ナンバーワンとか他所でやってくれませんか

「さて!改めて私の名前は印魔真銀!この指輪に選ばれし戦士であり、貴方達で言う所の魔法少女って感じの女の子!」

「いや違う違う、確かに助けてくれたのはありがたいけど絶対お前は魔法少女という括りとは違う」

「うん、君めちゃくちゃ戦隊ヒーローだからね分類は……局長も何考えてるんだよー!」

 何故かマジレッドに変身する能力を持っていた真銀と名乗る少女はそのままトレスマジアと合流して話をしていた、その際に自分達に納豆ご飯を振る舞ってきたのは嫌味ではないかとサルファは若干キレそうになったが堪えた。
 そして、いざ戦闘が終わってみるととんでもないことに気付く。

「……あれ、うちの局長って君を帰らせる手段考えてるのか?」

「え?私は普通に魔法で帰れるから大丈夫だけど」

「それ法律とか大丈夫?」

「どこでもドアとかは代金払えば許可通るから大丈夫だよ、世界も近そうだし俺たちの不備だからお金も出すし」

 だがポチは時空監理局として気になるのはあの掌のようなアイテムと指輪だった、何故マジレンジャーの姿になれるのかやその姿についてヴァーツも気になるらしく一緒になって情報を聞く、真銀も隠すことではないらしく全部包み隠さず教えてくれた。

「わたし達は向こうで指輪の戦士って呼ばれているの、それぞれに指輪の力があって願いを叶えられるんだけど……その為には他の指輪の戦士を倒して頂点にならないといけない」

「つまり同じアイテムを待ってるやつは敵ってことね、でもなんでマジレンジャー?同じ姿になれる人を知ってるんだ」

「それは分からないのよ、私が前に戦ったやつに戦隊考古学っていうのを調べてる人が居たんだけど……私にはよく分からない内容だったわ」

「時空ってそんな人達までいるのね」

「でも貴方達トレスマジアは私にとっては仲間みたいなものって思ってるから安心して!指輪の戦いには関係ないみたいだし」

真銀はトレスマジアにフレンドリーに接してくれるが黒影はどうにも気になることがあった、黒影は彼女を連れて行く時にこう言ったのだ。
 そのついでで面白そうなやつも連れてきた……彼女に関するものだとすると指輪の戦士が現れたのか、それだとして……そちらはトレスマジアの味方とは断言できない。
 改めて時空監理局として申し訳ないと謝罪しつつ今後の動きを警戒する、まさかこの仕事でここまで面倒な予感がすることになるとは……と疲弊するポチだった、こういうのはたくっちスノーの役目のはずなのに……という所でポチは自分の本来の仕事を思い出したので真銀にタイアップグッズのことを頼んでみた。

「え?私のタイアップ商品?いいわねそれ面白そう!」

「でも貴方、マジレンジャーって他でも見たって言わなかったかしら」

「あっそうか小津兄弟とも話しないといけないのか……うん、ちょっと考え直すね」


 そしてそのもう片方、招かれた方はそのままこの世界で同じように生きていた、そして何の縁か野獣先輩と同じバイト先に居たのだ。
 ただしこのバイトだいぶ曲者であり人付き合いというものが全く感じられない人を寄せ付けなさそうな男だった。

「……アンタの苗字、遠野っていうんすね」

「なんだ?そんな珍しい苗字じゃないだろ」

「ま、多少はね……ちょっと個人的にその苗字の男に嫌な思い出があるってだけ」

 彼の名前は遠野吠。
 ちょっと真銀と同じ世界ではぐれアルバイターとして細々と生計を建てていたが黒影によって『面白そう』という理由で無理矢理連れてこられたのは彼である。
 そして彼はなけなしのバイト代しかないのでここで稼いで生きていくしかないというわけである。
 そして野獣先輩といえば存じている人なら当然知っている情報だが『遠野』という苗字は縁がある、ただこの時空の彼にとってはとんでもない悪縁であるのだがそれはまた別の案件にて。

 無愛想な男二人が担当するコンビニにうてなとキウィが来店、ついこの間現れた魔法少女が『なんか違う』感じで爆発と一緒にショックも受けたうてなを慰めるために何か良い感じのモノでも買ってあげようというところである。
 狙いはやはりコンビニのくじだ、キウィは万札を束にしてレジに叩きつける。

「金ならある、トレスマジアの一番くじ箱ごと持ってこいや」

「いやちょっとそこまで買わなくても……」

「こういう時はどうすればいい?」

「ルール上1人10回までっすね、万札1枚だけ受け取ればいいゾ」

「そういうことだ、全部は出さん」

 吠は金を貰い野獣先輩がトレスマジアくじを用意する、うてなはキウィの金でこれをやっていいのか戸惑う様子も見せるが自分の為にしてくれたのでと手を入れようとした瞬間コンビニに銃声がしたかと思うと覆面男が現れてコンビニ内はパニックになる。

