「ティア!フリア!もうやめよう!こんなことっ!!」
新しい防護服に身を包んだミカが彼女達に向かって叫ぶ。
しかし、彼女達が出した答えは…魔力砲撃による攻撃だった。
その咄嗟の砲撃を避ける魔導師たち。
彼女たちが明らかにおかしいのは明白であったが、
具体的に何がおかしいなどは分からなかった。
「いきなり砲撃…何にせよ、聞かんぼうにはお仕置きが必要やね」
はやて達は仕方なく戦闘体制に入る。
が、ティアとフリアのすぐ横に彼女達にとって見覚えのある顔が二つあった。
「アリサちゃん、すずかちゃん?!」
なのはの親友『アリサ・バニングス』と『月村すずか』がそこにいた。
しかし、彼女たちの目は虚ろだ。
まさかとミカは素早く察し「あの二人は操られてる!フリアとティアに!」と叫んだ。
アリサとすずかの手には見慣れない宝石があった。
「あれは…!?デバイス!!」
シャマルの声と同時に、二人は詠唱を始める。
「紅の炎…我が身を纏いて、我が元に集え…!ファーブニィル!!」
「旋律達よ…我が身を纏い、彼の者たちに死を与えよ…!
クロック・オン・シンフォニー!!」
アリサは炎のような防護服、両手には槍を持っていた。
すずかは、歯車のような物が合わさった防護服、
手には複雑に入り乱れた宝石が散りばめられていた杖を持っていた。
「リンカーコアを強制的に…作り上げた?!」
闇の書事件の際に、二人が残ってしまったことがあったが、
それは管理局側の不手際であった。
つまり、デバイスを持っていたとしても魔力の元となるリンカーコアがなければ、
防護服も纏えない。
だが、今の彼女たちには強制的に作られたリンカーコアが存在しているというのである。
「悩んでいても仕方がない…一気に片をつける」
シグナムが踏み出そうとした刹那、彼女の頬に風が疾る。
その風の正体は、アリサが繰り出したものだった。
「雑魚はすっこんでなさい。私の相手はなのは…あんたよ」
シグナムを雑魚呼ばわりしたのもそうだが、アリサの口調から殺気が窺えた。
「…私が相手をするから、みんなは手を出さないで」
なのはの目は決意の色で染まっていた。
誰にも邪魔はさせない…そのような目だ。
「フェイトちゃんの相手は私だよ?」
すずかはくすくすと笑いながら、フェイトを見ていた。
「私はそれでも構わない。でも…本気で行かせてもらう」
フェイトもまた、なのはと同じように決意の色で染まっていた。
「「さあ…殺しあおう?」」
アリサとすずかの声が重なり、二人の姿が掻き消えた。
なのはSide ♪星の輝き
「確かなのはは遠距離からの砲撃が得意だよね?
近距離で滅多刺しにしたらどうなるの?あははは!!」
ニタニタと笑いながらアリサはなのはとの距離を詰めていく。
操られているとはいえ、
魔力ダメージを極限まで与えれば彼女たちの呪縛は解けると、なのはは考えた。
ならば、いつも通り全力全開の精神で行くしかない。
「まだ試してない形態があるけど…出来る?レイジングハート」
『All right.』
「じゃあ…行くよ!“ヴァリアブル・イグニッション”!!」
光の魔神の力を得たレイジングハートはエクセリオンモードのパフォーマンスをさらに超えた近距離戦専用形態へと変化していく。
そして、なのはの左腕にレイジングハートが組み込まれていき、ひとつの剣になった。
「近距離は確かに苦手だけど、こうすれば砲撃と斬撃の両方が出来る。
レイジングハートの期間限定形態(モード)『Bモード』!!」
何より怖いのは、なのは自身がこのモードを自分で考え、本番一発勝負で決めたことだ。
「…近距離戦が不得意なことに変わりはないでしょ!!」
アリサが槍型デバイス『ファーブニィル』をなのはに向けて突き出す。
が、それはなのはに届かなかった。
「無駄だよ、アリサちゃん。今…私が元に戻してあげるから!!」
『Stand by Ready. Starlight Zero Breaker!!』
なのは自体の体が呼応するように、淡く光り始める。
「翔ぶよ!レイジングハート!!」
『Yes,my master.』
左腕を突き出しながら、アリサに向かって突進する。
アリサはすかさずシールドを張る。
しかし、なのはは気にせずぶつかる。
魔力同士の摩擦が発生し、周りに衝撃波を撒き散らす。
アリサはふと思う。
(シールドを張っているのにどうしてなのはは、このまま何もしないの?)
