元素再開 〜エレメント四人衆〜

アロン「へぇ………」

アロンは新聞を読んでいた、今日はいつもの1面ではなく広告の欄をだが。
『健康促進!ウンディーネの幻水!』と書かれた別の店で売られてる天然水の物らしい。

アロン「ウンディーネの……ねぇ、これって本物なのかな?」

アロンがモンスターの母乳を売り出してから、他の店でもモンスターの名前を利用したタイアップ商品が売られるようになった、アロンも興味が湧いて買ってみたがどうにも胡散臭いものばかりだった

ウンディーネの幻水も本当にウンディーネの物が使われたのかさっぱり分からない 

アロン「その点、俺が出してるのは全部本物なんだけどな」

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【ウンディーネ】
湖を守る『水』の精霊、体の全てが聖水で出来ており、普段は人の形を取っている。
美しい女性の姿で現れる事が多いが、それは人間の男が好きだからであり、好みの男を見つけると自らの体を濡らし体の一部である水を飲ませる。

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アロン「………ふむ、ウンディーネは体をくれるなら飲めなくはないんだな?」

アロン「まぁ、触れずに偽物と判断するのも失礼か」

………

アロンはウンディーネの所に行くついでに、広告に載っていた店に寄って『ウンディーネの幻水』を買ってみた。

アロン「ん?あれって……」

店の前に見慣れた姿があった、以前一緒に旅をしていた仲間の『勇者ミルヒラッテ』だ。

ミルヒラッテ「あら、アロンじゃないですか、お久しぶりです!」

アロン「あ、ああ……元気そうで何よりです、勇者様もあれを?」

ミルヒラッテ「はい、あのウンディーネ様の体の水を飲めるとは………」

ウンディーネ、イグニス、ノーム、シルフ
4つの自然の力を司るエレメント達は、過去に力を貸してもらった彼女にとっては大切な仲間のようなものだ。

ミルヒラッテ「でも、貴方のモンスターの母乳のインパクトには負けますが」

アロン「そうですかね?牛乳だって牛の胸から出るものじゃないですか、出せるモンスターが人間に似ているから母乳と言ってるだけでそんな変なものでは無いかと思いますが」

ミルヒラッテ「そうでしたか……ああそうでした、ウンディーネ様にまた会いたくなったのでアロン……いいですか?」

アロン「はい!」


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………
アロンはミルヒラッテを連れて森の奥深くにある大きな泉へと降り立つ。
ここには高濃度の魔力があり、清く美しい聖水が沸いている……ウンディーネはここから生まれるのだ

ミルヒラッテ「ウンディーネ様!」

ウンディーネ「あら、ミルヒラッテ……戦いが終わって以来ですね」

アロン(いつ見ても本当に女神みたいだな)

ウンディーネ「アロンも相変わらずのようですね、遠路はるばるよく来てくれました」

ウンディーネ「何かありました?我々エレメントに結婚の報告でも?」

アロン「なっ………茶化さないでくれよウンディーネ!」

ウンディーネ「ふふ、冗談ですよ」

ウンディーネはお淑やかに笑う、相変わらず水のように掴み所のないお方だ。


ミルヒラッテ「本題なのですが、今日は貴方に見せたいものがあってきました」

ミルヒラッテ「この『ウンディーネの幻水』です!実はアロンの商売がきっかけでモンスターを元にした商品が次々と発売されて居るんです!」

アロン「あ、ちょっと勇者様!!それは!!」


ミルヒラッテは嬉しそうにウンディーネの幻水が入った瓶を見せるが、ウンディーネはそれを受け取って………

 ウンディーネ「………」

瓶を逆さまにして近くの木にかける

ミルヒラッテ「ウンディーネ様!?」

ウンディーネ「ミルヒラッテ、これは貴方が作ったドブ水ですか?」

アロン「ち、違います!俺でも勇者様でもありません!………ちょっと失礼!」

アロンはミルヒラッテを近くの茂みに置いてこっそり話す

アロン「なんで持ってきちゃったんですか!?ウンディーネの面倒くささ忘れたんですか!?」

一見清楚で美しいイメージのあるウンディーネだが、アロンは知っている。
ウンディーネは清水に対して並々ならぬ拘りを持っていること、そしてそのこだわり故に他人に迷惑をかけることもあった

また、ウンディーネに限らず4人のエレメントは何かと性格に問題のある存在でアロンは正直苦手だった、天然なミルヒラッテはよく分かっていないが

アロン「冒険者だった頃に勇者様が『綺麗な聖水ですね!』と言ってウンディーネが『私から見れば唾も同然ですね』と言ってたの忘れたのですか!?」

ミルヒラッテ「あの人なりの冗談かと………」

ウンディーネ「何をこそこそ話しているのですか?」

アロン「いえ、なんでも」

ウンディーネ「それより……人間が私の体の液体と言ってこんなゲロ水を配っていたのですか?」

アロン「え、ええまぁ……(ゲロ水て)」
ウンディーネ「なるほど、人間はこのような物を欲するのですね……いいでしょう、では私はこれで」

アロン「いや待ってくださいよ!勝手に帰らないで下さい!」

ウンディーネ「まだ用があるのですか?言っておきますが私はこれからこんな物を作った人間に抗議をする所なので」

アロン「それで責任とる事になるの俺らなんで辞めてくれません!?」

ミルヒラッテ「あら………ウンディーネ様、お気に召しませんでしたか?」

ウンディーネ「私ならもっといい天然の飲料水を作れますよ」

 そう言ってウンディーネは瓶に口を付けゴクッと飲み干した
アロン「ちょ、勇者様何やってるんですか!?」

ミルヒラッテ「大丈夫ですよ、ウンディーネ様ならこの程度」

アロン「そういう問題じゃないんですよぉ!!」

ウンディーネ「やはりそこらの池から取ってきた程度の下の下の水ですね、これを………」

ウンディーネは先程飲んだ幻水を吐き出して瓶の中に戻していく

ウンディーネ「余計な成分やバクテリアを抜いて綺麗にしました、さっきよりはマシになりましたよ」

アロン(口から吐き出してる時点で綺麗とは思えねぇよ!)

