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【第十六話(裏√);フタマタ】


【セーブポイント③-Cをロードしました。】

俺はこなたの背中を抱き、こなたを受け入れた。

瞳に俺が写るこなたの大きな目が閉じられた時、俺とこなたの唇が触れ合った。

軽いはずのこなたの体重は、こなたの想いが重なって重くなり、俺はそれを振り払う事なんて出来なかった。


こなた「…おとこ。」

男「こなた…。」

こなた「例え男がつかさの事好きでも…」

男「…」

こなた「…私は男が、ずっと好き。」


こなたの涙を見て、こなたの口から『好き』という言葉を聞いて、こなたの唇を感じて、俺はやっと気付いた。

『俺はこなたが好きだったんだ…。』

…多分、長い時間こなたと居られなかった事で俺は、こなたへの気持ちを忘れようとしてた。
だから『好き』という気持ちが分からなくなってたのかもしれない。

潤んだ瞳で俺を見つめてるこなたは、いつもの、『ギャルゲ』やら『フラグ』やら言ってるこなたではなかった。
体は確かに小さいが、一人の『女の子』だった。

気がつくと、俺はこなたの背中を抱きながら、膝を突いてこなたに覆い被さっていた。
こなたは目を細めて俺を見上げていた。

こなた「…いいよ。」

男「…。」

こなた「どんな形でも、男と一緒に居られるなら、私はうれしいよ。」


もう一度キスをした。今度は、俺から。


――もう、止まらないよ…?
――うん。大好き。

こなたは…不安になるくらい小さな体で、一生懸命に俺を受け止めていた。

少し泣きそうな表情のこなた。

「…やっぱり痛い…?」

「…うん…。」

「やめようか…?」

「…やめない…。」

こなたは、ふふっと笑った。

「?」

「…これ何てエロゲ?」

「バーロー」



鞄の中で、静かにケータイが揺れていた…。




ベッドの中で、しばらく手をつないでいた。

男「もう、八時近いよ。」

こなた「…手、離したくない…。」

男「お父さん、心配するよ?」

こなた「まぁ事態は心配されるレベルをとうに超えているんだが。」

男「ご…ごめんなさい…。」

こなた「謝るなよーそこは甘い言葉で切り返すんだ!」

男「…例えば?」

こなた「一万年と二千年前から愛してる」

男「おま…」

こなた「合体したし。」

男「アホ。」

こなた「…明日も、来ていい?」

男「…うん。」

こなた「今日はパソとリアルでエロゲやっただけだし、明日は少し話したい。」

男「さり気に凄い事言ってるぞ…」

こなた「寒いから服着るね。」

男「あ…うん。」


こなたは『おとーさんにはゲマズ行ってたて言うから平気』と言って帰って行った。
なんだか激しく空腹感を覚えたので、いつもの倍近くの夕食をとった。
食べると程なくして睡魔に襲われた…。




鞄にケータイを入れっぱなしだったことに気付いたのは翌朝だった。


目が覚めた。
何だかいつもと違う朝。

『昨日、このベッドでこなたと…』

でも、俺はこれを望んでたんだろうか…
昨日は確か、こなたに、幼なじみだったよなって言うつもりだったはず…。
それが、気づいたら…

ベッドから起き上がる。

『あっ…………シーツ……洗わなきゃ………。』

家を早めに出た。
みんなに会わないように…。
どんな顔してみんなに会えばいいんだ…。
こなた…つかさ…。

『…これってフタマタだよな…?』

何気なく鞄を漁ると手に硬いものが触れた。

『あっ、ヤバっ!ケータイ充電してない!』

ケータイを開いた時、俺は本当にヤバいのは、充電してない事ではないという事に気づいた。

[未読メール:8件]
[着信:20件]

…もう、正直見たくなかった。
俺は少し泣きそうになりながらケータイを開いた。


2007/05/28/17:46
【from】
柊つかさ
【タイトル】
こんにちは!やつぱりはじめてのメールはお
【本文】


2007/05/28/17:59
【from】
柊つかさ
【タイトル】
なんだか文章が途中で切れちゃうんだけどな
【本文】


2007/05/28/18:26
【from】
柊つかさ
【タイトル】
やっと分かったよ!
【本文】
お姉ちゃんに教えてもらってやっと分かったよー!『本文』のとこに書くんだね!変なメールいっぱい送っちゃってごめんね!おとこ君大好きだよ!!いっぱいメールしようね!

