「ああ、連れてきたぞ!エリートバカ五人衆残りの三人!」
次の日のシュンヨウジャーの訓練はたくっちスノーだけでない5人がかり。
exeも参加したどころか飛び入りで
野獣先輩、ミリィ、ポチも混ざるという前代未聞、よほどの事がないと全員で仕事なんてしないが今は余程の事だし黒影もあちこち飛び回っているのでバレはしない。
ゴクレンジャーの面々やサクラも見学として混ざっていた。
「えーと……ミリィさんにポチさん?名前は聞いてましたけどパッと見だと本当にそっくりですね……」
「まあ俺はたくっちスノーの影武者として作られたからそりゃ似て当然だよ、ポチは本当に偶然みたいなものなんだけどね」
「くそー局長め、こんな美人揃いの戦隊育てられるんだったらゴネてでも参加しとけばよかった」
「うるせぇぞポチ公、これ真面目な訓練だから」
「えっ……そのーたくっちスノーくん、俺戦闘とかこの中で一番苦手なんだけど」
「ふざけんな!(声だけ迫真)俺が戦闘とか嫌いなの知ってて言ってんのかてめえは!」
「ポチはともかく田所は自分のボディーガードだろうが!!」
たくっちスノーと野獣先輩の大喧嘩に焦るポチ、マイペースに準備運動するミリィ。
これが
時空監理局で2番目に優れてなおかつ冷遇されている『エリートバカ五人衆』なのか?とさくらも困惑しそうになるがexeはフォローを入れる。
「すまない、副局長になってから仕事はちゃんとしてくれるんだが全員揃うとオレも含めてバカになってしまうんだ」
「いいんだぞexeは含まなくて!ミリィと同じくらい真面目だから!」
「俺がバカみたいじゃないですか」
「お前は本当にバカだから」
このペースに巻き込まれないように真面目な話をするためシエルは残りの三人に質問しようとする。「
「前、たくっちスノー先生たちにこの中で一番弱いのは誰かと聞いたことがある、ではそちらの三人から見て一番弱いのは?」
「はあ?そりゃ俺に決まってんでしょ、
はじまりの書を読めるだけで戦いなんか出来っこねえしたくっちスノーのパクリみたいな技しか出来ねえっすわ」
「いや田所くん喧嘩出来るでしょ?俺なんてエロいグッズ作れるだけの雑魚オタクだからね?発明に関してはたくっちスノーくんにも負けるつもりないけど!」
「いや……ポチはその発明品でエグいくらいチート性能の道具めっちゃ作ってるじゃん、俺なんて全然敵を倒すこと出来ないし精々発展途上だよ」
「な?全員自分が弱いって言うだろ?」
「あたし達から見れば全員強そうに見えるんだけど」「
「でも何かと思えば戦隊との模擬戦なんてちょっと気合入ってくるな」
「油断すんなよミリィ、自分が選び抜いた精鋭、ピンク満開シュンヨウジャーだからな」
「今のうちに見定めしとくか……ぶへっ」
「なんでもいい、オレも正直本気でさくらと相手してみたかったところだ」
「遠慮なくぶつかってきてください!!」
たくっちスノーの体を作り替えてexeが蹴っ飛ばしてドラのように音を鳴らし開戦すると全員目つきが代わりバカみたいな与太話をしていた時から一変、『戦えない』と語っていた野獣先輩とポチはexeとミリィの背後に回りながら何かを取り出そうとしている。
たくっちスノーもたくっちスノーでデッカい変身を使う気なのか目つきが怪しい、かかってこいと言いながら全く近付こうとしない。
その答えは……これだ。
「exe!!自分は短期型なんだ右腕を使え!」
「もうやるのか……仕方ない!」
exeはたくっちスノーが取り出した手首に噛み付くと体毛が変色していき腕が肥大化、たちまち様子が段違いの『ウェアホッグモード』に大変身。
ゼロ・ラグナロク以降にexeの変身に興味を持ってひとまず狼男形態だけでもコントロール出来るようにした。
これがexeなりの本気だ、本気と言っても殺さないようにするための本気。
ウェアホッグと化したexeは腕が伸びて動かずにマゼンタとかすみを吹っ飛ばす、パワーファイターの2人に匹敵する破壊力だがその分スピードが落ちていると見抜いたさくらは俊敏に避けて飛びこえたくっちスノーを狙うが既に腕を振り回して準備万端。
「マガマガのぉ〜蛇龍乱銃撃(ヒュドラガトリング)!!!」
「桜花吹雪!!」
さくらも負けじと連撃系の新技を使うが、威力のキレや維持はベビーの猫趙千光偏照姫にはるかに劣る。
