そして修学旅行当日、大きなスポーツセンターで4つの学校全生徒が列車の前に集まる。
今日この日の為に楽しみにしてきた生徒も数多くいるようでリュックサック片手に他世界の準備を整えた生徒も多い。
さくら、ベビー、シエルは同じ部屋だったこともあり同じ席を用意してくれた。
ついでにヘトヘトの
たくっちスノーの面倒も見ることにした。
「一晩なのに1週間働いた気分だよ、でもこれで大規模な時空移動もこれから先楽になるんだよなぁ……ああクソう、キレるべきか安心すべきか分かんねえ!」
「でも本当に凄いですね、桃の園全員入ってもまだ余裕がありますよ」
「ちょっと四次元空間弄ったからな、どんなに人が入っても定員オーバーにならないし客席は幾らでも増設できる、その上でスピードは最大で新幹線の4倍ときた……ま、色んな世界の乗り物の技術パクったけどね」
改めてこの男の技術はヤバい、望むだけで寝台車も出てきたので一旦たくっちスノーをそこに寝かせて今後の事を考えることにした。
「ところでなんでゼンカイジャーの世界なの?戦隊の世界への修学旅行なら行き先は色々あったんじゃない?」
「元々ゼンカイジャーは色んな世界が設定上存在してるからですよ、キカイトピアと融合してもすぐ溶け込んでますし私達みたいなのが来ても警戒されないわけです」
「それもある、あるけど……変なこと言っていい?たまには、特定の世界に誘われてるような感覚するんだよね自分、まるで旧友に誘われてるような感じがね」
運転席には黒影の姿が。
一応操縦の仕方はたくっちスノーから全部聞いているがそれでも尚アドリブで乗りこなすだろうと推測されている。
何せ時空列車の初運用でもあるから気合い入りすぎている、どんだけ周囲にアピールしたいのかと呆れるばかりだが全員乗ったら有無も問わずに急発進してサクラは頭をぶつける。
「特別講師の扱い悪くない?」
「特別講師と言っても紅の砦は未だに誰一人入らないんだよねぇ候補生が、全世界に応募してるのになぁ?レッドだよ!?憧れのリーダー格だよ!?君だって憧れてたろ!?」
「うーんそうだね、僕もなろうと思ったけど……もう諦めちゃった、現実見ちゃったというよりなんかガッカリしたんだよね、レッドという存在に」
◇
「そういえば、結局いませんでしたね来道兄妹」
「人間嫌い極まれりだな……もはやどこに存在しているのかすら分からないぞ」
「マーベラスさん……レイト先生もゴーカイガレオンで乗っていくからいいって言いますし」
「ここにいるのはミラくんと自分と巡くらいかぁ……」
自動駅弁生成装置で出来た弁当を食べながらゼンカイジャーの世界を待つ。
黒影の運転ならわざと遅く進めるので3時間もすれば到着だろう。
そういえばゼンカイジャーの世界に到着したら何をするかなんて決めてなかったのでたくっちスノーは急ピッチで栞を作成している。
ベビーは初めて見る時空間にワクワクして、さくらは念には念を入れて筋トレを欠かさない、シエルはたくっちスノーの栞に赤ペン修正を入れる。
「ところで先生、アレはどこまで本気だ?」
「全員ピンク色の戦隊のこと?もちろんとことんやるまで本気だ、マゼンタもexeに頼んで猛特訓させてるよ」
マゼンタも皆とは離れてるなりにしっかりやっている、exeはこういう時に真面目なので離していても問題ないと信頼を込めてパワー方面で鍛え上げている。
しかし桜花戦隊計画にはまだまだ問題も多い、しかし問題があってこそプロジェクトは楽しい。
「メンバーはどうするんですか?私、シエルさん、ベビーさん、マゼンタさん……一人足りませんよ?」
「ベビーちゃんはゴクレンジャーのピンクになる可能性もある、そうなると三人になるだろ?サンバルカンとか追加する前のゲキレンジャーとか可能性はある」
「でも出来ることなら5人がいいですよね?」
「それに問題は大急ぎでゴクレンジャーがピンクを増やしたがっていることだ、もし仮にあやめさんが現代でも戦っていたならこれまで通りにはいかないイレギュラーが発生した……あるいは不要になったか」
「後者はあり得るね、だってレッドからすれば都合良くさくら君……あの人の孫が現れたんだから」
まさか、レッドがさくらを人柱にしようとしている?
