その日、世界に6つ大きな隕石が落ちてきた。
隕石といっても人のように小さな粒であり落ちてきてすぐに動いたので何か落ちたことにも気付かないか流れ星としか思わないだろう。
「あ……あれ?ここってどこだろう?トレスマジア……って、何?」
「ふぁあ……ねむ、あれ?年代が少し古い新聞のような……」
「ああ……そういうことでしたか」
「魔法少女って何?」
「うわ、マジヤバ〜☆これ本当にあるんだ」
「え、え!?ここって……」
ここに6人の魔力が1つの街に結集してバラバラに動き回る。
そしてその魔力は柊うてなと全く同じ反応であった。
更に同じタイミングではるかと吠は夜空で赤、青、黄色に輝く6つの流れ星を観測していた。
あまりにも家事代行として馴染みすぎてもはや普通に街の人にもそういうものと思われつつあった。
「……そのガリュートが言ってたことって本当なの?」
「ああ、例の局長が俺やお前を嫌ってるとな……実際俺は変身も何も出来ず生身のままアイツに痛めつけられた、お前も気をつけたほうが良い」
「うん……あっ、あの……あたしのお母さんは、後から聞いたけど」
「最初から存在しているようでしていない曖昧な状態、
はじまりの書で作るとたまにそこで手を抜くやつがいるらしいな、おい引っ張るな、飯はちゃんと作るっての」
妹達にくっつかれる吠を眺める竜義と薫子、あれからテガソードの声を聞いたことから気に入られた薫子はテガソードの里の看板娘を勧められたが中学生はバイト禁止だからと断りサルファの姿で宣伝をたまに行うという形で落ち着いた。
「あいつ何普通にはるかの家に馴染んどんねん……てかお前も帰らへんのか?」
「我々の場合は世界の一部ごと転移した形になる為、準備や手続きにも時間がかかるそうだ」
「ほーん、お役所仕事ってわけかいな……まあしばらくは客寄せパンダくらいにはなったる、問題はこのゴミやな」
テガソードから聞いてこれまで送られてきたセンタイリングが全て偽物と発覚。
たくっちスノーも回収したのはごく一部でかなりのレプリカが残されている、そのうち10個が新たにサルファの武器になったもののめちゃくちゃ余っている。
流れ星に関してはキレイではあったもののここまでマジカルな世界ならそういうこともあるだろうと気にする者はいなかった。
「なんやここは……ああ、ここもトレスマジアおるんか」
「トレスマジア……え?これあたし!?」
「あっ痛い……でもここで寝よう、明日もバイトが……」
「確かにここでアイツの反応が……」
「どうするか……まあええか」
「何、これ……」
また新たにトレスマジアに似た魔力の六人が現れたことにも気付かずに。
♢
「うん、やはりこの季節に食べるすき焼きは最高だ、君たちもそう思わないか」
「思うとか以前に私の家で食うな」
「ま、まぁまぁミッチー、特上の肉持ってきたのは熱海なんだから誠意を受け取ろうぜ」
同じ頃、イミタシオ魔法事務所は熱海常夏が良い感じのお肉を持ってきたので3人で囲んですき焼きを持ってきた。
シン・ロード団の表向き撃退とイミタシオの時空デビューを祝ってくれた選別である、これも熱海が時空のめんどくさいことをある程度引き受けてくれたおかげでありみち子としてはたくっちスノー以上に感謝しなくてはならない存在なのは事実だが……良い感じに利用されているだけなのも感じる。
「それはそうと、例のものは?」
「バッチリ完成してる、ドンモモタロウの力を元に作り出したウラシマルアバターギア、こいつにドンブライドをセットすればドンウラシルバーに変身できるぞ」
「いやあありがとう、あの力はサンシャインベストフレンドに託したとはいえまだまだ私の力を求める市民は多いのだ」
熱海は対価としてドンブラザーズのユニバース戦士に代わる新たな変身の開発をたくっちスノーに依頼して、とりあえず浦島太郎を題材にそれっぽいものを開発した。
キビダンゴ党なのに浦島太郎とはこれいかにとお前がすき焼きに集中することにした。
