「うわっマジでこいつ野宿してるやん」
ポチがこの世界に滞在して早くも1日、
たくっちスノーの発明品でテントを張っても問題ないところ、すなわち飛行機が飛んでこない程度に高い空にテントを張っているのだ、降りる時はハシゴがあるし上がる時には全力でジャンプすればカッコよく拾ってくれる優れものだ。
「おはよう京都弁の魔法少女ちゃん!俺は君らの特定とかはする気ないから安心して!」
「ウチはマジアサルファや、ちゃんと覚えんかい」
「覚えてるよ、それで他がアズールにマゼンタちゃんでしょ?出来れば君らでグッズ作って監理局の仕事終わらせたかったんだけどね」
「なんでどこの馬の骨かも分からんやつに養分チューチューさせろと?」
サルファはめんどくさそうにテントの上にいるポチに石でもぶん投げてやろうと思ったがいちいちこんなのに構ってられないので直接しばきあげようと浮遊してテントに侵入した。
戦闘力を持たないと本人は語るが信用出来るか怪しいので戦闘態勢は崩さず警戒は怠らない。
「……それで?現状この世界に魔法少女は来ないで、それくらい分かってるやろ」
「それはまあベーゼが有名だからね、俺も調べてびっくりしたよ」
マジアベーゼは魔法少女に淫猥な事を行うのが好きな変態である。
強者であると同時にそのような性癖さえも時空で知れ渡っているので貞操を守りたい別世界の魔法少女達は怖くて近寄りたがらないという、まあ当然の結果でありベーゼがいる以上この世界に魔法少女なんか来るわけない。
逆に変な奴らが多いのも納得がいく、男ならベーゼに狙われることもないしなんなら逆に強い女幹部をこの手で堕としてやりたいというのは一般性癖だ、あと類は友を呼ぶという言葉もある……ということをポチは長々と話した。
「いやー悪者じゃなかったら俺の同志にしたかったんだけどなぁもったいない」
「心配せんでもお前は充分あいつの同類や……あっ、時間的にそろそろまずいな」
サルファは時計を見てテントから出る、自分に何もしてこなかったということは本当に戦闘力は持たないのか?しかしサルファはこれ以上変態が増えても困るので警戒を緩めない。
一方でポチもどうにかこの場所に魔法少女を呼びたくて悩んでいた、本音を隠さず言えばエロいところも見たいがコネも欲しいし良いところを見せればグッズ交渉もスムーズに進むことだろう。
「となると魔法少女が来たくなるような魅力を出さないとなぁ……つまりはマジアベーゼにエロい事をされても問題ないようにするには……あっ閃いた!」
同じエロで頭がいっぱいだからこそ対策方法はいくらでも思いつく、ある意味では町おこしのようで楽しくなってきたポチは
時空監理局のPCを立ち上げながら行動に移す……。
◇
「ああ……今日も魔法少女成分が足りない……」
彼女の名前は柊うてな、誰も知らない関係者しか知らない……マジアベーゼの正体である。
かつては変身しなくても魔法少女をそばで眺めて推し活を満喫していたのだが、ポチが言っていたようにマジアベーゼの事は周囲に知られてトレスマジア以外は会いたがらないしトレスマジアも変な奴らに絡まれているので本当〜に暇を持て余しているのだ。
潰しても潰しても消えないゴキブリのような奴らばかりで気が滅入る。
「うてなちゃん、おはよう」
「ああ……うん」
クラスメイトに話しかけられても上の空みたいな返事をしてしまうので心配されることも多い。
ちなみに今心配してくれた花菱はるかはある意味敵であるマジアマゼンタの変身前だが彼女達はお互いに正体を知らない。
はるかもまた変な奴らや
時空犯罪者に絡まれているので気分は落ちていないが私生活でも疲労を残したままである。
この
時空新時代で一番弊害を受けたのは休む暇もなくなっているヒーロー達だろう。
授業を受けても上の空のまま、帰り道うてなはぼーっとしたまま気分を和らげようと魔法少女グッズでも買おうとしたが最近そんなことの繰り返しの為にもう既に財布はすっからかんだった。
「うぐ……戦いがしたいなら自分の世界でやってくれたらいいのに、トレスマジアも変なのに絡まれて……はあ」
もうやりたいこともないので帰ったら寝ることの繰り返し、マジアベーゼとして勝負するためにも柊うてなとして生きる時はひたすら休養に徹しなくてはならない。
昼夜逆転ならぬ通悪逆転の日々を送り、今は夢の中で好き放題するくらいしか出来ないがあまりにも都合が良いと「なんか違う…」となり直ぐに目が覚めて泣いてしまう。
