マジアベーゼ、時空のボスになる

 時空に来てお金も特にないのでバイトで生計を立てながら魔法少女グッズのタイアップ営業を行わなくてはならないポチ。
 野獣先輩はいち早く行動してバイト探しというよりはポチに関わりたくないので基本離れているがポチもお金を稼がなくてはならないので求人誌を見ていた。

「他世界人も受け入れてくれるバイトってそんなに無いんだね田所くん」

「当たり前だよなぁ?自分の世界でも手一杯なのに得体の知れない奴らなんて何が起こるか分かんないし雇いたくないでしょ、難民問題だってまだ難しいラインだゾ」

「そういうものかぁ……ヒーロー達がめちゃくちゃ来なくなったとはいえ魔法少女がここに来て欲しいけどなぁ」

 少し前に黒影がポチの提案ありきとはいえ『他所の世界を助けたければ金払え』ということになったので未成年でお金の管理に困る魔法少女達が余計にここに来なくなってしまった、せっかくマジアベーゼを恐れずに魔法少女が活動できる設備を整えたというのに……。

「それで実際に何を考えたんスか」

「まず手始めにネット配信かな、醜態は実際には周りには全然晒されてないよと表現するためにモザイクを相手の目に植え付ける特別な機能をつけてある……といってもマゼンタちゃん達の認識阻害の原理を利用しただけなんだけどね」

 ポチは次の課題として魔法少女をどうやってここに集めるかという課題が出来た。
 健気な彼女達は他世界の危機も見過ごせないと思ったている者が多いので監理局として解決したいが今更撤回も出来ないし黒影がそこまで気を回してくれるとは思わない。
 とはいえ野獣先輩にとっては関係ないことなのでまたバイトに出かけた、それにしても普段こういうことをサボったり押し付けたりするはずの彼が率先してこういうことをしてくれるなんてよほど切羽詰まっているのだろうとポチも素早く事業を勧めようとするが空を飛んでマゼンタがテントに入ってくる。

「あっ、ちょうどいい所に来てくれた!相談したいことが」

「あー……その、あたしというかヴァーツが……」

「例のマスコット君だね、何か?」

 マゼンタからマガフォンを受け取りポチは応対する。
 念の為にマジアマゼンタに自分のマガフォンを預からせておいたので確認してみるとヴァーツからのメールと添付動画があった。
 途中で止まっているのでトレスマジアの面々も既に一度は確認済みらしい。


「キウィちゃんこれどういうこと?」

「あたしにも分からん」

 そして同じ動画をエノルミータのアジトで流していた、実はこの映像密かに撮ってきたものではなく普通に動画サイトにあったのだ。
 そこにあったものを見てうてなは苦笑いも出来ないくらいには引いていた。

「マジアベーゼ様万歳!!万歳!!万歳!!」

 そこに映っていたのは数々の時空犯罪者が自分を讃えて連合を結成して本人も知らないところで勝手に部下になってエノルミータとは無関係な組織のトップに仕立て上げられていたところだった、時空犯罪者と分かるのは何人かしばいてきた顔触れもいたからである。
 はっきり言って関わりたくないのでもう既にキウィちゃん(レオパルト)に粛清を手伝って欲しいと思っていたがもう銃のリロードしているので殺る気満々らしい。

「やっと変な人達から解放されて思い思いトレスマジアと戦えると思ったのに……」

「ウチらみたいな悪者からすればルール守れなんて言われても知ったこっちゃないよな」

「でも残った人達は私達に喧嘩を売りたくないからちょうど近くに居た貴方を祭り上げる形で押し付けた……といったところかしら」

「こいつら全員うてなちゃんを利用する気満々の寄生虫かよ、苛つくな」

「ええ〜……そんなの私知ったことではないんですけど、ただでさえ時空犯罪者とかいうわけわからない括りなのに、この人私の邪魔ばかりしてきそうなんですが」

 今回のマジアベーゼ神格化によってうてなも知らないところで自身の時空犯罪者としての格は上がるが本人はそんなの望んでないので全く得していない余計なお世話ということになっていることを誰も知らない?
 エノルミータで得をする人間といったら精々アイドル志望の真珠(ロコムジカ)が何人か自分のファンとして利用出来ないかと思ってるぐらいだったが……そこにこりす(ネロアリス)が珍しく挙手するのでキウィが応対する。

