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「よーし、じゃあ今日の特訓はここまで」
「ガクリ」
 ルーシィの地獄の猛特訓が終了し、舞人はたまらず地面に倒れこんだ。
「やれやれ……ほら、早く水浴びして日が落ちちゃう前に帰るよ」
「……水浴び」
 本来なら絶好のCG回収イベントなのだが、その夢は初日のうちに断念していた。
 喜び勇んで覗きに行ったところ、返り討ちにあい木に縛り付けられてしまったのだ。
 それ以来、精神修行の一環だと木に縛り付けられ目隠しされ、音だけ聞こえるという状況で耐えさせられるのが日課のひとつになっていた。
「えっちなのはいけないぞ!」
 とはルーシィの談である。
「ほら、立った立った」
「ク、クララが……」
「? ……クララって、誰……?」
「いやなんでもない」
 こんなときにもボケを忘れない舞人であった。
 だが、疲労のあまり舞人はルーシィの言葉に含まれたかすかなニュアンスに気づくことは出来なかった。
「もう! ほら、早く立ちなよ、行くよ!」
「……なんで怒ってるの?」
「怒ってない!」
 ルーシィは明らかに怒っている様子でずんずんと泉のほうへ向かって歩いていく。
 舞人があわてて後を追おうとしたそのとき、
 がささささ……

「このお約束の音は……」
「ブッチョォ~~~!!」
「野生のモンスターが飛び出してきたwwww」
 行く手をさえぎるように飛び出してきたのは、たるんだ腹が目立つ白いボディに宝石のようなもので意匠化された目と口を持つモンスターだった。
「これどっかで見たことあるんだけど……」
「マイト気をつけて、そいつはブッチョだよ!」
「いやブッチョだよって言われてもな……ぱっと見、ブタバナより弱そうなんだけど」
 外見はブタバナよりも可愛げのない面構えだが、細くて短い手足を見ても、ソフトキャンディー的なボディを見ても、強そうには見えない。
「なんか俺でも倒せるんじゃね? ていやっ」
 舞人は無造作にブッチョの体を蹴り飛ばす。
 やっぱり見かけどおり、ソフトな弾力が伝わってきて、ブッチョの体は抵抗も出来ずに飛ばされる。
「ほら、弱いじゃん」
 けらけらと笑う舞人だったが、ルーシィの顔色が尋常ではないことにようやく気づく。
「この―――アホンダラ!!」
 ルーシィが鬼のような形相で舞人に飛び掛ってきた。

 どごぉぉっ!!

「はんにゃはらみたっ!!」
 舞人はルーシィの突進をモロに食らって、謎の悲鳴を上げて吹っ飛ぶ。
 次の瞬間、

「 任 務 完 了 」
 ブッチョの口から不吉な声が漏れ、あたりは閃光に包まれた。

 どぐぉぉぉぉぉんっ!!
「にょわああああああ!?」
「アスファルトン!!」
「ぐぼぇぇぇぇっ!?」
 爆風と熱波が舞人たちに襲い掛かる。
 一瞬遅れてルーシィが呪文を唱え、下敷きになっていた舞人は内臓が口からこぼれてくるような錯覚に陥った。
 現に覆いかぶさっていたルーシィの体重が何倍にも重くなっていたのだ。
 防護魔法アスファルトン。体を鋼鉄のように硬く、重く変化させてあらゆる攻撃から数瞬だけ身を守る勇者専用魔法である。
 超重量に悶絶して数秒、ようやく爆発による煙が薄れてきた。
「……ふぅ。マイト、だいじょう……うきゃあっ!?」
「げぼがぼぐぼ……」
「た、大変だっ、マイトの口から何かブキミなものがっ!!」
 ルーシィは大慌てで舞人の口からこぼれる何か大切なものをかき集めて、口の中に押し戻していく。
「……はっ!! なんか不思議な川の向こうで誰かが手を振ってた!?」
「よ、よかったぁー……」
 舞人が顔面蒼白になりつつも起き上がってきて、ルーシィは安堵のため息をこぼす。
「おまっ、ルーシィ! 俺をころs………!!」
 舞人はルーシィに怒鳴りかかろうとして、その背中から煙がくすぶっているのを見て我に返った。
 落ち着いてあたりを見渡し、ようやく現状を把握できてきた。
 あたりの草むらは円形に焼け野原と化していた。その中心部には爆発四散したブッチョだったモノが転がっている。
 自爆したのだ。
「お前、俺をかばってくれたのか……」
「べ、別にかばったとかそういうんじゃないよ。君はまだ完全防護魔法も使えないからね、代わりにボクが使っただけだよ!」
 それを世間一般に「かばう」というのではなかろうか。
「大体、ブッチョのこと何も知らないでむやみに攻撃した君が悪いんじゃないか! あいつらは一撃で倒さないと自爆する厄介なモンスターなんだぞ!」
「う……そ、それはその、悪かった」
「ま、まぁわかればいいよ。素直でよろしい。とにかく、今回は二人とも無事だったからよかったものの、次からはちゃんと気をつけるんだぞ」
「無事ってお前……背中」
「こ、こんなのたいしたことないよ。かすり傷さっ」
 ルーシィは背中を隠すように後ずさり、短く呪文を唱える。
 次の瞬間には魔法衣V.I.Pは焼け焦げた部分を自己修復させ、傷を視界から隠してしまった。
「ちょっと時間食っちゃったけど水浴びする時間くらいはあるよ、早くいこ、ほらっ!」
 ルーシィは半ば強引に、舞人を急かしながら泉へと向かって歩き出した。 @wikiへ

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最終更新:2007年12月09日 22:17