「全員動くな!!おとなしくしやがれ!!」

「ひいいいもう最近の治安悪すぎ!」

 さすがに強盗相手ではうてなもビビって裏に隠れてしまうがこういった事態に慣れている野獣先輩と恐れ慄くことを知らない吠は手を挙げることもしない、両方とも銃弾くらいなら余裕と思っているが客に被害が及ばないように野獣先輩が目線を合わせる。

「アンタ時空犯罪者っすか、時空監理局が居る所に堂々と強盗とはバカじゃね?」

「じ、時空監理局!?そんな贅沢傲慢野郎のクソ野郎共がこんなコンビニでアルバイトなんかしてるわけねーだろ!!」

「ククク……酷い言われようだな、改めてウチの組織クソっすね」

「消えろ、お前のような奴に払う金なんかねえよ」

「金なんかいらねえんだよ!この店にあるトレスマジアくじのグッズ全部持ってこい!!」

「くじが欲しいなら一万円出せ!」

「俺はA賞のマジアマゼンタの限定フィギュアが欲しいんだよ!!」

 野獣先輩と吠は当然ながら強盗相手に一歩も譲らない、うてなは今のうちにこっそり逃げ出そうと裏に回るがその瞬間聞き捨てならない言葉が聞こえて立ち止まった。

「お前あの男知ってるのか?」

「U級時空犯罪者のゴウバイヤー、時空では名の知れた悪質な転売ヤーッスね」

「他世界の人々にもお金を出させて提供させているだけだ!」

「あのさぁ……他世界の商品の売買は通販局のような許可された物以外は時空犯罪なんだよね、だからランクも高いの」

「は?転売?」

「いいからマジアマゼンタのフィギュアをよこ……」

 ゴウバイヤーが話してる最中に鞭が首を絞めて外に追いやられていく、外ではマジアベーゼがガチの殺意でゴウバイヤーを締め付けて今にも背骨を折りそうな勢いだった。

「転売するような人間は私がこの世から消し去ってやりましょう……ああいけませんいけませんいけません、純粋なファンの気持ちを、それもくじの景品を売りさばいて利益にする輩はこの場で粛清されるべきです」

「いいぞベーゼちゃん!!この瞬間だけならみんな味方してる!!」

「まっ、まま、マジアベーゼ!!?なんでD級時空犯罪者まで都合よくここにいるんだよっ!?」

「お前ら店の迷惑になるから外でやってくれない?」

「この男の言う通りだ、そいつが犯罪者ならどうなろうと俺の知ったことではないが別の所でやれ」

「悪の組織に倫理観とか説いてんじゃねーよバーカ」

吠はエノルミータの煽りに乗って近づき、真銀が持っていたものと同じ形のアイテムを取り出して構えを取る。

「俺のバイトを邪魔するなら容赦しねえ、後で給料として請求しておくか」

『グラッブユアハンズ!』

「べ、ベーゼちゃんあれって……」

「いや……ちょっ……嘘でしょ?」

「エンゲージ!」
『Wow wow wow……!ゴジュウウルフ!!』

 吠はリングを使用して赤色の戦士へと変身する、改めてこの姿でエノルミータと戦おうとするがベーゼのタイプではなかったのでゴウバイヤーを徹底的に痛めつけた後に退散していた。

「……いなくなったし戻るか?」

「あっおい待てぃ、こいつ時空監獄に放り込んでおけば謝礼金入るゾ」

「なるほどな、貰えるもんはいただいておくとするか」


「はあはあ……何ですか今の私達の世界観にそぐわない人達」

「最近のベーゼちゃんの周りこんなのばっかじゃん」

「やはり浮気はダメですね……これからも私達はトレスマジア一筋で頑張っていきますよ!」

 今更ながら買ったクジの商品を受け取ってないことに気付いてないが変身した以上、ベーゼとレオパルトは本物のトレスマジアと戦おうという気構えで時空通販局からいつものように物品を注文している間に都合よくトレスマジアが来た、例の如くポチと真銀を連れて。
 真銀は中身がアレなのでやる気が落ちる。