「ふん……ふんふん、なるほど、うてなちゃん、時空通販局の代金こいつらに払わせようぜって」

「実際結構バカにならないからね星壁獣作るのも……あまり関わりたくはありませんが使えるものは使っていこう、こりすちゃん何か買いたいものある?」


 マジアベーゼが本格的に時空を代表する危険な時空犯罪者となったとあればポチもトレスマジアの所に向かわざるを得ない、今回の件をたくっちスノーに報告しながら連合を作った時空犯罪者のリストを確認していた。
 何故黒影ではなく副局長に報告しているのか?と聞かれた時もあったが、たくっちスノーはかつて史上最悪の時空犯罪者と言われてたのでこの手のことには詳しいとのこと、そんな人物がどうして副局長なんてやっているのかという質問には答えられなかったが……。

 「時空犯罪者が集まるってどれくらい厄介なことなの?私たちはまだ時空に出たことが無いから基準が分からないわ」

 「名前は物々しいけど実際はそんな大したことはないよ、さっき言ったたくっちスノーとか他世界巻き込む規模の奴は確かに恐ろしいけど稀なくらいで低ランクの奴はけっこうしょぼい」

 「なるほどな、元の世界でうちらみたいなのを相手しとうなくて逃げ出してきた軟弱者というわけか、雑魚が溜まっただけやな」

 「現状はね……でも実際どんな奴が化けるか分からないものだよ、そちらのマジアベーゼのようにね」

 そうこう話しているうちにマジアベーゼが街に現れたという報告を受けてマゼンタ達はただちに急行、周囲に時空犯罪者も多いのでポチも同行。
 本当はマジアベーゼを見に行きたいのだが足手まといなのは以前の戦いで身にしみたので本当に今回は見物に徹することにしたが……。

「思ったよりギャラリーが多い!!」

 いざ戦場に出向いてみると時空犯罪者やヒーローが暴れなくなったのはいいが今度は現地民がポチみたいにこっそりとした形で混ざってる人々が結構居た、しかも大体女性なのでまるでプリキュアショーに混ざってる大きなお友達の気分、幸いなことにポチのメンタルはメタルキングよりも硬いので混ざっていても平常心を保つことが出来た。
 これがマジアベーゼの作戦や細工というわけでもなさそうなのが恐ろしい。
 ポチは改めてエノルミータとトレスマジアの戦闘風景の観察を行う、風景というか敵勢力の見た目をスケッチしているのだがこれがまあ痴女集団で目の保養になる。
 ベーゼの隣で爆発を起こすパンツ丸出しのエッグい露出の彼女……トレスマジアが言うにはレオパルト、彼女がメガブ団を自分達諸共ミサイルの雨を叩き込んだと見て間違いないだろう、あの尻は一度見たら忘れられない。
 すぐそばの小さい女の子はネロアリス、露出度は一番低く傍から見ると可憐な美少女にしか見えないが一番厄介なのは彼女らしい、玩具を自在に使えるらしいが……。

 赤と青の二人組はロコムジカとルベルブルーメ、ロコはポチでも以前から名前だけ聞いたことがある。
 彼女は悪の組織だがアイドル活動を全面的に行っており時空新時代になってからは時空アイドルとして名を上げようとファンサを広げていた、ただしアイドルとしての彼女を把握してるのはポチほどの余程のオタクくらいである、何せちょっと笑いにも昇華できないくらい絶妙に下手なのだから。
 ブルーメはそんなロコの相方なのか常に行動している、連携の無駄の中からよほど長い付き合いであることが伺える。
 ……それにしてもアイドルを名乗る割にはふざけた格好である。

 と、真面目な内容のエノルミータ報告書を書き終えたポチはとりあえずサルファがマジバトルでベーゼをぶん殴ったりレオパルトのミサイルを弾いている間に余った紙でバストサイズの比較とか書いていたがせっかくなのでジルトーの真似して開発した発明品を試すことにした。
 背後に居る時空犯罪者達はというと彼らも全然役に立たないので持ち上げ役をやっている、はっきり言ってベーゼから見ればウザい。

「なんやずいぶん人気者になったみたいやなぁ」

「今のは貴方達に寛容な私でも若干イラッとしました、好きでこんなことになってるわけじゃないんですよ」

「そうだぞ、こいつらベーゼちゃんをサークルの姫みたいな扱いしてやがるからな、あたしのだぞ!」

「あっ待ってくださいマジアベーゼ様!我々もマジアベーゼ様の為に至高の性癖を用意しております!」

「いや性癖でバトられても困りますから」

「性癖バトルとは見過ごせないね!!やっぱ俺も混ぜてよ!!」

「お前は出しゃばってくんなや!!」

 かくしてエノルミータとトレスマジアのそれぞれ一見仲間面してるけど本人たちからすればめちゃくちゃ赤の他人な変態共によるマジアベーゼが喜びそうな変態プレイ批評勝負が始まった。
 サルファとベーゼはお互いに自分達は何を見せられてるんだろうという顔でそんなポチ達を眺めている。

