京太郎インタビューその3


前回期せずして清澄高校の素顔を知ってしまった取材班。
SK君に取材すると、我々の知り得ない情報が出てくる。麻雀とは関係無い所だが、非常に興味深い。
今回は、彼から見た他校について窺ってみよう。


今回で三回目になりますが、取材には慣れて頂けたでしょうか?

京太郎「そうですね。現実感はまだそんなに無いですけど、最初よりは話しやすくなったかなと」

一度目でとても流暢に話せていたように思いますが?

京太郎「見た目だけですよ。俺、緊張すると自分でも考えずに喋って余計な事まで話しちゃうタイプなんで」

成程。では、お気に入りエキサイト本の隠し場所は?

京太郎「そんなとっておきの秘密をベラベラ話す程じゃないですよ!?」

冗談です。

京太郎「はぁ……。まぁ、こうやって話上手な人だとつい乗っちゃって口が軽くなるってのもありますかね」

ありがとうございます。それでは、質問に移りますね。



長野県県大会決勝、SK君も記憶に新しいと思います。

京太郎「おお……なんか凄かったですよね。特に大将戦とか」

清澄を除いた3校では、誰が一番印象的でしたか?

京太郎「衝撃的な印象って言えば、やっぱり天江衣さんですね。うちの麻雀部の中でも咲って麻雀ではとんでもない事やってくれるスゲー奴って考えてたので、その咲が最初全然歯が立ってなくて」

その強さに圧倒された?

京太郎「まぁその後またとんでもない逆転してたから、咲ってやっぱスゲー奴だなって思い直しましたけどね」

その高校生らしからぬ容姿と雰囲気から、巷では「ころたん可愛い」「ころたん天使」「ころたん! 最高!」「イエイイエイ! ころたん! 最高!」「オマエもころたん最高と叫びなさい!」ともっぱらの噂ですが。

京太郎「それころたん最高! って言えば出てくる悪魔かなんかですか?」

S君から見てはどうでしょう?

京太郎「はぁ……まぁ高校生らしからぬと言えばそうなんですが、うちにも似たようなのいますしね」

あまりお好みではない?

京太郎「年上なのは分かってますし、可愛いとは思うんですが、好きかどうかを議論すると俺が危ないですから。色んな意味で」

危ない?

京太郎「社会的生命だったり、物理的生命も何の前触れ無く終わったり……いや、やめましょう」

衝撃的な印象で言えば、と言ってましたが、他にも印象に残った選手がいたのでしょうか?

京太郎「そうですね。けどその人達はちょっと麻雀とは関係無い所で印象に残ったという感じなので」

良ければお聞かせ願えますか?

京太郎「えぇー……。じゃあ、どの高校の人から聞きたいですか?」

各校に少なくとも一人ずついる?

京太郎「そんなとこです」

それでは……風越女子からはどなたですか?

京太郎「風越の人だと、主将の福路さんになりますかね」

やはりそのスタイルの良さに見惚れましたか?

京太郎「ええ。存在感はありながら主張し過ぎず、あの人の清楚な美しさを最大限に表現する様は最早芸術てバカ!」

本音が思わず漏れましたか?

京太郎「ノリツッコミですよ!」

そういうことにしておきましょう。

京太郎「インタビュー重ねて遠慮が無くなってきたのはあなたの方では……?」

京太郎「で、何で印象に残ってるかって言うとですね。大会終わってからというものの、うちの部長と仲良くなってるみたいで、バイト先の雀荘で一緒に打っているのを結構見掛けるんですよ」

バイトをなさっているんですか?

京太郎「食いつくとこそこですか……? ええまぁ、女性の従業員はメイド服なんで、俺は執事の燕尾服を着させてもらって」

燕尾服。似合いそうですね。

京太郎「知り合いに比べたらレベルの低いコスプレみたいなもんですよ。それで、会話とかはしなかったんですけど、話し声が聞こえてきたり部長からどういう人か聞いたりで、芯のある優しい人なんだなってのが伝わってきまして。うちの先輩並に料理も美味いと聞きましたし」

料理の出来る子が好きですか?

