アバレ暴いた真相

 コバルトはシエルの連絡を受けてこっそり隠し聞きしなかまら真相を辿っていた、そしたらとんでもない話をしているではないか……ギリギリレッドにバレないようにしたいが心臓の鼓動が収まらない、どうしても知りたい。
 怪人の正体は、レッド達の研究は……。


「秘密を知ろうなんて感心しないんだぜ、相田コバルト」

「なっ……ゴクイエロー!?」

 いつの間にか背後にゴクイエローが立っており、真後ろから首を絞め上げて持ち上げる。
 人間離れしたパワー、締められながらも抵抗して蹴り上げてみるも人間とは思えない重く硬い鉄のような腹部の感触。
 やはりイエローは機械で間違いないようだが、まだ知りたいことが多いのにこのまま別の世界で息絶えてしまう。

「ここはお前の世界じゃないんだぜ、埋め立ててしまえばもう誰にも見つからないんだぜ」

「こっ……こっのテメェ……梃子ってやつの命令だべか……だがなァ!!ベビーちゃん!!マゼンタちゃん!!」

「あぁ!?ピンクなんか呼んだところでいったい何があべべべべべ」

 イエローは首をグニャグニャと捻りながら突然動かなくなり手を離す、なんとかコバルトは解放されると念の為に呼んでおいたベビーとマゼンタに合図をして呼び寄せる。
 機械相手ならハッキングで黙らせることが出来る、そして桃の園は以前からそういったサポート行為を専門として教育していた場所だ。

「マジかよ……ゴクイエローがロボットって本当だったのかよ」

「でも良かったぁ……相田さん大丈夫!?」

「オラじゃなかったらマジで死んでたかもしんねえ……それよりもだ、真実を知りたくないか?」

コバルトはベビーとマゼンタを両隣に置き、イエローを別のところに隠して盗み聞きを再開する。


「その、えっとオレ達って……すみません引っかかってしまって、そのつまり?」

「君の思ってる通りだよさくらちゃん、未来の君から聞く限りだと知っていると思っていたが……オレもなんだ、オレとあやめ……姉さんは100年以上ゴクレンジャーのレッドとピンクとして活動している」

「え、えええええ!?姉さんって……えーとつまり、レッドさんは私の親戚で、この場合だと……」

「大叔父……ということになる、レッドも影響を受けていると思っていたがまさか身内とは……」

 なんとゴクレッドは……さくらの血縁者。
 あやめと共に朽ちていく人類を支えていこうと生涯をかけてきた英雄、しかしさくらは不思議と驚かなかった。
 自分の家族が元々醜いものだっただけにレッドと同じと分かると安心を覚えた。

「レッドさんやおばあちゃんはどうしてゴクレンジャーになろうと?」

「子供の頃からヒーローに憧れていたんだ、ゴクレンジャーを作った理由なんてこれくらいでいいだろう?」

「ですね、私はそれで充分です」

「待てチビ、お前はそれでいいかもしれないが私としては人類に尽くす理由としては納得がいかない」

「それはオレ自身生まれつき身体が弱く命の危機だったからだ、信じられないかもしれないが100年前のオレは病弱で数々の病を抱え幾度となく黄泉を眺めた、」

 レッドはさくら達は信頼できるからと自身の過去を明かす。
 その様子は未来のサクラにとって信じがたい光景だったのかコーヒー片手に平穏を装いながらも目が動揺を抑えきれないでいた。
 レッドは話を続ける、生まれてから間もなく病弱で病院のベッドで過ごしてきたレッドをあやめは救いたいと様々な研究を行なっていたが変わらぬ一方、そんな時とある地下から発見し流出したウイルスに揃って感染してしまった、その結果レッドは男性ホルモンが異常増幅して豪傑な肉体に変異し病に打ち勝ち、あやめは歳を取らなくなった。
 誰でも察する、そのウイルスこそがエレボス細胞であると。

 「とにかくオレはエレボスのおかげで健康になったが、この細胞を調べていくうちにγ染色体の消失と、この細胞が人類を生かすための技術であることを知り協力者になった」

 そして人類の為に生きていくために自らを実験台にしながらもエレボス細胞の研究を行う、しかしその過程でレッドやあやめにも想定外のとんでもないことが起きた。

 「エレボス細胞の感染者の症状は2パターンある、パターンAはオレのように肉体を男性化させるもの、そしてもう1つは異形化して遺伝子が変異した子供を産み続けるもの……」