「そんなに自信があるならそっちから出してみなよ!言っておくが俺は結構強いよ!」

時空監理局相手に負けられん!」

「時空監理局とはいうけど俺はエロいグッズ一斉検挙されて今も何億というジーカの借金残ってるレベルで怒られた人だ!」

「偉そうに言うことか?」

「時空ってこんなのしかいないんですか……」

 ポチはこういう行事には気合を入れるタイプだ、野獣先輩はバイトで来ないだろうし普段こういう時におしばきするたくっちスノーもいないので結構やりたい放題のポチ。
 一方ベーゼは聞くだけ聞いて終わったらさっさとレオちゃんに全部ぶっ壊してもらおうと聞き流している、今日は全然通販局が段ボールを送ってくれない。

「我々の提唱する対トレスマジア用の性癖は『人格排泄』!!」

「何お前!?いきなりそんなハードなのいく!?」

「……何その聞いてるだけでおぞましい代物は」

「簡潔に説明すると魔法とかでね、出るんだよ魂とか精神的な奴が固形物になって……もちろん排泄された身体の方はただの抜け殻で……とまぁ尊厳破壊的な要素を多く含まれたシチュエーションだね」

「排泄ということはつまりその、お尻から出てるんですか」

「多少マイルドに抑えるために緑色とかになってるけどね」

 ベーゼは考えるまでもなく引いてレオパルトはその性癖を語った人を撃った。
 ポチはダメだった判定として時空監獄へボッシュート。

「うわぁ……私でもそれはちょっと引くわぁ……そっち方面はないわぁ」

「まあおおっぴらに語れるような性癖でないよね、よく堂々と言えたなコレ……」

 次にポチが挙手して考えてみるが人によって地雷を踏みかねないことは経験上理解しているので恐る恐る聞いてみた。

「魔法少女は最後に逆転してほしい?」

「はい」

「状態変化は苦手?」

「わかりません」

「胸やお尻が一時的に大きくなるのは?」

「うーん……多分そう部分的にそう」

「カスのアキネイターやめなさい」

 と話している最中にダンボールがポチの頭上に落下して場はお開きに、地面に沈んだ後にマゼンタの股下から頭を出してサルファにしばかれつつベーゼも一回蹴ってからダンボールの中身を確認する。

「そういえばマジアベーゼはこの間も荷物から怪物を作り出していたわ……あれは一体?」

「ん?ああ……あのダンボールは時空通販局の所だね、君らの世界にもネットショッピングみたいなのあるよね?どんな世界のどんな商品でもお届けすることで有名な会社だよ」

「さあそろそろお遊びは終わりです!いきなさい星壁獣!」

【星壁獣ドロンビーン】
元にしたもの:はなつめ納豆2パック分
値段:240ジーカ
能力:ねばねばした糸。

 豆の塊のような星壁獣が顕現した途端、周囲にアンモニア臭が広がり全員が鼻をつまんで後退りする。

「うぐっ臭っ!!こ……これは納豆……!!」

「あっまずい思ったより匂いがきつい……や、やってしまいなさい!出来れば我々には近づかないように!」

ねばねばした糸を辺りにまき散らしながらどんどん近付いていくドロンビーン、マゼンタは近付いて槍で攻撃するがねっとりとした納豆糸で絡み取られた上に抜けなくなってしまいそのままのしかかってきた。

「うわぁ!!凄いねばねばして離れない!」

 ドロンビーンの発酵したねばねば糸は攻撃しているサルファやアズールにも及びまるでバラエティ番組の罰ゲームや某Gのホイホイみたいに抑えつけてトレスマジアが納豆臭まみれになっていく。
 これは一大事だとばかりにポチが時空通販局のお急ぎ便を押す、お得意様ともなると時空のお急ぎ便は1秒で届くのだ。

「マゼンタ!納豆はお酢を加えると臭いとネバネバが和らぐんだ!これを使って!」

「ありがとう!」

 マゼンタはどうにか手を動かしてお酢をキャッチしてネバネバに向かって注ぐが今度は酸っぱい匂いと味がちょっとキツくて悶絶する。
 他にも水を使えばある程度は和らぐのだがそれが出来るマジアアズールは口にネバネバが張り付いて半分窒息しかけていた。
 遂にトレスマジアを拘束できたことで時空犯罪者たちが群がってこのままでは薄い本というところで鬼の形相でベーゼが腕を鷲掴みにする。

