「どうしたの! 早くかかってきたらどうなのさ!」
「おっおっおっ……」
だが、ブンは笑うだけだ。
そして舞人はふと気づいた。
「あいつ……なんか動きが早くなってないか?」
「えっ……」
言われてみて
ルーシィもそれに気づいた。
ゆっくりだったブンのスピードが少しずつだが上がってきている。
そして、気づいてから1秒、2秒と時間がたつにつれ、目に見えて加速度はどんどん上がっていく。
「今頃気づいたところで手遅れだお! おいらの能力、“ksk”の恐怖を味わうがいいお!!」
ルーシィが出方を伺っている間に、ブンのスピードは目で追うのもやっとというほど加速していた。
「な、なんなのこのスピードは……!」
「おいらの能力kskは、最初はほんの少しのスピードにしかならないお」
ブンは頼まれてもいない説明を始めた。
「だけど、時間が経つにつれそのスピードはどんどんあがっていくんだお!」
すでにブンのスピードは、その姿が残像になって残るほどのスピードへと加速していた。
これではいかなルーシィといえど、その姿を捉えることは困難だ。
「そしてそのスピードが臨界点を超えたときッ!!」
舞人とルーシィの周囲を駆け巡るブンの残像が、まるで2人を取り囲んでいるような錯覚に陥る。
「おいらのkskはこの世界の刻を止めることができるんだお!!」
「な、なんだってー!!」
そこでようやく、アホな舞人にもブンが長々と説明を始めた理由がわかった。
すべては加速度をあげるための時間稼ぎだったのだ。
現在のブンのスピードは、イナズマの速さを持つツンデインをもってしても捉えきれるかはわからないほど早い。
「くっ……迂闊!!」
ルーシィが歯軋りする。
「おっおっ、怯えろ、竦めお! 勇者の実力を生かせないまま死んでいくお!!」
ブンが勝ち誇った雄たけびを上げる。
「刻が止まるまであとちょっとだお!!」
2人の周りをぐるぐる回るブン(と残像)がその輪を狭めてくる。
「フ……ふっふっふ」
「マイト!?」
そのとき、不意に舞人が笑い出した。
「おっおっ、ついに恐怖で頭のネジが吹っ飛んだかお!」
「いいや違うな。この程度の技、俺に敗れないとでも思ったのか?」
なぜか無駄にキャラを作って不敵な笑みを浮かべる舞人。
「ふん、刻を止めるだと? 甘いッ、俺がかつてエジプトで戦った男は、もっと簡単に刻を止めて見せたぞ!!」
「なっ、フカシこくなお!!」
「ちょ、ちょっとマイト! だから君じゃ無理だって! ボクのツンデインでさえこのスピードには……!!」
「ふ……こんな奴、右足1本で十分だ」
舞人はニヤリと笑って目を閉じ、忍者がよくやるようなニンニンポーズを取ってから――
ついっ
ぐるぐる周回しながら輪を狭めてきたブンに向かって、右足を投げ出した。
ガッ!!
「だおっ!?」
ずべしゃああああああああっ!!!」
「だおおおおおおお!!!」
「うぎゃああああああ!!!!」
投げ出された足に躓き、盛大に地面にダイブするブン。
そして同時に悲鳴を上げる舞人。
「足がっ!! 足が折れたあぁぁぁぁ!!!」
舞人の放った右足は、見事にブンの足をもつれさせ、kskを中断させることに成功した。
しかし、ブンの体には十分に加速がついていたため、ヒヨワな舞人の足はアネハ物件並のモロさで砕けてしまったのだ。
「マイト! ナイス!!」
だがルーシィは、そんな舞人を捨て置き口早に呪文を詠唱した。
「ツンデインッ!!!」
ぴしゃあああああんっ!!!
「おおおおおおおお!!!」
勇者のみが扱える雷光魔法は地面にはいつくばったブンを余裕で捉えていた。
一瞬にして黒コゲになるブンだったが、仮にも四天王である。
髪をアフロにしながらもよろよろと立ち上がり、
「きょ、今日のところは見逃してやるお! そいじゃ、バイバイだお!」
そう言い捨てて、驚くべき逃げ足で逃げ帰っていくのだった。
「典型的だなぁ……あ、そうだ、マイト! 大丈夫?」
「足がぁぁぁぁぁ!!」
今度は演技ナシの痛がりようである。
「もう、マイト! 勇者なんでしょ、それくらい我慢しなよ!!」
「無茶いうなぁぁぁぁ!!」
「ああん、もう暴れるなっ!!」
ルーシィはマイトを押さえつけ、再び短い呪文を唱える。
「リ・ゲイン!!」
「いでぇぇぇぇ……あれ? 痛くない」
「あ、立っちゃダメだよ。魔法で痛みは消せても、本来傷を治す魔法だから骨まではくっつくないから」
逆光気味に見えたルーシィの顔は、今までに見たこともないような優しい表情だった。
「お、おう……」
「あとで僧侶の人に魔法で治してもらおう」
「お、おう……」
いつもとどこか違った様子に、思わず間の抜けた返答しか出来ない舞人。
「それじゃ、とにかく帰ろう。……ん」
不意にしゃがみこみ、背中を向けるルーシィ。
「な、なに?」
「おぶってあげるって言ってんの。歩けないでしょ、その足じゃ」
「ちょwwww」
「何だよ。早くしなよ、置いていってもいいんだぞ?」
「おぶさらせていただきます、押忍ッ!!」
街へと続く一本道を歩くルーシィと背中の上の舞人。
(なんかこれ、普通逆じゃね? 怪我をしたルーシィを背負って、おっぱいが……)
「ね、マイト……」
「いや別に俺はやましいことなんかっ!?」
「なにさ?」
不意に話しかけられ、思わずキョドって脳内の妄想を口走りそうになる舞人。
だが、ルーシィにその本意がわかるはずもなく、
「ちょっと見直したよ、マイト」
「へ?」
「さっきのアレ。あんな大胆な方法で切り抜けるなんて、思ってもなかった」
「あ、ああアレか……」
まさか昔見たアニメでやった技を真似してみただけ、だなんて言えるわけもない。
「自分の足を犠牲にしてまで相手の技を破るなんて、マイトって実は凄い度胸あるじゃない」
「い、いや別に……」
そのアニメでは、主人公はロボに乗っていたことを失念していて、怪我の心配など毛頭になかっただったりする。
「なんにせよ、今日はマイトに助けられちゃったね」
「そ、そんなことは……あいつにも逃げられたし」
「命あってのものだねだよ。……ありがと、マイト」
「……」
(ちょwwwwこれはデレ状態じゃないのか、常識的に考えて……)
「それでも、足を怪我するのならともかく、骨まで折ってるってのはいただけないね。もっと鍛えなくちゃダメだよ」
「ぶっ、結局それかよ!」
「当然。骨を治したら、足腰強化の特訓もしないとね」
「\(^o^)/」
「ところで、えじぷとってどこ? 君、前にも刻を止める敵と戦ったってホント?」
「ま、まぁな。プレステでだけど……」
「ぷれすて?」
「いや、なんでもないぞ? 早く帰ろうぜ!!」
「あ、なんだその態度? あーあ、ボク疲れちゃったな。荷物どっかに置いて帰ろうかなー」
「ちょ、おまwwww」
最終更新:2007年12月09日 22:07