 「そ、そんな……まさか……エレボスの正体って」

 「そう、君たちの宿敵のエレボスは姉さんだ」

 花岡あやめとエレボスは同一存在だった、そしてウイルスの影響で産まれたものが怪人。
 レッドは怪人を止めるためにゴクレンジャーとなった、自らリーダー格のレッドになり率先してあやめが作る怪人を倒した、責任を果たすために……ちょうど都合よく自分には強靭な肉体が備わっている。
 そして怪人から少しずつエレボス化を抑えるワクチンを開発して……三代目ゴクレンジャーの代であやめはなんとか人間の体を維持できるようになり、自らゴクピンクになったという。
 つまり、あやめはあの藍の波止でエレボスとして保管されて……。

 「しかしそのワクチンにも限界が来た……姉さんはもうすぐ君たちの知るエレボスとしての姿から戻れなくなり、理性の無い怪物になってしまう」

 「なるほど、だからさくらに近付いたのか……人としての子孫ならエレボスの抗体が出来ていると読んで」

 「それもあるが、この子は姉さんのかわいい孫だからな」

 嬉しかった、レッドがここまで話してくれるなんて。
 しかしサクラとしては違和感があった、自分が聞いたときはこんな感じだったか?しかしまあ結局パラレルワールドなのだ。
 仕方ない。
 だがシエルはまだ気になることがあった、パターンA……男体化ということはつまり。

 「レッド……貴方はまさか女、いやサクラと同じ後天的な双性……?」

 「オレは男性だ……感染するまでは、オレの本当の名前は花岡かすみ、一応妹だな」

 「えっ!!?れ、レッドさんが女!?じゃあ、なんでレッドは男しかなれないなんて……」

 「あの頃のオレは学が無かった、とにかく『俺以外にレッドになってほしくない』となんでもいいから理由を付けたかった、それが巡り巡って男しかなれないということになった、さくらちゃんにとってはいい迷惑だったようだが」

 「だからこそ僕もまたこの世界のレッドは貴方しかいないと、紅の砦はほぼ抑止している……内緒だよ、あの目立ちたがりバカには」

 「だが時が経つごとに自体は大きくなっていき怪人との戦いはオレ達姉妹だけの責任ではなくなっていった」

 怪人とゴクレンジャーの戦いはいつの間にか罪滅ぼしではなくショーのような形になっていった、正義と悪の戦いを通して人々が喜ぶことにブルーが気付いたからだ。
 ローマのコロッセオ、ギャンブルなどの賭け事、現代でもネットゲーム……戦うことは野蛮でもそれを眺める人間が楽しくて仕方ないのは認めざるを得ない現実だ。
 しかし怪人の方ばかり優先して疎かに出来ない、それに現在は妙な流れになっている。

「最近では妙な怪人も出来ている、君の言う別世界の怪人……アレは姉さんの怪人ではない」

「多分たくっちスノー先生はこの世界でそれを調べたかったんだと想います、ゼンカイジャーには平行世界に詳しい科学者がいるんですよ」

「その件に関しては全体的に怪しい奴がいる、あの来道兄妹だ……まあそんなことはいい、色々話は聞いたが……こんな真実とはな」

 シエルは懐から拳銃を取り出す、すぐ隣のサクラがいつでも止められるように握りしめるが本気であることは分かっている。
 何せサクラ達は事情をよく理解しているのだから、さくらも彼女の復讐だけは止める権利がないと分かっている。
 だが……。

「君の事は調べさせてもらった、家族全員を……」

「そうだ、滑稽な真実だがな……まさか身内の尻拭いに巻き込まれて死んだとは無様な話だ!貴様を殺しても何も変わらん、家族は戻ってこないが……貴様の姉に家族を失われる虚無を味合わせてやる事は出来る!」

「落ち着いてくださいシエルさん」

「落ち着けだと!?貴様には散々話したはずだ!!私の家族のこと……私の人生はもう何もないんだ、人類が滅ぼうが知ったことでは……」

「そうか過去の僕、確かにこの世界ではおかしいよ……10年前の事、思い出してご覧」

「十年前……大災害、大量の怪人が街を襲い、このチビはレッドに助けられて、私の家族は失われて……ブルー、イエロー、グリーン、ピンク……いる!?」

 シエルでも気付く、エレボスはレッドあるいはピンクの中にあるものが変質したもの……エレボスが暴れていたという情報はあるのにレッドとピンクがそのままの姿でさくらを助けていた。
 レッドの情報に嘘があるようにも思えない。