「ところで君はこれからどうする気かな?タイアップ商品を作る気らしいが私に出来ることは」
「政治家がなんかされたらきな臭くなるでしょうが……うーん、あまりトレスマジアの後追いにしたくないから試行錯誤だな」
「私としてはまず菓子パンのシールから始める予定だ、あの見た目を存分に利用して子供人気を得る、マジアベーゼへのリベンジはそこからだ」
「子供向けって……あの見た目で子供ウケキツイよ!?」
シン・ロード団の戦いの時には皆空気を読んで指摘しなかったしエノルミータの面々も似たような物なのでそういうものと扱われていたが、はっきり言ってイミタシオの魔法少女服は下部分がめちゃくちゃヤベェと。
とりあえずたくっちスノーはスカート履かせることに決めたがそれはそれでヤバいので更にタイツも追加しようということになった。
「ミッチー下部分マジでなんとかできない?あのケツで正義の魔法少女は無理があるでしょ」
「好きであんな格好になったわけじゃない!それもこれもマジアベーゼの……ん?」
みち子はどこかのロボアニメの新タイプばりの勘というか魔力が冴え渡りどうにも妙な予感を感じ取る。
これはマジアベーゼの気だ、こんな真夜中にイミタシオ並びに自分を攻めに行くタイプではないはずなので珍しいと思っているとそれが何体も居る。
エアプベーゼはあの時確実に始末したはずだが量産されてもおかしくないと感覚を冴え渡らせてそのついでに豆腐を食べる。
「彼女なかなか器用で面白いね」
「ケチ臭いところあるからミッチーは……痛え踏むな!!」
「おいたくっちスノー、まずいことになった……マジアベーゼの反応が6つもある
「6つか、今から行くには面倒だね……どうするわけ?」
「どうするだと?相手は偽物だ、またロードエノルメとしてブラックホールでチリ一つ残さず消滅させる……としたいが、エノルミータが動かないのは妙だな」
あんなに自分の偽物にキレていたマジアベーゼが6体の偽物に気付かないのは確かにおかしい。
鈍感になっているのか、それとも寝ているのか……あるいはまた別の可能性か。
黒影にしても昨日の今日で似たような作戦をするほどバカでもないので、ここは一つおでこに指を当てる。
常夏には一度見せたことがあるが、分身を作った5人のエリートバカ達は何かあった際におでこに指を当てることで一種のコマンドが発動して分身全てが現在までに見たり起こした出来事を一つに共有してまとめることが出来る。
何かあった時には別の分身がやらかしたと考えたほうが早い……そしてそれは的中したのは冷や汗をかく。
「g-lokシステム……だと?」
「は?何の話だたくっちスノー」
「別の分身の自分が変なもの作り出したらしい、簡潔に言うともしもボックスってあるよね?アレの発展型」
「よし言いたいことは分かった、今日はもう一切肉を食うな」
「そ、そんな殺生なミッチー!!」
「では私はここで御暇しよう!君の言っていることにも興味があるしね」
◇
翌朝早速調査のためにイミタシオの姿でたくっちスノーと共に街を歩く。
下半身がヤバい問題はタイツを履いたらとりあえず健全っぽいような気がするがポチは逆にエロいとか言い出したのでとりあえず刺しておいた。
柊うてなの反応が7つ、軽めに考えると変態が倍に増えたことになるので控えめに言って放送事故ものである。
「けど同じ場所に同一存在が7人も居たら、さすがに怪しむのではないか?」
「まあ自分たちは一方的な内容でしかうてなを知らない、だからこそ調べに行くんだしね」
復讐心で徹底的に調査したみち子とはじまりの書からカンニングしたたくっちスノーはマジアベーゼ=柊うてなであることを知っているが世界のバランスを守るために公表したりはしない。
これだけで大打撃を与えられるがみち子としては直接叩き潰さないことには満足いかない。
イミタシオとしてのファンサービスも欠かさず街を確認してうてなを探し回る。
