アットウィキロゴ
二度寝…。








【第七話;アイタイ】


目が覚めたのは午後一時過ぎだった。寝過ぎて頭が痛い…。
シャワーを浴びて街をブラブラした。

引っ越して来て約半月。こなたと再会して、友達が出来て、いい先生に出会った…。
中学入るまでの俺は、自分が人並みほども恵まれていないと思ってた。いじめられて学校は楽しくないし、やっと出来た友達は遠くへ行って、母親が死んで。
でも今はきっと人並み以上に恵まれている。
そう考えると、足取りは音楽の様に軽い。

何となくバスに乗って市内の大きな公園まで来た。

公園は思ったより余りに広くて、散策する気は起きず、サイクリングコース脇のベンチに座ってボーっとしていた。

『明日テストなのにずいぶんな身分だな、俺…』

俺は、またさっき考えていたことを思い出していた。
今、こんなに気持ちが軽いのはなぜか?――こなたに再会して、行動を起こしたから?
今、こんなに余裕で遊んでられるのはなぜか?――こなたのせいで勉強頑張るはめになったから?

俺は迷いが生じ始めていた。

『このまま、こなたに俺の事言わないでいいのか?』

せめて、小学生の時ありがとう、って言わなくちゃいけない気がする。


男「よっこいしょういち」

何となく、つかさのマネをして立ち上がり、バスに乗った。
『しょういちって誰?雀師?』


バスを降りて歩いていると、こなたからメールが来た。


【from】
泉こなた
【タイトル】
無題
【本文】
ちょっとだけ会いたい。

ピッピッピッ…ピッピッピッピッピッピッピッピッ
…
トゥルルル…

俺は思わず電話をかけていた。


トゥルルル…
トゥルルル…
トゥルルル…
トゥルルル…ピッ
『留守番電話サービスセンターに…』
ピッ

俺は急いでリダイヤルを押した。
トゥルルル…
トゥルルル…
トゥルルル…
ピッ
…
こなた「おとこ…?」

男「こなた?」

こなた「…。」

男「こなた?」

こなた「うん。」

男「会うって今から?」

こなた「…うん。」

男「風邪はもういいの?」

こなた「だいぶいい。」

男「家行けばいい?」

こなた「うん。」

男「今すぐ行って平気?」

こなた「うん。」

男「じゃあ今から行くからね。」

こなた「うん。」

俺はファ●リーマートでポカリと果物を買うと、こなたの家に向かった。

ピンポーン

…

…

ガチャ。

こなた「………おとこ。」

男「こなた………。」

こなた「あがっていいよ。」

男「あ…うん。」


パジャマ姿のこなたが背中を向けて、俺の前を歩く。

聞きたいことが、言いたい事が、たくさんあった気がした。
でも少し元気が無くて、少しいつもより女の子の顔をしているような気がするこなたを見るとそんな事忘れていた。

こなたの目が、少し腫れぼったく見えた。

『ずっと寝てたのかな…』


こなたの部屋に入った。

相変わらずの部屋。机の上にはパソコン。
横のラックにはソフトやらフィギュアやら。

でもずっと寝てたんだろう。ちょっと埃っぽい。

ベッドの上の掛け布団はめくれて、今までそこにこなたが居たのが分かる。布団の上にはケータイとみゆきさんのノートがあった。

男「もう、いいのか?」

こなたはベッドに座って話す。
こなた「うん。だいぶ寝て充電したからなー」

男「ずっと寝てたのか?」

こなた「うん。だからアニメがたまってさー」

男「全く…」
いつものこなただ。俺は少し安心した。

男「明日から試験だけど大丈夫か?」

こなた「みゆきさんノートに全てを賭けている。」

男「布団の中で読んでたのか?」

こなた「いやいや、これからですよーまだ明日まで十時間以上あるではないか!」

男「お前っ!風邪ぶり返すから徹夜とかダメだ!」

こなた「だっ…大丈夫だよ。実は今日はもう朝から熱ないし、昨日までずっと寝てて全然眠くないのだよ。」

男「…無理すんなよ。」

こなた「うん。でも補習は嫌だしのぅ。」

男「補習になったら、俺が教えてやるよ。今までみたいに。」

こなた「男は…なんでそんなにしてくれるのかな、かな?」

『幼なじみだからに決まってるだろ!』

男「友達が留年とか嫌だろ。」

『言えなかった…』

こなた「留年はないよjk」

男「まーお前、覚えるのは得意らしいからな。」

