飼い殺しの部隊

時空監理局……それはあらゆる並行世界を繋ぐ時空に存在する、全ての規律を司り、秩序を守る組織。

その部署の一つ……『紅蓮隊』。

監理局のあちこちの部署へあっち行けされる雑用をこなしながら、その実態は時空監理局局長代理で過去に最悪の犯罪者と言われた『[[宅地雪]]』に復讐とは裏腹に問題児しか居ない前科者集団である。 

アマツキ、ヤマタニ、チェリー、ロンギヌス、そして新人の月影は、今日も活動する。



「だ、出してください……」

「ダメだ、お前は下手に話すと雰囲気を破壊する恐れがある」

月影は手足を縛られて監理局内の倉庫に監禁されている。

「何故、私が」

「お前は危険な存在だ、……そうだからこうして監禁するしか無いんだ」

アマツキは月影を睨みつける。月影は怯える様に体を縮ませる。
アマツキは、倉庫の扉の鍵を閉じて去る。

月影。
紅蓮隊の新人で特に罪も問題も無いが、無意識に人の触れてはならない所にうっかり触れてしまい、監理局をたらい回しにされて紅蓮隊に送られた。
通称『時空のサークルクラッシャー』

昨日、紅蓮隊でどんな被害を局長代理から受けたのかを聞いた時にまたやらかしてしまい、アマツキから倉庫に監禁される事になってしまった。
月影は暗い倉庫の中で、うずくまり震えている。

「こんな目に遭うなんて……私が何したって言うんですか……」

そんな中、足音が近づいてくる。扉が開かれ、月影が見上げると、そこにはアマツキがいた。
「だ、出してくれるんですか……」

「食堂に連れていくだけだ」

……

月影の手足を縛り逆さまにして台車で引っ張っていく。

『アマツキ』
紅蓮隊のリーダーであり、過去に団子屋を家族と経営していたがたくっちスノー(宅地雪)に不味いと言われて客が来なくなり、借金漬けで母が自殺したことから、監理局に属する今も雪への復讐を誓っている。

__たくっちスノーが店に来たのは事実だが月影も認めるくらいに不味く無自覚な上に、店が潰れたのは近くにスーパーマーケットが出来たからという真実をまだ幼かった彼女は知らない。


(うわ怒ってる……私が普段出してくるあの団子どこの100円ショップで買ったものですかって言ったから凄い怒ってる……)

「月影、お前は自分がどれだけ危険な存在かまだ理解していないようだな」

「ひ……ひぃ……」

アマツキは月影を降ろして、腕を掴み壁に押し付ける。

「食堂についたからそこで適当に何か食べていろ」

「いや、あの……私まだ逆さまのままで、これじゃ食事が…」

「下の口と言うだろう」

「そっちの口は食事する為じゃなくて出すための物なんですけど」


「じゃあ私は団子を食べに行く」

「あれからヤマタニもチェリーもロンギヌスも一緒に食べてくれなくなった」

「お前なんてメルニチェンコでも食ってればいいんだ」

(メチャクチャ根に持ってる………!!)


月影は逆さまにされながら、食堂へ運ばれる。
(おおおお、何という辱め……)
食堂のメニューを見るがどれも高カロリーで健康に悪そうな物ばかり。

………

「あれ?なんかやってると思ったら凄いことになってる」

「え?」


「新手の遊び?」

気が付くと、隣に白髪のイケメンが居た。

「え、あの、貴方は……」

「俺はメイ……あ、ここに居る時はこの名前使っちゃダメだったな」

「じゃあ、カーレッジで」
「は、はぁ……」

「それでカーレッジさんは……ん?」

(なんかこの人の感じ、どこかで見たような)

「どうしたの?」

「いえ、なんでもありません……」

「いや、逆さまになってる以上なんかあったでしょなんか……」
カーレッジは月影を降ろして、食堂の椅子に座らす。
(なんか……この人といると懐かしい感じがする……)
ふと、カーレッジが持っている物に気づく。
それは見覚えのある品だった。
銀縁の眼鏡に、整った顔立ち、その銀髪には確かに見覚えがある。

(どこかで……写真?何かでこの顔を見たような)

「君、どこ所属?」

「紅蓮隊ですけど……」

「紅蓮隊…?聞いたことないな、いっぱいあるし、新幹線作る人なら鉄道係、サッカーチームとかならそれっぽい名前って感じだし」


「紅蓮隊は何がしたくて紅蓮隊って名前なの?」

「さあ……雑用しながら、局長代理に復讐、というか逆恨みしたいらしくて」

「今ドストレートに逆恨みって言ったね君、そりゃまあアイツは時空犯罪者として色々やってた時期もあったけど」


「私もあのメンバーが恨みをあると聞いてたけど、なんか変な人たちで………」

「ヤマタニさんはこんなビーズの山を宝石と言って、ビーズより高い値段で売っていたらしくて」

「んー?いや、多分それは『宝石』だよ、世界によってはルビーやエメラルドなんて存在すらしてない所もあるからね」

「綺麗なビーズの粒でも、そこに本物の宝石が無いなら、相手が見た事ないなら充分宝石だ」

「でもそれって詐欺じゃ……」

「不幸にはなってないし、いいんじゃないの?」

メイはそう言いながら、月影の目の前に置いた皿の上に団子を2つ乗せる。
その皿には4つの団子が載っている。
つまり、あと一人来るらしい。


3人分のお箸とお茶を持ってカーレッジの横に座ったのはロンギヌスだった。

「出た、人斬り!」

「その子、たくっちスノーに情けをかけられたことが許せなかったって?」

「まぁアイツ犯罪者と言われても殺人鬼じゃないしなー」

「それに人斬りって言ってやるなよ犯罪じゃないんだから」

「ひ……人を殺して罪にならないんですか!?」

「歴史に影響を及ぼす人ならそうだけど、別になんでもない人はなー、こんな言い方本当はダメなんだけどね」
ロンギヌスは団子を食べながら、カーレッジの皿からもう2つの団子を1つずつ取って食べる。
その隣に座ったヤマタニが何か言いたそうにしている。
どうやら月影に一言言いたいらしいが……

「なんですかその目……まるで私に出ていって欲しいみたいな」

「私も流石にここ居られなくなったらまずくて………」

「別に出ていけとは言わないけどさ……手続きを満たし」

「調べてみたら、過去に貴方が属してた部署が人間関係崩壊してばっかりだから、わざとやってないならとんでもないなって………」

「わざとで人間関係壊せるわけないじゃないですか……さっきもリーダーに逆さまにされて、ご飯の時以外監禁されて」

「………ああ」

カーレッジはなにかに気付いたように月影を見る。
カーレッジは、ロンギヌスの団子を2つ盗んで食べている。
(ロンギヌスも気付いてないな……)
カーレッジは月影を見て何かを言おうとしている、が、気を使ってさりげなく言う。

「やめさせられないけど手を付けられないから、生かさず殺さずにしておこうってことか……」
最終更新:2023年08月08日 19:51