第三話~接敵(エンゲージ)~
午前六時半・・・目覚ましのベル代わりに、警報が鳴り響く。
その警報に驚き、飛び起きる貴明たち。
「な、何だ?何があったんだ?」
小冷えする廊下に出ようとした時、目の前にコフィンが現れる。
「おわっ!!」
「きゃっ!」
尻餅をつく貴明と、後ろに飛び退くコフィン。
「いつつ・・・えと、何かあったんですか?」
貴明の問いに、ハッとなったコフィンは、
「え?・・・あ、すいません!実は此処に敵が接近中で、非戦闘員は退避するようにとのことです。
ですから、珊瑚さんと瑠璃さんは、社長室へ。
貴明さんとイルファさんは、私と一緒に武器庫へ。」
と言った。
「そんなら、ここで一時お別れやな。」
珊瑚が寂しげな表情でそう言った。
「・・・何で?」
「何でって、ここで別れな、貴明が行かれへ」
「違う!さんちゃんの言うてることやない!コフィンの言うてることや!!」
珊瑚の言葉を遮り大声で叫ぶと、コフィンに向かって指を指す。
「何で、イルファまで連れていくん?おかしいやん!」
それには、貴明も珊瑚も納得がいく。
「確かに・・・行くのは、俺一人じゃないのか?」
その考えに便乗した貴明が、コフィンに詰め寄る。
「・・・イルファさん、お聞きしたいことがあります。よろしいでしょうか?」
イルファの顔を真面目な顔で見詰めて問うコフィン。
「はい。」
その真面目な声に答えるイルファ。
「貴女も、貴明さんと同じような答えを持っていますか?
HMXシリーズとしてでなく、“一人のアンドロイド”として・・・珊瑚さんと瑠璃さん、
それに・・・貴明さんを守りたいですか?」
コフィンは、イルファのことを“一体のアンドロイド”ではなく、“一人のアンドロイド”と表し、イルファの真意を確かめるように、そう言った。
「・・・守りたい・・・私も。珊瑚様と瑠璃様を自分自身で守りたい。
でも、私には力がありません。
ですから、一緒に戦うことは出来ません。」
答えるイルファの表情が、段々と暗くなっていく。
そんなイルファに、コフィンは優しく微笑み、
「大丈夫です。守りたい、という気持ちだけあれば、この戦いに耐えることが出来ます。
それはここに居る、珊瑚さんと瑠璃さん、貴明さんも同じです。
ですから、そう気を落とさず・・・ね?」
と、イルファの頭を撫でた。
「・・・コフィンさん・・・。分かりました、私も行きます!
珊瑚様、瑠璃様ご心配をおかけしますが、貴明さんと一緒に、私は必ず戻ってきます。」
「イルファ・・・仕方ない、行ってきぃや!その代わり、ちゃんと戻ってくるんよ!
そのアホと一緒に!!」
「瑠璃ちゃん!!良かったなぁ、いっちゃんも貴明も。」
笑顔で言うイルファと、顔を真っ赤にしながら言う瑠璃に、満面の笑みを浮かべて言う珊瑚。
そんな三人を見て、貴明もコフィンもつられて笑った。
ロストユニヴァース社エントランス前・・・静寂が辺りを支配する。
そして、数分後・・・ガシャアァァァン!!と、ガラスの割れる音が聞こえたかと思うと、銃弾の嵐が巻き起こる。
「ひるむな!PS隊、α隊からβ隊は右に!C隊からδ(デルタ)隊は左に!