京太郎「いいですよね、家庭的な女の子。家に帰ってきた時に「お帰りなさい」って温かく出迎えられるのは男の夢の一つですよ」

そうなると、福路さんはS君の理想に近い?

京太郎「それ以上ですね。美人で優しくて家庭的で……、そんな人二次元だけって思ってました」

福路さんと言えば、彼女は珍しいオッドアイを持っていますね。

京太郎「あぁはい。左は赤めですけど右は青いんですよね」

S君はどう思いますか?

京太郎「オッドアイについてですか?」

はい。

京太郎「オッドアイそのものについては、そうですね……。中二心を擽られるワードっていうか」

S君にもそういう所が?

京太郎「男にはいくつになっても決して消えることの無い14歳の部分があるんです」

そんなものですか。

京太郎「そんなものです」

福路さんのオッドアイについてはどうでしょう?

京太郎「んー……。福路さんがそれを普段隠しててコンプレックスに思ってるみたいなのは、あんまり良い気がしないですね」

と言いますと?

京太郎「ほら。俺ってタッパがデカくて金髪だから、軽いとかチャラいとか不良とか思われやすいんですよね」

私共からはとてもそうは思えませんが。

京太郎「話してるとイメージ違ったとかも良く言われます。で、軽いのはいいんですよ。自分でもそんな風に振る舞ってる所ありますし。けどチャラいとか不良とかって、金髪でデカいだけでそんな風に思われるのって良い気はしないですよ」

悪い偏見は気分良くないと。

京太郎「誰だってそうだと思いますけどね。福路さんが片目閉じてるのも、自分がそう思ってるだけなのか周りから言われたのかは分かりませんが、生まれつきの所でコンプレックス抱えて隠してるのだとしたら、周りがちゃんと変じゃない悪くなんかないって言ってあげないと」

S君もそうしてコンプレックスを乗り越えた?

京太郎「いやぁ、俺はコンプレックスって程でもないですし、図太い性格してるから開き直ってるんで。おう文句あっかって感じです」

その言い草は不良っぽいですね。

京太郎「あっはっは」

彼女の右の瞳についてはどうコメントしますか?

京太郎「澄んだ蒼い海のよう……なんてのは洒落過ぎなんで、とても綺麗ですって言いますかね」

鶴賀女子の方ではどなたでしょう?

京太郎「副将の東横桃子さん……まぁ同い年なんですけどね」

…………。

京太郎「? どうしました?」

いえ、あの……どういう方だったでしょう?

京太郎「記憶にすら残っていない!?」

いえ、鶴賀女子の副将と言えば、原村和さん含めた実力派揃いの中で活躍した方なのは知っているんですが、どんな顔だったかが思い出せず……。

京太郎「あー、そこなんですよね。気になった所」

記憶に残ってない事が逆に?

京太郎「いや、うちの部員も記者さんと似たような事言うんですよ。対戦してた和以外は「いつの間に!?」とか「今リーチしてたか?」とか言ってて。対局での流れとか正直分かんないですけど、その俺以上にみんなが東横さんの手を見てなかったんですよね」

……S君には東横さんの手が見えていた?

京太郎「読めたとかそういうんじゃなくて、何捨てたとかそのレベルですけど……ええ。でも、みんな見えてましたよね? すっとぼけるみんなに、和もそんなオカルトあり得ませんって言ってたし」

……………………ちなみに、S君から見て東横さんはどんな人でしたか?

