「ふむなるほど、君等そういうことになったわけね」
サクラ達が風呂場で大騒ぎしている頃、コバルトからレッドの話を聞いていた
たくっちスノー、蹴っ飛ばされているので逆さまだが真面目モードで受け答える。
マーベラスもこの結果は驚いたが人類の存続なんてものはゴーカイジャーには知ったことではないので問題はエレボスについて……と考える。
「んで監理局としてはなんか参考になることねえべ?」
「そうは言われてもなあ……男が生まれなくなるって結構デリケートな話題だぞ?こっちは自分でも解決は時間かけそう、君の目的であるあやめさんの完治と第三のエレボスの事を優先すべきだ」
「で、怪しいのが金の久遠と翠の庭園ってわけね……実際、ここまでくると来道兄妹が怪しくて仕方ないというのも無理はない」
何せたくっちスノーも修学旅行を行った真の理由はメンバーの大半を世界から離すことでexeが調査をしても邪魔されにくくするというものである。
今自分たちがこうして遊んでいる間にもexeは優秀な結果を残してくれることだ。
今はゆっくりダラダラと楽しもう、ここから帰ったらそうもいかなくなるだろうから。
特にコバルトからすれば藍の波止がエレボスを定期的に隠して保管していたとなると大騒ぎだししわ寄せは引き継ぎを任された自分にも振りかかることになるだろう。
そしてマーベラスの目的であるゴクレンジャーの大いなる力だが……
「そういえばレンジャーキーって元の人々に返したってテレビでやってたべ?」
「まあな、俺があの時使ったのはたくっちスノーに借りたやつだ」
「なるほどなぁ……キャプテン、オラの話になるけど現ブルーもあやめさんの事好きなんだろうか?」
「さあな、俺は惚れた女に人生を捧げるというのは悪くないと思う……だが全部納得したわけじゃなんだろ?」
「それはそうべ、ゴクレンジャーの事情ば分かったがなんでこんなルールを押し付けんのかは納得してねぇ、戦隊という振る舞いや怪人退治については分かったがそれは隠さねぇとイケねぇことか?」
素直にエレボスの事と人類の未来を公表して本格的に研究に回せばいいのでは?
しかし自分が思いつくようなことなどこの100年で同じように考えて実行に回そうとした人間はいくらでもいるだろう、それが出来なかったのは何か大きな理由がある。
なのでコバルトも安易にあやめの事は公表しないようにしようと考えている、あやめが産んだ怪人以外も気になる。
ウイルス感染ならゴクレンジャーが何故感染しないのかや、自分達の安全についても何も解決していない。
とりあえずこれが終わったらブルーに全部聞いてみる事にしよう、命を懸けて。
コバルトが寝ようとするとたくっちスノーはまだ
マガフォンを弄っていた。
「来道兄妹のうち気になるのは梃子、金の久遠で何を狙ってるのかは知らんが明確にイエローが襲ってきた……そんなのバレたら自分もヤバいのに、更にピンクを目の敵にしているときた」
「そういや未来のさくらちゃんは知り合いみたいに言ってたべ……まさかとは思うがあの人が来る前から並行世界ってあったんじゃねえか?」
「謎のエレボスCが確認されている以上ありえない話ではない、それにさくら君の存在もだいぶ怪しい……」
花岡さくら、形式上は花岡あやめが人間で居られた頃に作れた孫娘。
その血縁関係はシエルに言われたこともあり気にしていたのだが何故かさくらの母親並びに父親が見つからない。
絶縁したと言うのなら生きているはずなのに街のデータを探っても見つからない、最終手段として桃の園のメイドウィンにも会いに行こうと思っているが……。
たくっちスノーも今はゆっくり休もうというところでexeから電話が来た、知られたらコバルトは飛び起きるかもしれないので遠くに離れて中身を確認する。
「どうだ様子は?」
「オレだ、そっちはどうだ?」
「とんでもないくらい重要な情報が手に入った……」
たくっちスノーはレッドが話してきた情報を一通りまとめてexeに伝えると、当然だがexeは何回も驚いたり焦るようなリアクションを繰り返すがしっかり聞き入れてくれる。
戦闘しか取り柄がないというが、こうやって話を普通に聞いてくれるだけでもたくっちスノーとしては助かる存在だ。
exeも役に立たないわけではないし真面目にやってくれてる、
