「第9話」
「ハッピーランド」
「彩月さん、起きてください……彩月さん!」
彩月「………ん?」
聞き覚えのある声に呼ばれ目を覚ます……彩月の隣に居たのはアズで、自分たちはバスに乗っていた。
彩月「あれ?アズ……これなんなの?」
アズ「彩月さん!これは超人学園一大イベントの1つ、小等部全員の修学旅行ですよ!」
彩月「修学旅行?」
アズ「といっても、今回はほぼ遊園地で遊びに行くようなものですが」
彩月「呆れた………大した実力もないのに遊園地で遊ぶだけって。」
アズ「ま、まぁ………その遊園地にはここの卒業生も働いているそうなので、そう言った体験なども………」
彩月「………卒業生、あっ」
彩月「提案者は?」
アズ「貴方が連れてきたトカゲさんです。」
彩月(よりによって
レザード……それ、明らかになんかある奴じゃんか)
………
そして、彩月達を乗せたバスはハッピーランドという遊園地にたどり着く
彩月(ウッッッ!!なんだこの目に見えてわかるチープさ……!!)
彩月(ウキウキだった他の子達も途端に目が死んでいく………!!)
アズ「………ま、まだ分かりませんわ!一緒にたのしみましょう!」
彩月「う、うん!そだね!」
彩月はアズが傍に居る以上、必死に気を使った………
ーーーーーーーーーーー
アズ「ここの従業員はみんな卒業生らしいですわ」
彩月「へぇー………というかこの企画の全ての元凶はどこに……」
アズ「彼でしたらあそこに。」
レザード「おいおめーら、遊具はまだ先だ……先に卒業生に会いに行くぞ」
彩月「うわでた」
と、その時彩月の携帯から着信が。
彩月「ごめんちょっとタンマ」
レザード「5分までな」
………
彩月「もしもし?」
彩月「何さいきなり、こちとら急な修学旅行中なんだけど」
ミツキ【レザードの奴が学園が怪しいと言っていた、今なら調べるチャンスも多いと……】
彩月「………あーそそのかされたのね、いいよ好きにしたら?」
ミツキ【ああ………俺をその遊園地に関心を向けさせない為だろうな、実は大きな能力者の反応を組織が見つけた。】
ミツキ【その可能性は高いと考えている、レザードはいるが……念の為警戒しろ】
彩月「りょ」
………
彩月「あのー、レザード?」
レザード「ここでは先生をつけなクソガキ」
彩月「…………レザード先生、ここの遊園地全員ウチの卒業生って聞いたけど、よくそんなの見つけてきたね」
レザード「まあな、ここの奴らがマトモに仕事出来てるとは思わなかったぜ。」
彩月「それはわかる」
(この人ら本当にウチら舐めてるな………)
………
レザードは歩かせ歩かせ、ひたすら歩かせて、裏まで通る。
アズ「あの……先生、そこに遊具はありませんよ?」
レザード「まずは裏方からだ。」
アズ「裏方………そうですわね、そういう人たちも頑張って働いてますものね!」
………
彩月「…………うわ」
レザードが連れてきたのは、人々が使い捨てのように酷使されて目が死んでおり、罵倒が飛び交う地獄のような空間だった
アズ「あれは………?」
レザード「あれは定期的にボタンを押す係だ、場合を見て遊具の電源を入れて、時間になったら止める、全部手動だ。」
彩月「じゃああれは?」
レザード「売店の小物を一つ一つライン作業で作ってるところ」
「あれは?」「掃除係」「あれは」「ゴミ捨て」「あそこに突っ立っているのは?」「あれはただの窓際族」
彩月「…………何この誰でも出来そうな、というか人だったらなんでも良さそうな仕事。」
レザード「どうやら能力者共が自分たちの力で遊園地を作ったのはいいんだが設備に対して力が足りなくてな?」
レザード「金もないってもんで仕方なくあんな安物の設備で脳腐らせて手作業でやってるらしいぞ?」
彩月「全然できてなかったよね?ほぼ電気とか止まってたよね?」
レザード「こんなもん序の口だぞ?次のエリア行くぞー」
アズ「え、あの遊園地は!?」
レザード「誰が遊びに行くって言ったか?次はホットドック屋なー」
………
「…………了解、追跡します。」
レザード達は背後に何者かが追っている事にも気付かず、バスを再び走らせるのだった………
なお、超人学園の生徒達は既にお通夜ムードであった。
彩月「レザード……私が言うのもなんだが……」
彩月「性格わっる………」
レザード「あちらに見えるのが、火力を自慢していた炎系能力者だが」
レザード「時空にあるもの全然焼けず、時空ウィンナーをこんがり焼くのが限界で店長の使いっ走り程度になっているホットドック屋!」
レザード「あちらに見えるのが氷の能力者だが、イマイチ使い所もないのでアイスコーヒーの氷を入れる程度の作業しかさせて貰えない能力者!」
彩月「さっきから悪意しかなくない?」
レザード「しょうがねぇだろ、マトモに働いてるやつでもこれが限界なんだよ。」
彩月「そういえばそっか、貴方ぐらいの人でも逃亡者で犯罪者だもんねぇ〜?」
レザード「ぶっ殺すぞ?」
アズ「あ、あの!他に……他に何かありませんか?」
「そうだそうだ!戦場はどうした戦場は!」
レザード「ああ〜?お前ら戦闘員になりてーのか〜?」
レザード「お前ら前に戦闘員事情を彩月から聞いたんじゃないのか?あの無様な死体をよぉ〜」
彩月「一応もう1回言うよ、私の場合は悪意とかじゃなくてマジであんなのしか見つからなかった。」
レザード「俺も逃げてる時に何回か組織みたいなやつと戦った!」