そのままふっ飛ばされたところにハイエナのように野獣先輩が刀を振り下ろすがシエルに太腿で防がれる。
「は?」
「なるほど分かりやすい男だ……」
「何してんだよ田所!そこはお前例のアレ使うんだろうが!」
「その言い方やめろやヘビ!つーか俺がそれ使ったらアンタの二番煎じだろうが!!」
「な……なんですかこの人達」
「てか、お前らもわりとあんな感じだぞ」
「違うが!?」
マゼンタに冷静に突っ込まれながらも周りを見渡すと……ミリィがいない。
たくっちスノーもやったことがある真っ黒なドーム状の物体、ブラックシールド……ベビーがどんなに殴っても壊れない頑丈だが柔らかい不思議仕様、それが突然解放されたかと思うとミリィが発剄をかます。
「ブラックカウンター!!」
シールド成分に込められたダメージを正確に記憶して発剄でまとめて腹部に返す、ベビーは胃腸が頑丈でなければゲロ吐いてただろうが、もちろんミリィもたくっちスノーにリアルタイムで情報送ったからこそここまで出来る。
接待が一番上手いのがミリィだ。
「いけるよなポチ!?」
「自信ないけどやってみる!まだメンテ中なんだよな……いくぞシュンヨウジャー!!【中世の海賊の秘宝!!大発見宝島!!!】」
ポチはメガホンのような装置で何か命令のようなものを叫ぶとミスティーローズの持っていたはじまりの書に揺れが生じる。
ゴクレンジャーの視界に入らないようにこっそり確認するとなんと、ポチが言った通りの内容が付け足されていた……桃の園世界に海賊の宝が発見されている!?
しかもミスティーローズがどんなに力んでもイベントが剥がれない。
たくっちスノーは
時空の渦から金銀財宝を取り出すと両腕にまとって指を鳴らしてイベントを強制終了させる。
「驚いたかミスティーローズ、見ての通りだ……ポチはメイドウィンの権限を突破してイベントを付け足す事が出来るんだ」
「ゴッドイベントには繋がらないと思うサブイベみたいな感じだけどね、なんならたくっちスノーくんの匙加減で変わるし頻繁に使えないし……今のはただの宴会芸!真髄はここから!『究極の救世主!オリオン座に蜃気楼を見た!!』」
エネルギーを使い切る音と共に装置が煙を出してポチがしまうと、天井を突き破って真っ白な生命体が現れる。
本格的なイベントが始まり『宇宙戦隊キュウレンジャー』のオリオンボイジャーをハンマーのように振り回して強大な敵として立ち塞がる。
ポチが発するイベントは本当に物語に支障が出ないようなちょっとしたものでせいぜいちょっとした事件解決や強敵が出るレベルだろう、メイドウィンでも介入できないレベルとなるとこれくらいしか出来ない。
やはり全員のポテンシャルが半端ない、これが黒影と一番相手してきたエリートバカ五人衆!
「しかし!まだ私たちを侮ってもらっちゃ困りますよ先生!何せ私達まだ変身してないので!」
さくら達はまだ勝負はここからだとばかりにシュンヨウフォントを掲げて変身の態勢。
こういう時に空気が読める四人は読めない野獣先輩を全力で羽交い絞めにして変身を待ち、その際にもポチがたくっちスノーに合図をして準備を固める。
「桜花継承!」【満開!天晴桃ノ園!シュンヨウジャー!ピンクナンバーワン!ツー!スリー!フォー!ファイブ!】
「ピンク全開!舞い踊る花弁!シュンヨウブロッサム!!」
「頭脳明快!吹き揺れる春風……シュンヨウローレンス!!」
「ときめき満点!藍に生きる伴侶!シュンヨウキャロル!」
「エネルギー全開!決して朽ちない無敵の大樹!シュンヨウマゼンタ!!」
「想いは不滅……赤から桃へと原点回帰!シュンヨウエレボス!」
「想いが満開し勇気の桜が咲き誇る!桜花戦隊!!シュンヨウジャー!!」
遂に正規変身まで見せつけて特撮特有の爆発までやって満足感のさくら、しかしたくっちスノーがただ見ているだけで終わるわけがない。
五人全員に変身アイテムを渡しており対抗するかのように既に変身の態勢を取っていた。
つまり肝心な変身シーン見てないことに気付いたさくらは空気を読まず変身してる途中のたくっちスノーをぶん殴る。
ひどい生徒である。
「お前せっかく空気読んでやったのに!!もういいやってやる!!小林ゆうなら木村カエレ推し!アキバレッド!!」
「……燃え盛る 熱き友情の戦士!!我が名はキズナレッド!」