野獣先輩は俗物なので頻繁にサボるし余計なことばかり言う。
結局は仕事ができるかより相性がいいだが。
「そうか……レッドはさくらの親族であり、ピンクとは姉妹……情報量が多いがオレ達よりは不思議生物ではないな」
「そうだな、元を辿ればウイルスのせいでおかしくなった姉妹と戦隊の話ってぐらいだ、ベビーちゃんやコバルトはあやめさんを治そうとしている」
「オレもそれは手伝いたいと思っている、そのウイルスのことだが……お前の発明品を使ってエレボス細胞を探したら発生源を特定できたぞ」
「グレートだexe即座に消毒させる、その場所は?」
「桃の園の地下闘技場の更に地下奥深くだ」
「地下で生成された自然発生のウイルス……なるほど、桃の園が作られたのはテストのためか、確かエレボスは女性由来の怪人らしいからな」
「ティー、土を調べてみるのはどうだ?地下ならもしかしたら……」
exeはマガフォン越しに土をビニールにまとめたものを差し出して、真夜中で時間があるたくっちスノーはそのまま解析を始める。
こうなると直接そばにいたほうが護衛にもなるし早いと腕を掴みそのまま通話していたexeを引っ張り出した。
周囲の土を一通り調査してみると驚くべき事実が明らかになった、土全体にエレボス細胞が付着しているので全世界の女性が自然に感染する。
100年間蓄積されたウイルスが人体を蝕んでいる、これがγ染色体が減っていく原因だろう。
マゼンタの男性じみた筋肉質な体格やベビーの女性らしいセクシーな体型に似つかわしくない破壊力にもこれで納得いく、彼女達もまたエレボス細胞に適応した新人類だろう。
ピンクがサポートに回されるのも派手に動いてエレボスの存在を悟られないようにするため……?
他世界にも多大な影響を及ぼす、これを公開すれば桃の園の世界が第5危険領域に指定されてもおかしくないだろう。
しかしさくらは?エレボスの子であるさくらに変化がないのは何故なのか……聞いてみることに。
「exe、自分は修学旅行から帰ったらさくら君の母親を探してみたい、DNA鑑定はこっそりしておいたから結果を持って……なっ!?」
exeはもう既に鑑定結果を掴んでいたので見せてもらうと、そこには身の毛もよだつような衝撃の結果が……。
「……exe、公表するのは3番目のエレボスとイエローの真実だ、それ以上は公表できない、あまりにも……あまりにもおぞましい」
◇
修学旅行はあっという間に終わり、たくっちスノーはさくらやゴクレンジャーの許可をもらった上で時空各地に話せるだけの情報を発進。
レッドはとてもエレボスに見えないだろうと状態を秘匿、エレボスは二体存在したという体で謎の怪人はそいつが作ったとして指名手配、特盟や
時空ヒーローにも報告した。
問題はたくっちスノーが土を研究して発見した衝撃の報告だ。
ずっと研究を深めていたレッドすら知らなかった事実。
「どういうことですかたくっちスノー先生!?土にエレボス細胞が侵食して、私たちもう既にエレボスの力に感染しているって!?」
桃の園の生徒達は当然ざわめくが、マゼンタのように言われてみればそうかもしれないと納得する者も一応居た。
たくっちスノーは冷静に答える。
「残念ながらエレボスは100年以上前から存在していた超古代のウイルスと見ていい、ゴクレンジャーはずっとこの未知の力と戦い続けていたんだ」
「なるほどな……なんとなく俺は分かったで、桃の園というものが生まれた理由やその意義……ピンクは女性しかなれへんというのは建前、本当は女性を隔離させたかったんや、一つの場所に!」
「巡の推測は正しいと思う、何せウイルスが発見されたのはここ……桃の園の地下深く。」
紅一点ではなく感染者を放り込む為に用意されたシェルターが桃の園、レッドはゴクレッドしかなれないしピンクは周囲を巻き込まないために一斉に封じておいた場所。
出来る出来ないじゃなくてこれが現実、そしてこれが原因で人類は危ない。
「それじゃあ私達、怪人になるってこと……?」
「あくまで見た目上の失敗作と成功作ってことになる、科学者としての血も涙もない判断だから僕としてはまだ人と思っているよ、それに気にするな僕を見ろ、こんな化け物に比べたら君達はよほど人間らしいと保証する」
「安心しろ、遺伝子に異常は見られない……お前達が怪人になることはない」
