【あんハピ♪×ダンガンロンパアナザー】
りりすた革命団の船、中身は未だに謎に包まれているが、とりあえず人が増える度にどんどん広がってる、気がついたらもう迷路みたいになっていた
それはさておき、リーダーの
ヨウコはある部屋に向かっていた。
「……何?僕が学校に?」
うつろ様……
前田勇気とも言うだろうか。
絶対的な幸運『天運』に呪われ、常に望むがままのことしか出来ない絶望に満ちた生活を送っている青年である。
傍から見れば死ぬほど羨ましい成功が約束された人生だが、彼にとっては忌まわしい力である。
「そう、貴方にお似合いなところがあってね」
「馬鹿か?僕はもう既に希望ヶ峰学園を卒業している、留年するほど頭が悪いとも思われてるのか?」
「そういうことじゃないのよ………えっと、誘われてるのよ、生徒の為に役に立つんじゃないかと」
「断る、どうせ天運を利用してなにかする気だろ………聞き飽きた、そういう物は」
「あーもう!拒否権なんてありませーん!」
………
と、雑な導入の中無理矢理締め出されて、うつろ様は前田勇気として学校の手伝いをすることになった。
天気はあいにくの雨、しかし天運の手にかかればピンポイントで晴れる。
歩いてるところのみを太陽が照らす、いつもの光景だ。
「つまらない………さっさと言うだけ言って終わらせて、平良を引っ張り出してホテルでサボるか」
うつろ様はとりあえずの足取りで目的地である学校に到着する。
天之御船学園………この学校はそれぞれ3つの分野に特化したクラス分けとなってる。
1つが勉学、もう1つはスポーツ、そしてもうひとつは……
「1年7組……『幸福』クラスか、僕には一切縁のない所だな」
幸福クラスとは勉学にもスポーツにも当てはまらない、それどころか人として少し問題のあるバッドコンディションを抱えたレディ達が幸せを見つけるという名目の集まりである。
うつろ様はそう思わないが圧倒的幸運によって全て上手くいく彼はこれ以上ない幸福……そう思われたのだろう。
皮肉のように笑いながらうつろ様は学校に入る。
途中ウサギのようなロボットが話しかけてきたが、相手をするのも面倒なのでガン無視した。
「適当に歩けばクラスなんて見つかるんだ、案内なんかいらん」
そして1年7組に到着、普段なら前田勇気の真似をして過ごすだろうが今回はそんな気分にもなれなかった、特殊な場所なら素性を見せてもいいだろうという事もある。
引き戸を開けて、中に入ろうとした時ヨウコからどういう人間が居るのか情報が来た、聞かないと話が進まないタイプのRPGを連想したうつろ様は仕方なく電話に応じる。
「ここに居る生徒達は貴方と対極……つまり不幸な存在、その要素もまちまちね」
「僕に対する当て付けか?まさか僕の天運を奴らに振り分けろとでも言う気か」
「あんたにそこまで大層な事は期待してないわ、ただ授業1個してもらうだけでいいから」
「1個だな?本当に1個でいいな?ひとつ終わらせたら僕はコンビニ直行して全部星型になったア●ロを貪る、いいな?」
念入りに確認した後電話を切り、1秒でも早く終わらせたくて改めて中に入る。
中に居たのは数人程度、まあ5人以下の方が楽に早く済む。
うつろ様は教壇に立たされて、『元・超高校級の幸運』として話をすることになった。
「まず、第一に僕が伝えたいことは………恵まれた才能、約束された成功、不自由ない生活、そんなものに希望なんてものは……無い。」
「幸運なんてものは決して『幸せ』ではない、何の面白みもないクズみたいな人生だ」
場の雰囲気が一瞬で静まり返った、そして最後の仕上げとばかりにこめかみに拳銃を当て、3発ほど撃ち込む……当然、うつろ様には何も起きない。
「僕の幸運はお前達の想像だに出来ないほど度を越した力だ、ここまで自分の人生を気に食わないと思っても死ぬ事すら許されな………」
と言ってられなかった、1人が倒れたのだ。
「きゃー!!」
「は…はなこさんが跳弾に!!」
「何……!?」
こればかりはうつろ様でも想定外だった、自身の幸運で回避した弾丸が跳弾して、不運にも生徒の1人に直撃したのだ。
これが何を意味するのか、それは………自身の『天運』に匹敵するほどの不運、言わば『逆天運』。
自身と同等な力の不幸な人間……?