「はあ……トレスマジアはともかく貴方はあまり戦っても楽しくないんですよね……なんなんですか指輪の人流行ってるんですか?」

「どういうこと?もしかして指輪の戦士がここに?」

「確かあの辺りでバイトしてたんじゃないですかね知らんけど」

「げっあそこ田所くんがバイトしてるところじゃん!ごめんマゼンタ達あとよろしく!」

 真銀にとっては指輪の戦士、ポチにとってもまだ謎の多いので情報を知るべくコンビニへ向かう。
 考え直してみると最近トレスマジアと戦うと必ず直ぐ側にあの男が居るので若干ジェラシーを感じる眼差しでこっちをみる、個人としてはお付き合いとかは好きにしていいと思っているが人の大事なポジションにずけすまけと上がり込むのはなんかこう気に入らないみたいな顔をしていた。

「最近あの男と仲良いですね皆さん」

「おうおう天下の魔法少女が男作るとかスキャンダルだぞ」

「死んでも御免やあんな変態野郎、お前らの息の根止めたあとに一緒に地獄に落としたる」

「地獄行きは確定なのね……いや、確かに地獄なのかも」

「二人ともそこまで言っちゃダメだよ!」

「んじゃあま……さっさとやっちまうか!!」

「上等や!!」

レオパルトが撃鉄を弾き開戦、アズールが水分から氷の剣を作って一気に飛ばすがベーゼの所に届く前に粉々に砕けてしまう。
 別の方向からも飛ばしたりブーメランのように形を変えてみるが、そのすべてが途中で砕ける。

「だったらこれならどう!?」

 砕かれる原因を調べるために水分をひとまとめにして頭上で 雨のように放出させると……その正体が見えた。
 ベーゼたちの目の前に見えない物から水滴が滴って守っているものがあった。

「もう見抜かれましたか……さすがマジアアズール、やってしまいなさい星壁獣サメレオン!!」

【星壁獣サメレオン】
元にしたもの:ブルーシャークパーカー
値段:3200ジーカ
能力:透明化、地中遊泳。

 ベーゼが合図を送ると二本足のカメレオンとサメを合わせたような怪物が現れてトレスマジアに襲いかかるがサルファがサメレオンの顎を受け止めて捕食を阻止する。

「口を開けなくすれば噛めないやろ!」

「ワニじゃないんだから!」

「でもこれはチャンスよ!サルファが抑え込んでいれば透明化しても逃げられないわ!」

「ちょっとベーゼちゃん、あの服結構したわりにはなんか弱いぞ!」

「やっぱりこの手のテコ入れは上手くいかないなぁ……ってそうじゃなくて!サメレオンこっちです!私とドッキング!」

 サメレオンは地面に潜ってサルファの拘束を突破してベーゼはサメレオンを羽織るように一つになると、ベーゼがサメレオンと一緒に透明になってしまう。
 透明になった彼女がどんな酷いことをするのか大体察せられるので咄嗟に大事なところを触られないようにガードするがマジアアズールはちょっと期待していた。
 だが忘れてはいけない、ここにはレオパルトもいるので体を守ろうとして無防備に隙を晒したら。


「ぶちまけろ」

「ちっ!」

 容赦なくショットガンをぶっぱなしサルファがバリアを展開。
 弾を撃ち込めばベーゼにも当たってしまうのではないか?と思うかもしれないが愛の力と気合で綺麗に避ける……何よりベーゼは既にバリアの内側に入っているので。

「捕まえた☆」

「う"うあっ!」

 透明ベーゼがサルファの耳をつまむ、更に脇やうなじにも手を伸ばして見えないままじっくりと愛撫する。
 本当なら踏んでやりたいがバリアで集中出来ずひたすら好きなように弄ばれるだけ、マゼンタやアズールが助けようとしてとレオパルトは容赦なく銃火器を放ってくるがアズールは真っ正面から弾丸を受け切る。

「げっ……そういえばこのドMカウンター技持ってるんだった、こうなったら必殺!ベーゼちゃんがアタシ専用にプレゼントしてくれた星壁銃を……!」


「待ちな!」

 声がするので来てみるとなんと先ほどのゴジュウウルフ(吠)とマジレッドが組んで現れた。
 これにはレオパルトさえもまたお前かしつこいなオメーもみたいな顔でウザそうに見る、ベーゼに関しては透明でも邪気が若干伝わってくるくらいだ。
 すぐそばにはポチも。

「貴方達どうしてここに?」

「私も指輪争奪戦しようとは思ったんだけどここの悪の組織倒すほう優先したほうが良い気がして……」

「先に面倒な奴から片付けるってわけだ」

「アタシらからすればめんどくせーのお前らの方なんだけど……ごめんベーゼちゃん、こいつらしばくからちょっと抜けるわ!」

「サメレオン!レオちゃんを援護して!!」

 自分で楽しむことより邪魔者退治を優先したいベーゼはサメレオンをレオパルトに着せると姿が消えて容赦なくミサイルを直撃させてくる。
 ゴジュウウルフはこれくらいの攻撃は指輪争奪戦で慣れているので自力で耐えるが透明になったレオパルトに攻撃が当たらない、マゼンタが援護しようと近付くがその手を跳ね除ける。

