この男、
たくっちスノー。
ある事情あり、あらゆる世界を一人旅しているのだが、常に金欠問題に悩まされている。
その為、一日バイトで生計を立てているのだ。
とはいえ、一日だけのバイトは危険だったりワケアリなことが多いのだが………
たくっちスノー「ああ…なんかこう、少しでも楽しくバイトできる所無いのか…」
たくっちスノー「って!!」
『ゲームセンターパノラマ』
仕事内容:店内のアーケードゲームをクリア
報酬:十万
ジーカ
希望:ゲームが上手い人
たくっちスノー「な、な、な、何ィ!!?」
たくっちスノー「ゲームをクリアするだけで十万ジーカ貰える一日バイトだとぉ!?」
たった一日で十万ももらえるアルバイトなどあるのか?あったとしても胡散臭くないか?
そう思いながらも好奇心の方が強かった為、たくっちスノーはこのバイトに行ってみることにした…
~ゲームセンターパノラマ~
ゲームセンター内はかなり広く、筐体も数多く設置されていた。
たくっちスノー「うおっ、思ったより規模がデカい所だな…」
周囲を確認する、ゲームの種類は最新のものからレトロまで数多く存在していた。
いずれもクリアするだけで十万ジーカ……
と、単純なものでもなかった。
まず、バイト時間が深夜であること。
真夜中勤務のバイトは珍しくないのだが、一日バイトを選んだたくっちスノーが働けるのはたったの数時間。
十万ジーカでも貰えないと話にならない。
更に……バイトを始めるに辺り、メモを渡された。
【ハイスコアを更新してください】
たくっちスノー「要は新記録叩き出せってわけか………ま、そうでもしなきゃ10万も出さんわな」
たくっちスノー「ま、今までに比べたら楽な仕事だ」
かくして、たくっちスノーの一日バイトが始まった……
……
バイト開始から2分。
ゲーム遊び放題選び放題とはいえ、ただ闇雲にゲームをやっても無賃金に終わってしまう。
真剣に何をやるのか見定めなくてはならない。
たくっちスノーはまず、自分以外のアルバイターが何をしているのか見に行った。
たくっちスノー「ピクシス、コズミックゲート、マジックウイング……」
アルバイターが集まっていたのはシューティングゲームの筐体が集まってるエリアだった。
たくっちスノー(確かにハイスコアと言えばシューティングだが……)
たくっちスノー(これはダメだ!間違いなくゲーセンのバイトに対するトラップ!)
たくっちスノーの考えはこうだ。
点数を稼ぐものとしてシューティングゲームは真っ先に浮かぶが、好きに進められずステージ構成が多いこのジャンルは時間がかかる。
更に言えばこのジャンルはマニア向けな物も多く、難易度が高い。
素人が簡単にクリア出来るものではない。
次に見えたのは『ナイトブレード』というこの世界で一番人気の格闘ゲームが複数置いてあるエリアだった。
たくっちスノー(確かに格闘ゲームにもスコアの概念があるが……)
たくっちスノー(これもダメだ、数人のキャラクターのコマンド技を覚えないといけないし、高スコアを維持するためには全キャラの性能を記憶しなくちゃならない、前提知識が多すぎる)
たくっちスノー(とすると音ゲー?こんな暗い中で大量の譜面なんか見たら目が持たない)
たくっちスノー(ハイスコアを狙わず、タダで出来る事を利用してパチスロをしている奴もいるが、それはそれで問題がある気がするし……)
たくっちスノー「あ、あれ?」
ふと、たくっちスノーが目をやった先には一枚の張り紙があった。
『新登場!体感型ダイナミックレースゲーム、遂に導入!』
たくっちスノー「体感型レース……椅子に座ってでかい画面で実際にハンドルを操作する……?
たくっちスノー「コレだ!!」
張り紙の方向を頼りに、レースゲームのエリアへ向かっていき……
遂にそれを見つけた。
山岳地帯、砂漠、岩……荒れた道をバギーで駆けるレースゲーム『マキシマムダート』を……!
たくっちスノー「このバイトのレートはハイスコア1つで十万ジーカ!ならなるべく多く記録が多いゲームがいい!」
たくっちスノー「それで音ゲーを選ぶやつもいるが、難易度が高くなればなるほどそのハードルは高くなる!」
たくっちスノー「本当の最適解はレースゲーム!」
たくっちスノーの考えはこうだ。
レースゲームにも格闘ゲームのように車の性能やコース構成など覚えることは多いが、必殺技のコマンドを覚えるよりはよっぽど楽。
更に1つコースを遊ぶとしても、終わるまでにかかる時間はせいぜい二、三分。
たくっちスノー「シューティングのように高難度でもない!」
たくっちスノー「対戦パズルのように独特なテクニックも必要としない!」
たくっちスノー「ただ!コースを覚えてその通りにハンドルを切ればいい!!」
たくっちスノーは即座にマキシマムダートの座席に座り、ゲームを開始する……!!