「ところで、昨日言ってた何とかシステムを使ったのは黒影で間違いないのか?残りのバカ四人やお前の分身が勝手なことをしたという保証は」
「仕事だからって世界を混乱に陥れるようなことするような奴らじゃないしなぁ……自分だった時には煮るなり焼くなりって感じだが、自分が触ったわけでも無さそうだ」
その一方でトレスマジア達も違和感に即座に気付くことになる。
テガソードの里は朝から早々マジアサルファが看板娘……といっても店をうろついているだけで吠に邪魔だからと今日は隅っこに追いやられる。
バイトとして働かせてほしいと頼んできた子が居るので竜義がせっせと面接の準備をしている、吠は存在自体がイメージ悪くなるので引き離したということだ。
「ここってバイト雇うことあるのか?俺は雇わないくせに」
「今回は色々と特別だ、間違いだったら困るからな……」
「なんや、そんなにワケアリなんか?……って、これ……」
サルファでも竜義が冷や汗をかく理由も分かる、それを表すように扉を開けてその人物が現れる。
「よ、よかったぁ……時間ばっちり、あの、ここがテガソードの里で間違いないでしょうか」
「は……はるか!?」
バイト先に現れたのは花菱はるかだった、これには吠も二度見してサルファも変身を解いて聞いてみようとも考えたがここは冷静に竜義の面接に付き合うことにして相席した。
竜義も何かの間違いではないかと疑うが質問を重ねることにした、他人の空似ということもありえる……名前すら一致しているが。
「まずその……個人的な確認なんですが年齢に間違いはありませんか?」
「はい、あたしは17歳です!」
「お前、3人くらい妹が居たりしないか」
「えっ……なんで知ってるんですか?」
「どういうことや……」
はるかのようではるかじゃない、こんな事があり得るのだろうか……3人揃ってこの異質な違和感に困惑するがこれには覚えがある、時空に現れたあのマジアベーゼの偽物だ。
しかし今回の彼女には全くの悪意が見えない、バイトにしてもスパイ活動かもしれないので冷静に竜義が掘り下げているとサルファの
マガフォンに連絡が入り、マジアベーゼが現れたとポチから情報が来るが吠に耳打ちする。
(ウチはちょっと離れられんから先に行ってくれへんか)
(仕方ねえ、後でメシでも奢れよ)
吠はこっそり抜け出してマジアベーゼを倒しに向かい、はるからしき人物はサルファの方を眺めていた。
「えーと……あたしからも聞いていいかな?どうしてその、薫……マジアサルファがここにいるんですか?」
「こいつに前から雇われて客寄せパンダや、雑用とかはしてへんから任されるかもな」
「えっ?それってどういう……あっ、すみません」
マナーモードの携帯に受け答えするはるからしき人物、隠れているポチに頼んで盗聴してもらうと、どうやら向こうもマジアベーゼに気が付いたらしい。
「あ、あのすみません!面接までしてくれたのに突然急用が……」
「でしたらこのまま同行しながら面接を続けます、遠慮なくどうぞマジアマゼンタ」
「えっ……やっぱり分かってて」
「ちょっと説明は後や、同行するんやで」
♢
「おっと」
「わっ……すみません」
向かっている途中吠はうてなにぶつかってしまうが時間は無いのでそのまま走って後で詫びようとするがうてなに引き留められる、どうやらぶつかった拍子にボウケンジャーのセンタイリングを落としていたらしく拾っていた。
「これ……こんな形のモノ見たことありませんけど轟轟戦隊ボウケンジャーのグッズですよね、好きなんですか」
「いや、知り合いから一緒に貰っただけだ」
「あっ……そうでしたか」
吠はうてなからボウケンジャーのリングを受け取り目的の場所まで走り去る。
そのうてなはあのグッズをどこで手に入れたんだろうというような眼差しで追いかけていると、近くのカレー店に薫子の姿があり思わず目を向けてしまう。
薫子は山盛りのカレー皿に一心不乱にスプーンを引っ掛けて中へと詰め込んでいく。
(さっ……サンダーサルファ!?なんでカレー店でドカ食い!?)