「でも……ゴクレンジャーが倒していたのはつまり……」
(うう〜……やっぱりあやめさんのこと隠し切るの無理があるよ先生〜、ちょっとずつ怪人の正体に気付いてきてるよ)
(怪人と戦隊の戦いは人々を楽しませ安心させる?崇高なことは言っているがエレボス、並びに花岡一族を利用しているだけに聞こえない、運命が違えばさくらも……)
なんとかたくっちスノーと巡は話終えたが、今回の件は運が良かった。
時空から来た特別講師はたくっちスノー、往歳巡、キャプテン・マーベラス……そして未来の花岡サクラ。
その全員が男性、サクラも男性ホルモンが加えて調整されているのでエレボス感染も最低限に抑えられる。
双性はコンプレックス解消と同時に自分なりに考えた最低限のケアなのだろう。
女性と言えば金の久遠の来道梃子……もしや、姿を現さないのはとシエルも考える。
いずれ金の久遠に突撃されてもおかしくないが、今あそこはイエロー並びに金の久遠が完全に機械だけの学校であることを明かされて騒ぎになっている。
思えばこれもエレボス感染対策として用意された兵器なのだろう。
しかし問題として桃の園はハッキングを育てすぎた、シエルも全力で乗り込めば金の久遠の制圧は理論上可能と思えてきた、明日にでも桃の園を抜け出して実行に移す予定だ。
自分の体にもエレボスの細胞がある、怪人を作る怪物になるくらいなら伝統も力も全て破壊する。
雑な出来栄えだったはぐれ戦隊の変身アイテムもようやく本格的なものになった。
こいつを使ってさくらと共に真相を……というところだがさくらが見つからない。
こういう時は大抵たくっちスノーが個別に呼び出して勉強させているだろうと入りにいくが……。
「私が怪人の子供ってどういうことですか先生!」
「き……君どこで知ったんだそれ!!?」
何やら修羅場である、状況は何となく察したのでシエルは暴れるさくらを冷静に止める。
「落ち着けチビ、エレボス細胞が蔓延していたということはお前の家族もエレボス感染者だ、怪人の子供というのは比喩表現にすぎん……そもそもお前の推してるレッドもそうだろう」
「違うんですシエルさん!!たくっちスノーさんが言っているのは……」
「さくら君!!その前に誰から聞いたのかだけ!!exeは口が硬い!!泣いても約束は守るし僕は口を滑らせてない!!ミラくんか!?」
「…………貴方にとって一番親しい人ですよ」
「あの脳みそまで真っ白野郎が!!!アイツの右手カギ爪の男にしてやろうか!!?」
いつになく激怒したたくっちスノーの姿、サクラが警戒してあの会話の中で怪しんだのが分かる黒影への態度。
一度壁を右腕で壊したあと……成分を飛ばして壊れた壁に張り付き元に戻ったところで、力が抜けるように首が体から外れて落ちていく。
「いや……黒影がどうやって知ったかはともかく、バレたせいで僕の責任だすまない、改めてシエルにも説明するよ、君に頼まれてさくら君の血縁関係を辿っていたんだ……まず分かったのは君の育ての親、無関係な人間だったよ」
シエルも予測してさくらもそこまで気にしないだろう陳腐な答え、幼少期から今まで育てていた関心のないあの人は全く無関係な人物だった。
まあありふれたものだ、そこまで愛してないだけに赤の他人でもだからどうしたという形、女らしさを押し付けられたさくらが戦隊になっても何の行動も見せず絶縁が成立してるのが何よりの証拠だ。
問題は本当の親だ。
「あの人は言いました……私のおばあちゃんがあやめさんなことは間違いない、私はちゃんと人間として生まれたのは確かだと」
「そうか、やはりそういうことか……私も察した、ここしばらく花岡あやめがピンクをしていたとき、桃の園から卒業したピンクはどうなった?その答えが出た……ここから血縁関係を出して、あやめさんが産めるものは怪人……」
「私は……あやめさんが作った怪人と桃の園のピンクの間に生まれた子供だというんですか?」
「…………君の遺伝子は奇跡的に人の形してるけど、結構人っぽくなくて、その……」
たくっちスノーの胸ぐらをつかみ焦るさくら、当然こんな事知ったら平常心で居られないだろうとたくっちスノーも受け入れるがさくらの答えは違った。
「何してるんですか!!私の事心配してる場合じゃないでしょう!?つまりピンクになってやることがそんなことだとすれば……危ないのはベビーさんなんですよ!!?」
