世紀末斧学園祭

たくっちスノー「この世で一番強い武器を知ってるか?」

たくっちスノー「剣?銃?槍…はたまた、盾?」



たくっちスノー
「どれも違う、正解は斧だ」

たくっちスノー
「斧はいいぞ?デカいし、攻撃力高いし、何より強いからな」

たくっちスノー
「斧使いのロマンと攻撃力をかけた戦い!!今ここに!!」


たくっちスノーが次の旅先として辿り着いたのは、大きな学校だった。

たくっちスノー「でっけー学校だな、どんな授業とか教えてるんだ?」

たくっちスノーが校門を抜けると、歩いている床が独りでに喋り出す

「ようこそ、私立ハルバーティン学院に!」

たくっちスノー「………見た目の割には結構ハイテクな学校だな。」



……


たくっちスノーは校内をしばらく歩き、景色を眺める……壁を見れば斧がかかってるし、机には斧のレプリカがあるし、教室の中には斧の絵や写真が飾られている。
廊下も斧だらけだし、天井にも斧型の照明があったりする。
そして、斧を持った生徒達が行き交う……皆一様に斧を持っていた。


たくっちスノー「ここは本当に学校なのか?斧ばっかじゃねぇか……」


たくっちスノー「……ん」


しばらく歩いていると、私立ハルバーティン学園の入学用ガイドブックが置いてあった、手に取って確認してみると……ここは異世界ではよくある冒険者育成機関であることが分かった。
ただ異なる点は、ここは皆全て斧を使用して育つということ……


たくっちスノー(それにしたってあの装束は趣味悪いと思うが………)



概要を知ったたくっちスノーは、ここに居る斧使いがどんな物か興味が湧き、体育館的な物を探し始めた。


たくっちスノー(ファンタジーにおける『斧』と言えば、攻撃力が高いが重くて動きにくく、狙って当てられるものではない上級者向け装備……というイメージだが、実際はそういうものばかりでもない)


たくっちスノー(しかし、この学校は随分と斧推しなんだな……槍だの弓だの選択肢が多い中で、なんで斧なんだ)


たくっちスノー「お!あれが体育館的なアレか!?」
そこには斧が沢山掛けられていた。


たくっちスノー「いやいや、なんでこんなに斧があるんだよ、いらねーよ」
 
扉を開けた先には……




たくっちスノー「やっぱり、俺が思ってたように単純な奴じゃなかったか」

その先には巨大な斧を持つ男に対して、小型の斧を持っているものが戦っていた。

たくっちスノー「あの小さいヤツはトマホークってタイプの斧か、向こうはハルバード……本当に色々ある」

たくっちスノー「てか、ここにいるヤツ全部斧使いかよ………」

たくっちスノー「今始まったところみたいだし、しばらく見物してみっか」

小さなトマホーク使いは、果敢に攻めるもハルバードの猛攻に押されていた。

たくっちスノー「あー、これは負けるかな?」



大型斧の中でもハルバードは『斧槍』と呼ばれるほどリーチがあり、使い勝手も多い便利な武器だ。


たくっちスノー「でもまぁ、頑張れ」

しかし、相手のハルバートの威力に圧倒され、徐々に追い詰められていく。

たくっちスノー「こりゃダメだな、多分これは一種の公開処刑か」


相手のハルバードに対してトマホークという斧は他の斧と性質が大きく異なりかなり軽い、そのため一撃の重さよりも手数で勝負するタイプなのだが、それでもハルバードの圧倒的な攻撃範囲の前になすすべもなくやられていった。

たくっちスノー「うわー、もう終わりだな」

たくっちスノー「さっきのトマホークの子も結構頑張った方だが、まぁ斧にだって相性はあるからな………」

たくっちスノー(まぁ、俺の方が強いんだけどな)

「あの子は中々の逸材ですよ」


たくっちスノー「うおっ!?また喋り声………さっきの床の奴!」

たくっちスノーは辺りを見回すが、それらしき人物はどこにもいない。

「探さなくても、私はそこにはいませんよ」

たくっちスノー「…………見学者をからかう事がそんなに楽しいかよ…………」



………

たくっちスノーは話しかけてくる声の主は気にせず、ハルバーティン学園の散策を続けることにした。

たくっちスノー「あのハルバード使いは結構強かったな、やっぱりあの学園で1番強い奴なのか?」

「いえ、およそ2、3番目ぐらいかと」

たくっちスノー「アレより上がいるのか………1番はどこだ?」

「貴方のように、出席日数と単位をとるだけとってどこかに」

たくっちスノー(俺、別に学生じゃないけどな………)


