スターアベネスの初恋

これは、たくっちスノースターアベネスが出会う少し前の事………


アベネスがたくっちスノーより先に、人に近づき、人を愛し、人に後悔した………そんなお話





D-7特別編
【スターアベネスの初恋】



…………


スターアベネス
(オレとベルはたくっちスノーを倒すという目的の為に作られた…………)

スターアベネス
(その理由は単純に言うと私怨みたいなものらしいが、オレ達には直接関係の無い話だ)


スターアベネス
「おい………おい」

スターアベネス
「ん?」

スターアベネス
(ただ1つが、悩みがあるとするならオレの顔)

スターアベネス
(オレは………スターアベネスはそれぞれ顔が分かれていて片方が男、片方が女のような見た目をしている)

スターアベネス
(人間を2人組み合わせてこうなったとかじゃなく、最初からこうらしい)

スターアベネス
「お前、名前は?」

スターアベネス
「…………え?確か………」

スターアベネス
「『アベル』だよ」

スターアベネス
「アベル?で、オレは…………『アテネ』、そんな名前だったはずだ」

スターアベネス
「アベルとアテネ、最初はあで始まるんだね」

スターアベネス
「…………だからアベネスなのか、ちっ、気に食わねぇな」

スターアベネス
「じゃあオレはこれから、『テネ』だ」

スターアベネス
「そっか、じゃあボクは『ベル』だね」


スターアベネス
「…………君、女の子?」

スターアベネス
「え?ああ?…………知るかよ、こんな顔してるだけだろ」

スターアベネス
「ふーん………」











スターアベネス
「下半身に手ぇ入れんじゃねぇ!!!」ドゴォ

スターアベネス
「えっ理不尽!!ボクの体でもあるのに!!」
……………



スターアベネス
「おい、ベル」

スターアベネス
「何さテネ」

スターアベネス
「あのじじいなんか怒らすと面倒くさそうだろ、勝手に散歩なんかしていいのか」




スターアベネス
「いいのいいの、あのね、見てよあれ、あの女の子」

スターアベネス
「はぁ?…………女?」


スターアベネス
「あのギャルがどうかしたのか」


スターアベネス
「あれね、ベルさんの彼女」

スターアベネス
「……………てめぇ、女の趣味悪すぎだろ」


スターアベネス
「あの子だよ!あの子!黒井静華ちゃん!」

スターアベネス
「可愛いよね?テネもそう思うでしょ?」

スターアベネス
「いや全然興味ねーよ」

スターアベネス
「もしかして自分が一番可愛いと思ってるタイプ?」

スターアベネス
「ぶっ殺すぞお前」

スターアベネス
「ねぇねぇ、ベルさんどうやって近づけばいいかな、アプローチ出来るかな?」


スターアベネス
「無理に決まってんだろ鏡見ろよ、顔面別々になってるオレ達なんて好きになれると思うか?」

スターアベネス
「でもベルさんの体はちんちん付いてたし9割が男だよ」

スターアベネス
「その肝心な1割が一番アウトなんだよ、オレが!オレがああいう奴が嫌いなんだよ!」

スターアベネス
「右の顔しかない癖に贅沢だなぁ」

スターアベネス
「ああもういいよ、で?お前は何する気なんだ」

スターアベネス
「あのねあのね、ベルさん達って願いを叶える力をもってるでしょ!?」

スターアベネス
「あ………あー、あの力のことか」


スターアベネス
(そう、オレ達にはどういうわけか『願いを叶える力』を持っている)

スターアベネス
(しかも、自分の願いだって叶えられちまうんだ………だから『ネガイモノ』なんて名付けられたんだろうがな…………)