「ごっそさん」
「ま、まさかチャレンジグルメをこんな子供が……」
「今日の鍛錬にはめちゃくちゃエネルギーが必要なんや、これくらい消費せんと……あいつには勝てへん」
◇
そして別の所ではもう何回繰り返したのか分からないがロコムジカと陸王のナンバーワンアイドル対決が行われていた、陸王は少しのファンサービスで女の子を虜にしてファンにしてしまう彼女にとって初めての強敵だがそれでも譲るわけにはいかない。
ここ最近は羞恥心を感じるような事が起きると歌が若干上手くなることに気付いたので恥を捨てて陸王と戦おうとしたその時、ギターを担いだうてなが二人の間に詰め寄る。
「あのすみません……警察の人の許可は取ってますか?こういう場所の路上ライブは犯罪になることがあるんですけど」
「それに関しては心配いらないよ、もしお巡りさんが来ても僕の魅力の前にはイチコロさ」
「悪の組織がこんなこと気にしてられないでしょ!警察怖くてエノルミータやってられるか!」
「……はい?今エノルミータって言いました?貴方いつからウチのメンバーになりました?」
「えっ」
うてなから言われたあまりにも衝撃的すぎる一言にロコムジカはフリーズして陸王はしっかり聞き逃さずにうてなに近付いて聞いてみる。
「そのギター……もしや君バンドやってないかい?それにその指の形は長くマイクを握った時特有の物と見た」
「あなた芸能系の人ですか?確かにそうですけど……あっ、汚いですがチラシどうぞ」
ギターうてなはバッグからチラシを取り出すと陸王に手渡す、そこにはロックバンド『エノルミータ』の全貌が描かれておりセンターを陣取るハート型のメイクを付けて星型模様の装飾を付ける彼女は……。
「驚いた、こんなところで会えるとは思わなかったよ……マジアベーゼ」
「あっ、私の事知ってたんですか?へへへ……まだ出来立てみたいなバンドなんですけど、マジアベーゼというのは芸名で本名はひい……」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよぉ!!ここまてアイドルとして頑張ってきて除け者ってそんなに嫌われることした……?」
あまりのショックに涙声になりながらロコムジカはギターうてなに迫るが、ロコムジカを掴むようにキラキラと光るものが掴まえて信号機に立つ。
よく見るとそれは金髪でネイルも付けて携帯もデコりどことなく悪の組織とは思えない目立ちっぷりをしたマジアベーゼ……らしきものだった。
「うぇーいほら笑って笑って〜、アイドルは顔が命でしょ」
「えっ何、今度は何」
「何あの私にそっくりのようで全然正反対な陽キャ!」
「これは驚いた、今度の偽物は見栄え重視で来たわけだね」
「偽物ってどういうことですか!?まさか私っぽいやつが何体も」
「そのまさかですよ……というか貴方もそうでしょうが!」
「ぎゃひん!」
と、満を持してようやく本来のマジアベーゼがギターうてなに鞭打ちして現れる、エアプベーゼの前例もあり自分自身ならどれだけ邪険に扱っても問題ないという認識が生まれつつある。
改めてギャルのような見た目のマジアベーゼの方を向く、陸王もどうやら全員が彼女の味方ではない事を理解する。
「貴方……どこの物ですか?またシン・ロード団の作った偽物だったりします?」
「はー?偽物?なにそれ、ウチらは同じマジアベーゼ、同じ悪の組織……それ以上でもないことは、同じベーゼならわかってるでしょ?」
「だから!私はただのバンドのボーカリストで悪の組織だとかそんな中二病みたいなものじゃ……」
「見つけたでマジアベーゼ……」
更にマジアサルファまで合流する、なんかカレー臭いのでついさっきドカ食いした方のサルファらしい。
「あなた……なんかきつくないですか、色々」
「ちゃんと歯は磨いて口臭の奴は使ってきたわ!!マジアベーゼが何人もおるとは聞いてたが……あれ、ウチの知っとるやつおらんな、ギャルにバンド野郎にふざけた格好に」
「ふざけた格好って私のことですか!?」
「もうわけわからない……」
うてなが複数、更にそこから吠がマジアマゼンタを連れてきて……爆神が面接していた方のはるかをマゼンタに変身させることでようやくはるか達も2人いることに気付く。
「えっあたしが二人!?」
「それに向こうは年上っぽいし」
「もうどうにでもなれ……」
だがベーゼには現実逃避している暇もない、ギャルみたいなベーゼは耳打ちして衝撃的な事実を突きつけてくる。
「ウチらあと四人いるからまだ耐えといて」
「は……は!?は!?はあああ!?4人ってじゃあなんですか!?今この場所にマジアベーゼが私含めて7人も居るってこと!?ロコちゃん撤退!一時撤退!!今は私の偽物を探すことを優先です!」
「えっちょっと待って!」
「貴方達も一旦来てください!」
「あいさー」
「えっだから私は無関係で……たっ助けてええええ!!!」
マジアベーゼはギャルのマジアベーゼとギターうてなを引っ張ってロコムジカと共にアジトへと撤退。
居なくなった事を確認した吠はさっさと帰るが、サルファはマゼンタ2人を見て考えた後に近づく。
「サルファ、これは一体どういうこと?」
「さあな、一つ言えることはウチはお前らの知ってるマジアサルファやない……なあ、トレスマジアも偽物さんを確認したほうがええで、味方って保証もあるわけじゃないんやからな……」
最終更新:2025年05月11日 07:07