「俊敏なる稲妻のエナジー!サンダーサルファ!」
「恋心は真っ直ぐ……ユウアイレッド!」
「噛み付く遺伝子!ジュウリンレッド!」
「我ら非公認戦隊アキバレンジャー!!」「絆創戦隊キズナファイブ!!」「魔力戦隊サンマジカル」「根薬戦隊ユウアイジャー」「壊銃戦隊ジュウリンジャー!!」
「バラバラじゃないですか!!!」
なんと変身したスーパー戦隊の姿はものの見事に別だしなんなら掛け声も聖徳太子状態、まともに聞き取れるのはサクラくらい通なオタクくらいである。
なんなら変身時の姿も全く別だしサンダーサルファに至ってはゴクレンジャーのようにフルフェイスじゃない。
「ねえたくっちスノー君!!アキバレンジャーだと三人じゃん!田所くんもどこでサンマジカル知ったの!?薫子ちゃんに怒られるの俺だよ!?」
「うっせーな強欲担当のアズールとサルファはあそこにいねーんだからいいじゃねえっすか」
「う……嘘だろお前ら!?あんなに仲良く絆創戦隊キズナファイブ観てたのに合わせないのか!?」
「exeも普通そこはブルーじゃないの!?まあ俺もたくっちスノーから話聞いてユウアイジャーになったけど」
「真面目にジュウリンジャーって言った俺が空気読めないみたいじゃん……!」
こういう変なところで茶々が入ってグダグダになるたくっちスノー達。
シエルはなんとなく彼らがエリートバカ五人衆と呼ばれる理由がわかってきたような気がした。
もちろんこんなことでは特訓どころではないので即座に切り上げてもらった。
大丈夫だろうかこの5人、一応かっこいいところも魅せたがそれ以上に恥を見せてないだろうか。
◇
「で!結局どうするんですかゴッドイベント!!」
「カリカリしないでよさくらちゃん」
「そうそうムキになるとおっぱいが成長しないよ?」
「お前肉おじゃみたいな顔してんだからキレないで欲しい」
「カリカリしてんのはオメーらが原因じゃボケナス!」
「……なんかこうしてみるとたくっちスノー先生もさくらと大差ないよなー」
「オツムに関して言えばさくらのほうが下だ」
改めて10人で食事を取りながらそれぞれ似た者同士であることを実感しながらゴッドイベントの会議並びに黒影をあっと言わせるようなとびっきりのサプライズを考えようとする。
「あのー田所さんでいいですか?本来私の物語ってどんな感じだったんですか?」
「ミスティーローズよこせ……ああふんふん、俺なら正常な形で読めるけどあのサクラって言うやつとおんなじっすよ、来道羽丸という男いないだけで」
「え!?私双性が正規ルートなんですか!?」
「……何その嫌そうな顔は、一応人類のためなんだよ」
嫌味を感じ取ったサクラは不貞腐れた顔をするが改めてサクラの方から話を続ける。
はじまりの書をカンニングペーパーのように眺めて野獣先輩が細かいところでツッコミをいれると、サクラの場合は初訓練で怪人を相手していくうちに心のようなものを知り藍の波止に留学。
コバルトの助けもありシエルと共にエレボスを発見し保護する道へ、怪人との共存を掲げたさくらは桃の園と対立するがエレボスの力を見せたレッドに新たなエレボスとして進められて対決してかすみを受け入れて……。
「ストップストップ、息継ぎさせてください」
別の未来の自分のこととは言えあまりにも流れが新幹線すぎて焦るさくら、ミスティーローズもペースがあまりにも過酷だったので正規ルートに関しては諦めていたところらしい。
「なんか……聞く限りだとあまりにも流れが速すぎないか?エレボスからレッド辺りの唐突感……まさかこれがゴッドイベントか?」
「恐らく……いやそれどころじゃない、さくら君のピンク発見や任務も含めると……ゴッドイベントが短い期間に3回も連続で発生してることになるよ!!」
「とんでもねえ過密スケジュール……しかもこれ数日しか経ってないんじゃねえか」
「いやでもジョジョ5部もこんくらい早いぞ」
「定期的にゴッドイベントしてる例外の話はするな」
重要なのははじまりの書は黒影が作ったわけではないということ、ゴッドイベントとして定められてコンプリートした際のお話参考例は既に存在していたらしいものを取り入れたらしいが、その過去に存在していた何かとはなんなのか、誰が作ったのかは黒影にも分からない。