スターアベネス
「おい、まさかあいつに能力使用してるわけじゃねぇよな?」

スターアベネス
「悪いの?」

スターアベネス
「悪いに決まってんだろ!まぁオレ達悪いやつなんだけどよ」

スターアベネス
「願いを叶える力ってどんだけ凄いのかお前全然わかってねーだろ!この力をあの女は知ってるのか?」

スターアベネス
「うん知ってるよ、何回か叶えてあげたよお金とか」

スターアベネス
「アホかお前!!そんなの利用されてるだけだろうが!」

スターアベネス
「そんな事ないよ!1回テネも話してみてよ、とても素直でいい子なんだからさ!」

スターアベネス
「…………なら、能力を使うんじゃねぇよ」

スターアベネス
「お前がやるよりオレがやった方がちょうどいい」


スターアベネス
「………嫌だよ!テネは悪い人間に悪い形で願いを叶えるじゃん!」


スターアベネス
「ベルさんはいい人に色んなことをさせるんだ!」


スターアベネス
「後悔するぞ」

………

スターアベネス
(……………実際、オレとベルの願いを叶える能力はマジでとんでもない代物だった)

スターアベネス
(金が欲しいって言えば目の前で札束が積み上がる、全部のお札が番号が同じなんてオチもない)

スターアベネス
(家も金も女も、あらゆる物がオレ達の手で手に入る)

スターアベネス
(どんな事だってできる…………)


スターアベネス
(それをあの馬鹿は、一人の女を満足させる為に使用していた、ネガイモノの力を。)


スターアベネス
(ただ単に、あの静華という女が好きだからという理由だけで……………)




スターアベネス
「ベル、お前さ………馬鹿だろ」


スターアベネス
「………そだね、ベルさんはテネほど頭良くないよ」


スターアベネス
「だからさ、あの子がボクとこんなに明るく接してくれるのが凄く嬉しいんだ」

スターアベネス
「あの子のためなら何だってできるよ」


スターアベネス
「そうか、お前は本当にあいつの事を好きになっちまったのか」


スターアベネス
「だったら賢いオレが警告するぞ、お前はもう二度と何もするな」

スターアベネス
「お前が好きだったあいつを失いたくないなら、願いを叶えることをやめろ」


スターアベネス
「お前は願いを叶えるってことがどれだけ大事なことなのか何も分かっていない」


スターアベネス
「分かっていないのは、テネの方じゃないの?」

スターアベネス
「はぁ?」


スターアベネス
「この力はさ、人を幸せに出来るよね……辛い人を、苦しんでる人を、助けられるんだよね、使ってて分かるんだよ」

スターアベネス
「なのに、どうしてテネは悪い人にしか使わないの!?テネはずっと、悪いやつに悪いことばかりさせて………」

スターアベネス
「奴らはオレとは関係ないところで報いを受けてるだろ、バカだからな」

スターアベネス
「そういう所だよ!そんな人たちにじゃなくて、そんな………」



スターアベネス
「………………そういう所が、バカって言ってんだよオレは」


スターアベネス
「そんな考えは今すぐ捨てちまえ、今すぐにだ」

スターアベネス
「お前の好きな女も…………時期にそうなってしまう前にな」


スターアベネス
「…………!?何を、言って…………」

………

スターアベネス
(そして数日がたった)

スターアベネス
(静華は次第にどんどん願いの内容が贅沢になり、量も増えて)

スターアベネス
(軽い願いは目もくれず金をせびるようになったし、態度も素っ気なくなった、てかウザそうだ)

スターアベネス
(まぁ要は………オレの思った通りになった)


