042-187 ○ささやかな願い-4○



「はぁ、はぁ、はぁ……な、ナナリー、見つけてきたぞ。ナナリーが欲しがっていたひ○こ饅頭だ」
ルルーシュは、荒い息をしながら持ってきた箱を開く。
そこには、可愛い感じに包装紙に包まれたひよ○饅頭が10個ほど並んでいた。
「まぁ、大変だったのですね、お兄様。さぁ、これでもお食べになって落ち着いてください」
そう言って、ナナリーは、テーブルにおいてあった和菓子を一つルルーシュに手渡した。
「あ、ありがとう……ナナリー。うれしいよ……」
そう言いながら、ルルーシュは、我が妹ながら何と優しいのだろうとか思いつつ和菓子を受け取った。
その和菓子は、お饅頭のようであった。
包装紙には……「○よこ饅頭」と書かれてある。
「な、ナナリーっ……。こ、これは、ど、ど、どうしたんだいっ……」
口がうまく動かず、どうしても声が震えてしまう。
なぜだっ。
なぜ、これがここにあるっ。
どういう事だっ……。
何が間違っていたというのだっ。
必死になって、頭をフル回転させる。
だが、動転した今のルルーシュに解答が見つかるわけがない。
ただ、思いつくのは悶々とした不安とマイナス思考的な考えだけだ。
「あ、これは、ライさんが持ってきてくれたのです。欲しいと言うとすぐに持ってきてくださるんですもの。私、すごく嬉しくて……」
ナナリーの頬が桜色に染まる。
それは、気になる殿方の事を話す乙女のようにルルーシュには見えた。
「そ、そうかっ……、や、奴かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……」
無意識のうちに声が怒りに震える。
そして白くなるほど強く握り締めた拳も震えた。
おのれっ、ライのやつめぇぇぇっ。
俺の大切なナナリーにいつの間にっ……。
「ど、どうしたのですか? お兄様……」
心配そうなナナリーの声に、我に帰るルルーシュ。
い、いかんっ。
落ち着け、落ち着くのだっ。
自分にそう言い聞かせ、いつもどおりの声で返事をする。
「あ、ああ、すごいと思ってな。ライもやるじゃないかっ。あははははは……」
だが、もし、ナナリーの目が見えたら、きっと驚くであろう。
今、ルルーシュは、声こそ普通であったが、修羅の形相であったのだから。
「そ、そうだっ、ナナリー。他に欲しいものはないかい? すぐに探してこよう」
名誉挽回とばかりに、申し出るルルーシュ。
その言葉には、必死さが伝わってくる。
「そ、それでは……申し上げにくいのですが……」
「ああ、言ってごらん。俺の大切な妹の願いを聞きたいんだ」
そう言って、ルルーシュはナナリーの手を掴む。
「それでは……」
一瞬、言いよどんでいたナナリーだったが、恥ずかしそうに話す。
「私、も○じ饅頭というものが食べてみたいですわ」
そう言った後、「甘い食べ物ばかりで、恥ずかしいんですけど……」と小さく付け加える。
本当に恥ずかしいのだろう。
耳まで真っ赤にしている。
その様子を、我が妹ながら可愛いではないかとじっくり目を細めて堪能した後、大きく頷いて答えるルルーシュ。
「わかったっ。もみ○饅頭だな。任せろっ、ナナリー」
そして、ルルーシュはダッシユで部屋を飛び出した。
部屋を飛び出した後、ナナリーが苦笑しながら呟く
「もう、お兄様ったら、いつもからかいがいがあって楽しいですわ」
すると、部屋の奥から入ってきた者がいた。
咲世子である。
「もう、ナナリー様ったら、お人が悪いっ」
「うふふふ……。そういう咲世子さんだって、ビデオ撮影されたのでしょう?」
そのナナリーの返事に、くすりと笑う咲世子。
「もちろんですわ」
そして、二人で楽しそうに笑いあう。
その様子は、からかいがいのある兄弟を弄る姉妹のようであった。
ひとしきり、笑いあった後、咲世子が手に持っていたモノを置いた。
その菓子入れには、包装紙に包まれたもみじの形をした饅頭が入っている。
音で、それに気が付いたのだろう。
ナナリーが微笑む。
「さすが、咲世子さんです。準備がいいのですね」
その言葉に、咲世子が苦笑する。
「ナナリー様こそお人が悪い。今朝、届いていると確認されたではありませんか」
そして、部屋に再び笑い声が広がった。


その頃のライ……。
「えーっと……、これとこれと……、これもか……」
彼は、咲世子に代わってスーパーで買出しをしていた。
それこそ、多くの荷物に翻弄されて……。
「これ……持って帰れるかなぁ……」
ライの諦め気味の呟きが、今の彼の心の虚しさを表現しているようだった。

ちゃんちゃん~♪

《おわり》


最終更新:2010年02月23日 00:35
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。