「いらん、俺はお前の敵じゃないが味方でもない」

「でもあれはあたし達の敵でもあるし」

「……それで言えばこいつもそうか、透明になったアイツをお前らはどうやって暴いた?」

「あそこのアズールが水をこう色々出来るんだけど、雨を出して水滴で……」

「アズールというのはあのボコボコにされてるやつか?」

「お"っ!!そこ凄い!!じゃなかったこれ以上の抵抗はおっほ!!」

「アレ多分見ちゃいけないと思うわ……って雨ね!だったら私がジルママジーロで雨雲を……」

「それだけ分かれば充分だ、お前はあのミサイルをなんとかしろ」

「えっ!?ぐえっ!!」

 ゴジュウウルフは立ち止まりミサイルをマジレッドを身代わりにして動き回り……足元や周囲を確認しながら飛び上がり剣を振り下ろすと力強く吹っ飛びサメレオンが爆散してレオパルトが姿を現した。


「げはっ……!!こ、こいつどうやってアタシの姿を!」

「俺はこの姿になってから鼻がよくなってな、雨の匂いでお前の場所がわかった」

「雨!?んなもんで……」

 掌の剣が首筋まで届きこのまま行けばゴジュウウルフがWINNERとなるがそんな都合良くいくわけがない、というよりは何かがおかしい。
 ベーゼは気分で『星壁獣』を作った、それはあくまで魔法少女相手に愉しみながらついでに邪魔な余所者を排除するためである、だが魔法少女を相手している場合てはないと判断すればその愉しみさえも放棄させて怪物を作る。
 それはファンシーさやいやらしさもない、星壁獣のような遊び要素もない、鞭を一振するだけで周囲の適当なものからモンスターを生み出す。
 マゼンタは咄嗟にモンスターを止めようとするが、全員がモンスターに気を取られた内にレオパルトが星壁銃を足元に放つことでブラックホールを生成しベーゼはレオパルトの手を握りながらブラックホールに入る。

「赤色のヒーローみたいな男、貴方の名前は?」

「……遠野、吠だ。」

「そうですか、貴方のこと覚えましたよ……そしてマジアマゼンタの直ぐ側に居る貴方のやりたいことも、私をどうしたいのかも……それでは」

 「アタシも覚えたぞオオカミ野郎……この屈辱いつか晴らしてやるからな!!」

 こうしていつものようにエノルミータは撤退した、しかし全員のムードはどうにも優れない。
 今回はしっかり優勢な結果で終わったというのにマゼンタの心にはもやもやしたものが残っていたが何かに気付いたポチが血相を変えてマゼンタに耳打ちすると途端に彼女も顔が真っ青になっていく。
 そんな様子を見せればアズールやサルファも黙ってはおらずポチを問い詰めるが一旦話が出来る場所に移動という形になり、さりげなく無関係ですよと言わんばかりに変身を解いてさっさとバイトに戻ろうとする吠もサルファが引っ張って拉致した。


「エノルミータ並びに私を崇拝するここに集まった時空犯罪者全員へ告げる、遠野吠を……いえ、それ以外の別世界人も私の邪魔をする者は全員死なせずにこの世界から追放させなさい」

 この日、柊うてなは変わった。
 常に自分の思い通りにいかないことは突然悪の幹部になってしまったときから覚悟していた、自分の目的を果たす為なら彼女は出来る限りの全てを尽くすだろう。
 マジアベーゼはトレスマジアによって倒されるべきである、自分にとって厄介になる存在も自分より先にトレスマジアを倒しかねない存在も全てこの場所から追い出す、何も死んでほしいわけではない……それ相応の『戦場』に土足で上がり込んでほしくないだけだ。
 時空からすれば自分がやっていることなど自分のエゴを通した飯事の過ぎないのだろう、だがこの飯事を通しきって倒されるまで絶対に誰にも負けないと誓った。
 倒して、時空監理局も時空犯罪者も他のヒーローも何もかも全て倒して、最後には彼女たちに敗れる。
 その為なら今使えるものはとことん利用しよう。

「いつか――どこかで、誰かが私を倒すでしょう、けれどそれは今ここではなく、奴らにでもない」

 「始めましょう皆さん、『この世界の本当の善と悪』の為の戦いを……!!」
最終更新:2025年04月22日 21:40