16:50