「メイドウィン」と名乗るモノ。

…………

「ハロー」

「!」

フォグが奥へ、奥へと進んでいくと……

黄金都市に来て初めて人を見た……いや、人なのか分からない。
その髪は一つ一つが金色の糸のようにしなやかで、座っているだけで物々しさと悲しさを感じる。

ログを初めて見た時のような『オーラ』を感じた、ただしその時よりも桁外れに……

全員が心で理解した、アレは人間じゃない。
アレは………神。
その中で、フォグだけが……平然とその人に近づいていた。


「君は……まさか、たくっちスノーなのかい?」

「ここじゃ『フォグ・ランシー』って呼んでくれないか、レイヴ」

「…!?」

「ランシー先生、その方と知り合いなのですか!?」

「んー……知り合いっていうか、同業者……?だな、直接話したり会ったりするのはこれが初めてだ」

「………じゃあお前も」

フォグは前々から妙だと思っていた、なんというか……『人間では無い』と言われても納得しかできなかった。

「俺達は下の住民に分かりやすく言うなら『神』、世界を創造する権限を持つ生物たちだ」

「と言っても、俺もここにいるレギ ンレイヴもこの世界を作ったわけじゃないんだが………」

黄金都市の中心にある広場で、フォグが話し出す。
メリア達はまだ警戒している、目の前にいる男が本当に自分達の味方かどうか確証が無いからだ。
だがフォグはその様子すら楽しんでいた。
フォグはメリア達に近づきながら自分達の事を話し始めた。
「わかって欲しいのはレイヴも俺も遊び半分でこの世界を弄ぶためにここに来たわけじゃないってことだ」

「俺は……こう見えても切羽詰まっていてな……結構真剣に色んなやつと仲良くなる必要があるんだ」

「……肝心なのはレイヴ、お前だな」

「この黄金都市を作ってまで、なんでこの世界に?」

「私かい……?ちょっとね」

「私は結婚して、個々で暮らしてるんだ」

「神も結婚をするのか?」

「おう、神も仕事だから結婚はOKだぞ……一応聞いとくけど別世界の人と?」

「ああ、こことも私の世界とも別の女性とね」

つまり黄金都市の正体は、別世界から来た神とその家族の別荘というわけだ。なんともスケールの大きい話だが、相手が神ならそんなものだろうか。

「ただ……ね、私は生きている実感がないんだ、不老不死とは関係なくね」

「何かあったのか?」

フォグがそう聞くと、レイヴの隣に座っているレイヴが口を開いた。

「さっき言ったように、私は結婚してこの黄金都市を作り……子供が出来るはずだった」

「妻が……死産してしまったと」

「もう十年も昔、人で言えば長い年月のはずなのに……顔も見れなかった娘の事が忘れられなくてね」

「正直、私はこの都市からも離れたいが、妻はそうさせてくれない」

それを聞きメリアはサナを見る。
黄金都市から落ちてきたと言われるサナ、まさかとは思うがその死体が何らかの影響で人として下に?
いや、いくら神の子でもそんな事が有り得るようには思えないし、何よりサナとレイヴは似ていない、母親似ならまだしも……
サナも同じ事を考えていたのか、こちらの方を見てくる。
だがそれはすぐに中断された。
レイヴがメリア達の方に寄ってきたのだ。
そして……

「どうやってここに?」

「お前知らないのか?黄金都市、この世界に認知されてるぞ普通に」

「えっ……ただの家だよ?誰からも認識されないように力を使う事が出来るのは君だって知っていて……」

「じゃあ、定期的にこのメリア達やその関係者の所に使者を名乗る者が来て、この都市の物を持ってきてるのは?」

「えっ?」

「この都市の水筒や家電その他もろもろ、お前んところの世界じゃ当たり前でもこの世界準じゃ超貴重な品ばかりなんだぜ」

「そ、そんなことが………知らなかったよ」

「レイヴ、悪いことは言わん、アンタの妻も説得してこの世界から出ろ、黄金都市も消すんだ………お前らはそれでいいな?」

フォグらこっちに吹っかけてくる。
確かに黄金都市の物品なんてものは自分も見た事ないし、日本に比べれば生活水準は下でも不便は無い、シャリアもサナも特にそれらを必要とは思ってはいなかった。

問題は……

「ログとしてはどう思う?」

「……私としては幻と言われた黄金都市に足を運べただけでも奇跡のような物だ、この情報だけでもカルバラン魔国への土産には充分だろう」

「なら決まりか」

「ということだ、ここに居たって辛いだけだし……その娘さんに関しては気の毒だが……いや、待て」

「レイヴ、この黄金都市にいるのは……」

「さっきも言ったように、私にとっては別荘みたいなもの、そう多くも人は住ませない。」

「せいぜい私と、妻……本来なら産まれてくるはずだった、娘……」

「………それもう、絞られてくるじゃん……わざわざ黄金都市からこの下に物を贈る『使者』の正体」
皆はフォグの言葉を聞いて確信した。
そもそもこの世界にそんな便利な物は存在していない。
だとしたら答えは簡単だ。
つまり、黄金都市に住む『そいつ』、この世界で生きるこの世界の奴らに何かしらの恩恵を与えてくれてるに違いない。

そして、何のために贈り物を?単純な事だ、誇示する為、力を、権力を。


そしてその行き過ぎた自己欲求は悲劇を招いた。

レイヴがなにかに気づいたように空を見る。
「何かが……大量に何かが来る、飛行船……?」

「それってまさかサリエス達……?黄金都市を狙ってここまで!」

「なんで急にバレたんだよ!!」

「お前が空間割いて侵入したからだろ!あれ多分開きっぱなしだぞ!!」

「あっそうだった!!」
まずいな、早く何とかしないと。
でもどうすればいい、何も出来ない!! そうだ、ログがいるじゃないか。
ログの砂魔法があればあの程度の敵なんて簡単に蹴散らせるはずだ。
ログに助けを求めようと振り向く。

「………メリア」

「流石にこの量は我々の方が不利だ」

「逃げるにしたってここ逃げるところあるのか!?」

「無いなら作ればいい!!レイヴ、お前も来い!」

「シャリアは炎で飛行船に牽制かけろ!」

「は、はい!」

………
最終更新:2023年01月21日 17:58