こなた「一夜漬けなら任せなさい。」

男「全然威張れん。」

男「そういえばさ、みゆきさんのノート見せてよ。」

こなた「最悪です。」

男「??ダメって事か?」

こなた「私の布教は何だったんだ…」

男「見せてよ。」

こなた「CRANADをやらない男には、みゆきさん秘伝ノートは見せません。」

男「意味分からん。」


こなたは俺の買ってきたポカリを一気飲みすると、小さく言った。

こなた「心配してくれてたのに、ゴメン。」

男「いっ…いや、別に気にしてないよ。」

こなた「…」

男「じゃっ…じゃあ俺帰るよ。こなたも無理しない程度に頑張れよ!」

こなた「…うん。」

男「あっ果物食べろよ。せっかく買ってきたんだし。たしか料理とか割と上手かったよな?それじゃ!」

俺はこなたに玄関まで送ってもらい、家に帰った。意味もなくダッシュして帰った。



こなた「料理の事、言ってないよ?なんで知ってるのかな、かな?」








【第八話;ナミダ】


……完全に眠れなかった…どうなってんだ…俺…


ギリギリの電車に乗り込む。こなた達は先に行ったようだ。


教室で、こなた、つかさ、みゆきさんに会った。

こなた「ギリギリとは余裕ですな。」

男「うるせー」

つかさ「遅刻しちゃうのかって心配したよー良かったー!」

みゆき「こなたさんも風邪が治ったみたいですし、本当に良かったです。」


俺はこなたにだけ聞こえる小さな声で聞いた。
男「何とかなったか?」
こなた「うむ。みゆき様々じゃ。」



テスト開始。

………余裕だな。

みゆき『………♪』
つかさ『………!』
こなた『………ニヤリ』


それぞれ次の日のテスト勉強があるので急いで帰って行った。

なんだか…かがみの様子がおかしい様に見えた…かがみの事だ、勉強はしっかりしてるはずだが…

金曜の午後。あっと言う間に5日が過ぎて、テストは終わった。
結果は月曜に分かる。

明日は土曜だがテスト休みだ。

つかさ「男君!今日はみんなで一緒に帰ろうー!」

男「うん、そうだね。」

みゆき「皆さん、もしよろしければうちでお茶など飲みませんか?」

こなた「おっいいねー!」

男「じゃあかがみのクラスのHR終わるまで待とうか。」

…
…

かがみが教室から出てきた。

かがみ「あ…おとこ…みんな…。」

こなた「かがみん…?」

かがみの今にも泣きそうな顔に俺を含めたみんなは驚いた。

かがみ「私…私……」

みゆき「と…とにかく行きましょうか?」

みゆきさんの機転で、かがみがみんなの前で泣き出す事は無かった。

みゆきさんの家。

かがみはみゆきさんに抱きついて泣きじゃくっている。
かがみが泣くのを初めて見た…。

どうやらテストが思うように出来なかったらしい。

普段出来ていることが思うように出来ないというのは、大きなダメージになる。
俺も多分そうだが、かがみも『自分が出来ない事』が一番悔しいと感じるタイプなんだろう。

みんなでかがみを慰めた。

…それにしても、かがみがテストで失敗するなんて、何かあったんだろうか?


夕方になったのでそれぞれ家路についた。

俺はかがみ達と同じ駅で降りて、ゴトーヨーカ堂に向かった。

後ろからかがみが走ってきて、俺に追いついた。

かがみ「…私も買い物あるから一緒に行っていいかしら?」


さっきまで泣いてたかがみは、もういつもの強気な目をしている。
多分…いや絶対強がってる。

『ダメ』

なんて言えるわけ無いじゃないか。

男「いいよ、一緒に行こう。」

かがみ「うん、ありがとう。」

ゴトーヨーカ堂。

カートに買い物かごを入れて、かがみがカートを押す。
『手持ち無沙汰だから』と言うことでかがみがカートを押すから、俺はちょっと遠慮がちに商品をカゴに入れる。

俺がかごに入れるものを、じっと見つめるかがみ。
かがみ「おから、にんじん、れんこん…」

男「ん?」

かがみ「…何作るの?」

男「父親がしめ鯖置いていったから、卯の花和えでも作ろうかと…。」

かがみ「…。」

男「あっごめん、意味わかんないよな。うちの父親、長期家空ける仕事でこの間ちょっとだけ帰ってきたんだけど、なんか自分で食べようとして買った真空パックのしめ鯖置いていったんだよ。」

