時空監理局……それはあらゆる並行世界を繋ぐ時空に存在する、全ての規律を司り、秩序を守る組織。
その部署の一つ……『
紅蓮隊』。
監理局の押し付けられる雑用をこなしながら、その実態は
時空監理局局長代理『
宅地雪』に復讐する為に集まった部隊である。
「………くれどもくれども、雑用を押し付けられてばかり」
「もはや他の部署も信用出来ん、仲間となるのは、この部署だけだ」
紅蓮隊のメンバーはアマツキ含めて全て女性。
紅蓮隊は基本、同じ性別同士で集まり、まるで家族のような関係性を築く。
アマツキはその光景を見て思わず笑ってしまう。
「全く……いつもこんな状態か」
そう言ってアマツキがため息を吐いた時、突如警報が鳴った。
その警報音を聞き、皆が驚く中、アマツキは動く。
「緑色の警報なら新しい人材が来たのだろう」
「行ってくる」
………
時空監理局には数百を超える部署があり、各分野に大きくわけて仕事が振り分けられている。
アマツキは今日も新人の歓迎会があると思い、仕事を早めに切り上げて待ち合わせ場所に向かうのだった……。
時空監理局本部内……そこはまるで現代的なビルのような内装で、所々に書類が散らかっていたり、テレビやソファ、テーブルなどが無造作に置かれていたりする。
が、これも数多くある内装の一つに過ぎない。
「………見つからないな、新人」
「……あ、いえ、さっきから……ここに」
「ん?」
アマツキが振り返るとそこには、緑色の髪を持つ小柄な女性が立っていた。
彼女の名前は『月影』、少し弱気そうな印象を受ける少女だった。
「君か、新入隊員は」
「はい……そうです」
……
「何故
紅蓮隊に入ろうと思った?やりたいことがあるならその場所に適したところは山ほどある」
「ここに来る仕事なんて、
時空の渦を埋めたり、血濡れの戦場を清掃する雑務くらいだ」
「そもそも、繁華街で暴力にあけくれる者たちを指す『愚連隊』という単語を私が書き換えただけの部署だしな……」
アマツキがそういうと、月影は顔を俯かせる。その反応を見て、アマツキは思わず笑ってしまった。
「ふっ……まぁ、いきなり新人の君にそんなこと言われても困るか」
「案内しよう、この組織は無駄に広いからはぐれないように注意してくれ」「わかりました」
アマツキが歩き始めると、月影も後に続く。
…………
紅蓮隊に新人が入るのは珍しいことだった。何故なら皆何かしら仕事があり、誰かを案内する余裕などないからだ。
そんな状況で新人が来ることは、確かに珍しかっただろう。
「皆、新しい仲間の月影だ」
「よ……よろしくお願いします」
「アレらがお前の仲間だ」
「ヤマタニ……」
「チェリー……」
「ロンギヌス」
「以上が全てだ」
アマツキが指を差した先には、三人の女性がいた。彼女たちも
紅蓮隊の構成員である。
「よっす、新人ちゃん」
最初に声をかけたのは黒髪ロングの女性だった。彼女が『ヤマタニ』と呼ばれている。
身長が高く、胸が大きいのが特徴的だ。
「わ、わたし……チェリー。よろしく……」
次に話しかけてきたのは眼鏡をかけた白髪の女性だ。彼女が『チェリー』と呼ばれている。
彼女は人と話すのが苦手なのか、俯きがちにアマツキ達を見ている。
「私はロンギヌス」
最後に声をかけてきたのは銀髪ショートヘアの女性だ。彼女がロンギヌス……
「わ、私が月影です……」
月影は恐る恐るといった様子で自己紹介をした。
アマツキが彼女達に月影を紹介している間、
紅蓮隊のメンバーは雑談をしているようだった。
……
アマツキはそれから、新入隊員の月影を連れてすぐまたどこかに消えていった。
「え、あの、アカツキさんどこかに行っちゃったんですけど……」
「うん」
「うんって……」
「直ぐになれるけど、あの人ここに居ない時の方が長いし……」
「そう、リーダーだけど馴染もうって感じがしないというか」
「元々、この組織嫌いだったって噂だし」
「……そうなんだ」
……
(これ……どこに行けばいいんだろう……?)
月影は監理局の本部内を当てもなく歩いていた。
歩いているとぶつかってしまう。
「ひゃっ」
「あ、大丈夫?」
「い、いえすみませ………あ!?」
ぶつかった人物をよく見ると、
時空監理局と書かれた体よりもずっと大きな白いコートを付けた……
「………あ、うん、どうも」
「……
紅蓮隊か、あそこに人が来るとは聞いてたけど、頑張ってね」
雪は、軽く月影と話をしたあと天井にある扉まで飛び上がって中に入っていった。
「………今のが、局長代理………?」
正式名称『
たくっちスノー』
過去には時空最悪の犯罪者とも言われ、三大犯罪者の1人にも加えられており……
「あれが……?」
しかし、月影はどうしてもそれが信じられなかった。本当にあんな人が?
「いや、でも……局長代理の服を着てたし」
……
(……あの男を見ていると雪も気に入らん、冬の全てを禁止にするか)
そんなことを考えつつ、アマツキは再び
時空監理局本部に戻ってきた。
それから、資料庫へと向かい過去の資料を調べ始める。
「まずは、春だ」
「……次に来るのは夏か……」
アマツキは過去の
時空監理局局員の情報が書かれた本を手に取り、ページをめくる。
……
(あれ……この人たちって……?)
別の日、月影は資料室の奥で一冊の本を見つける。
中を開くと……
(そんな人が、なんでこの組織の局長代理に……?)
最終更新:2023年08月08日 19:49