紅蓮隊の罪

時空監理局……それはあらゆる並行世界を繋ぐ時空に存在する、全ての規律を司り、秩序を守る組織。

その部署の一つ……『紅蓮隊』。

監理局のあちこちの部署へあっち行けされる雑用をこなしながら、その実態は時空監理局局長代理『宅地雪』に復讐する為に集まった部隊である。

アマツキ、ヤマタニ、チェリー、ロンギヌス、そして新人の月影は、突如時空監理局を襲撃してきた者を追いかけると、その先に居たのは宅地雪と、レヴナントと呼ばれた時空犯罪者であった………


……

「来たか……たくっちスノーよ」

「監理局じゃ皆もう宅地雪って呼ぶようになったよ、嫌がらせみたいにね」


「こんなんでも局長代理だ、被害が増える前に会いに来たよ、どうせ狙いは自分だろ」

「そう、全てはお前に復讐するため…俺は時空犯罪者になって逢いに行く必要があった……」


(奴も我々と同じ目的を……)


……
あれは今から10年前……家族と小さな村で細々とメルニチェンコを売っていた俺は……

「浸りすぎーー!!!」


(えええーーー!!!?)

雪はレヴナントを殴り飛ばし、去っていく。


「いつになったら無くなるんだろう、こういうの」


「今ちょっと気になるところで切り上げさせましたよ局長代理!?メルニチェンコって何!?」

「復讐おいといてメルニチェンコがめちゃくちゃ気になる」


「メルニチェンコ………」


「私と同じだな」

「アマツキ!!?」


………

レヴナントが片付けられ、紅蓮隊が元の部屋に戻った頃、アマツキは紅蓮隊のメンバーを集めていた。
……
そして今、地べたに座り込む二人……その傍らには、オレンジ色に輝く透明な板が浮かんでいる。
(メルニチェンコってのは結局……)

(なんかこう……)

(すごく……美味しかった……です)
あの後レヴナントは、アマツキに回収されて監理局へ運ばれた。

「……あ、そういえばそれに繋がった話なんですけど」

紅蓮隊時空犯罪者時代の局長代理の被害者達が集まってるんですよね、私以外」

「一体何をされたのかな……って」

月影は、気になっていた事を聞いてみた。

「ん?ああ……私以外は皆…された事はバラバラだがそれぞれ奴に直接の被害を受けている」

「特に私は……」

「あのメルニチェンコ売りの男に懐かしさを覚えた………」

「そう、私が6年前……小さく細々と家族と団子屋をしていた時……」

「あっよかった!!リーダーまでメルニチェンコ売ってたらどうしようかと!!」

6年前……小さくとも客がそれなりに居て活気のある団子屋があった。
ある日、店の前を一人の男が通りかかる。
男はたくっちスノーであった。彼は客として団子屋に訪れ、たまたま目が合った自分に話しかける。
そして、それからしばらくして……店に客は来なくなり、店は潰れて母は借金を苦に自殺した……
(回想終わり)

「以来私はたくっちスノーに復讐を誓い、同じたくっちスノーに被害を受けた者達を集めて紅蓮隊を……」

「………」

「どうした月影 」

「いえ、なんとも……」

「私の事も聞いてくれ……」

「ヤマタニさん……」


「私は宝石を安い値段で周囲に売りつける商売をしていたんだが、ある日とある男が現れて」

「『そんなに安くて良いのかい?君が売る宝石は一つで200万もする物だよ?』と言ってきたんだ……」

「すると、今度は男が10個程同じ宝石を持って現れたんだ。私は怪しいと思って追い払おうとしたんだが……その男が置いていった」

「そしたら宝石が途端に売れなくなって、赤字になって」

「それがたくっちスノーか」

「で、これがその時の宝石なんだけど」

「え……これ、ビーズに色塗っただけじゃないですか、これを宝石扱いは無理がありますよ局長代理」

「んえ?」

「え?」


「チェリーは確か、結婚相手を……」

「うん……近所さんの常連だった、たいちょーみたいな人と結婚できたんだ。」

「でも私は……あのたくっちスノーのせいで旦那に逃げられて……」

「そうだったんですか……チェリーさんも苦労したんですね……悪い噂でも撒かれたんですか?」

「うん……沢山の男と関係を持ってるとか、、何股もかけてるとか色々」

「それは酷いな……」

「裁判に掛けたら勝てますよ、今からでも弁護士さんを……」

「それは……ちょっとお金も無いし」

「えっ」


「………あの、ロンギヌスさんは?」

「ああ、ロンギヌスが1番たくっちスノーに直接の被害を受けているな、ドクロ丸で斬られたとか」

「ええ!?局長代理が持ってる、あの刀で!?」

ロンギヌスは、アマツキの持っていた刀をスっと鞘から抜く。
その刀は前に皆で見たドクロ丸と同じ形をしていた。

「あの刀で……たくっちスノーに?」

「ああ、こいつはある所で拾った物なんだが、こいつでドクロ丸の刃を受け止めながら斬撃を加えたんだ」

「凄い……」

*1

「……結局それで勝敗は決せず、ロンギヌスは斬り合いの中で奴と戦いの末、手加減された事から……」

「情けをかけられたから復讐ってロンギヌスさんだけなんか違くないですか……」

「と、何も無い君からすれば関係ない事ではあるが……」

「い、いえ!関係ない事ではありますが、皆さんにも事情があるって分かりましたから」

「アマツキさんが今も出す団子があまり美味しくない事と、ヤマタニさんが石ころを宝石と偽って売っていたことも、チェリーさんが男遊びしてたことも、ロンギヌスさんが普通にヤバい人斬りだったことも」



「絶対にバラさないのでどうか命だけは助けてください………」


月影、無自覚に悪意をほじくり返すことから監理局は『時空のサークラ』と呼ばれており

紅蓮隊は正に時空の愚連隊のように性格に難がある時空犯罪者では無い前科者のたまり場である。
最終更新:2023年08月08日 19:51

*1 カッコいいなその光景……