2007/05/28/18:48
【from】
柊つかさ
【タイトル】
おとこ君いそがしいの?
【本文】
おとこ君どうしたの?いそがしいの?今日一人で帰っちゃったし、明日は一緒に帰りたいなぁ。何か用事があるの?私はね、今日はみんなと帰って家に着いてからずっと携帯電話の説明書読んでたよ。おとこくんは初めて携帯電話買ったとき使うの慣れるまで時間かかった?


2007/05/28/19:19
【from】
柊つかさ
【タイトル】
おとこ君?
【本文】
おとこ君?ほんとにどうしたの?わたしちょっと心配だな?わたしはこれからごはんだからちょっと行ってくるね。戻ってくるまでにメール欲しいな?

2008/05/28/19:52
【from】
柊つかさ
【タイトル】
おとこ君
【本文】
おとこ君、何かあったの??電話してもいい??私心配で心配でどうしていいかわかんないよ


2008/05/28/20:45
【from】
柊つかさ
【タイトル】
無題
【本文】
わたし、何かおとこ君に嫌われることしちゃったかな…?明日ちゃんと謝るから許してほしいな…わたし、おとこ君とずっと一緒にいたいよ…わたしに悪いとこあったらどんどん言ってほしい…がんばって直すから…。


2008/05/28/21:39
【from】
柊かがみ
【タイトル】
無題
【本文】
男、つかさと何かあったの?!
つかさが男に嫌われたって泣いてたんだけど…?
言いにくいことだったらいいけど、何かあるんなら相談に乗るわよ?


着信はもちろん全てつかさからだった。
全て99秒。
その時間は…こなたと居た。

重くなる足を引きずりながら学校にだいぶ早く着いた。

時間が早すぎた。
教室にはもちろん誰もいない…いや…人影が一つ有った。

つかさ『おはよう、男君。』

男「つかさ…」

俺は、今、目の前に居るつかさに恐怖を覚えた。
つかさの目には、何も写っていないかの様に深く沈んでいる。
いつか、テーマパークでこなたとかがみの事を聞いた時、つかさが見せた表情を更に暗く、それでいて瞳は大きく開かれている。


つかさ「男君。」

男「…」

…何も喋れない。
…どうしたらいい?
…どうしたらいい??

俺は意を決して、ただ、つかさを抱きしめた。

男「…さ…寂しい思いさせてゴメン…。昨日はケータイずっと鞄に入れてて気付かなかったんだ。だから今日の朝気付いてびっくりしたんだ…。」

つかさの手が俺の制服を掴んだ。

つかさ「うっ…うっ…私…男君に嫌われちゃったのかと思った…」

俺はつかさの頭を撫でた。俺を見上げるつかさの目は、いつものつかさに戻っていた。

みんなが登校する時間が近付いたので、それぞれの席に戻った。

『嘘はついてない…』
『嘘はついてない…』
俺は心の中でそう唱えることで罪悪感を紛らわした。

みゆきさん、少し遅れてこなたも教室に入ってきた。

放課後。
いつも通りみんなで帰る。
俺は、こなたを見ることが出来ない。


みゆき「昨日は、こなたさんが急に帰ってしまって言えなかったんですが、実は、かがみさんとつかささんと三人でこなたさんの誕生パーティーをしようかと話していたんですよ。」