これらの条件の内ならレースゲームのどれでもいい、この中からマキシマムダートを優先した理由は……
たくっちスノー「やっぱりそうだ!導入したばかりの新台だから、ここに来る人もコツを掴めず大したタイムを出せてない!」
たくっちスノー「そして、俺がここで一番早くハイスコアを叩き出せば、俺が最速でマキシマムダートをマスターしたという事で自慢出来る……!!」
たくっちスノーは意気揚々とゲームを開始した。
ダイナミックな荒道を駆ける事を売りにしているだけあり、コースはデコボコで走りにくいのだが、あらゆる世界を渡り歩き、時には本物のバギーに乗った経験を活かしてこれをカバー。
おまけに記録更新する度に自動で振り込まれる仕組みなので
わずか1時間でマキシマムダートに実装されている内の半分の記録を塗り替えたのだった。
たくっちスノー「よっし!!これだけで六十万ジーカ!これだけあればしばらく金には困らないぞ!」
たくっちスノー「夜明けまで後数時間……おっ、ビークルQに
レイダーカート、マシンSPEC!」
たくっちスノー「レースゲームだって1つじゃないんだからその分荒稼ぎして……」
たくっちスノーが席を立ったその瞬間、何かが割れる音が響いて足音が続いていく!
たくっちスノー「はぁ!?誰かゲームに台パンしやがったな!?」
たくっちスノー「まずい!残ってたら俺のせいにされて弁償される!まだ時間はあるが俺も失礼させてもらう!」
たくっちスノーもまた、大急ぎでゲームセンターパノラマから抜け出して行った。
…………
たくっちスノー「くっ………あと少しでもうちょっと稼げたのに」
たくっちスノー「でも6コースの新記録達成で六十万!こんだけあればある程度遠く行っても大丈夫そうだな」
たくっちスノー「………そろそろ飯にしたいところだが、現在深夜二時……こんな時間に店なんてやってるわけないし……今日は遅くなるからってホテルも取ってない」
たくっちスノー「仕方ない、近くのコンビニで適当に弁当でも買うか………」
………
〜セブンレイヴン〜
数分後、コンビニで弁当を買ったたくっちスノーは……
たくっちスノー「…………クッソ、普通の弁当なのに3倍近くしたぞ、なんだ1850ジーカって高ぇわバカ」
『今日のメニュー』
たくっちスノー「……あ、やべ、食う前にあっためないと……ここは」
たくっちスノー「ふん!!」
たくっちスノーは自分の成分の中に弁当を突っ込み
たくっちスノー「加熱ッ!!」チーン
一瞬温めて取り出す
たくっちスノー「これでよし」
たくっちスノーは封を開けて、誰も見えないところで蓋を開ける。
たくっちスノーはコンビニ弁当を食べる時だけは誰にも反応されない所に行く拘りがあるのだ。
たくっちスノー「いただきます!」
たくっちスノー「……うん、美味しい。少々高いがこの味なら文句なしか……」
たくっちスノー「しかし今日の晩をどうやって過ごすか……いや、一応俺は寝なくても生きられるのだが……」
たくっちスノー「………この近くネカフェも無さそうだし、時空列車ももう終電切ってるな」
たくっちスノー「この時期寒いから野宿もあんましたくねーしなぁ………仕方ない」
たくっちスノーはこの夜、スーパーに忍び込み市販の布団に潜って寒さを凌ぎ……日が明けるのを待ち続けました。
たくっちスノー「開店時間になったら直ぐに出よう………しかしゲームするだけで金を稼げるなんて、本当いい時代になったもんじゃねぇか」
たくっちスノー「しかも俺、最新ゲームの更新総なめだぞ?会えたら雪達に自慢出来るなコレ」
因みに、あの日以来ゲームセンターパノラマはあのバイトをやらなくなったという。
筐体の画面を割られたことよりもたくっちスノーがレースゲームのハイスコアを取りまくった事の方が致命傷だったと言われているとか………
あとたくっちスノーのマキシマムダートの記録は数日ぐらいした後に簡単に抜かされた。
今日も一日、よくがんばりました。
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本日の手当
一日バイト代 600000ジーカ
食費 -1850ジーカ
旅行費 -4000ジーカ
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最終更新:2022年12月26日 07:23