「………これだけ言って帰るつもりだったが、気が変わった」
「1つ授業に付き合う、あとその女はギャグ世界補正で死ぬことは無いから弾を抜いて包帯だけ巻いておけ」
…………
そして数分でうつろ様は準備を済ませ、授業に至るが。
「あの……幸福に関するテスト、なんですよね?」
「文句でもあるのか」
「それがなんでゴルフなんですか……」
うつろ様はとりあえず金と幸運はあるので、学園に話を付ければゴルフ場を貸し切ることなど動作もないこと、数人経つには大きすぎるだだっ広いコース内で準備をする。
「ゴルフなんてプロじゃなくても運さえあれば勝てる、そんなゲームだ」
「流石にそれはプロに失礼じゃ…」
「『二階堂、二回どう?』って言えばリセマラ出来る」
「この時空にどれだけ二階堂って名前のゴルファーいるんですか!?」
そんなツッコミも無視して、ボールを準備して、風向きも確認せず適当にゴルフクラブを回収、ホールとは真逆の向きに構え始める。
思いっきり見当外れな位置。
「よく見ていろ、天運1つでこんな状況でもホールインワンを取れる」
「流石にこの状況じゃ…」
シュッ!!スイングと共にゴルフボールが真後ろに飛んで行ったかと思えば空から突然コンドルが飛び出し、偶然にも跳ねたゴルフボールを鷲掴みして、これまた偶然にもホールの真上で放すラッキーホールインワン。
「こうなる」
「いやいやおかしいおかしいおかしい」
「お前、はなこと言ったな、お前打ってみろ」
「え!?まず私!?」
「なんでもいい、早く打て」
と、うつろ様は先程とてつもない程の逆天運を見せつけたはなこと呼ばれた少女に無理矢理ゴルフクラブを持たせると、うつろ様と同じく真後ろに立つ。
「なんの真似だ」
「私もこうしたらもしかしたら入るかもっ」
「て!!」
ゴルフクラブを振ろうとした瞬間、Uターンしたコンドルが突っ込んできてゴルフどころではなくなってしまう。
「二回どう?」
「もう1回!」
「伏線回収!?」
改めてボールを飛ばそうとするが、跳ね返って顔面に激突する、クラブが折れて足に落ちる、間違えて足の小指を打つなど散々な結果に終わってしまう。
(僕が傍に居るということは天運を相手に送ることも出来るはず、それなのにこの不運……妙だな)
「はなこ大丈夫!?」
「大丈夫!普段よりはずっと楽だから!」
(何……これで普段より良い、だと?僕の天運が混ざって尚……)
「…………後は好きにやれ、僕はもう帰る、長居しすぎた」
「あっ、待って」
「私、花小泉杏!名前聞いてなかったから!自己紹介!」
「…………………前田勇気だ。」
…………
(忌々しい、気に入らない、やはり来るべきじゃなかった)
うつろ様はバックれて全部特別なチョコレートを食べる、脳裏に浮かぶのはあの女。あの顔、あの不運、あの姿。
(あの顔はなんだ?僕と対極な不運、いつ死ぬかも分からないやつだ)
(時空は不公平だ、欲しくもない幸運で周りから恵まれていると言われる僕がこんなにツマラナイのに、あんな所に同等の不幸を持ってハンデを背負いながら笑っていられる?)
天運と逆天運。
絶望に満ちた幸運と恵まれた不運。
時空は広い、それ故に有り得ること。
「確か、あいつ………は、花……はなこ、花小……」
「…………あいつなんて名前だったっけ」
うつろ様はとにかく人に興味が無いため、人の名前を覚えることがめっちゃ苦手、覚えてるのは前田勇気として振舞ってた時の付き合いのみ。
実はヨウコは不運に会わせたいというより、この癖を直させたかった事を彼は知らない。
最終更新:2024年06月01日 09:28