そんなことあるわけない……と想いたい。
しかし……結局あやめさんは現れなかった。
自分の信じてたものが……否定される気分だ。
「さくら、お前母親は生きているか?」
「一応……でも前に言いましたけど絶縁しましたよ?」
「充分だ、お前が会いたくなくても調べる手段はいくらでもある、それにまだ時間に余裕は出来た」
◇
「今回の修学旅行の予定だが、まずは〜」
「おおー!!ようこそ!俺たちの世界へ!」
列車を降りてゼンカイジャーの世界に降り立った候補生一同、代表としてたくっちスノーが出来立てホヤホヤの栞を読み上げながら配っていると、予測していたのか青年が走ってくる。
その男こそゼンカイジャーの中心人物で唯一の人間、ゼンカイザーこと……五色田介人だ。
「ゼンカイザーの介人さん!?生で会えるなんて時空ってすごい!!マーベラスさんにも会えたけどリアル戦隊の感動すごい!!あの、私テレビでずっと活躍見てました!!」
「ありがとう!皆がスーパー戦隊になるっていう人達?いっぱいいるなぁ!案内するよ!」
「そうだな!ここは介人に任せて団体行動開始!」
たくっちスノーは介人とは初対面のはずなのに不思議と安心感を覚えて、さくらを始めとした桃の園はレジェンド戦隊と分かると信頼してそのまま言われるがままに行動を始める。
ゴクイエローは介人が気になるのか跳ねながら色々と訪ねてくる。
「お前ホワイトなんだぜ、レッドはどこにいるんだぜ?」
「イエローさん、レッドはちゃんといますよ!」
「あーなるほどね、グリーンがいなくてそのかわりがこの色っぽいんだぜ」
「えーっとゴクレンジャーでいいんだよね?俺のセンタイギアには無い戦隊だったからそっちの話も聞きたいな」
ゴクレンジャーとゼンカイジャーも何のトラブルもなく交流が始まってひとます安心するたくっちスノー。
この後はピザすき焼きを食べて、五色田博士の研究成果から他世界移動技術の発表会、更にG-lokシステムやゴクレンオーを見せたりと大忙しだが世界そのものに問題が起きるわけではないので気軽に行おうと考える。
巡もユニバース戦士以外のスーパー戦隊の力を使える者は戦隊考古学者として色々関心があるらしく随分楽しそうにご機嫌に後ろを歩いている。
戦隊オタクのさくらはいつの間にやら先導を切って名所などを紹介して回っている、この子入学してからイベントで目立つような真似しすぎではないかね。
「あそこに見えますのがゼンカイジャーの偉大なるメンバー!介人さんと共に絆を深めあらゆる平行世界を救ったキカイノイドのジュランさん、ガオーンさん、マジーヌさん、ブルーンさん!全員と会えるなんて!」
「確かにそう考えるとキャプテンは酷いべ、ハカセやジョーっていう人にはオラ達藍の波止の奴ら見たことねえべよ!なあ皆!?」
「俺のクルー達を見たいなら船に乗れるくらいにはならないとな」
「土足で乗り込んでやるだよ!」
藍の波止の男達も年頃の学籍のような馬鹿騒ぎのノリになって盛り上がっていくなかイエローは核心を突く質問を放った。
「なんでレッドもいるのに白いお前がリーダーやってるんだぜ?」
盛り上がっていた空気を一瞬で凍らせるようなKYな発言だが、それを聞いた介人は何かを思い出したかのような顔で傷つきもしてない様子で答える。
「実は前にも似たようなこと言われたんだよね、アカレンジャー先輩に……お前赤じゃないのかーって、そしたら赤色のゼンカイザーが出てきた夢まで見ちゃったんだ」
「ゼンカイレッドってことですか、ちょっと気になるかも……」
「G-lokシステム使えば会えるよ?トジテンドとの戦いになったら駆けつけてもらおうかな!」
「あのな黒影、ゼンカイジャーのお話は……」
「それにさ、俺は別にリーダーとかじゃないよ?ジュランやガオーン達が俺の家に集まって、家族みたいに仲良くなって一緒にトジテンドを倒して……だから皆で頑張って今があるんだよ」
「……なるほど、家族のようなものか」
遠くで聞いていたゴクレッドも介人に興味津々である、だが黒影は話を聞いていると違和感を感じたのか腕を引き伸ばしてたくっちスノーに状況確認する。
(ねえこれどういうこと?なんかおかしくない?)
(おかしいって何が?ちゃんとコンプリート済の世界を修学旅行先にした、泊まるところも手配して……)
(いやおかしいだろ?コンプリートっていつ俺がそんなの許可した?ゼンカイジャーの物語が勝手に終わってたなんて聞いてないぞ?)
