…………
「あれが全て、黄金都市を求めていた貴族達だというのかい……?」
今メリア達は隠れるために地下穴を作り、下から状況を見ている。
レイヴの力なら、こんな事も簡単に出来るのだ。
「世界への影響半端ないな……」
「どうすんだよセンコー、問題がどんどん増えていくぞ」
「どうすると言われてもずっとここにいたレイヴは何も知らないんだ、一つ一つ答えを出すしかないだろ」
そう言ってる間にもまた一人、貴族の男がやってきた。
恐らく使者が度々持ってきた物品を漁りに来たのだろう、気にすることもないとばかりに一同は無視する。
「………ったく使者って奴は面倒なことしやがって」
「使者っていうか……消去法的に」
「私の妻になるな……」
「どうする?戦う理由なんかねぇし会ったら面倒だ、一旦奴らが出ていくのを待つか?」
「いや待て、あそこに見えるのはなんだ?」
俺は指差して言った。
その先には、大きな扉があるように見える。
そして、そこから出てきたのは── 一人の男だった。
歳は三十代前半といったところだろうか、長身痩躯の男である。
黒いスーツに身を包み、手には杖を持っている。
まるで……大物のように。
メリアは顔を見た事あるが、誰なのか記憶が辿れなかった。
「シャリア、あれ誰なのか分かるか?」
「あ、あの方……サリエス様のお父様……」
「何!?つまり名義するならイルタール卿ってわけか……となると近くにサリエスもいるな。」
「いや、待て……どうやらその人物のみでは無い、見ろ」
続いて扉から現れたのは、黒いローブを身につけた女性のように見える人物。
何か……何かがおかしい。
何かを察し、フォグがレイヴをがっちり抑え込む。
「あれ……私の妻だ……」
「妻ァッ!!?」
「おい落ち着けセンコー、俺もびっくりしたがまずは話を聞け!」
「ど、どういうことだ……?」
「あいつ、そのサリエスの親父の近く歩いてないか?」
いや…………………………えっ。
「そ、それは本当ですかお姉さま!?」
「いや……どっからどう見てもそうだ」
つまりアレはそういうことなのか、なんで異世界になってもこういうのはあるんだよ。まぁ、まさかこんなところで見ると思わなかったわと思った。
しかし、よく見れば確かに女性に見えるかもしれない。
ただ、身長はかなり高い。
ヒールを履いているせいもあるのだろう。
それにしても、あんなに背が高いのか……。
そしてフォグはどこからか出した双眼鏡でレイヴの妻を見ていた。
「何してんだよお前」
「これはただの双眼鏡じゃない、俺の過去の仲間が浮気調査とかする時に使うんだ」
「遠くを見るついでに遺伝子情報を調べられるんだ」
「下手したら黄金都市の何よりもハイテクじゃねぇかよ」
「何せ世界レベルの遥かに先を行くからね俺は!………あー、やばいかも」
そう言って、レイヴの妻(?)を見つめる。
すると彼女はこちらに気付いたようで、歩みを止めてしまった。
それを見て、イルタール卿とサリエスまでもが彼女の存在に気付き、立ち止まってしまった。
この空間で動けるのはメリア達だけとなってしまったのだ。
「おい止まるなよ!さっさとどっか行ってくれ……」
「おい、何かあったのか?」
「話拗れるから今は言えない……つかあいつら早くどっか行ってくれよ……」
数分後。
ようやくメリア達は動き出すことができた。
外に戻り、周りに人がいなくなったことを確認している。
「この辺りの物は大体無くなっているようだな」
「本当に全部もっていったんだ……皆この為だけに、黄金都市を求めて……」
「いいよ、また作ればいい」
「……で、さっき何を見たんだセンコー」
「見てたっていうか調べてたんだけどな…遺伝子情報を調べて、サナが本当に黄金都市から来たのかをちょっと」
「で、結果は?」
「シンプルに言っちゃうと、サナ……レイヴとの関連性は0%に近い、レイヴの子ではにい」
「そっか……うん、やっぱり私はあの村で……」
「と言いたいがそうもいかないんだ……」
「レイヴとは一致していないが、レイヴの妻とは一致していたよ……」
メリアはレイヴの嫁が黄金都市の住人である事を知った。
しかし、フォグが言うにはその事実は受け入れがたかった。何故なら、レイヴと関係がないにも関わらず、妻とはある。
つまりそれは、妻の浮気……それによって生まれたのがサナであること。
もし落ちてきたとするなら……
「それを隠蔽する為に落として死んだことにしようとしてたんじゃ……」
「決定づけるのは早い、まだランシー先生の中に出た推測でしかない」
「そう、まだこれは答えにはならない……俺の推測が事実にする為には……」
「………私が、妻に話をつけて、真実を確かめる。」
レイヴは決意を固めていた。自分がサナの母親に会うことで、サナが黄金都市の人間なのかが分かる。そしてサナが黄金都市で生まれ育った場合、サナがどうなるかも決まるかもしれないからだ。
「それ、俺もついてっていいか?」
「野次馬したいだけだろ、お前」
「るっせー」
………
そしてメリア、フォグ、レイヴは人が居なくなったのを見計らって……会いに行った。
「……あな、た」
「なんだ、こうしてツラを見てみるとサナに結構似ているな」
「一応血縁上は母親として一致しているからな」
「誰!?」
「サナ・ヒカリちゃんについてお話がありまーす、お前があの子を捨ててレイヴの子では無い事は知ってまーす」
「今の所は全部センコーの憶測に過ぎないがな」
「そう……そうだね、彼がただそう言ってるだけだ、現状は」
「でもね、このサナという少女の事、君が下で何をしていたのか、父親は誰なのか………そんなもの、この世界から外に出れば、どれも簡単に調べられるんだよ」
「え……あ……あ……」
「………サナという子の事は関係なくとも、この世界に勝手に降り立ち、結果的に迷惑をかけるような真似をした事を、1人の神として許せない」
「今回
たくっちスノー……いや、フォグが行ったことが全て間違っていたとしても……」
「もう黄金都市は解体する、この世界に勝手に送り込んだものも全て塵に戻させてもらうよ………」
「___我が黄金の夢、エルドラドよ、この夢から覚める時が来た」
レイヴは手を上にあげて呪文を唱えると、黄金都市は光に包まれていく。
まるで夜空に浮かぶ星のように輝く。
それと同時にメリア達がいる場所も、徐々に消えていきはじめた
「………おいセンコー」
「うん」
「「これやばくない?」」
最終更新:2023年01月21日 17:58