たくっちスノー「…………ちなみに、そいつどんな斧使ってたの?」

……
たくっちスノーは斧の保管庫を教えてもらい、1番の実力者が持っていたという物と同じタイプの所に行った。


たくっちスノー「本当に1番のやつはコレ使ってたのか?これ…」

たくっちスノー「ピッケルだぞ……」

ピッケル、採掘所などで穴を掘ったり鉱石を得るときによく使われるあの道具である。
一応ピッケルはつるはしとは別類であり、斧の1種として数えられてはいるが……

たくっちスノー「だからってなんでピッケルが置いてあるんだ……ピッケルはいいとしてもなんでわざわざつるはしまで置いてあるんだ」


たくっちスノー「つるはしは明確に斧じゃねぇよ」



たくっちスノー「百歩譲って斧だとして……一番強い奴はこれを使ってこの学園の覇者に?」



たくっちスノー「コレでな……」



たくっちスノーは試しに置いてあるうちの1つに手をかけた、その時だった。



「待て!それに手をかけるな!」

たくっちスノー「誰だ!?」



振り向くとそこには、たくっちスノーの腰ほどの身長しかない小人がいた。


「わしは、ドワーフの一種じゃ」

たくっちスノー「ドワーフ?……えっと、炭鉱とか武器作りとかしてるヒゲ生えた妖精……」



ドワーフ「そのピッケル、まだ焼いたばかりじゃから迂闊に触ると火傷するぞ」



たくっちスノー「え?……あっ!!俺の成分とくっついちまった!!ゴムみたいになって………」



たくっちスノー「なぁ、もしかしてここの斧作ってるのって」


ドワーフ「ワシらじゃ」 


たくっちスノー「やはりな……俺は単なる旅人だけど、この学校について興味あってウロウロしてんだ、話聞かせてくれよ」


たくっちスノー「とれた!!」



………

場所を変え、普段は一般解放されていないドワーフ達の部屋で話をする。


ドワーフ「別世界を超えることも容易なこの時代じゃただ穴の底で細々と武器を作っても収入にならん」


ドワーフ「だからこうして育成機関なんかに提供して、ワシらみたいな種族は食い繋いどるんじゃ」

たくっちスノー「ドワーフ達も世知辛い世のなんだな」

ドワーフ「まぁ、それに関してはワシらは失敗した側だがな」

たくっちスノー「え?」



ドワーフ「ここの関係者は斧使い冒険者を作ろうとしているが……」



ドワーフ「作れど作れど斧は売れん!」



たくっちスノー「えっ、斧人気ないの!?」



ドワーフ「斧なんてもんはな、実用性がないんだよ」


たくっちスノー「でも俺が過去に出会った斧使いは大体強かったぞ」



ドワーフ「そりゃそいつらが異常に強いからじゃろ、普通の斧を普通に使ってたらすぐに壊れちまうわい」



ドワーフ「更には剣を作るより鉄を使う、その分金額も多く取らなければ利益にもならん」



たくっちスノー「………制作面でもリスキーな武器だったんだな、斧って」



たくっちスノー「でもそんなに使われないか?戦士とか大体オノ使ってるイメージだぞ?」


ドワーフ「確かに戦士は一度斧に手をつけることが多い、だが扱いきれず結局剣を使うものも多い」



ドワーフ「この学校でも真っ当に扱えるのはせいぜい……あのハルバード使いじゃろうな」

たくっちスノー「この学校で一番のやつはどうした?あのピッケル使いの」



ドワーフ「そいつが何故ピッケルを選んだか分かるか?」



たくっちスノー「……ピッケルが意外と強い事を知っていたとか?」



ドワーフ「ピッケルはどういう風に使われているのか知っているか?」



たくっちスノー「まず穴を掘るだろ?洞窟とかで鉄を砕いて、宝石なんかも見つけて……あとは……」



ドワーフ「ピッケルは、普通に考えれば採掘道具じゃ」



たくっちスノー「あー……確かに言われてみると俺も最初そう思ってたしな」



ドワーフ「奴は必要な日数と単位を獲得すると、ピッケル1本持ってこの学校を去り……」



ドワーフ「ダイヤモンドを掘り当て、それで優雅な暮らしをしているという」



たくっちスノー「ピッケルをピッケルとして使って普通に成功してる………斧系冒険者の学園なのに……」


ドワーフ「隠しているが斧の赤字も正直抑えられんところまで来た、もうこの学校もおしまいだな」

たくっちスノー「そしたらアンタらドワーフはどうすんだよ」

ドワーフ「さあな」

たくっちスノー「うーーん、こういう時買い取るって言いたいけどジーカ足りてねぇし………」


たくっちスノー「てか、卒業後の冒険者界隈ってどうなの?」

ドワーフ「それを旅で見つければいいだろう」

たくっちスノー「それもそうか」


…………


たくっちスノー「こーして俺はピッケル片手に学園を出た」



たくっちスノー「え?結局なんで斧が最強なのかって?決まってるだろ」



たくっちスノー「ピッケルなら斧に需要がなくても別方面で稼いでいける!」


おしまい。
最終更新:2023年09月03日 14:08