「私がやりたかったことはこんなことじゃなかったはずなのに…」
泣いてもしょうがない、時空新時代の元凶はもう死んでいるし……自分は現実では悪の総帥なのだから。
「そろそろ変身するか」
それに町を他の変な奴らに好き放題されるのはうてなにとってもいい気分ではない、これは自分の精神を安定させるためであると割り切り見えないところで変身を済ませて外に出る。
◇
「大変!また私達の世界に変な人達が現れたの!」
「相変わらず数が多いわ!手分けして片付けましょう!」
「またか!俺としてもちょっと同情してきたよ!」
その一方でトレスマジアも騒ぎの予感がして変身、ポチもどっちかに行けばマジアベーゼに会えると思って勘で一番スケベな身体つきをしているマジアアズールの所に同行しながら追いかけていく。
ちなみに
野獣先輩に関してだがマジで見捨てたらしくて今日は本当に姿を一切見ていない。
「貴方色んな世界の管理をしている組織なんでしょう?私達の世界がこんなにめちゃくちゃになっているのに何か思うところはないの?」
「あるに決まってるでしょ、俺だってただ自分の仕事を遂行なんて出来ないからちょっと寄り添ったりもするよ、最初はどうやったら魔法少女が来るかを相談してたんだけどこのめちゃくちゃさをなんとかしないとね!」
アズールの飛行にビルを飛び越える形で追いついていくポチ、このまま回り込んでパンツでも見えないかと裏に回ろうとしたそのまま踏まれて地面に着地した。
ボロボロになりながらもポチはマジアアズールとマジアベーゼ、両方揃えばそれぞれを狙う奴らが集まるのでそこを一網打尽に出来る作戦を思いついたとハンドサインで説明する。
「サルファも言っているけど私もまだ貴方を信用出来ると思っていない、本当にその作戦で上手くいくの?」
「そ……そりゃまあ俺はエッチ大好きだけど時空監理局ではあるからね、平和が何よりではあるんだよ俺的にはね?それでも信用できないなら俺の事なんてどうしてくれても構わない」
「本気なの?」
「どっちみちろくな生き方も死に方も出来ない最低野郎と局長に罵られてる、どうせ死ぬなら可愛い女の子に処刑されたいなーってくらいには自覚してるつもりさ」
「……」
◇
マジアアズールは一時的に彼を信じてみる事にした、別の所に離して監視させるがくれぐれもベーゼのいやらしいデータは取るなと釘を刺してベーゼとタイマンを仕掛けに行く。
ここにくるまでにまたベーゼは数々の時空犯罪者などをしばいてきたらしく息を切らしているがアズールを見るなり文字通り目の色を変えた、よほどトレスマジアとの戦いに飢えていたらしい。
「疲れてるところを襲うなんて卑怯とは言わないわね?」
「結構です、私はあなた以外に倒されるつもりはありませんし……あなた方トレスマジアも我々以外の有象無象にくたばってほしくありません」
ポチは改めて生のマジアベーゼを見る、写真で見るより威厳や迫力も違う……見た目だけは華奢な少女だがもう既に何十という時空犯罪者やヒーローが彼女の癇癪に敗れている。
あとポチからすればベーゼも露出がエグすぎてエッチではあるが考えた人の倫理観が心配になってくる、多分彼女未成年だよな……?とリアルにそういう恰好を見ていると心配になってくる、現に危ない男達に囲まれているし。
(……本当に大丈夫なのよね)
時は数分前まで遡る、自分はヒーローではないが監理局としてルールを厳守したり人を安心させる立場でもあるポチは新しいルールを時空に通そうとしていた。
普通なら出来ないことだがポチは普通じゃないので出来るという、何せ自分より偉い人と言ったら副局長と局長しかいない。
ポチは局長である黒影に連絡を入れれば2秒でルールを追加できると豪語するが、ただでさえ時空監理局が怪しいのにそのトップに繋げられるなんて余計に胡散臭い。
「いくら貴方が偉くてもそんな上の存在を動かすことなんて……」
「出来るよ、これに関しては俺が凄いんじゃなくて黒影局長は凄い見栄っ張りなのさ、自分のおかげで時空の良いところは保たれているんだってアピールになることならなんでもする、世界の平和を守るとかマジアベーゼを倒せるならすすんで手を出すだろうね」
「でもそれだと貴方じゃなくてその局長の功績ということになるんじゃないの?」
