遭遇、宅地雪

時空監理局……それはあらゆる並行世界を繋ぐ時空に存在する、全ての規律を司り、秩序を守る組織。

その部署の一つ……『紅蓮隊』。

監理局のあちこちの部署へあっち行けされる雑用をこなしながら、その実態は時空監理局局長代理『宅地雪』に復讐する為に集まった部隊である。

アマツキ、ヤマタニ、チェリー、ロンギヌス、そして新人の月影は、遂に復讐の時が来た………


………

「ひとつ聞いていいですかリーダー」

「あのヤバい拷問室の椅子から下に落としてダクトに繋げる必要ってありましたか?」

「私が作ったものでもないし、数十年も前からあったものだからな」

「ていうか、私は来なくてもよかったんじゃないですか」

「紅蓮隊は全身出動が義務だ」

「それで、この先に何が……」
その瞬間、アマツキとロンギヌスが目を開く。
そこには、無残にも破壊された監理局内部があった。
壁は砕け、床は穴が開き、局員たちが倒れている。
そして……そこにいるのは

「宅地局長代理……!?」

「あの下で一体何が……」

「見るな」
ロンギヌスがアマツキとチェリーの視界を塞ぐ。
だが、そのわずかな間に、監理局の施設に蹂躙した者の正体は見てしまった。
それは巨大な怪物だった。全長50メートル以上はあるだろうか?全身を赤い装甲で覆われたその姿はまるで人型ロボット。

「なんですかアレ…」

「知らん、どこか別の部署の誰かが勝手に作ったんだろう」

「あれが……全部ですか?」

「どうやったら、あんなものが作れるんだ……」

「でもあれ、局長代理が危ないんじゃ」

「いや………」



雪はロボット達に見向きもせず。

右手をちょっと振るだけでロボットを乱切りのバラバラにしてしまった。



「………監理局もただの暇潰しでこんなの作って………」

「いや、この組織が暇じゃない時の方が珍しいか……」


「今のって…」

「見たか、戻るぞ」

「待ってください、あれは一体……」

アマツキは前に一度だけ見た事がある。あの紅蓮隊の試験で戦った化け物の姿を。その姿を思い起こせば……

………
紅蓮隊の部屋に戻り……

「妖刀・ドクロ丸

「奴はあの刀をどんな場所、いかなる時も差して行動している」

「だから私らは直接攻撃による襲撃は避けて、間接的な行為だけを狙っていた」

「だが……それも通じない……」

アマツキはドクロ丸についての説明をする。
「妖刀・ドクロ丸?」

ロンギヌスがその名前に反応する。

(あの青い化け物も確かそんな名前だったな……)

「それで……」

「この部署の局長代理への復讐って何をしたんですか?」

「まず食事に毒を盛ろうとした、無理だった」

「あの人24時間局長室居るか、出るとしてもちょっとしたら帰ってくるし」

「え?……食事と言っても、確か局長代理はマガイモノといって、食べなくても問題ない種族じゃ……」


「食べなくていいと言えど……」

「食いたいだろ……?」

「そういうもの……ですかね………?」

「それで、代理局長が一回会食を受けてたこともあった」

「全くピクりとも動いてなかった」

「あと無断欠勤して怒られてた」

「それで本当に局長代理が食わないのか確かめようとしたら……」

ロンギヌスがため息をつく。
「……もう分かった、この組織は元々規格外、普通のやり方は通用しない」
アマツキも同意する。確かにこんな馬鹿げた話聞いた事もない……

「だが、それはつまりあの化け物も規格外の存在」

「普通のやり方が通用しないのなら、常識に囚われない方法で攻撃するしか無い」

ロンギヌスはアマツキに作戦を説明する。

「となると、やはり監理局内局長室に侵入するしか無い」

「あそこは警備が厳しい、私達どころか立場が上の人間でも侵入は厳しいぞ」

ロンギヌスの言う事も最もだが……
アマツキには一つだけ心当たりがある。それは、アマツキ達のいる場所と別の部署に所属するメンバーの一人。彼女が居るなら、可能性は………


「しかし、奴が単純な事で協力するとは思えない」

「誰か協力者がこことは別でいるんですか?」

「鍵だ」


「この時空監理局だけじゃない、全部屋、全一帯の『鍵』を全て作成している、無論気分で交換することもザラだ」

「まさか……」

月影がロンギヌスに、心当たりの人物について聞く。
「その後、イスタちゃん……?」

「……ん?知り合いか」

「私、その人に連れられて時空監理局に……」
(また面倒な事になってきたな)
……
そんな会話をしていると、廊下の方から誰かが走る音が聞こえる。足音は徐々に大きくなり、そして……

「大変です!監理局に侵入者が!!」

アマツキ達は部屋から出る。するとそこには、時空監理局の局員たちが慌てていた。

「それで侵入者は?」

「それがですね、見知らぬ少女がたった一人で侵入したようで」

「でもそういうのって、ちゃんと鎮圧する係の部署があるんじゃ……」

「月影、ここもその括りだ」

「ですよねー」

アマツキ達は現場に向かう。そして、その道中で話す……

(侵入したのはどんな奴かは知らないけど、これだけ厳重な警備を突破するなんて相当手練れね)

(一人ってのが引っかかるけど)

(監理局への襲撃にたった一人とは……一体どういう……)

アマツキ達が遂にその場所に辿り着くと、そこに居たのは侵入者らしき人物と……



「宅地局長代理………」



………


「よくもまぁ堂々と来たね」

「レヴナント」
最終更新:2023年08月08日 19:50