序章
雨の中に佇むボクは、血溜まりの上にいた。
蹲っている"モノ"。
もう奴らは物ではなく"モノ"なのだ。
ボクの手の中にある銃。
それで奴らは"モノ"になった。
もう人でもない"モノ"にボクは再び銃を向ける。
無感情で"モノ"を殺す…それがボクでありボクである所以。
ゆっくりと引き金を引いた。
パン!と乾いた音と共に、ドサリと音を立てて倒れた。
そしてボクは…空を見上げ、後悔する。
「そっか、またボクは"人"を殺したんだ…」
人はボクの事を退魔士と呼ぶ。
またの名を「血溜まり退魔士(ブラッディ・エクソシスト)」。
ボクが望まないところで、それが進む。
全部…あの少女にさえ出会わなければ、ボクの人生が変わることなんて無かったのに。
あの…リスベクト・クラウスウェル・アンガートにさえ出会わなければ。
彼女は、ボクに言った。
「男だろうが女だろうが関係ない。
キミは私の言うことを聞いてくれればいいの」と。
退魔といえば常人でも聞こえはいい。
だが、結局していることは"ヒトゴロシ"だ。
嫌ならば何故逃げないのか?
理由は簡単だ。
…両親や友人が天秤に掛けられている。
ボクがやらなければ、彼女がボクの大切なものを奪う。
「倉科毬沙…いい名前ね、"これで"女の子っていうのもまた傑作だけど」
倉科毬沙…それがボクの名前。
ボクとは言っているがれっきとした女の子。
イライラが募る。
「クラウスはどうしてボクなんかを選んだの?」
「キミが適任だったから」
いつもの質問にいつもの言い訳。
「…魔女め」
「魔女だもの、私は」
愚痴が聞こえていたらしい。
そう、彼女は魔女なのだ。
魔力を欲するが故に、このボクにその魔力を与えて欲しいと頼み込んできたのが出会うキッカケ。
その魔力を与える方法というのが退魔。
魔力を集めて何をするのか理由も不明。
そして何より、彼女の目的が何なのかということも。
彼女が持っている銃「レビトール」。
実弾、魔力弾、霊弾…なんでもござれの彼女専用の武器。
それで脅してきたことが彼女に協力するキッカケでもある。
正直何をされるか分かったものでもなかったし、
あの時は命の危機が迫っていたのだから断りようが無かった。
ボクの命(ヒキガネ)を引こうとしているのは彼女だ。
彼女に従わない=死あるのみ。
こうして、魔女と退魔士の一見おかしな物語が幕を開けるのである。
最終更新:2013年08月21日 16:54