「俺は元々決められた仕事をこなせればそれでいいし、地位や名誉なんて気にしてないからね、かといって立場を失うことまでは見過ごせないけど」
ということでポチはひっそりと黒影に連絡を入れながら2人の試合を観ていたが……想像以上だった。
V級程度の低級時空犯罪者では間に入ることも出来ない、魔法少女を辱めることを目的としているはずなのにベーゼは犯罪者達を相手していた時よりもキレがよく生き生きとしている、鞭のひと振りで自分ならバラバラにされそうだと感じた。
対するアズールも戦い慣れているだけはあり攻撃を全て見切って剣で受け止め近寄ってくるし攻撃は当たるというより最低限の物を受けてカウンターしているように見える……いや本当に作戦か?と思う時もあるが、まるで百合の間に挟まる男を粛清するどこかの特殊部隊のようにこの2人の戦いに挟まる事は出来ない。
善も悪も関係なく無関係なやつはこうだぞ。
「ああ楽しい……なんて楽しいのでしょうか!!やはり私の敵は貴方達ではなくては!!このまま私達の戦いに水を差す者は全員追い出してしまいたい!!」
「くっ……色々戦ってるだけあってどんどん強くなってるわね……わんこみたいな名前の人!まだ終わらないの!」
「おや、珍しく見物客まで連れてきたのですか」
「君の体は眺めていたいところだけど今日は仕事なのでね!時空全土に通達!このままでは各自豚箱というか拷問地獄の阿鼻叫喚になるのでしっかりご清聴ください!」
黒影が強引に時空のルールを動かして新しい
時空法を作成させたらしい、簡潔に言えば決闘罪が時空全土に適応されたという話であり監理局の許可や申請無く他世界の戦闘行為は違法であるとして罰せられるようになったという、ヒーローも時空犯罪者も例外なく取り締まれて仕事ではないのでしっかり監理局の許可をもらってくださいということだった。
それが出来ないのであれば……。
「他世界戦闘行為、決闘及び鎮圧をするには1時間で50万
ジーカ、破ったものは100万ジーカ!?ちょっと待って黒影局長!俺はここまでのペナルティなんて聞いてな……」
話してる途中で焦るポチと次々と奈落の穴が開いていく一同、悲鳴とともに落ちていったり両者が逃げ出したりしていってよく分からないまま二人だけが残った。
「局長ぉ……確かに世界の安全は保たれたしお金が欲しいのも分かるんですけどやり方が短絡的すぎますって……なんて愚痴って改善する人じゃないか、じゃあ俺は他の仲間呼んでくるのでごゆっくり!」
ここは逃げるが正解と判断したポチは速攻でテントまで逃げ出して残るはアズールとベーゼのみ。
ようやく邪魔者がいなくなってせいせいしたベーゼはちょうど時空通販局から荷物が届いて
時空の渦が開き、段ボールごと鞭で叩いて星壁獣を作り出す、何気にトレスマジア相手に星壁獣を見せるのはこれが初めてだった。
「ようやく貴方達にこれを見せられる時が来ました!これまでは邪魔者のせいで先に倒されてしまいましたからねぇ!」
【星壁獣ウォーカベル】
元にしたもの:マカライト級レンガ
値段:1300ジーカ
能力:強固な壁。
ベーゼが作り出した岩の巨人のような怪物がアズールを覆い尽くすようにプレッシャーをかける、作り出す怪物もこれまでとは桁違いの実力であることを察知して剣で強固な拳を受け止めるが吹っ飛ぶ。
ポチは戦えなくても身を守る術は持っていたので閃光手榴弾を投げてみるがあっさりとベーゼに詠まれて噛み砕かれてしまう。
「何もしないほうが賢明ですよ、私は無関係な人には手を出しませんのでさっさと離れてはいかがでしょう」
「そうは言うが時空犯罪者の言う事は信用できないというのが当然の反応かと思わないかい」
「本当ですよ」
「そこまで言い切れるわけは?」
「私は今、魔法少女と戦えて機嫌がとてもいいからです……貴方みたいなものを攻撃しても楽しくありませんし」
「た、楽しく……ない?」
「考えた所で無駄よ、理解なんてしなくていいわ」
「素晴らしいですねアズール!こんなことでくたばるわけがないと思ってました!」
吹っ飛んだ瓦礫を払いのけてマジアアズールが起き上がりそのままウォーカベルに特攻、同じ部分に攻撃を続けて急所を砕くテンプレのような戦術を取って攻めにかかりポチは本当に逃げる事にした。
――マジアベーゼの考える事は理解が及ばない、マジアアズールはそう言っていたが彼女だってそうではないか。
何故こんな追い込まれてもあの子は笑っているんだ……?
