京太郎インタビュー
西田「うーん……原村和さんのインタビューに成功したのはいいけど、必要最低限って感じだからもうちょっと何か欲しいところね。
チャンプの妹である宮永咲さんに取材出来たら良かったのだけど……ってあれは」
咲「京ちゃーん。これから部活ー?」
京太郎「あー、いや先に購買でシャーペンの芯買ってくるわ。ついでになんかあるか?」
咲「んー。それじゃあ……」
西田「すみませーん!」
咲「ひぇっ!?」
京太郎「ん?」
西田「少しお話いいですかー!?」
咲「あわわ、き、記者の人だ! ごめん京ちゃん後でね!」ビュー
京太郎「あ、おい! ……行っちまった」
西田「あら、逃げられちゃった」
京太郎「すいません、何か咲に用ですか?」
西田「ええ。清澄高校麻雀部のインタビューとして、あの子にもお話聞きたかったのだけど……あの様子じゃ無理そうね」
京太郎「そうっすねー。あいつ結構人見知りなんで、そういうのは無理かなって」
西田「姉妹でも、似ない所は似ないのね……」
京太郎「はい?」
西田「こっちの話。申し遅れました。私、西田といいます。よろしくね」
京太郎「あ、須賀です。よろしくっす」
西田「須賀君。君は彼女と仲良いの?」
京太郎「? ええ、まぁ」
西田「もしかして、彼氏……だったり?」
京太郎「いやいや、そういうのじゃないっすよ」
西田「あらそう。仲良さそうだったからつい」
京太郎「よく言われますけどね。それじゃ、俺もそろそろ行きますね」
西田「……あ、ちょっと待って」
京太郎「?」
西田「さっき清澄高校麻雀部のインタビューをしたいって言ったじゃない?」
京太郎「ええ、はい。咲にも話聞きたいって」
西田「良ければ、君の話も聞かせてもらえないかな?」
京太郎「お、俺っすかぁ?」
西田「ええ。選手達と関わりある、選手でない人の意見っていうのも、結構ネタになるからね。一応撮影はさせてもらうけど、そんなに時間は取らせないし、退屈もさせないから」
京太郎「んー……。まいっか。部長に遅れる連絡だけさせてもらっていいですか?」
西田「ありがと」
それじゃあ改めて、お名前から。
京太郎「清澄高校一年、須賀京太郎です。よろしくお願いしまーす」
清澄高校麻雀部とは、どういう関係で?
京太郎「関係っつーか、一応部員です。俺も」
一応、と言うと?
京太郎「いやー、他のみんなは大会に出て全国へー、とかってレベルなんですけど、俺だけ初心者なんですよね。高校に入ってから初めたばっかで」
周りは経験者ばかり?
京太郎「そうですね。と言っても、部員は大会に出た5人と俺の合計6人なんす。ハーレムってやつですよハーレムははは」
あまり嬉しそうではありませんね。
京太郎「……いや、部活で他が女の子だけって、どーしたって異物感出ますよねって話です……」
部室にいると気まずい?
京太郎「気まずいかって言われるとそーでもないんですよ。やっぱり女子だから男子だからで気を遣わなきゃいけない事はあるんですけど、そういう壁をお構い無しに仲良くなる奴もいますし、みんな良い人ですしね」
特に仲のいい部員といえば?
京太郎「やっぱ咲とタコス……あー、優希ですね。片岡優希。さっき言ったお構い無しの奴です」
同学年ですと原村和さんもいらっしゃいますが、そちらとは?
京太郎「仲が悪い、って訳じゃないですよ? ただ、和は二人よか真面目なんで、男女は適切な距離感を保つべきって考えがあるんでしょうね。二人と比べたら距離はあるかなって」
ガードが堅いと。
京太郎「そう………いや、あれで無防備な所もあるんで、身持ちが固いって言うべきかな。うん」
片岡優希さんは男女垣根無い方だそうですね。
京太郎「良い言い方をすればそうですねー。お子ちゃまとも言えますけど」
宮永咲さんは、そうではない?
京太郎「男女どちらとも人見知りするって意味なら、垣根無いとも言えますけどね。学校の友達は部内にしかいないみたいですから」
宮永さんとは、どのように仲良くなったのでしょうか?
京太郎「どのように、かー……。えーとですね、咲とは中学の時に同じクラスだったんですよ」
高校の部活以前に交流があった?
京太郎「そうですね。で、クラス委員を男女一人ずつ出さなきゃいけないってなった時に、ほぼ押し付けられる形で俺と一緒にクラス委員になったのが咲だったんですよ。俺は面倒だけどまあいっかーってノリだったけど、あいつは多分嫌だけど嫌って言って話し合いにもつれ込む方が嫌って感じでしたね」
その頃の宮永さんは、どんな人でした?
京太郎「ぼっちなのは変わらないんですけど、あの頃は人見知りってより、誰とも関わりたくないって言いたげなぼっちでしたね。委員で最初話しかけた時も挨拶だったかをボソッと喋るくらいで、暗いなーとか冷たい奴だなーとか思いましたし」
そこからどうやって仲良くなったのでしょうか?
