―――
結局俺は、一人で帰った。
久しぶりの一人は、どこかむなしく感じた。
……やっぱ、後を追うべきだったか……。
自宅のベッドに寝転んで、そんなことを考えていた。
……その時、携帯電話が鳴った。
表示を見ると、【柊かがみ】。
……つかさのことだろうか。
俺は少し覚悟して、電話に出た。
……そして、その覚悟は、すぐに壊された。
『もしもし!? 男!?』
受話器からは、かなりの大声が聞こえる。……何か、あったのだろう。
「落ち着けかがみ。一体どうした?」
『こなたがっ……!』
―――こなた? つかさじゃないのか?
『こなたが、刺されたのっ……!』
☆―――
刺された。
何でかは、分からなかった。
誰かは、よく見えなかった。
でも一瞬、よく見知った顔が見えた気がした。
あれは―――
☆―――
「こなたっ!」
バン! と激しくドアを開ける。
かがみに教えられた病院の扉だ。
そこには、ベッドの横に座るかがみの後ろ姿と、
「あ、男、おはよー」
いつもの笑顔を浮かべた、こなたがいた。
「―――あれ?」
何で?
―――
「むすー」
「あはは、ごめんねってば」
かがみが謝っているが、無視。
徹底的に無視。
「私だって、最初はかなり慌ててて、まさかこんなに浅い傷だとは思わなかったのよー」
「……ったく。俺がどれだけ全力疾走したか」
「あははー。いやー男がそんなに私のことを心配してくれてたなんて、感激物だよー」
「……お前、元気な」
「……しかし、誰がこんなこと……」
こなたを狙う奴なんか、いるのか?
「それなんだけど……」
「あはは……」
「? 何だ?」
「実はさ、よく覚えてないのだよ」
「は?」
「多分刺されたときのショックで忘れたんだと思う」
「……そんなゲームみたいなこと」
「いやーあるんだねえ、これが」
私が実証だ。と言わんばかりに無い胸をはるこなた。
「…………」
だから何でこなたはそんなに元気なんだよ……。
「あ、それとね。私、しばらくは入院だって」
「……ああ、どのくらいだ?」
「丸一週間だってさー。大げさだよまったく」
目を細めてため息を吐くこなたは、いつものこなただった。……安心した。
―――
もう夜も遅いし、と名残惜しそうなこなたを置いて、病院をでた。
今は、帰り道。
「……あ、そうだ、かがみ」
「ん? 何?」
「つかさ、何で来てなかったんだ?」
「…………」
途端、かがみの表情が暗くなる。……まさか、つかさにも何かあったのか。
「……電話、したんだけどね。電源、切ってるみたいで……出ないのよ」
「……そっか」
……やっぱ、何かあったのかな……。
「まあ、私からこなたのことは伝えておくわね」
「ああ、頼む」
「……ねえ、男」
「……何だ?」
「―――つかさと、何か、あった?」
「……何かって、何で」
「いや……さっきから、つかさの話題を振ると、顔が暗くなるから」
……そんなとこ、見てるのか。
「ああ……あったよ、ちょっとな」
―――
「―――で、つかさは走ってどっかに行っちゃったんだ」
「…………」
公園のベンチで、かがみに今日の放課後あったことを伝えた。……だまりこむかがみは、口に手を当てて、何かを考えている。
「……ねえ、男」
「な、何だ?」
「こなたに、ゲームに誘われてる時に、いきなりつかさがきたのよね?」
「ああ」
それが、どうしたのか。
「……つかさは、男にこなたを近づけたく、なかったんじゃないかな」
……それは。いや、でも……。
『うん、今日から二人で食べよ?』
……何で、つかさは弁当を作ってきてたんだろう。
俺は、いつもは弁当を持ってきてるのに。
『私、男くんに合わせたいから』
今日の、異常なまでの積極的な行動……。
―――まさか、つかさは、俺の行動を、把握している……?
―――ドクン。
「……思い当たることが、あるのね?」
―――ドクン。
「じゃあ、まってくれ。つかさが、つかさがそこまで俺とこなたを引きはなそうとしたってことは……っ」
―――ドクン。
「……信じたく、ないけど、あの子、ずっと悩んでたから」
―――ドクン。
「悩ん、でた……?」
―――ドクン。
「男をとるか……友達を、とるか」
―――ドクン。
「そんな……! そんなの、両立すればいいだけじゃないか……!」
―――ドクン。
「……それほど、両立できないほど、あんたが好きだったのよ」
―――ドクンッ!
「そんな……そんな……それじゃ、まるで」
そんな、そんな理由が有ってしまったら。
―――つかさが、こなたを刺したみたいじゃないか……!
最終更新:2009年09月03日 20:56