止まない雨の小さな話

たくっちスノー「時に旅をしてたら災害に見舞われることも珍しくない」

たくっちスノー「雨とか嵐とか雷とか
吹雪とか………」

たくっちスノー「そんな時、旅人を快く泊めてくれる人も結構いるもんだからいい時代になったよな」


たくっちスノー「まぁ、そこが奇妙な家だったことも…………珍しくはない、そんな話だ」

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たくっちスノーはある世界で大雨の中必死に走っていた。

たくっちスノー「ひえーっ!!雨!!雨!!雨!!」


たくっちスノー「気分的に俺も雨は嫌!!」


……………

しばらくして、たくっちスノーはある民家に泊まらせて貰っていた

初老の男性がたくっちスノーにミルクを用意する

たくっちスノー「いやー悪いな、急いで駆けだしたのに泊まらせてくれるなんて」

「いえ、少し寂しい家です、危害を加えないなら寝床くらいなら歓迎しますよ」

たくっちスノー「ありがてー………本当に助かる」

「おっと………」

たくっちスノー「おい、アンタ大丈夫なのか?足震えてるぞ」

「気にしないでください、ちょっとした持病ですよ」

たくっちスノー「客の俺が言うのもなんだけど、あまり無理はしないでくれよ」

たくっちスノー「俺はほんと、雨風を凌げるだけでも有難いから」

「おい!」

たくっちスノー「ん?」

たくっちスノーがミルクを回収していると、徐に服叩きつけられる!