京太郎「それが聞いてくださいよ! クラス委員の最初の仕事で、誰々の席がどことかの掲示を作るんですけど、出来た紙を先生に見せてくるつってさっさと教室を出て、しばらくしても戻ってこなかったんですよね」
その間、須賀さんは待ってた?
京太郎「掲示を貼るまでが仕事なんで、先に帰られるとは思わなかったですしね。で、暇潰しに携帯弄ってたら、先生が教室に来て「まだ出来ないのか?」って言うんすよ。あいつが行った筈って言ったら、いや来てないって」
入れ違いになってた?
京太郎「どころか咲の奴、校舎内で迷子になってたんですよ!」
迷子。
京太郎「信じられます!? 入学して一週間足らずとはいえ、一緒に行くと言った俺に「別にいいです」と言っておきながら! その棟の一階にある職員室までに辿り着けず! 俺と先生が探しに行って見つけたのが別の棟の3階ですよ!? しかも見つけた時にはトイレが限界近くて、涙目でプルップルしてやがったんすよ!」
京太郎「目視出来る距離にあった女子トイレに案内され、駆け込んで行く姿を見て、俺は確信しましたね。「ああ、こいつはポンコツだな」と」
ポンコツ、ですか。
京太郎「ええ。それからというものの、日常のあらゆる所でそのポンコツぶりを遺憾なく発揮して、クラスでの立ち位置は「一人になりたいぼっち」から「クールぶりたいポンコツ」に変わっていきました」
いわゆるマスコット枠、みたいなものですか?
京太郎「そんな感じですねー。それで、そのポンコツをからかいつつ話してたらいつの間にやら、という風に」
宮永さんはその頃、麻雀では
京太郎「あ、中学の時には麻雀やってなかったですあいつ」
やっていない?
京太郎「ええ。どうやら小学生の頃までに家族麻雀でやってたぐらいで、中学の時にはそういう話全くしてなかったです。俺もその頃はハンド部で、麻雀とか全然でしたし」
それで、団体戦の大将を任されている?
京太郎「びっくら、ですよねー。俺もまさかカモだと思って麻雀部に連れてきたポンコツが、麻雀では魔王に変身するとは」
魔王ですか。
京太郎「俺が勝手に呼んでるだけですけどね。あいつ麻雀やってる時、時たまスゲー形相というか、黒いプレッシャーぽいのが出るんすよ。部長とかは俺が気付いてるより多めにそういうの感じてるみたいです。それがもう魔王! って感じで」
萎縮してしまう?
京太郎「んー。そうなった時には「うわ怖っ」ってなるんですけど、「でもこいつポンコツだしなぁ」って考えると冷めた目になりますね」
麻雀をしている時と、していない時のギャップをどう思う?
京太郎「ギャップと言われても、みんなそういうもんじゃないですか? 咲のは極端な方だと思いますけど、俺だって家族と接する時と友達と接する時で違いはありますし。なんならもっと変わる人もいますしね」
現在の宮永さんを見てどう思いますか?
京太郎「俺以外にも友達出来てるし、前より明るくなったし、熱中するものが出来たしで、良い変化だと思います」
では、最後に何か一言。
京太郎「清澄はレディースランチが美味いですよ」
咲「ちょっと京ちゃん! これどういうこと!?」
京太郎「ん? ああ、この記事この前のインタビューの」
咲「私の中学時代の黒歴史が暴露されてるし、「ポンコツ魔王」とか呼ばれてるんだけど!? これ京ちゃんの仕業でしょ!? なんでこんなことするの!?」
京太郎「だってお前がポンコツなのは今でも変わりないし、魔王っぽいのは事実だし」
咲「ひどい!」
京太郎「ひどくない!」
久「和のでっかい写真のページに、事細かに書いてあるわねー。大将、宮永咲の素顔って」
和「何故か須賀君の顔写真付きですね。目線に黒線が入ってますけど」
優希「京太郎、お前ついに……」
京太郎「ついにってなんだよ! 容疑者の供述とかじゃねーんだよ!」
咲「話終わってないよ! どうしてくれるの!? 私全国の場でこれ読んだ人に「あ、ポンコツの人だ」とか「魔王の人だ」って思われるんだよ!?」
京太郎「逆に聞くけどお前、麻雀してない時でポンコツじゃない時あるか?」
咲「あるよ! なんかこう……京ちゃんより国語の成績良いとか!」
久「語る所がそれの時点でもうポンコツよね」
優希「しかも理数系はのどちゃんの半分以下だじぇ」
和「体育だと何もないところでずっこける運動音痴ですし」
京太郎「な? 咲。お前は誰もが認めるポンコツなんだよ」
咲「むきー!」
久「けど須賀君。今回はいいけど、メディアの場であんまりうちの情報ベラベラと喋らないようにね。ただでさえノーマークだった清澄が県大会優勝して注目を浴びてるんだし」
京太郎「大丈夫ですって。俺相手にそう何回も取材なんて来ないですし」
ガチャ
まこ「おーい京太郎ー。前回のインタビューが好評だったから、おんしにまた取材したいと記者の人が来とるんじゃが」
京太郎「あるぇ?」
カン
最終更新:2021年06月25日 21:57