かがみ「そうよ、あんた昨日メール見て、家の用事があるとかで帰っちゃったでしょ?」

こなた「うむ、完全に忘れとったよ。」

かがみ「あんたねぇ…自分の誕生日忘れてたの?」

つかさ「それでねー1日遅れちゃったけど、今日うちでこなちゃんの誕生パーティーやろうかなーって思ってるんだー」

こなた「おぉ!やっぱり持つべきものは友だねー今から行ってもいいのかな?」

つかさ「お料理作るのこれからだけど、出来るまで家で遊ぼうよー!」

みゆき「あっ私、家に取りに行くものがあるので一旦帰りますね。」

こなた「んっどうしたの?みゆきさん。」

みゆき「いっ…いえっ!ちょっとした私用です!気になさらないでください!」

こなた『プレゼントだね』
かがみ『プレゼントね』
つかさ『プレゼント…?』
男『プレゼントか』

柊家。

『しまった…こなたに誕生日プレゼント渡そうと思って買ったの家に置きっぱなしだ…昨日渡せなかったし…』

つかさ「あっ…薄力粉がない…」

かがみ「しょうがないわねー私買い物してくるわよ。」

男「あっ俺も行くよ。」

かがみ「えっ?」

男「いや、家までこなたの誕生日プレゼント取りいくからさ。」

こなた「いやー男はみゆきさんと違ってサプライズとか関係無しだね。」

つかさ「わ…私も行く。」

かがみ「つかさが居なかったら料理が進まないわよ…」

つかさ「うん、そうだよね…」

かがみ「じゃあ行ってくるわ。」

かがみと家に向かった。

かがみと並んで歩く。

かがみ「…あのさ…。」

男「えっ?」

かがみ「昨日…つかさと何かあったの…?」

男「…。」

かがみ「…私さ…見ちゃったんだよね…。」

男「…な…何を?」

まだ暑い季節でもないのに、嫌な汗が流れてきた。

かがみ「今朝…私も早く行ったんだ…E組のクラスで…男と…つかさが…」

男「かがみっ!!」

大きな声でかがみの声を遮ってしまった。
かがみは一瞬ビクッとなったが、気にせず続けた。

かがみ「男は……つかさと付き合ってるの…?」

男「……。」

俺の頭をつかさが、こなたが、よぎる。
…今は言わない方がいい。つかさとこなたの事に決着がつくまでは…そう、思ってた。


かがみ「それはさ…別にいいの…。つかさはさ…たぶんだいぶ前から男が好きな気がしてた…。」

かがみが続ける。

かがみ「私が聞きたいのはさ…」


自分の心臓の音が聞こえる…。かがみは俺に目を合わせない。

かがみ「昨日…こなたに…会ってたでしょ?」


信じられないことをかがみが言っている…それだけは分かった。
…なんで?
…何で知ってる?
…どこまで知ってる?

かがみ「…私さ…昨日つかさにケータイの使い方教えた後、こなたの家行ったんだよね。誕生日プレゼント渡そうと思って。」

かがみ「そしたら、こなた居なくて…こなたのお父さんも知らないって…。」

かがみ「ゲマズにもメイトにも居なかった…」

かがみ「八時くらいかな…男の家から、こなたが出てくるの見ちゃったんだよね…」

男「…う…嘘だろ…?」

かがみ「…」

かがみ「…男は…知らないだろうけど…こなたは…男に言いたいことがあったんだよ…。」

かがみ「私…その事でこなたに相談されてた。」

男「…」

かがみ「だから…てっきり男のとこ行ったのかって…。」

男「…」

かがみ「…ねえ…。こなたと何話したの…?」

男「…」

…何も言えない…かがみは…かがみの予想はおそらく当たっている…その上事態は予想の斜め上を行っている…。

俺は何も言えず、俺の家まで着いた。

…俺はすっかり忘れていた。
予想外のかがみのセリフに気を取られていたからだろうか…?
自分の家の中のことだったから安心しきっていたからだろうか…?
俺の部屋の、こなたの痕跡を…。


かがみ「なんだか久しぶりね…。」

かがみは俺の部屋に入る。

かがみ「こなたが好きそうなゲームだらけね…やっぱりこなたは………………………」

男「?」

かがみの言葉が止まった。
一瞬俺にはその意味が分からなかった。
でも、かがみの紅潮した顔と、目線の先に有るもので、俺は息を飲んだ。

かがみ「…ねえ…あれ…。」

震える声のかがみの目線はベッドのシーツを指していた。

かがみ「…何で…血が付いてるの…?…男…ケガしてないよね…?」


心臓が、汗が、おかしいことになっていた。
今すぐ逃げ出したい。
今すぐ…。


かがみ「…こなたの…なのね…?」

かがみは震える声で続けた。
かがみ「…男は…つかさの事教室で抱きしめて…こなたと…こんな事して…」

かがみ「…なんで…?」

…俺はもう泣いていたと思う。
でも…かがみも…泣いていた。

かがみ「…なんでなのよ…」

かがみ「…私だって…優しくて…私の事励ましてくれた…男の事好きだったのに…」

かがみ「…こなたが…つかさが…男の事好きみたいだから…私は退いたのに…」

かがみ「何でよッッッ!!!」

えっ…?

男「…う…嘘だろ…?」

かがみ「…今さら嘘言って…どうするの…?」

男「…」

かがみ「…私…やめた…。」

男「………えっ?」

かがみ「…ガマンするの…やめた…。」

…一瞬だった。

かがみが俺を押し倒した。
俺は、昨日こなたを抱いたベッドに倒れ込んだ。

かがみ「…私の事も…愛して…。もうガマンしないもん…。」

かがみの目からは、いつもの強気さなんて感じかなった。
ただ、ただ、涙に濡れて、俺を見つめていた…。


男「かがみ…」


(オートセーブしました。『重要分岐④裏』)


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最終更新:2008年09月12日 11:58