とりあえず迷ったらこれ参考にしたら良いが正直何百、いや何千通りのルートに行ってもおかしくない。
現にたくっちスノーもコンプリートは目指したが全然メイドウィン達が想定したルートや正規ルート通りに行ったことは全くない。
「で、僕達はレッドを倒したあとに戦隊が存在しない世界で治安統一国家『ホワイト・レボルシオン』を作り、新たな世界維持を行って大団円……パラレルワールド扱いだけどこんなところかな?」
「なんというか私の目指していたレッドを越えるピンクから大きく逸れまくった結果なんですけど」
「まあそんなこともあるだろう、別にその結果が正しいと誰も言ってはいないしそれを決める権利はこの時空のどこにもない、結局たまたまそうなっただけ……それだけのことだ」
シエルは真面目に分析して現在ルートとサクラのホワイト・レボルシオンルートなど様々な線引きを行い『何がどうなればどんなルートにいくのか』を厳密にメイドウィンの手も借りてシミュレーションする。
イベントを思いついて開示してどんな結果になりそうかや結末、課題点に対策までまるで子どもが考えたあみだくじのように細かく展開されていき、ベビーやミリィまで書き出してキリがねえと一度野獣先輩がキレたレベルだが、ミスティーローズがその紙を食べてデータ風に出力する。
たくっちスノーはメイドウィンってこんなことも出来るのかよって気持ち悪くて引いた、一番出来そうな彼には出来ないだけに猶更そう思ってしまうがミリィやポチは何を今更?みたいな顔をしているので常識的なラインらしい。
「まだ現状ゴッドイベントは始まってないから単なる仮想に過ぎないけど、ここまで出した空論200通りのうち現在のルートでイベント次第で実現可能なのは10通りくらい、素敵、抱いて」
「で、確か俺達には人類がどうとか……男が生まれないことへの課題があるんだよな?」
「いや、そんなものこいつのイベント次第でどうにでもなる、そこより我々は何を目指すべきか行き詰まって迷子のような状況なのが問題なわけだ」
「実際もう正規ルートは無理なわけですもんね……ブルーさんのゴッドイベントは行われましたが黒影のせいで過程も結果も全然違うし」
「まあ僕の未来みたいにレッドもあやめさんもしっかり人間として生きているし、ゴクレンジャーとも何とか共存出来てるからいいんじゃないの?」
「ミラくん呑気に言ってるけどね、君も君で危ないんだからね?」
ミスティーローズは色んな話を無視して理論上はまだ実現可能な10通りのルートを模索してシエルと共に更に絞っていく。
なんかこのメイドウィン、特定世界の特定キャラにばかり贔屓しているような気がしないでもない。
マゼンタなんて目も合わせないし。
「ところで聞いておきたいが、さくらやベビーはどんな風になってほしい?」
「監理局がそんなこと聞いて良いんですか?」
「黒影局長が言ったバランスを整える組織ってのは事実だからなぁ…でもあくまで世界の命運は傍観者として君等自身で何をしたいのかサポートしていくだけに留めるべきと思ってる」
「そうは言われてもねえ……さくらちゃんってもうレッドを越えるピンクとかなってない?全員ピンクの戦隊も作ったし」
「えーそうですかねぇ?私まだまだ成長した感じがしないんですよね……あっでも思いつかないのでシエルさんの理想ルートはなんですか?」
「本当に空論じみた理想だが当然怪人の根絶だ、しかしそうなると未来のアイツのように人間同士の戦争が始まってしまう」
「ゴクレンジャーを推してた人達がそのまま敵になったみたいなものだからね……僕も監理局目線で考えると、余所との交流や旅行も考えれば後腐れない道を選びたい」
「そうなるとルートは3つしか絞れないけどシエル……思い通りになるとも限らないけど」
「充分だ、我々もそこまで神頼りというわけにもいかない……それで、そのルートというのは?」
キャラクター達の結論が決まったことでミスティーローズは改めて紙を吐き出してはじまりの書として作り直される。
その内容を野獣先輩が確認する、改めてはじまりの書を読める人間が限られるのは妙な話だ。
「言っとくが何をしたらそうなるかってのは言わねえっすよ、メイドウィンの守秘義務だしそれ言ったらその通りにしかやんねえでしょ」
最終更新:2025年08月06日 23:02