かがみ「…そうじゃないの。」

男「えっ?」

かがみ「男って、何でも出来るのね。」

男「そんな事無いよ。」


しゃべってる時間より、しゃべらない時間のが長かった。
周りには買い物客が沢山居たが、俺たちとそれ以外の風景の間には、見えない隔線が有った。


買い物が終わった。ゴトーヨーカ堂を出る。

男「明日はさ、学校無いしお互いゆっくり休もうな!」

かがみ「うん…。」

男「…かがみ?」

かがみが、俺の服の裾を掴んで下を向いた。

かがみ「もうちょっとだけ、男と話したい…。」

男「…」

…たぶん家に帰りたくないんだろうな。今までずっと優等生だったんだ。どれくらい点数落としたかは分からないけどショックなんだろうな。

男「いいよ。喫茶店でも行く?」

かがみ「…男の家がいい。」

男「…いいよ。行こう。」

俺は優しすぎるのかもしれない。でも、今にも泣き出しそうなかがみを見ていると、『ダメだ』なんて言えない自分が居た。

かがみ「お邪魔します。」

男「誰もいないから遠慮しなくていいよ。」

かがみ「…わがまま言ってゴメン。」

男「かがみ、あのさ…もう過ぎたことだし、元気出そうよ?」

『チガウヨ』

男「かがみが元気無いと、こなたもつかさもみゆきさんも、もちろん俺も、つらいよ。」

『チガウヨ』

男「ちょっと悪くたって大丈夫だよ。もし万が一補習になったとしても、かがみなら絶対大丈夫だよ!」

『ソノコトジャナイヨ』

男「この間は参加できなかったけど、今度はみんなで一緒に勉強しy」

かがみ「男。」

男「…うん。」

かがみ「泣いていい?」

男「…え?」

かがみ「泣いていいかって聞いてるのよっっ!!」


俺は何も言えずにただ頷いた。

次の瞬間、かがみは俺に有りっ丈の力で抱き付いて、声を出して泣いた。

…
…


かがみ「…えっ…えっ…ぐす…………。」

かがみの声が少し落ち着いてきた。俺の胸のあたりが熱い。

かがみは俺に抱きついたまま、顔を上げずに小さくしゃべり始めた。


かがみ「私ね…」

かがみ「男が来る前…」

かがみ「クラスでいじめられてたの…。」

かがみ「原因を作ったのは私だし、」

かがみ「がまんしてたんだけど…」

かがみ「自分のクラスでご飯食べるのが恐くて…」

かがみ「いっつもこなた達のクラスで食べてた…。」

かがみ「でも男はそんな私に気付いて、『大丈夫か?』って言ってくれて…」

かがみ「わんこシティではジェットコースター乗った後、男が言ったことで、素直になろうって思えた…。」



…
男「俺は何もしてないよ…。」

かがみ「…でも私は男のおかげで、少しかもしれないけど強くなれたのよ。」

男『そっか……かがみは昔の俺と同じなんだ…。こなたに助けてもらった頃の俺と同じなんだ…。』
…
かがみが俺から離れた。もう泣いてはいなかったが、目は腫れぼったかった。