残った隊は、ウチと一緒に前進!」
香鈴が、全身武器状態でPS隊に指示を出して、前線に出て行った。
と、貴明のすぐ近くに銃弾が当たる。
「っ!!」
――怖い・・・怖い・・・何でこんなに怖いのに、和樹は平気なんだ?――
明らかに戦い慣れをしている。
だが撃たなければ、あの時の気持ちが嘘になると感じ、その場にしゃがみ込み手持ちの装備を確認する。
サブマシンガン二丁、その弾倉が二十、アサルトライフル一丁、弾倉が十五。
あとは、目くらまし用のスモークグレネードとフラッシュグレネードが、それぞれ十個ずつ。
貴明は、サブマシンガンを持つと、弾丸(たま)を辺りにばら撒いた。すると、あることに気付く。
――・・・ん?反動が軽い・・・腕が痛くないぞ。――
普通のサブマシンガンや銃は、反動が強すぎて片手で撃ったりすると腕を痛めることがあるのだが、このサブマシンガンはそういうことが無かった。
「うぉし!これなら・・・!!でぇぇりゃあぁぁっ!!」
サブマシンガン両手撃ち。反動が軽いからこその為せる技である。
ドルルルルルルッ!!
貴明の放った弾丸が、暴走したロボット達に命中する。
「皆さん!伏せてください!!」
一斉に頭を伏せる、PS隊と和樹たち。
そして、その後ろに立つのは・・・イルファ。
「リンクス・・・ッ!スラッシャー!!」
ビュゥゥン!!ヴォン!ヴォン!ヴォン!
ブーメランのような物を思い切り投げるイルファ。
それが、敵に接触したかと思うと、刹那・・・ロボット達の胴体や頭が切断されていく。
そして、大きな孤を描きながらリンクス・スラッシャーと呼ばれる投擲兵器がイルファの元に戻ってくる。
それを、パシリと受け取るイルファ。
すると、どこからか拍手が聞こえた。
「・・・いやいや、驚いちまったなぁ。“俺達”が送り込んだこいつらが、こうも簡単に潰されちまうとは・・・。
しかもそいつを迎撃してるのは、アンドロイドとクソ生意気なガキときた。
コイツは傑作だなぁ、オイ!ハハハハハハハッ!」
気品の無い、下品な笑い声が辺りを支配する。
「誰だっ!!」
先頭のPS隊が、隊員に合図を出して前に出させる。
これで完全に包囲した・・・その時
「「うわあぁぁっ!!」」
辺りを包囲していたはずのPS隊が、悲鳴を上げて吹き飛んだ。
煙の中から、男の姿が浮かび上がる。
「ザコに用はねぇ。用があるのは、テメェだ!山村和樹ぃっ!!」
「チィ・・・!お前はまさか・・・我那覇の配下の者か!?」
すると、男はニヤリと口の端をあげて笑う。
「あぁ、そうさ。俺は、我那覇様に仕えてる技術者。名は、リザード。
聞いたことあるだろ?“腕無しリザード”って名前をよぉ。」
笑いながら、和樹に向かってそう言った。
「・・・すると、貴様が“半人半機”のバケモノか。」
和樹は距離を置くと同時に、ハンドガンを乱射した。
しかし、それらは全て弾かれてしまう。
男・・・リザードは跳躍すると、和樹に自分の右腕・・・半分機械と化した右腕を前に出した。
否・・・和樹に向けてではなかった。
――っ!この距離はまさか・・・っ!?――
「貴明さん!避けて!!」
イルファは、距離的にリザードが狙っているのは貴明だと気付き精一杯叫ぶ。
「えっ!?」
だが、時すでに遅し・・・。
「甘いぜ・・・小僧。自分は狙われないと・・・思ったのかよっ!!」
ザシュッ!!