スターアベネス
「テネ」

スターアベネス
「どうだ?オレの思った通りになっただろ」

スターアベネス
「………………………」

スターアベネス
「まぁ何も言うな、そんなもんだよ人間なんて」

スターアベネス
「無償でなんでも与えられたら貰えるのが当たり前になる、そんな考え方をするようになる」

スターアベネス
「次第に奴らは図々しくなるんだ」

スターアベネス
「…………ベルさんはただ、あの子の幸せそうな顔を見たかった、好きになって欲しかっただけなのに」

スターアベネス
「だからオレは言ったんだぞ、良い奴に願いを叶えるなって」

スターアベネス
「良い奴が良い奴で居られるのは欲望がコントロール出来るから、程々を知ってるからだ」

スターアベネス
「人間は欲に手足が生えた物なんて大昔の奴らが言うくらいだからな」


スターアベネス
「そんな奴は、パッと願いを叶える必要も無いんだ………そういう奴大抵上手くいくからな」

スターアベネス
「上手くいかなかった人間は?」

スターアベネス
「オレ達には関係ないから知らん、まぁ運が悪かったんだろうなきっと」

スターアベネス
「そんなのってないよ」

スターアベネス
「…………だから願いを叶えたいっていうのか、無駄だ」

スターアベネス
「オレ達は無償でどんな事でも出来る、それは分かってるはずだ」


スターアベネス
「そして、ただ求めるだけの人間は良い奴ではなくなる、オレが相手するようなクズに堕ちる」


スターアベネス
「あの女がクズになったっていうなら、それは間違いなくお前のせいだ」

スターアベネス
「ここでお前を拒めば、本当に良い奴だったかもしれないがな………ま、運が悪かったんだよ」


スターアベネス
「…………………ランプの魔人」

スターアベネス
「は?」


スターアベネス
「アラビアンナイトのランプの魔人だよ、ボクはそんな風になって、アラジンを幸せにしたいのに」

スターアベネス
「ああ…………なるほどね」



スターアベネス
「いいか?この世界にアラジンのような主人公はいない、主役はないんだ」

スターアベネス
「あいつは主役だから成功したんだよ」

スターアベネス
「オレ達はクズの相手しか出来ないんだ、堂々とクズになっちまおうや」

…………


スターアベネス
「その次の日は、オレが願いを叶えてやったよ」

スターアベネス
「多分、ダンプにでも轢かれて滅茶苦茶になるんじゃねーかな、体とか」


スターアベネス
「……………………」

スターアベネス
「まぁ気は落とすな、女なんていくらでもいるんだよ、隣にいるしな」

スターアベネス
「そんなに恋をしたいならオレ達を拒めるくらい強い人間を見つけろよ、まぁそんな奴がいるのかなんて………」


スターアベネス
「テネ」


スターアベネス
「もうボクはテネの事好きになっていい?」

スターアベネス
「…………そいつはダメだ」


スターアベネス
「オレはついさっきお前が生み出したクズ共の願い叶えるためにこの力使ってる、頼らなきゃ生きていけない奴らに報いをやってる、天才だからな」

スターアベネス
「お前は良い奴だ、オレのようなクズと生きていくことしか出来ない奴に染まる必要もねぇだろ」

スターアベネス
「オレ達は同じ顔してるが、人格は上手く別々に分かれて両立出来てる」

スターアベネス
「何も同じと思わなくていい、体が同じなのは難点だがな」

スターアベネス
「………………」

スターアベネス
「願いを叶えるのはオレに任せっきりにしろ、お前は何もするな」

スターアベネス
「お前が愛した良い奴が、クズになりたくないなら………尚更だ」

スターアベネス
「………うん、分かったよ、テネ」


スターアベネス
「はははははっ、あははははは」

スターアベネス
「ハッハッハ!!」


…………


スターアベネス
「あのジジイ、何も言わなかったな」

スターアベネス
「怒るかと思ってたけど………」

スターアベネス
「ま、説教とか嫌いだし丁度いいや…………」

スターアベネス
「ねぇ、テネ」



スターアベネス
「テネはベルさんを裏切ったりしないよね?」

スターアベネス
「さあな、裏切らないように願っておくか?」

スターアベネス
「………………どうしようか、どうしようかな」

スターアベネス
「ボクはもう何を叶えればいいのか分からなくなってきたよ」

スターアベネス
「…………そうか」




スターアベネス
「だったらさ、オレがお前をてっぺんにしてやるよ」

スターアベネス
「お前が何もしなくても、オレが全部解決してやるよ、お前は『究極』だからな」



そして彼らは、たくっちスノーと相対する。


END
最終更新:2021年01月09日 22:46