クリフトとアリーナの想いは @ wiki

2005.02.27_2

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kuriari

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【脳筋】クリフトとアリーナの想いは3【ヘタレ】
93 :1/8:05/02/27 23:33:14 ID:Q3KC8gpW

サントハイム王国。
この国は領土も広く、良い人もたくさんいます。
私はこの国の王女として、何不自由なく育った。
ある日、私は訳があって持ち前の格闘の腕を活かして世界を救う旅に出た。
皆王女が格闘技なんて変だって言うけど私はそんな事無いと思う。
だって、神様は私たちに同じだけの力をくれるってクリフトが言ってたし、実際は私は世界一の格闘家になれた。

そんなわけで、周りを全く見れていない私にとってクリフトとの昨夜の初めての体験は、
私に知らないことをたくさん知らせてくれた。
クリフトは顔を赤らめながらも私への思いを明かしてくれたし、私もクリフトもお互いの色々なことが分かった気がする。

クリフトと私の間に誕生した新しい生命を知らせるため、このことを王であるお父様に知らせる。
私の結婚を強く望んでいたから、お父様は必ず許可を出してくれると思ったから、頭を低くしているクリフトを見て
私は「しっかりしなさい」の意をこめて裏手をクリフトに打とうとした時、お父様は言う。
「駄目だ」
私は手の動きを止め、信じられない表情で相手を見つめると私なりの講義をする。
それでも、王の立場として「平民」同然であるクリフトに娘を与えるわけにはいかなかった。
それに加えてアリーナに手を出したことに酷く腹を立て、兵に追放を命じる。
クリフトは何人かの兵によって両腕の自由を奪われ、足を引きづられ、どこかへ連れられる。
世界を救ったほどの剣術を持つクリフトにしてみればこんな弱々しい兵を振り払えないはずがないのだが何故か無抵抗。
私はもちろん兵をとめにかかったけど、後ろにいた兵に口を押さえられ、私は段々と意識が遠くなる。
兵は眠り薬を私の口に含ませたようで、霞んでいく目でクリフトを見つめ、やがて完全に意識を失う。
城の外に出されたクリフトは未練を残したような口調で私の名を呼んだけどそれに気付く事も、答えることもできなかった。

城を追放されたクリフトは兵によってイカダに乗せられた。
死刑が無いサントハイムでの、最も重い罪。
クリフトは聖職者ながらアリーナを犯してしまった罪を大いに悔やみ、
サントハイム神官の証である十字架をそっとサントハイム大陸へと置いた。
イカダが流れ始め、その様を王が見つめる。
いつまでもいつまでも広い海を流れる彼の運命は波だけに任せられた。

そんなクリフトの想いが交差するよう、私はサントハイムの医療室で目覚める。
目の前にはマスクをして医療器具を持った医師達。
その人たちが手術によって私とクリフトの大切な大切な子供を取り除くのだと分かると、
私は世界一の格闘家ならではの力で手足を縛っているものを砕くと一目散にサントハイム城を出て行った。
いつも私を止める門番の声も町の賑やかな話し声も耳に入らない。
ただただ、私は漠然とクリフトのいる城の外へと走っていった。

愛するクリフトを追い求めて・・・

城下町サラン。
私はこの町に何らかの光明があるように思えた。
でも違った。あるのはただの絶望のみ。
看板に書かれたクリフトのこと。
人々の口からクリフトの悪い噂が私の耳に入ってくる。
聞きたくない! 信じたくない!!
私は泣きたい気持ちを抑え、目も耳もつむりながらサランを抜けていった。

昨日の幸福が嘘だったかのような心の中の大きな大きな絶望。
それでも涙をこらえて必死に前向きに進もうとする。
私はとにかくクリフトを探すため、北のテンペへ向かった。
いつもは何とも無い山道も足が重く、思ったように進まない。
顔はもう涙でびっしょり濡れていて、前はほとんど見えていなかった。
前の崖にも、足元の石にも気付かず、前へと足を動かす。
案の定私は石につまずき、目の前の崖からまっすぐと下に落ちた。
かなりの高さだったので私は上空からの空気の圧力にも耐えられないほど厳しい姿勢になる。
それが原因となり、体が変に回転して私は頭から地面に叩きつけられた。
体力には自信がある私だけど、この衝撃には耐えられなかった。
目も開けられないまま、私はそこで意識を失った。

鳥の声が響く、平和という言葉がぴたりと似合いそうな村。
私はその村の暖かい布団の中で目覚めた。
「おはようございます。」
声の高い女性の言葉が私の耳に入ってくる。
その声に応え、私が体を起こすと後頭部に激痛が走る。
「痛っ」
思わず声を上げ、身を起こし両手で頭を抱える。
様子を見て事態を察知した女性は薬箱で私の傷を癒してくれた。