今のアリサには意味が分からなかった。
何故なら、これから起こり得る事態を想像もしていなかったからである。
先に動いたのは、やはりなのはだった。
「バリアブレイク&スターライト・ブレイカー、瞬時発動!!」
バリアブレイクと同時にゼロ距離からのスターライト・ブレイカーを放ったのだ。
そう…相手を完全に油断させ、不意打ちをしたのである。
もっとも、戦いのド素人にこれをやるのは少々気が引けたらしい。
操られているとはいえ、記憶が残っていたら相当なトラウマになるに違いない。
だが、手っ取り早く元に戻すなら…ということでなのはが編み出してしまったのである。
恐ろしいかな…この子はそういうことを簡単にやってのけてしまうのだ。
「何よ、それ!!反則でしょ!!」
直撃を受け、アリサが叫ぶ。
しかし、当の本人は「戦いに反則もないよ!ちょっと(・・・・)痛いだけだから!!」と言い返した。
これをちょっと痛いだけと言うなのは。
あんなものを受けた本人からしてみれば、
ちょっと痛いなどという言葉で片付けられたらたまったものではない。
「スターライト・ブレイカー…!一斉掃射!!」
などと考えている内に、アリサは淡い桃色の光の中に消えていった。
フェイトSide
「なのはちゃん可愛そうに…アリサちゃんが相手じゃ、勝てなくて。くすくす」
普段のすずかとは思えないような発言に、フェイトはバルディッシュを強く握りしめる。
「なのはは負けない。たとえ、アリサが相手でも」
ふぅん…とすずかは目を細めて頷くと、再び悪魔のような微笑をする。
そして杖を高々と振り上げると同時に、詠唱を始める。
「フェイトちゃんも可哀想。格闘しか出来ないんだから…ね!」
「すずか…君は私を見くびりすぎだ。
私がいつ、格闘戦しか出来ないなんて言った?」
すずかの攻撃を高速で避けつつ、軽く挑発する。
「死にぞこないは嫌われるよ?」
「残念ながら、まだ死ぬつもりはないんだ。
バルディッシュ、ヴァリアブル・イグニッション!!」
『Yes,sir.』
雷の魔神の力を得たフェイトは、
バルディッシュのパフォーマンスを最大限にまで引き伸ばした。
先端が伸びていき、まるでなのはのレイジングハート(Bモード)のような形に変化していく。
柄の部分は短くなり、その片側にトリガーが出来上がる。
「遠距離戦に特化したバルディッシュの真骨頂…
ブラスターモード!そして…近・中距離戦に特化したブレードモード!」
そう、フェイトの手には普通ではありえないデバイスが二本握られていた。
「ふぅん…あくまでも私に刃向かうんだね」
すずかはそう言うと、再び詠唱を始める。
しかし、フェイトがそれを許さなかった。
「させない!プラズマ・ブラスター…ファイア!!」
ブラスターモードからの砲撃に加え、迅速の勢いですずかに詰め寄る。
「…っ!速い!!」
「すずか、ごめん…でも、私だって…負けられないんだっ!!」
ブレードモードとなったバルディッシュを振り上げ、すずかに魔力を叩きつける。
しかし、すずかの表情は変わらない…笑顔のままだった。
「くすくす…私の詠唱がなんだったか本当は気づいてるくせに」
「けど、私には効かない。すずか『ごとき』が私に触れることすら許されない」
「あはっ…!本音が出たね、フェイトちゃん!!
でもね、その傲慢が命取りになるって事…覚えておいた方がいいよ!!」
ぶつかり合う二人の間に淡い紫色の光が溢れる。
「消えちゃえ!クラスター…?!」
「遅い!ヴァリアブル…ストライク!!