こんな時にでも自分より他人の心配をするとは思わなかった、それと同時にどこまで家族というものに関心がないのかどれだけ自分のことが嫌いなのかと恐ろしくなる。
たくっちスノーの手は自然と抱きしめていたがめっちゃドライな顔で引き離される。
「今時そういうのセクハラで訴えられますよ」
「あっその辺女性としてきっちりしてるのね」
何はともかく怪人の真実を知ってしまったさくら、ちょうどシエルは金の久遠に突撃する予定だったのでさくらを誘おうとするがなんとガラスを突き破ってそのまま1人でどこかへ行ってしまうが、たくっちスノーは即座に分身ハンマーで分身を作り追いかける。
「そうだベビーちゃん、さくら君の言う通りならまずいんじゃないのか!?」
「仕方ないあいつを探すか……世話の焼けるルームメイトだ……」
◇
「はい追いついた!」
たくっちスノーが走るさくらを捕まえると、周囲から殺気を感じ取るが時空最悪の犯罪者は怯まない。
即座にさくらを軸に包み込むように体を球体化させて成分を研ぎ澄ませていく。
「マガマガの〜……ドリルハリセン!!」
怪人ハリセンボンドリルに変化してドリルをばら撒き周囲の殺意の対象にターゲット、さらにそこからミノムシドリルに変身して糸で登りデパートの屋上まで逃げると
時空犯罪者の気配。
久しぶりにお仕事しようと
ドクロ丸を抜くと、ガラスを突き破り紅蓮一拳で男を吹き飛ばすゴクレッドが現れる。
「レッドさん!」
「すまない!余計な手間をかけさせてしまったなレッド!」
「気にするな、オレ達は怪人以外にもこういう敵とも相手をする……さくらちゃんもよく来てくれた」
「さくら君、どこに行くのかと思ったらレッドに呼び出されていたのか……一体何があった?」
「……とんでもないことになった、ブルーがさくらちゃんをエレボスとして指名手配した」
「なっ!?」
「姉さんに限界が来たから……孫である君を捕まえて新たなエレボスにしようとしている、レッドに憧れるほどの強い向上心のあるさくらちゃんにはエレボスの強い素質がある」
ブルーがさくらを捕まえるために……あの殺意もそれが理由なら納得するものだが、それをレッドが報告するということはゴクレンジャーに対する裏切りになってしまうのではないか?
そう考えるとさくらもレッドも意図を気付いており、抵抗して逃げようとしているわけだ。
「急ごうさくらちゃん、もう既に藍の波止の生徒達が総員を上げて君を捕まえようとしている」
「ああ確かにこれは……黒影も気付いてるとなるとこじれるどころじゃない」
ミリィに頼んであいつの知り合いに保護してもらうか?と電話をかけようとするがキリがない、次々と人間の反応がするので目を大量に増やして様子を確認、即座にドラゴンの翼を生やしてレッドとさくらを掴み羽ばたこうとするが背中に重たいものが乗りかかる……この感触は間違いない。
藍の波止特待生相田コバルト……さくらにとってはこの瞬間で一番会いたくなかった厄介な相手、どんなに気さくで女好きでも一度的に回れば冷酷に始末する男であることは身に染みて覚えている。
「相田さん……来ると思ってましたよ」
「オラも言われたんでなぁさくらちゃん、ゴクレンジャーの所に逃げ出したエレボスを連れてこい……現役ブルー直々のご命令だべ」
「こ……ここにはレッドさんが居るんですよ!?」
「更にブルーからのお言葉、レッドはもう知らん自分が新たな存在として世界をより良いものにする、金の久遠と翠の庭園の技術があれば……」
「ブルー……来道兄妹とやらに何か唆されたか」
さくらはバク宙してコバルトに挑もうと構えを取るが、よく見ると何かを背負っている近付いてみてみると……ピンクの肌に角、瞳。
exeに伝えられた特徴と一致した見覚えのある女性……エレボスこと、花岡あやめだ。
『ゴクレンジャーの所に逃げ出したエレボスを連れてこい』コバルトはその命令を完璧に遂行した、そしてレッドのもとへ……。
「見つけるの中々大変だったべ、一旦まとめて逃げるべよ!!」
「たくっちスノー先生お願いします!」
「よっしゃああああ!!ぶっ飛ばすぞお前らつかまれぇ!!」
たくっちスノーの翼はジェット機に変化して一気に空まで消えていった。
最終更新:2025年07月23日 06:59