「そうですシエルさん、あの災害はレッドさん、おばあちゃんとは別……それどころか予測すらされてない『3体目のエレボス』がいないと成立しません」

「……エレボス細胞に感染して姉さんのようになった事例は他にない、オレみたいに筋肉質になることもなかったし、大体はあのシーカーだ」

「……ちょっと待って、まさか平行世界って僕が来る前からあったんじゃないのか?そうだとしたら僕の情報も変になりそうだ」

さくらは腕時計を確認する、大事な情報は聞けたが長居しすぎた、そろそろたくっちスノーか黒影が駆けつけてくるかもしれない。
 たくっちスノーはともかく黒影が関わってきたら面倒なことになるだろう。
 話題はこれで最後にしておこう。

「レッドさん、私は鏡を見るたびに貴方の豪快な男だったらと何度思ったことか……でも女だったとは思わなかった、貴方が羨ましかった、エレボスに感染すれば……貴方みたいになれるんでしょうか?」

「……そんなこと言ったら姉さんは怒るよ、せめて人のままオレを好きでいてくれ」

「そろそろ戻りましょうか、たくっちスノー先生は人類の未来の為に手を尽くそうとしています、きっと助けに……」

「駄目ださくら、アイツの上司のことを忘れたか?アレが絡んだら面倒になる」

「僕も同感だ、君の先生はともかくウチの理事長はどうにも信用に値しない、彼が関わってくるとなると迂闊に相談もし辛くなってくるだろう」


 ここまでの話を全部聞いたコバルト達はさくらにバレないように一旦屋根の上に隠れてさりげなく合流しようとする、喫茶店から出るとさくらはずっと堪えていたのか感極まって涙が溢れていた。

「良かった……ずっとゴクレンジャーを怪しまなきゃいけないと思ってた……レッドさんが私の信じてたレッドさんのままで……本当に良かった……!!」

 コバルトはこの情報をどうするか考える、無論キャプテンには報告するがイエローが襲ってきたことも考えるとよほど知られたくない真実だろう。
 まあ、レッドが女だったとかエレボスの件を考えれば無理もないが……3体目のエレボスの件も気になる。
 しかし今は……レッド達が抱えてる問題に自分達が何を出来るかだ。

「はぁ……なっさけねえよなオラ、ブルーになるってのにメソメソ泣いてる女の子に手ぇ差し伸べることも出来やしねえ」

「さくらちゃんよかった……ずっとレッドなりたいっていってたもんね」

「んで、さくらはピンクだけの戦隊を作ろうとしてるんだよな?ベビーはどうする?」

「あたしはこのままピンクなってみるよ、ブルー様と結婚はしたいのは変わんないし……でも」

「んだな、あんなこと聞かされても若いオラ達に人類がどうとかそんな責任背負いきれねえべ」


「でもあたし達はあやめさんを救うことなら出来るよね?」

「んだな、レディ一人守れねえやつは全人類なんかどうしようもできねえ」

 ベビーとコバルトは新たに決意を固めた。
 ここで勉強していたのは全く違う理由だったが、きっと自分でも何かの役に立てると思うと戦隊として見過ごせるわけがなかった。
 そんな姿をゼンカイジャーの皆はしっかり眺めていた。
 きっと彼らの世界やスーパー戦隊も、これくらい立派な候補生達がいれば大丈夫なだろう。

「おーい特待生達、浸るのはいいがイエローどうするんだー?」


 その夜、やっぱりレッドから聞いたことを一通りまとめて、たくっちスノーに相談してみることにするさくら。
 黒影にバレるリスクはあるが、ライバルならのらりくらりとかわしてくれるだろうと期待する。
 お泊り予定の時空ホテルはかなり快適で既にベビーは爆睡していた。

「さくら、レッドの言うことはどこまで信用している?身内とはいえ真実を全部話すと思うか?」

「全部本当とは思ってませんよ、でもレッドさんみたいに男みたいな身体になれるならエレボス感染も悪くないなと思ったのは事実でウゲェ!!」

「今のは本気の蹴りだ、アレが事実なら何のために桃の園は存在している?何人があやめさんの後釜になれず犠牲になった?卒業したピンクはどうなったと?」

「うぐぐ……確かにピンクのことは気になりますけど、あやめさんは後からピンクになったんですよ、お姉さんはずっとエレボスを維持できるわけじゃないと言ってましたしいざという予備も……」