京太郎「制服と黒髪で全体的に黒くて、和程目立つタイプじゃないけど、負けず劣らず可愛い子でしたよね」

……………………そうですか。成程。はい。

京太郎「さっきから反応悪いですけど……どうかしました?」

気を取り直して……龍門渕高校だと、どなたが印象に残ってますか? 天江衣さん以外で。

京太郎「えー……これはほんとに個人的な話になりますけど、いいですか?」

お気になさらず。なんなら一目惚れしたとかの方が記事として面白いくらいあります。

京太郎「いやそういうんじゃないですけど…………。あそこだと、龍門渕透華ですかね」

ほう。副将戦で目立ちたくて目立ってたような振る舞いをしてたあの人ですね。

京太郎「それとは関係無い所でなんですけど、実はうち、長野の決勝で戦った4校で合宿したんですよ」

それは初耳ですね。

京太郎「初めて言いましたからね。で、まあ俺はその時お留守番だったんですけど」

ハブられたんですか?

京太郎「女子だらけのお泊りもする合宿に男連れてけってのも無理があるでしょ……。そんで清澄の部室でネトマしてたり友達と遊んでたりしてたんですが、ある日の朝部長から「須賀君、悪いけどうちにあるパソコン持ってきてくれない?」って連絡が入りましてね」

パソコン。

京太郎「持ってきてって言うから、ノートパソコンとかそういう持ち運び出来る軽いのを想像しますよね?」

ええ、それはもちろん。……ん?

京太郎「その時の俺もそうだと思って、軽い感じで「了解っす」って返したんですよ。で、部室の方に行ってそれらしき物を探したんですが、隅々まで探してもノートパソコンなんて影も形も無かったんです」

おや? 話が不穏な方向に。

京太郎「改めて部長に連絡してみて「パソコンどこですか?」って聞いたら、「いつもの机の上にあるでしょ?」って返されて。けどいくら見てもあるのはデスクトップのあるデカいパソコンだけだったんですね」

まさか……。

京太郎「で、気付いちゃったんですよ。「この人、このデスクトップパソコンを山にある合宿所まで持ってこいと言ってるな」って」


失礼ですが、部長さんは鬼ですか?

京太郎「いや、部長も多分無理だろうなと思って連絡したらかるーく請け負られたもんで、「あ、いけるんだ」って思っちゃったんでしょうね。放心して黙ってたら「あった? じゃ、よろしくー」つって通話切っちゃって、何回か掛け直したんですけど出なくなっちゃって。もうどうしようもないから、合宿所に行く事にしたんですよね」

大会後の炎天下の中、デスクトップを背負ってですか?

京太郎「まぁ、流石に直で歩きは無理なんで、電車とバスを乗り継いでですけどね」

ちなみにその交通費は。

京太郎「? 自腹ですけど」

…………そうですか。

京太郎「えっちらほっちら歩いてって、なんとか合宿所まで持って行って、受け取ってもらった後、そのまま帰ろうとしたんですけど」

待ってください。合宿所で休憩はしなかったんですか?

京太郎「いいえ? 玄関口で渡してそのまま」

……はい。では続けてください。

京太郎「お互いのディスコミュニケーションのせいとはいえ、流石に疲れて心が荒みそうになって時に、後ろから「お待ちなさいな!」と声を掛けられまして」

ああ。ここで龍門渕さんが出て来るんですね。

京太郎「振り返る前にそうと分かって実際そうだったんですが、その人は腕組んでふんぞり返りながら「見た所疲労困憊の様子ですわね! そのような者を門前払いでそのまま帰らせたとあっては龍門渕の名折れですわ! というわけでハギヨシ。この少年を送り届けてらっしゃいな」と」

やだカッコイイ。

京太郎「ですよね。それで、指パッチンと同時に瞬間移動で現れたハギヨシさんが「承知しました」つってまた消えた後、すぐに黒塗りの長い、見るからにセレブ御用達の車に乗って来たんですよ」

もう色々ツッコみたい事ありますけど、それはいいです。

京太郎「そんで、あれよあれよとそれに乗せられて、現実味の無い車の中で現実味の無い接待を受けたんですよね。運転は別の誰かがやって、ハギヨシさんから直々に」

具体的にはどのような?