強姦(それ)は駄目だろ」

「アンタがそれ言う?」

「私の場合は愛があるからノーカンです」

「全部揃ってアウトじゃボケ……おい犬っころ!他に何か手はないのか!」

「もちろんあるよ!俺なりにこの世界に魔法少女を呼ぶアイデアを考えてたんだから!今の流行りは投げ銭だよ!」

 ポチが思いついたアイデア、それは配信業。
 トレスマジアとエノルミータの戦いを全面配信してエッチなことをされるだけじゃないという安心感と魔法少女の健気で勇気ある戦いで視聴者を湧き上がらせて投げ銭を送らせる、なんならすぐ近くのギャラリー達もどんどん赤スパ送ってくれるのでお金が貯まる。
 これによって時空監理局への貢ぎ代を稼いで、魔法少女を転送させるというシステムである。
 あとそれはそれとしてトレスマジアの戦闘配信も4000万人という凄い人数が見ているが全時空同時配信と考えると少ない方である。

「今から魔法少女を派遣する!ちょっとねばねばしてるまま耐えてくれ!マジアベーゼにあんなことやそんなことされるのはちょっと期待してる!」

「お前コレ解放されたら覚えとけよ!!」

 マジアベーゼは新しい魔法少女が現れることをワクワクしながらお楽しみをしようとするが味が動かない、足元を見てみるとなんと自分達の方にもドロンビーンがねばねばを張り巡らせて動けなくなっていた。

「ちょっとー!?」

「どうする?撃つベーゼちゃん、ここからでも届くけど」

「私の足無事で済む!?」

 とワチャワチャしてる間に魔法少女派遣準備が整ったのでアクセス、本当ならめんどくさくなりそうなので頼みたくないが仕方ないので黒影にメールを送る。


「あっ、本当にやったんだポチのやつ、せっかくだから面白くなりそうな子を手配してみようか」

 なおポチは知らない。
 黒影がわりと強引な手で世界に招いていることを……あと基準は面白くなりそうということ。
 更には今、魔法少女と関係ない奴まで招いたことを。


「はい、魔法少女呼んでおいたから、そのついでで面白そうな奴も」

「ああうん、ありがとう……ん?面白そうなやつ?」

 言うだけ言って切ったあとに大きな手が空から現れてネバネバが届かないギリギリの所に落とす、落ちてきたのは赤いフリフリのスカートの美少女でこれまたベーゼが大歓喜する見栄えのものだ、何せ彼女からしたらようやくトレスマジア以外でファーストコンタクトした魔法少女なのだから。

「痛たた……これってもしかして魔法少女と悪の戦い!?だったら私は選ばれたものとして倒さないと!」

「あれが、新しい魔法少女……?」

「かかってきなさい新しい魔法少女!早く変身して楽しみだから!」

納豆で色んな人の足元がベタベタになりながら言うセリフである。

 女の子は掌のようなアイテムに指輪を差し込んで構えを取る。

「エンゲージ!」
『センタイリング!マジレンジャー!』

 女の子がリングに包まれ、真っ赤な赤いマントの戦士に……。

「なんか思ってたのと違う!!」

 その姿にベーゼは悶絶する、なんか思ってたのと違う。その言葉通り女の子が変身したのはトレスマジアのようなキラキラした姿ではなく顔が見えなくてぴっちりとしている魔法少女というか戦隊ヒーローである、しかも女子のスーツでもない。
 なんというか年齢層というか需要というか、マジアベーゼの理想とはかけ離れている、マゼンタ達としてもあんなものは初めて見たのでちょっとついていけない。
 ただポチも困惑していた、何故ならあの姿は……どこからどう見ても『魔法戦隊マジレンジャー』ではないか。


「なんで!?なんで魔法少女頼んだのにスーパー戦隊来てるの!?クレームしてやりたいよ!」

「せっかく来たのに何その態度!私がそのネバネバモンスターなんとかしてあげるから!」

「すみませんもうちょっとスカートを短くして、あと顔を晒してくれませんかねへへへ……」

「ベーゼちゃんがショックのあまりキモくなった!」

「くらえ!!私の必殺魔法!ジルマ・マジカ!!」

「ちょっとまってそれ確か爆発魔法……」

 その日、納豆の豆粒が街に飛び散りトレスマジアもエノルミータもまとめて吹っ飛んだ。
最終更新:2025年04月22日 21:39