かがみ「あのね…だから…男に言いたかったの。」

男「…」

かがみ「ありがとう。…泣いちゃってごめんなさい。」

男「ぁ…。」

かがみ「え?」

男「いや、何でもないよ。」

男「それで…その…クラスのイジメの方は大丈夫なのか…?」

かがみ「…大丈夫よ。男のおかげで、もう無くなったわ。」

男「よかった…。でもそれはかがみが頑張ったんだよ。俺のおかげじゃない。」

かがみは、「ふふっ」と笑うと、ちょっとばつの悪そうに言った。

かがみ「だからね、今回は勉強する時間無かったのよ。忙しくて。」

男「うん。」

かがみ「もし補習になったら、今度は勉強教えてね!」

男「何だかんだ言って、それなりに出来てるんじゃない?」

かがみ「だといいんだけどね。」

…よかった。いつものかがみに戻ってきた。


…
気がつくと外はもう暗くなり始めていた。

かがみ「私、帰るね。」

男「うん。送っていこうか?」

かがみ「大丈夫よ。ちょっと一人でぶらぶら歩きたいし。」

男「そっか…。気をつけてね。」

かがみ「…うん。」

かがみは、いつもの強気な目つきに戻っていて、ちょっと笑うと、家を後にした。


『かがみはすごいな…』
『やっぱ俺も言わなきゃだめだ…』

『こなたに…』






かがみは、気付いたら走っていた。
本当に言いたかった事が言えなかった自分を、責めた。

抱きついた時の男の感触が、甘く体に残っていたが、その甘さから感じる優しさが痛かった。










【第九話;チチオヤ】 


俺の中で、かがみの事は解決して、またいつもの金曜の夜がやってきた。
『明日はまた予定の無い休日か…』
なんだか(かがみの事で)安心した俺は、ゆっくり夕食を作り、ゆっくり食べた。
時間は早かったが、こなたに昔の事を言う決心を付けた俺は、何となく早く寝ることにした。
かがみのおかげで、少し心が落ち着いた気がした。

次の日の朝の電話で『日常』が壊れ始めた事に気付くまでは。

土曜日の朝、電話が鳴っていた。


電話を取る。
電話の相手は、聞いたことのある男性の声だった。

男性「もしもし?」
男「はい。どちら様ですか?」
男性「男君かな?私はLKSTmedical(会社名)で君のお父さんと同僚の島です。」
男「あっ島さん、お久しぶりです。父は居ませんが…?」

島さんは以前家に来たことがある。

男性「落ち着いて聞いてもらえるかな…。」
男「…はい。」
男性「お父さんが亡くなられた。」
男「えっ…?!」
男性「君はしっかりしている子だから、君に教えておきたいことがある。今から家に行っても大丈夫かな?」
男「…わ…わかりました。大丈夫です。」

二時間後、島さんが家に来た。

島さん「やあ、久しぶり。」

男「お久しぶりです。」

島さん「時間があまりないから本題に移らせて貰うよ。」

男「はい。」

島さん「実はね、君のお父さんは殺されたようだ。」

男「えっ?!」

島さん「お父さんがしていた仕事は、とても危険な仕事だ。我が社の新薬開発部門の新薬原料植物調達のエージェントだった。」

男「へっ?」

島さん「やっぱり知らなかったか。危険な仕事だからな。世界の密林地帯に行って、医学に役立つ植物を採集する仕事、いわゆるプラントハンターと言うやつだ。」

男「…ただの新薬開発の研究員だと思ってました。」

島さん「高度な知識と、体力、勇気がないと出来ない仕事だ。」

男「…でもそれは危険な仕事なんですか?」

島さん「世界中の製薬会社がライバルなんだ。」

男「まさか…暗殺…?」

島さん「かもしれない。だが恐らくそういう通知が君のとこに来る事はないだろう。だから私が伝えに来た。」

男「…」

島さん「それと君に渡すものがある。」

島さんはそう言うと貯金通帳を渡してきた。

島さん「もしも自分に何かあったら、君に渡すように言われていた。」

通帳の金額は見たこともない額に達していた。

男「!!」

島さん「それだけ危険な仕事なんだよ。」

島さん「確かに渡したよ。それと私が今しゃべった事、私はもう忘れるから。」

男「…ありがとうございます。」

その後、島さんは俺の知らない親父の事をいくつか教えてくれた。
親父が研究員からプラントハンターになったのは、母さんが事故で死んだ後らしい。

母さんの事故は轢き逃げによるものだった。そして親父も誰かに殺されたとなれば、両親とも誰とわからない人に殺された事になる。
俺は少し複雑な気持ちになった。

午後、親父の会社の上司達が親父の『事故死』の報告と謝罪を述べに来た。

死体は回収不能な状態にあるので、葬式らしいものは行えなかった。

翌日、親父の死の事務的な処理と、俺の学費、生活費等の口座を新たに作り、一日が終わった。
親父はやはり自分がいつか殺されることを予測してたのか、事務処理はある程度準備されていたようで早く終わった。

自分の周りに起こっていることが余りに非現実的で、悲しむ事など出来なかった。
エージェント?暗殺?なんだよそりゃ…?マンガかよ?
誰かに相談しようか…?
こなたなら親父の事知ってるはず(思い出せば)だ。いや、本当に暗殺だったら危険なんじゃないのか?
もうなんだかよく分からない。

『明日は登校か…』
『月曜は中間テストの発表だったな…』
『どうでもいいけど…』

(オートセーブしました。重要分岐②)


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年09月10日 12:20