「ごめん。私、一人で帰るね」
―――男くんにそう言い捨てて、私は走っていた。
ただただ、走っていた。
何かから逃げるように。
事実から、眼を背けようとした。
違う。
違う。
違う。
「私は、そんなこと―――っ!」
信じたくない。
自分の醜さを。
感じたくない。
その醜い心を。
―――私は、走り続ける。
ココロに潜む闇から、逃げ出すように―――
―――
「はあ……はあ……っ」
気付けば、そこは屋上だった。
……男くんに、告白した場所だ。
凍りつくような風が吹き付け、歯はガチガチと震えた。
……赤い風景。
鮮血のような、真っ赤な夕焼けだ。
……私は震えた。今度は寒さからではなく、嫌悪感から。
自己嫌悪だ。
男くんは、私のモノ。
……そんなことを、思ってしまったから。
……思えば、何時からだろ。
男くんが、他の女の子と話してるのを見ると、苦しくなったの。
男くんが、私以外に笑顔を向けているのが、嫌になったの。
二人で居られないと、ココロが落ち着かなくなったの。
知ってる。これは、独占欲というもの。
いつの間にか私は、独占欲に呑まれかけていた。
「嫌、だよ」
欲に呑まれて、私はおかしくなりたくない。
「嫌だ……っ」
私は私のままでいたいよ。
私は私のままで。
男くんと、お姉ちゃんと、こなちゃんと、ゆきちゃんと、いっしょに……!
……だけど。
「あ、はは……」
―――ワタシ……オトコクント、イッショニイタインダア……。
私は泣いて、笑った。
今までの自分と、さよならするために。
―――その日、私は、欲に呑まれた。
☆―――
最終更新:2009年09月04日 19:18