レザード「全部が全部お前らんところの卒業生じゃないが、使えない能力者は戦いに駆り出されるのではなく、身代わりや肉盾にされる!」
レザード「結局のところ戦闘員は実力主義だ、強いから生き残らせてくれるし弱いやつは遠慮なくコイツ死んでもいいやと簡単に命を差し出される!」
レザード「お前ら小等部達はまだラッキーだぞ?余裕があるからな。」
レザード「これまで教師もどきをやって授業を進めてきたが………時空からすれば幼稚園児程度の事しか今までしてなかったんだなぁ〜、高校生にもなってよぉ〜」
彩月「待ったレザード」
彩月「これ以上時空マウント取ると本当に許されないやつになる」
レザード「そうか」
ピロロロロ
彩月「あ、また先輩からだ……もしもし?」
彩月「レザード先生に代わってと」
レザード「俺様今運転してるんだけど?」
彩月「じゃあ私が代わりに運転するから」
アズ「えっあの小学生………」
レザード「最近はトシとか関係なく免許取れるぞ」
アズ「えっ!?」
レザード「もしもーし?」
ミツキ【出たか、早速だがお前達のバスは追われている……強い能力者の反応だ。】
レザード「なるほど、殺せばいいのか?捕まえればいいのか?」
ミツキ【情報を聞き出すためにも、生かして何とかしろ】
レザード「そういうのは得意だ、風穴開けてやるぜ!!」
レザードは窓からバスの上に乗り移り、周囲を確認すると見慣れない1台の車を発見する。
レザード「アイツか!」
彩月「何!?」
レザード「どうやら俺ら追われてた見てーだぞ!!」
彩月「ミツキ先輩が言ってたヤツね……そいつ能力者かも!」
レザード「上等!!」
レーザー銃を構えると、向こうの車の窓も開き、指を出す。
そして、稲妻が弾丸のように高速で飛び出してくる!
レザード「あぶねッ………野郎!雷系の能力者、それもあの威力……どっかの組織だな!!」
レザード「おっ!!!」
雷を避けるためにバスは激しく動き回り、レザードはバランスを崩す。
レザード「馬鹿野郎!!もっと軽めに動きやがれ!!」
彩月「うるさいな!!こっちもバスの運転なんて初めてなんだよ!!」
レザード「振り落としたら許さねぇからな!」
彩月「こっちは能力者達の命かけてんの!」
アズ(なんだかんだで息がいい……)
レザードはレーザーで窓を撃ち抜き、助手席のやや横に向かって放つ。
レザード「まずは1つ……それと回収か、こんな時のために……」ガチャガチャ
レザード「クレーンレーザー!!」
レザードは右腕の装置から鉄製のアームを伸ばし、車を掴んだ後にレーザーでタイヤを撃ち抜いて車を止めた。
レザード「よし!!引っ張って回収するぞ!」
…………
レザードはそのままバスを学園内まで走らせ、車の持ち主を確保した。
アズ「………今までで一番恐ろしい体験になりました。」
彩月「ごめんねアズ、今度はちゃんとした遊園地に連れてってあげるから。」
レザード「おーい
神葉ミツキ、さっさと出てこーい、こいつを確保しろー。」
ミツキ「………なんだ、もう捕まえたのか」
レザード「意外としぶとかったぜ、さっさと運びな」
ミツキ「………!!こいつは!!」
その夜………
ミツキ「桜井彩月はいるか」
彩月「え?先輩………なんです、こんな真夜中に。」
ミツキ「話がしたい、少し出るぞ。」
……………
広場に行くと、既にレザードが待機してきた。
レザード「なんだ、やっぱり連れてきたのか」
彩月「………どういうこと?絶対なんかあるよね?この集まり」
ミツキ「まぁそんな所だ、単刀直入に言うとお前たちが捕まえた能力者なのだが………」
レザード「何故か、こいつの組織と同じ反応があったんだってよ。」
彩月「え!?まさかまずいことした!?」
ミツキ「いや………普通に裏切り者、と判断してもいい……俺の独断だがな。
ミツキ「本来なら俺が対処すべきところを止めた……借りが出来てしまったな。」
彩月「………それだけじゃないでしょ?こいつ居るし」
レザード「俺にも感謝したっていいだろ?」
ミツキ「これで50:50だ時空犯罪者」
レザード「ああ!?」
ミツキ「と、それだけではない、その件を組織にも連絡入れたのだが………未だに返事が来ない。」
ミツキ「組織にとっても一大事なはずなのにだ。」
彩月「…確認だけど、能力者を発見したのも先輩の独断?」
ミツキ「そうだ、調べていたら反応があってな。」
彩月「………仕事中の相手を潰したならともかく裏切り者?」
レザード「てか、なんでお前は裏切り者と断定してんだ?」
ミツキ「出勤記録が無かったからな」
彩月「うーんガバいよ先輩の組織」
レザード「が、聞く限りだとキナ臭ぇのは学園内どころか組織まで怪しいときた」
彩月「どーする?確か先輩の組織って一応この学園とも繋がりあるけど、もしレザードの言う通りなんかあったら………」
ミツキ「……流石にありえないと思いたい、俺の組織は能力者教育、そして世界の為に使っているのが名目だ」
レザード「………じゃ、これなんだ?」
レザードはパソコンを出して、
名無シ超人学園の図解を見せる、そこには謎の部屋が多数あった。
ミツキ「なっ!?」
彩月「おーよく調べたねー」
レザード「へっ、時空の敏腕ハッカーさんでも見落としがあるとはな。」
彩月「私はそれどころじゃなかっただけ!」
ミツキ「しかしこれは……怪しすぎる………」
【……To be continued】
最終更新:2022年03月23日 08:27