続けて…」
キィィン!
甲高い音を立てながら、金色の拘束具がすずかの手足にはまる。
「くっ…!!このぉ!!」
力ずくで外そうとするすずかだが、その力もバインドの前では無力だった。
もっとも、その前のヴァリアブル・ストライクでの砲撃の際に魔力が帯電しているため、動こうにも動けないでいた。
「これで決める!!ファランクスシフト…デッドエンド、ファイアッ!!」
金色で無数の魔弾が目標(すずか)に向かって飛んでいく。
そして、最後の一撃と言わんばかりにブラスターモードのバルディッシュを掲げ、
静かに告げる。
「終焉の時を(Dead End)!!」
爆発が夜空に瞬いた。
同時刻、アースラ級時空航行船『シュッツバルト』医務室。
「…っ!ここは…」
「気が付いたようだな」
リインフォースが目を覚ますと、そこには見慣れぬ男が傍にいた。
「お初にお目にかかる。
私は時空管理局アースラ級時空航行船『シュッツバルト』の艦長、リリー・マルレーンだ」
「管理局が私を確保してどうする気だ」
「簡単なことだ、君が元いる場所へ戻す」
「闇の所のプログラムから外された私に再び戻れと?」
「元いる場所と言ったのだ。つまり、君の主の元だ」
「主…はやてのことを言っているのか?」
「そうだとも」
正直な話信じられなかった。
時空管理局の人間が自分を遺失物(ロストロギア)扱いせず、自分の主の元へと返すというのだ。
「私は忌み嫌われている呪いの魔道書なのだ。
今更主はやてに合わせる顔など…」
その先を言おうとして、マルレーンに止められた。
「それを決めるのは君の主であって君ではない。
さぁ、君の一歩を踏み出せ。
転送装置は起動済み…あとは君次第だ」
「…会ったばかりだというのに、何故だか旧友のような気がしてならないですね」
「私はそういう人間なんだよ」
リインフォースは少し笑うと、ベッドから降りる。
「これは…」
「君が漂流していた時に一緒にあった騎士甲冑だ。
私の予想では闇の書が最後にくれたプレゼントではないかな?」
そっとそれを抱きしめ、身に纏う。
「…先程の無礼を払拭するためにも、私はここを去るべきですね」
「ああ、そうだな。幸運の追い風に更なる幸せを願う」
マルレーンの言葉を聞きながら、リインフォースは転送装置に足を踏み入れた。
(今行きます…我が主)
数時間後…
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「もう抵抗するのはよすんだ!」
「黙れ」
ティア、フリアの両名による猛撃が続いていた。
「アリサちゃん、もうやめて!!」
「うるさいわね!そのうるさい口を黙らせてあげるって言ってんのよっ!!」
「すずか!」
「しつこいなぁ…!」
なのはのゼロ距離攻撃を受けたはずのアリサと、
フェイトの全力のファランクスシフトを受けたはずのすずかも、
なのはとフェイトに攻撃を続けていた。
(カートリッジ残り2つ…今入ってるのだけでも残り14発…うまく切り抜けないと!)
「このままやったら埒が明かん。ウチが何とかしてみせる!」
「はやて?」
「一気に上昇して、上からラグナロクや!そうすればなんとかなる!」
「勝算がなさすぎだ!よせっ!!」
クロノの言葉も無視して、はやては夜空に飛翔した。
しかし、その隙を逃すほどティアたちは甘くなかった。
「うるさいハエ…叩き落とす」
ティアのエンディニティ・カノーネがはやてを捉える。
「はやてぇぇぇっ!!」
ヴィータが飛び出すが間に合わない。
と、その時だった。
「転移反応!?誰だ、こんな時に!!」
眩い光と共に現れる人影。
夜風に靡く白銀の長髪、背中に生えるのは眩しいほどの白い羽根。
白い騎士甲冑に身を包んだ人影が。
赤い瞳が自分の主を映す。
「え…り…リインフォース?」
「はい、我が主」
微笑み返したその人物こそ…あの日、闇の書と一緒に消えたはずのリインフォースだった。
最終更新:2013年08月21日 17:51