「一緒に洗濯するなって言ってんだろ!気持ち悪い!」

たくっちスノー「うわ」


ピシャン


たくっちスノー「娘か?」

「ええ、すみません本当に」

たくっちスノー「いやいいよ俺は、あの歳なら皆ああなるもんだ……親としては笑えないかもだが、大丈夫なの?」

「私は大丈夫ですよ、あの子を見ているだけでも幸せなんです」

「あの子は私の宝です」

たくっちスノー「ふーーん、宝か………」

たくっちスノー「あんた、いい父親だよ」


「…………そう、ですかね?」

たくっちスノー「ああ、俺はそういう風に見えるね」

たくっちスノー「…………」




たくっちスノー「ミルクうっめ…………」

…………ゴロゴロゴロゴロ

あれからしばらく経った。

たくっちスノーはまだ家に泊めてもらっており、外には雷が落ちる音と雨音が響き渡っていた。

たくっちスノー「………雷、止まねぇっすね」

たくっちスノー「俺でもなんか申し訳ねぇよ、もう3日も滞在してて」

「いいのですよ、元々この辺りは1度雨になったら中々止みませんから」

たくっちスノー「うえ………なんてジメジメした世界に来てしまったもんだ」

たくっちスノー「…………」

たくっちスノー「なぁ、俺……よく分かんないんだ、子育ての事」

たくっちスノー「父親って、そんなに子供を愛せるものなのか?」

「ええ、生まれてきた大切な家族ですもの」

「一日でも長く生きて、少しでも大きく成長する姿を見ていたい、親とはそういうものですよ」

たくっちスノー「そっか………そうだったら、有難いものだよな」

たくっちスノー「………そうなると、反抗期が来るのも考えもの………」

たくっちスノー「そういやアンタ、奥さんって………」

「………」

たくっちスノー「あっ、聞かなかったことにしてくれ」

たくっちスノー「…………」

たくっちスノー「俺はあの娘は悪いやつじゃないって分かる、アンタに育てられたんだから、当然だ」


たくっちスノー「俺もそんな風だからな………」

「………」

たくっちスノー「あ、そろそろ薬飲むか?」

「ええ、お願いしていいですか?」

たくっちスノー「ま、世話になってるからな、これくらいは」


…………

たくっちスノーは倉庫から薬の瓶を言われた通りに用意する。

たくっちスノー「しかしとんでもねー薬の量だな………これ、逆に健康に悪そうだぞ」


たくっちスノー「ん………ホコリ被ってるが本もあるな」


たくっちスノー「………病気に関する本か、やっぱあの人なりに色々対策してこんな………」

たくっちスノー「ん?」


たくっちスノー「いや、これ違う………なんだ」



たくっちスノー「えっ」


…………


たくっちスノー「ほれ、なんとか持ってきたぞ」

「ありがとうございます」


たくっちスノー「………それと、勝手に見て悪いんだが、本を見つけてな」

たくっちスノー「アンタ、科学者だったんだな」

「ええまぁ………趣味の範疇に過ぎませんが」

たくっちスノー「本に書いてあったあの病気」

たくっちスノー「………女性がかかるもので、1度発症したら止めるすべはなく死に至ると」

「………」

たくっちスノー「それだけなら、まあ………お察ししますで済むんだが」

たくっちスノー「ちょっと俺としても見逃せないのが『タイムリープ装置』に関する本だった」


たくっちスノー「タイムリープ、つまり時間を戻す訳だが………考えようによっては悪い考えもできる」


たくっちスノー「悪いな主さん、俺は普通の客人じゃねぇんだ」

たくっちスノー「………アンタのこの家での反応からして」




たくっちスノー「____一体、娘に何があった?」


「…………」


「あなたのお考えの通りですよ」


「ある日、『それ』は娘の体を蝕んで……手の施し用もなく、娘は1歳という若さでこの世を去った」


「科学の力を持ってしても、治すことは出来なかった………そう、私でさえも」

「ある日、私は……治す以外の方法で娘を救う方法を思いついた」

たくっちスノー「………」


たくっちスノー「タイムリープして時間を戻し……娘の病気を自分の体に移す………」

「ええ」

たくっちスノー「………そうして、アンタは娘を殺した忌々しい怪物を体内に溜め込んで、十何年も生きていたわけか?」

「辛くはありませんでしたよ、娘は生きている、見たかったものが見れている。」

「病院は治らなくても、化学や薬で遅らせることぐらいは出来ますから………それに」


「言ったでしょう?少しでも大きく成長する姿を見ていたい、親とはそういうものです」

「あの子が幼稚園に上がるまで生きていたい、その次は小学校、卒業したら中学、高校………」

「あの子は、あと少しで高校を卒業します、あと少し………」

たくっちスノー「その気持ちだけでここまで生きてきたのか………!?」


たくっちスノー「アンタ……でも、もう……アンタギリギリだよ……」

たくっちスノー「今、俺が確認してみたらアンタの病原体は全身を回って、脳に侵入するのも時間の問題だ………もう限界だよ、アンタ………」

「………だからなんです?」

「どんなに邪険にされても、憎まれても、私は見れなかった十数年後の娘を見ている」

「それだけで………」


ガクッ

たくっちスノー「おい!!アンタ!!」


「く……体が、重い………流石にそろそろ薬でも、ダメになってきましたか………」

たくっちスノー「言わんこっちゃねぇよ!!」

たくっちスノー「…………待ってろ、娘を呼んで………」



「…………お父さん?」


たくっちスノー「!!」


「!」


たくっちスノー「………アンタさ、やったよ、よくやったよ」

たくっちスノー「アンタが諦めなかったから、アンタがここまで愛したから」


たくっちスノー「思い通りにならなかったかもしれないけど、立派な娘に……」


「ああ………」


「お父さん?」


「………あと少しで、卒業……いや、卒業、じゃない………もっと、もっと生きねば………」


「もっと、生きて……長生きして………」






「さゆりの………花嫁姿を………見ないと………」



「幸せを………」


たくっちスノー
「……………」








…………


ちょうど夜が開けた。

雨雲は過ぎ去って………1つの命が散っていった。


たくっちスノー「………アンタ、小さい頃に病気とかあったか?」

さゆり「………覚えてない、そんな赤子の頃の記憶」

たくっちスノー「まぁ、それが当然のことだ……」

たくっちスノー「………俺が言えることは、っつーか、客人程度が言えることじゃないんだが」


たくっちスノー「あんたの父親、羨ましいよ」

たくっちスノー「もう二度とあの人に酷い事言うんじゃねーぞ………」



さゆり「………あ、あのさ」


さゆり「また来てよ……また」


さゆり「花嫁ドレス着て、待ってるから」


たくっちスノー「…………俺よりいい男見つけろよ、マジで」

たくっちスノー「こんなろくでなしより上なんていくらでもいるからな」


たくっちスノー「じゃあ、いい男見つけてお父さんに報告しろよ」


…………


たくっちスノー「……………」


たくっちスノー「いいなぁ、あの人………マトモなお父さん持ってて」


たくっちスノー
「俺もあれくらい愛されてぇなぁ………」







「あっクソっ、また雨降ってきやがった」


「………まあいっか、今日はビショビショになるくらい濡れたい気分だ。」
最終更新:2022年07月21日 23:30