「砕けろおおおおっ!!」
アズールの健闘もあり遂にウォーカベルの無敵の身体を砕いて貫いた……貫いたのはいいのだが身体が動かない。
どうやら突っ込んだ勢いでそのまま身体がウォーカベルに刺さってしまったらしい、いわゆる壁尻というやつである、なんか前にもこんなことあったね。
「おやおや、久しぶりの戦いで昂りすぎているのではありませんか?隙だらけですよ」
身動き取れずさらけ出されたマジアアズールの尻に力強くベーゼの鞭が入る、声を漏らして暴れるが綺麗にくっついて抜けることはなくお尻を痛めつけられる。
「あ"あ"っ♡お"っおっ!!」
だが、ポチは知らないのだがマジアアズールは結構ドMだった。
だったというよりはベーゼとの過去の戦いで目覚めたと言った方が正しくてさっきふっ飛ばされた時もマゾヒスト的な快感で笑みが漏れていただけで戦闘狂とかではないが、多分しばらくポチには気付かれないだろう。
これだ、この戦いがしたかった、こんな風に魔法少女をめちゃくちゃにしてやりたいのに時空から来た変な奴らのせいで楽しみを邪魔された。
ベーゼの興奮は最高潮まで高まり鞭の勢いが強くなってアズールの喘ぎ声は広がっていく、もう二度と椅子座れないね。
「あっやりすぎた!!」
しかしベーゼの方も力を入れすぎたせいか自分のパワーでウォーカベルを破壊してしまい脱出させてしまうことになるが既にアズールのお尻はやばいことになっている。
それでも尚自由になったらそれはそれ!これはこれと戦闘に入ろうとするその姿をベーゼは推しているのだが、サルファとマゼンタの足音が聞こえてきたことで不利を察知して撤退する。
「久々に楽しめましたよ、ではまた」
◇
改めてポチは当たり前のようにトレスマジアの三人の所に居た。
厳密にはサルファに先ほどの件で呼び出されたのだが……。
「今回に関しては想定外もあってすまないことをしたと思ってるよ」
「他世界の戦闘違法化に加えて金払えと……あんたのやってることとかも含めるととんだ銭ゲバ組織やなって感想やわ」
「とてもじゃないけど魔法少女タイアップなんて無理じゃないの?」
「俺もそんな気がしてきたよ……みんな好き放題暴れなくなったけど、ヒーローの活躍も監理局の匙加減になっちゃった……」
「うちから言わせてもらうと悪者がその辺気にするとも思えんしどう転ぶかやな、そっちのトップに文句言ってやりたいくらいやわ」
「言えるものなら言ってるんだよなぁ……あの白髪野郎は悔い改めて」
「あれっなんかしれっと混ざってきたね田所くん」
今回全く姿を見せてなかった野獣先輩がここにきてレジ袋片手にポチの所に、一体何をしていたのか聞こうとしたがその前に野獣先輩の方から答えてくれた。
「ちょっと前まで俺……バイトなんだよね」
「バイト?お金どうしたの?」
「はぁ……あのさぁ、俺達基本現物支給でよそ出向いて向こうで経費落としてくれたことなかったスよ?」
「……え?じゃあもしかして俺達って無一文なの!?すみませんトレスマジアの皆さん働かせてください、すみません何かさせてください!なんでもしますから!」
「世界の全部管理してるわりにはプライドがドブより汚れてるわ……」
「とりあえず今日の戦利品見ろよ見ろよ、うまいラーメン(カップ麺)」
「ここで食うなや」
「この2人信用していいのかなぁ……?」
かくして不本意ながらもトレスマジアのマゼンタ、アズール、サルファは妖精のヴァーツの許可も得てポチと野獣先輩は監視してもらえることになった。
このままでは危うく自称時空から来たホームレスという悲惨な結果であった。
ただしヴァーツから一言、
「君達を匿う上で聞きたいことがある、我々も時空監理局というもの調べたのだが君の言う局長……トップの姿は君と瓜二つの姿をしていた」
「ああそれに関しては本当にそっくりなだけなんだよ、同一人物どころか双子でもないから安心して欲しい」
「そうそう、局長はもっと性格終わってるんだよなぁ……スケベ野郎なこいつも大概終わってるけど、お前どう?」
最終更新:2025年04月22日 21:38