そして、
「ぬわああああああああ!? 俺の馬がぁぁぁぁぁぁ!?」
パカッポ パカッポ ペケペケ
身軽になった馬が、一人もとい一頭揚々と走り去っていった。
実に人徳のない勇者である。
「おぉーい……馬ってのは主人を待ってくれたり追いかけてきたりするもんじゃないのかー……」
そんな悲痛な声もどこ吹く風か、馬は見る見る間に
舞人>八神 舞人の視界から消え去っていった。
「……これだから動物は信用できないんだぜwwwwwwせっかくスロー・ヴァルキリーってカッコイイ名前つけてやろうと思ったのにwwwwww」
なにかとなにかを足して2で割った名前のどこがカッコイイのかはともかく、地平線に向けて毒を吐く舞人。
本当にこれのどこが勇者なのであろうか。
そのまま気が済むまで30分、馬鹿丸出しで大声を張り上げ続ける舞人。
「……ここまで来て戻るのもアホらしいし……歩くか」
ようやく我を取り戻した舞人は、息を切らせながら現実を見据えてぼそりとつぶやいた。
「あー……しんどーい……だるーい……重たいー……」
舞人はさっそく不平をぶちまけながらだらだらと街道を歩いていた。
出掛けに購入したいかにも勇者っぽい見栄えのする鎧が、歩くたびに体の負荷になる。
実際のところ、この鎧は見栄えだけのいいチャチなもので、重量だってそれほどではない。
しかし、日ごろ運動不足の舞人にとっては十分な枷だった。
おまけに道はアップダウンの激しい山道へとなってきている。
木々も鬱蒼と茂り、視界も悪い最悪のロケーションだ。
「ファ、ファンタジー世界を侮りすぎてた……」
ひーこらひーこらしながら山道を歩く舞人。
最終更新:2007年12月09日 22:13