「・・・それじゃ、何も覚えてないんですね?」
女性が尋ねると私は首を縦に弱々しく振った。
その時の私は崖から落ちた衝撃で記憶を失っていたみたい。
その女性の話によると、この村はテンペと呼ばれ、私はこの村を救ったらしいのだが、少しも思い出せない。
それでも心の中には忘れてはいけない男の姿がぼんやりと描かれていた。
その像をいくら年月を重ねても、いくら心の中を探ろうとも、全く形にならない。

とにかく私は記憶が戻るまで、この村に留まることになりました。

あの日から5年。
すっかり町にも溶け込み、出産も経験した私は今や日課となった農業に励むため、今日も畑へ。
そんな私の姿を見て、5年前私を救った女性とその夫が話し合う。
「あの時、あの子がいなかったら私とあなたは結婚できなかったのよね。」
女がそう言うと男もそれに答える。
「あの子の瞳、それに心がとても強かった。そして武術も・・・」
「本当に、あの時あの子が死ななくて良かったわ。」
2人は私を見て微笑みながら、目線を下に落とす。
2人の目線の先にある、生まれて4年になる私の子供。
この子は生まれてからずっとこの村で育っていた。

その子供を見てまた女は微笑して言う。
「この子の父親、どんな人なのかな?」
少しあこがれも混じった声に、夫はそっと答えた。
「きっと、あんな良い子が選んだ人だから、素敵な人なんじゃないのかな」
「うん、そうね。早く記憶が戻るといいんだけど・・・明日でもう5年目ね。」
畑のベンチからも見える日めくりカレンダーを見ながら言う。

2人が空を見上げている時、仕事が終わった私は間に入る。
3人に声をかけ、仕事が終わった時決まってやる子供を抱き上げる動作。
座っていた2人が腰をあげると小屋に入るようすすめてくれた。
私は元気よく返事をするといつもの小屋へと戻っていった。

夜。若い男がふらつく足取りで村に入る。
その男は弱々しく私がいる小屋の戸を叩き、私が扉を開けると細い声で言った。
「申し訳ありません。三日三晩飲まず食わずでお金もないんです。もしよろしければ・・・」
そう言うと若い男はその場に倒れこむ。
私は男の体を受け止めると、助けを借りて家の布団へと運んだ。


「おはようございます」
5年前、私が言われたセリフをそのまま男に言った。
男は頭を低くして礼を言おうとしたみたいだけど、私の顔を見て驚いて私の知らない名を叫ぶ。
「ア、アリーナ様!?」
私はこの人が記憶の在りし日の私を知っていると分かると、積極的に聞いた。
そしてわかった。
私の名がアリーナであること。
私がサントハイムからやってきたこと。
この男と私が「愛」で結ばれていたこと・・・。

「クリフト」と名乗るその男はサントハイムから流されたけど私の姿をどうしても見たくて死を覚悟でここまで来たらしい。
私はクリフトに連れられ、今まで世話になった人に別れを告げ、2人だけの子供ともに村を後にした。

「どうしても、思い出せませんか?」
クリフトが2人の子供抱きながらアリーナに語りかける。
クリフトはまだ私が知らないことを2つ言っていない。
私がサントハイムの王女であること、そして世界一の格闘家であること。
そのことを言ってしまうと衝撃が強すぎると判断したらしく、その時は何も言わなかった。
「ひ・・・いえ、アリーナ。どうしてもあなたに言わなければならないことがあります。驚きませんか?」
そんなことを急に言われて、私は少し戸惑った。
「はい」か「いいえ」。その答えを出そうとした矢先、草村から何十匹もの犬があらわれた。
クリフトは落ち着いて、私に子供を預けると、腰のバッグに入っていた短剣を素早く取り出すと次々とその魔犬をなぎ倒していく。
「すごい・・・」
私があっけにとられていく中、一匹の犬が私に襲い掛かる。
防御の仕方を忘れた私は、子供をかばうことを第一に考える姿勢をとる。
私は犬の突進によって後ろに弾き飛ばされる。
「姫様!」
クリフトが思わず叫ぶと、最後の魔犬を倒すとすぐに私の元へ来た。
子供は無事だったけど、私はひどい怪我を負っていた。
クリフトは最大の治癒呪文をかけると、私の顔色が徐々に変わる。
懐かしい匂い。なつかしい感触。その全てがこの呪文に含まれていた。

私は全てを思い出し、泣きながら愛しい人の名前を叫ぶ。
「クリフト!」
クリフトはその声で全てを察知し、抱きついてきた私を体で受け止めた。
そして二人は感情も赴くままに口付けを交わした。
あの夜よりも永く永く、あの夜よりも甘い甘い口付け・・・

私は5年ぶりに、愛する男の前で満面の笑みを見せた。
サントハイムに戻るのは少し怖いけど、きっと許してくれるだろう。
これからも私はことの人を愛することをやめないと思う。
神様が与えてくれた運命の人だから・・・

Fin...

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