貴明の上半身に深い切り傷ができ、血が噴き出す。
「ぅぐ!!!!」
痛みで声が出ず、そのまま後ろに倒れ込む。
「「貴明さんっ!!」」
イルファとコフィンの両名から、悲鳴に近い声が上がる。
「チッ・・・!!」
舌打ちをしつつも、和樹は撃ち終えたハンドガンを捨て、倒れたPS隊からアサルトライフルを奪い、乱射した。
一方イルファは、コフィンに守られつつ貴明を背負って後退していた。
背中の貴明は、「うっ・・・くっ・・・」と痛みを堪えるように、歯を食いしばっていた。
――守るという約束が・・・最初から守れていないなんて・・・!!――
イルファは鎮痛な面持ちで、前線を後にした。
攻撃の効かない敵・・・どうすれば、決定的な打撃を与えられるか・・・ということを、計算しているソウ。
だが、どう計算しても、その答えは見出せなかった。
――何か大きな打撃が加われば・・・そう、もっと強力な何かが・・・そうか!!――
「HQ、聞こえる?」
ソウは、耳についている『オペレートポート(通信機)』を使い、戦術オペレーター(HQ=ヘッドクォーター)に通信をする。
「こちらHQ。ご用件をどうぞ。」
と通信機から、女性の柔らかな声が聞こえた。
「急いで、秘書の笹川を現場に向かわせて。状況が極めて劣勢にある・・・分かった?」
「了解。・・・彼女が実戦に投入ということは、かなり・・・マズイ状況なんですね。」
「えぇ。河野貴明が負傷して、イルファさんが同行して搬送してるために、戦線を離脱。
火力的にも、私達やPS隊・・・それに、和樹さんだけでは不利。
まして、相手は・・・あの“腕無しリザード”。急がなければ、被害が広がるだけ・・・だから早くして。」
ソウは急かすように、HQにそう言った。
「了解。現在そちらに、“例の兵器”を持って、援護に向かっています。
あと数分で、そちらの援護下に入ります。それで、えぇ・・・と・・・。」
「?」
HQは、少し言いよどんだあと、
「・・・御武運を。」
声に少しだけ優しさを込めて、そう言った。
「・・・えぇ。絶対に勝ってみせる。」
ソウも少しだけ、優しさを込めて言ったあとに、通信を切った。
――・・・あと数分か。それまで、持ちこたえてみせる!!――
ソウは、リザードの居る前線を見据えると、マシンガンの弾倉を素早く交換し、戦場に戻った。
そして、数分後・・・ロストユニヴァース社のPS隊はα隊とβ隊、そしてC隊を残して全滅。
バリケードは所々破壊され、壁などに隠れなければ、飛んできた銃弾に頭を打ち抜かれてしまうぐらいに危険な場所と化していた。
――あと数分が大体どれくらいなのか・・・ちゃんと聞いておけば良かったわね。――
と、ソウが強行突破を踏み込もうとした・・・まさにその時!!
「邪魔ぁっ!!」
という声と共に、長い金髪を左右二つに水色のリボンで纏めた少女が割り込んできた。
その少女は、手に持ったどデカイ銃を撃つ。
どデカイ銃から、杭のような鉄製の長い棒が撃ち出される。
「な、何っ!?」
リザードは突然のことに驚き、その場を動けずに、モロに直撃を受ける。
杭のような鉄製の長い棒が・・・大爆発した。
そう、彼女こそ・・・ロストユニヴァース社社長秘書、『笹川明日葉』である。
手に持っているどデカイ銃は、彼女の最終兵器『パイルガン』。
柱のような鉄の杭を撃ち出し、中に入っている爆薬が爆発するというメチャクチャな兵器だ。
よろめくリザードを見て、明日葉は「まだ生きてるの?ふざけんじゃないわよ!!」と言いつつ、パイルガンに新たな杭を入れて、再び撃つ。
ドカァァァン!!
「・・・ぐっ・・・バケモンは、そいつだろ!!畜生っ!!」
リザードはそう言うと、スモークグレネードを投げ捨て、その場から逃げた。
ロストユニヴァース社、最終兵器の登場により、この戦いは幕を閉じたのであった。
久遠「長い・・・三話の方が圧倒的に長い。
キツイ・・・けど書きたい・・・。
今回の話で、激しい銃撃戦を書いたつもりだったんですが・・・如何でしたでしょうか?
何せバトル的な展開を書いたの久し振りだったんで・・・自信がなくて。
次回、第四話~負傷(キズ)と仲間の絆(キズナ)~にご期待下さい。
更新には、しばらくかかるかもです。(汗
それでわw」
最終更新:2013年08月21日 17:31