京太郎「横になって転がっても余裕で余りあるスペースに、車でこんなの使っていいの? ってぐらい柔らかいソファと、涼しくて気持ちのいい冷房を利かせて、車内冷蔵庫からキンッキンに冷えたジュースを取り出して、ワイングラスに注いでもらったりとか、ですね」

本当にあるんですね、そういうの。

京太郎「白昼夢でも見てて、現実の俺は熱中症で倒れたのかと本気で疑ったくらいですからね。頬抓っても痛いだけだったんですが」

そのように送り届けてもらった事から、龍門渕さんに良い印象を持ったと。

京太郎「大富豪さんの気前の良さって嫌味になることありますけど、あの人の場合は良い方向に発揮されてるなって思いました」

先程燕尾服は知り合いに比べたら、と言っていましたが、もしやそのハギヨシさんが?

京太郎「ええ。もう燕尾服と共に育って来たんじゃないかってぐらいに似合ってる執事さんでしてね。庶民の俺相手でも非の打ち所がない丁寧さで接待してくれたんですよ。かといってお堅い訳でもなくて、むしろちょっとユーモア出してこっちを楽しませてくれたり」

執事となるべく生まれてきたかのような人ですね。

京太郎「俺もそう思って似たような事言ってみたら「当然です。私は龍門渕家、透華お嬢様にお仕えする為に生を受けた身ですから」って」

そんな漫画みたいな。

京太郎「ところがそれが冗談でもなく、どうやらあの人の家って代々龍門渕家の人の専属使用人を輩出してきたとかで、使用人の家系らしいんですよね。ハギヨシさんは年の近い龍門渕さんにお仕えしてると」

となると、本当に生まれた時から執事として訓練を?

京太郎「俺もそれってどうなんだ? って思いましたけど、ハギヨシさんは「私自身この生き方しか知りません……と言えば不幸にも聞こえるでしょうが。執事として生きてきた事、これからもそうである事に悔いも歯痒さもありません。何よりお嬢様は素晴らしき御方ですから」って言うんですよ。それが本心から言ってるのは、見て分かっちゃいましたね」

生まれなど関係無く、性根から執事に向いていた……、と思えばいいんでしょうか。

京太郎「って言っても俺自身はちょっと納得いかないんで、帰り際寄り道させてもらって、ゲーセンに連れていきました」

それはまた何故?

京太郎「ハギヨシさんにも聞かれたんですけど、他の生き方を知らないままでいるよりも、知った上で龍門渕さんにお仕えする事を選んでるって思ってもらえた方が、龍門渕さんも気分良く主人として振る舞えるんじゃないかなって。なのでここは一つ、男子高校生の庶民的な遊びをと思いまして」

成程。それで、その執事の方はゲーセンでどのような様子でしたか?

京太郎「多分あの人こそ人間じゃないです」

人間じゃない。

京太郎「ゲームの説明は俺や機械から熱心に聞き取ってたんで初めての筈なんですが、スコア系のゲームは全国ランキング一位のパーフェクトゲーム。対戦型のゲームは俺やその場にいた腕自慢の人交えても無傷の完勝。メダルゲームやスロットでもちょっと目ぇ離した隙に容器の数が倍々に増えていくんですよ。それなりに時間経った今でもその伝説は塗り替えられてないんです」

天からいくつ貰ったんですかその人。

京太郎「それ全部を「執事ですから」で済ませようとしてたんで、あの人執事の常識が世間一般とはかけ離れてるかと」

完璧超人過ぎて少し変わった人なんですね。

京太郎「けどまぁ、結構楽しんでもらえたみたいなんで、それをきっかけに個人的に仲良くなりまして。それからちょいちょい連絡を取り合って教え合う仲になりました」

執事さんはそのスキルを、S君は男子高校生の遊びを教え合う。そんな関係になったんですね。

京太郎「まぁ教えた事の悉くが始めた時点で超えられますがね……」

では、最後に何か一言。

京太郎「もうすぐ全国大会なので、みんなを精一杯サポートしようと思います」


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最終更新:2021年06月27日 21:22