「まあそれもそうだが……実際どうする?まさかゴクレンジャーになったら人類の未来を背負うことになるとは私でも予測してなかったぞ」

「未来と言ってもその……男の人が産まれなくなるんですよね?レッドさんや未来の私みたいに後天的に男になる以外何かあります?」

「さあな、スケールがデカすぎる……ん?待てよさくら、男なら今はいくらでもいるよな?別に『私たちの世界』だけが女しか生まれなくなっても困らないんじゃないか?」

「それじゃ駄目ですよ、他世界の旅行とか当たり前にやってますけどいつまでもそれが出来るか分かりません、いつ交流が無くなるかと思うと」

「他世界との交流がなくなるなんてありえないよ?」

「ギャッ」

 なんか話してる途中で黒影が突然顔を出してきたのでビックリしてダンスをぶん投げ、さすがに目を覚ましたベビーは自分の股下に黒影がいた事にビビって怒りの猫趙千光偏照姫!!
 黒影はしぶといので全然堪えない。
 それよりもさくらとシエルは神出鬼没な上に態度がアレすぎるのでビビった。
 とりあえず黒影は何の話かまでは把握してないようだ。

「あ、あのー……他世界の交流がありえない、つまり他世界に行けなくなることがないってどういうことですか?」

「俺の世界だもん、俺の物語だもん!いろいろ巻き込んだほうが楽しいし全部楽しみたいから時空を広げて誰でも行きたい放題になったもん、なくなるなんてありえない……ああでも、どの世界にも行っちゃいけないって言ったことはあるかな」

「え?その世界はどうなったんですか?」

「村八分って知ってるだろ?誰とも関われないなら、そとそも必要ないよね?時空がそう判断して……パン」


 目が冗談じゃない、改めて未来のサクラが言っていたことを感じ取る。
 こんな奴に任せたら、進んで解決させたら世界はおかしくなってしまう。
 たくっちスノーに伝えるのも怪しくなったがとりあえず帰らせた、怖いので。

「なんか疲れちゃったねえ、真夜中だけどお風呂入ろうよ」

「うーんよくわかんない流れですがまあいいでしょう」

「なんか話の都合を感じるな、黒影のせいか?」

 とばっちりなようでわりと間違ってるのかもしれない黒影の評価を他所にポチが喜びそうなお色気シーンを挟むために温泉へ向かうと……何故かたくっちスノーとサクラがいた?

「あっさくら君もう深夜の23時だぞ」

「キャアアアアア!!!」

「そっちから来ておいて悲鳴は酷くない?僕は同情するよ」

「未来のサクラはともかく何故お前が風呂に入っている!!」

「自分は無性別だぞ?ミラくんは双生だし……ああ大丈夫、自分女体は興味ないし股間にアレはついてないからお構いなく」

「お構うわ!!」

 たくっちスノーだけがシエルのキックで追い払われてようやく四人でお風呂へ。
 状況が状況なのでキャッキャウフフすることはなかったが改めてサクラの肉体を見ると本当に女性らしさはないが、男性としても歪つだ。
 胸筋は女性特有の膨らみというよりは心臓が蠢いてるかのようにグロテスク、身体に丸みはなく粘土を上から貼り付けたような後付けの妙なライン。
 双性になったはいいが中途半端なようだが服を着れば違和感もなくなるだろうか……というところでさくらが股間に手を伸ばしてサクラが吐血する、多分握り締めたらしい。

「ついてる!!?」

「ついてるに決まってんだろ!!種を残すための研究だぞ!!」

「お前よく触れたな……ピンクとしての恥はないのか」

「いやまぁ、私が相手ですし……ほらベビーさんも確かめてください」

「えええ!!?なんであたしに振る流れなの!?」

「貴方ブルーさんと結婚していずれ×××を×××したりとかするじゃないですか」

「ダメ!!ベビーは触るの駄目!!潰しちゃうから!!」

 久方ぶりにビビったサクラは逃げ出そうとするがさくらに拘束されてがっちりホールド、何やってんだこのバカ。
 シエルは一体コイツら何をしているのか分からなかったので退散しようとするがサクラの立派なトッキュウオーを眺めたくて眼鏡を何回も擦る。


「ぎゃああああああ!!!!」

 一方その頃、マーベラスとコバルトはカレーを食べていた。
 卵を割って生卵で味変しながら夜空をバックに堪能する。

「今何か潰されたみたいな悲鳴しなかったか?」

「オラ達が行かなくても問題ねえだよ、ヒーローはいくらでもいる……」

「ま、それもそうか、カレーに生卵美味いな……」
最終更新:2025年07月23日 06:51