ウンディーネ「どうです?これでも文句がありますか?」

アロン「もういいです、そのお店の人には何もしないでくださいね」

ミルヒラッテ「ああそうだウンディーネ様!折角なので他のエレメントの皆様にも顔を見せませんか?」

アロン「勇者様ァ!!!?」


………

こうして、ミルヒラッテは過去に世話になった残りのエレメント3人に会うことになったのだが………

ウンディーネ「炎のエレメント『イグニス』は最近街によく来ているそうですよ」

アロン「イグニスが街に……その時点で嫌な予感しかしない」

………

アロン「案の定だよ」

イグニス「おいなんだァ!?このペンダントは!?こんな不細工が俺様を模してると言いてぇのか!?」

「ひいいい!!直ぐに作り直します!!」

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【イグニス】
火山で生きる『炎』のエレメント
溶岩や炎の熱を操る事でどんな物でも燃やすことが出来ると言われている。
体の殆どが炎だが、近寄っても燃えない不思議な構造をしている

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イグニスの炎の力は凄まじい、だが問題は彼が重度のナルシストであることだ。
自分が美しいと思っている相手にしか喧嘩を売ることはないし、自分の美的センスに合わない相手は容赦なく焼き尽くす。

ミルヒラッテ「イグニス様!何があったのか知りませんが喧嘩はおやめ下さい!」

イグニス「ん?おお、ミルヒラッテじゃねぇか!相変わらず美しい面してんな」

イグニス「それが聞いてくれよこの店!!風の噂で俺様を模したアクセサリーを作ってると聞いてわざわざ来てやったのにこの出来だぞ!?」

アロン(いや結構似てるだろ)
イグニス「しかも売ってるのは俺の美しさが理解出来ない無様な奴ばかりだぜ!?ふざけんじゃねえよ!!!」

アロン「俺が作ったわけじゃないけどなんか申し訳なくなる」

ウンディーネ「やはり人間にエレメントの事を理解するのは難しいようですね」

イグニス「お、ウンディーネも居るのか?お前も水でなんかあったのか?」

ウンディーネ「かくかくしかじか」

イグニス「なるほどそりゃ許せねーな 」

アロン「まずいですよ勇者様!このままエレメント同窓会続けてたらマジで店が2、3個滅びますよ!?」

………この通りエレメントには問題のある存在しかいない
風のエレメント『シルフ』は何かと忘れっぽく
、土のエレメント「ノーム」は暇さえあれば女性型モンスターや女の子にナンパをしている。


ミルヒラッテ「ま、まぁまぁ!鬱憤でしたら後で私が聞きますので、今は4人集まることを優先したいんです!」

イグニス「おう仕方ねぇな、久々にノームの面も見たいし今回は多目に見てやるよ」


イグニスは親指と小指のみを伸ばして耳に当てる、エレメント4人が意思疎通に使う『テレフォン』という魔法らしい

イグニス「もしもし、ノームか?今どこにいる……ああ?またお前そんなところにいるのか、わかったすぐ行く」


イグニス「美人の女性型モンスターがいっぱい居る店で楽しんでるんだと」

アロン「またか……今度はどんな店?」

イグニス「『ミルクバー』」っていうんだと」

アロン「俺の店じゃねぇか!!!」

………

アロンが急いでミルクバーに戻ると、そこには見慣れた光景が広がっていた

ノーム「うわ〜凄いね君ボスモンスターの女性型?凄いね〜、ボク初めて見た、もっと見ていい?」

デッドファラオ「ははは、これ以上見たら追加料金じゃぞ」

アロン「何やってんだノーム!?」

ノーム「なんだアロンか、今ボク楽しんでるんだから邪魔しないでくれる?」

アロン「ここは俺の店!そしてそいつ俺の従業員!」

ノーム「へぇ?君いつからモンスター専門のキャバクラなんて始めたの?」

アロン「違う!!ミルクバーだよ!!」

ミルヒラッテ「の、ノーム様………」

アロン「あ、勇者様すみませんうちのバカエレメントが……」

ミルヒラッテ「いえ、私もつい最近まで知らなかったのですから 」

ウンディーネ「しかしあの方、あんなにも女性好きだったとは知りませんでした」

イグニス「今までの旅は女っ気なかったからな、お前とミルヒラッテぐらいだし」

ノーム「それよりシルフの奴はまだ来ないの?だいぶ前から飲みに行こうってテレフォンしたんだけど」

アロン「あいつならまだ寝てるんじゃないか?朝弱いしバカだし」

ノーム「えー、せっかくだからみんなで飲もうと思ったのに」

「お待たせ………」

と、噂をすればなんとやら
細身の男性が窓から入ってくる、これが風のエレメント『シルフ』だ。
ノーム「シルフ!一体どこで何してたんだ!」

シルフ「あまりに久しぶりなもんで……声忘れてた……ところで、あんた誰だっけ」

アロン「シルフ……お前の忘れっぽさも相変わらずだよ………」

ミルヒラッテ「ま、まぁ!久しぶりに全員揃ったということで、今日は飲みましょう!」
最終更新:2021年11月07日 21:37