(いやあの、聞いてないっていうかスーパー戦隊の世界は殆ど終わってるぞ?マーベラスだってザンギャックのアクドス・ギルとはとっくに決着つけてるし)
「はああああ!!!?じゃあ何か!?介人はもうとっくにボッコワウス倒したってこと!?困るんだけどそれェ!!!」
黒影があまりにもデカい声で反論するので全員がビックリするがたくっちスノーがピコピコハンマーでぶっ叩いてボケ扱いにして事無きを得る。
しかしコバルトやシエルにはガッツリ内容を聞かれていた。
(まさか勝手に
はじまりの書を勧めてたなんて……俺が参加して大活躍する前に主人公に余計に物語を進めさせて完結させちゃダメってあれほど言ったじゃないか!ゴレンジャーからブンブンジャーまでのメイドウィンは全員クビだな)
「えっえええ!?ちょっと待て!?」
「今度はなんだやかましいぞ監理局!」
「介人、ここまでの大人数は想定していませんが」
「ごめんごめん!でもせっかく修学旅行で来てくれたんだからさ!」
たくっちスノーもまたデカめの声で驚く。
ようやく介人達の拠点である「カラフル」に到着したのだが、介人を出迎えたのは眼鏡をかけた黒髪の女性……もちろん、テレビ内のゼンカイジャーにそんなキャラが出た記憶はない。
目を凝らすがこれは現実、さくらも驚いてたくっちスノーの方を見るが、これがG-lokシステムによるものではないことに驚きを隠せないでいる。
「えーと……どちら様?」
「ああ、知らないなら紹介するよ!俺が小さい頃に仲良くしてたチドリ!裏で助けてくれたんだ!」
「ゼンカイジャー……の味方ではありませんが、一応そういった立場をさせていただいてます」
チドリと呼ばれた黒髪の女性には覚えがある。
ただしその場所はスーパー戦隊ではない、『アサルトスパイ』という全く無関係なゲームのヴィランだ。
他世界のキャラが居ること自体は自分達もそうなので理解できる、しかし何故チドリはまるで最初からこの世界出身だったかのように振る舞っている、しかもこの佇まい……明らかに
時空新時代以前から居るようにしか思えない。
「ショータイムのおじさんは?」
「Mr.ショータイム様はお忙しい立場です、戻るのには数時間要するかと」
「うーんじゃあ俺、父ちゃんのところに行ってくるからセッちゃん達と留守番よろしく!」
もう既に予定が全然違うことをさくら以外も察しているがたくっちスノーはまだ変なキャラが増えているだけだと必死に自己弁護して流れを戻そうとするがらどうにも現実はうまくいかない。
「そうそう介人、トジテンドのワルドが現れました……元々機械製である以上複製は容易だったかと」
「え!?分かった!ごめん待ってて!?」
「ナイスだゼンカイジャー世界のメイドウィン!物語ってのはこうでなくちゃ!!」
「騒動を喜ぶな!ここはゴクレンジャーの見せ所だ!予定を変更して手分けしてわるどを探すぞ!」
「はい!!」
「介人くん、俺たちに手伝えることはないかな?」
「レッドさん私も手伝います!!」「おい、私を置いていくな!!」
「さくら君これ持ってけ!」
駆け出す介人にゴクレッドとさくら、シエルが即座に動いて追いつき移動、巡、たくっちスノー、マーベラス、サクラで数百人いる候補生達を的確に導いて人員作戦で確実にワルドを一分でも短く追い詰めようとする。
チドリから貰った地図を頼りにして変身しながら走り出していく。
「チェンジ全開!」『ババン!ババン!ババン!ババババーン!ゼンカイザー!』
「エックス変身!」
「秘密のパワー!ゼンカイザー!」
「うーん……オレ達も名乗り口上があったほうがいいのだろうか?」
「あっいいですねゴクレンジャーの名乗り!私見てみたいです!」
「話している場合か!」
「ちょわーっ!!」
ゼンカイザー、サクラ、シエル、ゴクレッドが豪快に飛び越えてコマのようなワルド、コマワルドのところに回り込む。
白、顔丸出し、ルパパトエックスのパチモンと本当に戦隊か怪しい非公認戦隊よりヤバい連中だがこれでも戦隊である。
さくらは介人とレッドに耳打ちすると、構えを取り大爆発が起きて戦隊特有のポーズが決まる。
一人だけ無視されたシエルはルパンエックスの先端の部分でさくらをぶん殴った。
「やるならやるって言え!!」
「だって四人だとしっくりこないじゃないですか!」
「おいこら!私を無視するなコマ!お前もコマのようにぐるぐる回転させて」
「よっこいしょーーーっと!!」
というところで黒影がばっさりと話も敵も綺麗に両断。
空気を読まずに全部消し去って大活躍……のつもりらしいが、さくらとしてはなんというか白けた空気で唾まで吐く。
多分こいつ変身してる間に攻撃するようなタイプなのだろうと思っていると、たくっちスノーが『黒影はヒーローが変身してる間に勝手に怪人を倒すタイプ』と付け加えられた、フォローどころか悪質になっているのは気の所為ではない。
だってたくっちスノーの言い方がどう見ても経験者側だから。
「いやぁこういう時に俺が活躍しないとね!世界の平和守んないと!平行世界を狂わせるトジテンド相手には俺みたいな神様がしっかりしないとさ」
「分かりました、分かりましたから数メートルくらい近づかないでくださいなんか不愉快なので」
「なんだろうな助けられても全く敬おうという気になれないのは不思議な気分だ……あの講師は毎日こんな奴を相手していたのか」
「レッドにこんなこと言わせるなんて相当だぞ……」
なんとも奥歯に物が挟まるような感覚になりながらもあっさりワルドを倒して終わったので黒影は何かを期待したような素振りを見せるが、いや勝手に来ておいて何を求めてんだ傲慢すぎんだろとすげぇ嫌そうな顔をするさくら。
サクラも遅れるように現れてどこかを指さすと黒影はその方向へと走り去っていった。
すっかり忘れていたが紅の砦を作ったのは黒影であり、サクラにとっては実の上司ということになってしまう。
「未来関係なく僕からの忠告だけど
時空監理局には絶対入らないほうがいいよ」
「大丈夫ですたくっちスノー先生からも言われたので」
「局長がクソってだけで何故ここまで言われるのか……まあ気持ちはわかる」
黒影は離れた、介人はたくっちスノーに頼んで修学旅行の案内の続きを行わせて残るはさくら2人とシエルとレッド。
タイミングとしては今かもしれない、サクラも同じ気持ちだったしレッドもサクラと話したがっているように見える。
「あの……レッドさんお時間ありますか?ちょっとそこの喫茶店で……」
「ああ、オレとしてもさくらちゃんと……未来から来たという君のことが気になる」
「あの人は呼ばなくていいのかな?」
「たくっちスノー先生は呼ばなくてもいつの間にか調べてますよ」
ということで、また喫茶店的なところに足を運んで今度は四人で座る。
さくらの隣にサクラ、平行世界といえど未来人のはずなのに大きく変わったように見える。
シエルは考えて聞きそびれたことがあることに気付く。
「未来の私はどうなっているか聞いてなかったな」
「シエルは僕の上司だよ、いつも忙しそうにしてる」
「それはよかった、未来でお前より立場が下など癪に障る」
「私絶対シエルさんより出世してみせますからね……でも、そんなことどうてもいいんですよレッドさん……実はその……」
さくらは……伝えた。
先々代ピンク花岡あやめの話、偶然写真を手に入れたのだがあやめの若い姿は現ピンクと全く同じ姿をしていたこと……その上で未来のサクラから人類が産まれなくなる危機にあり、ゴクレンジャーが人類を生かすための研究をしていること。
「あのっすみません……勝手なことをしたことは謝ります、でも教えてくれませんか?今のピンクもおばあちゃんなんですか?」
「……いずれ話すときがすると思ってたけど、さすが未来の君だ、そこまで知っているとは」
「むしろ僕は何も知らない状態だったせいで苦労したからね、早めに解決するに越したことはない」
「なるほど……君の思ってる通り、あやめは今も若い姿でピンクをやっていたが限界が近い」
「若い姿のままなのはエレボス細胞に感染したからですよね?」
「…………まあそういう解釈で良いだろう、元々は女性に感染するウイルスだったのだが変異して怪人まで生まれるようになった、怪人を倒すためにオレ達ゴクレンジャーができて……その上で種を残さなくてはならない」
「レッド、無礼を承知でお聞きしますが……もしや我々に残された時間は」
「ああ……オレ達は100年間同じ研究を続けていたが、人類を存続させる結果はまだ何も……」
「……え?ちょっと待ってください、今貴方……俺たちって?」
最終更新:2025年07月23日 06:50