お昼の中庭での楽しいランチの時だった。
それはシャーリーの何気ない言葉。
だけど、無視できない言葉が始まりだった。
「なんかさー、ライって、最近、ナナちゃんにべったりだよねぇ……」
その言葉に、私も不承不承に頷く。
それは事実なのだ。
確かに、ナナリーは可憐でかわいい。
悔しいけど、その点では、どうしても勝てないだろう。
だけど、私には、女の色香がある。
よしっ。これで誘惑して……、ライを私のものに……。
まずは、呼び出さないといけないわね。
そう考えて頭の中で作戦を練っていく。
すでに、私はシャーリーの話をまったく聞いていなかった。
僕が何気なく自分のロッカーを開けると一枚の手紙が入っていた。
かわいらしい封筒で、かわいい字で「ライさまへ」なんて書いてある。
裏をめくると「ナナリー・ランペルージ」とこれまたかわいい字で書いてあった。
「おおおーーっ、ライっ、ラブレターかよぉぉぉっ……。誰からだっ、誰からだよっ……」
そんな僕の様子に目敏く気付いたリヴァルが覗き込んでくる。
封筒の手紙を広げる。
愛しのライさまへ
本日、18時に屋上でお待ちしております。
大切なお話がありますので、必ずいらして下さい。
ずっとお待ちしております。
ナナリー
その文章を読み、ふう……と他の息をはく。
「どうしたんだよっ。ナナリーからのラブレターだろ?やったじゃんっ」
リヴァルが僕を小突きながら嬉しそうに話してくる。
まぁ、自分の事のように喜んでくれる彼には悪いが、僕は喜べなかった。
「ニセモノだよ、リヴァル」
「へ?!マジかよ……」
僕の言葉に驚く表情を見せる。
僕は、そんなリヴァルに説明していく。
「どうやって目の見えないナナリーが、手紙を書いてロッカーに入れるというだい」
「うーむ。確かに……。でも誰かに頼んだのかもしれないぜ」
リヴァルの反論は、僕も想定済みだ。
「それに、指定場所が屋上というのもおかしいと思わないか。彼女一人では行けないだろうし、他人に無理行って連れて行ってもらうなんて事は、ナナリーは言わないよ」
「うううーーーん。確かに……。それはそうだよなぁ……」
だが、それでもまだ納得しきれていないのだろう。
リヴァルの声に迷いがあった。
「それにだ。決定的に違うと思ったのは……」
そこで一呼吸入れる。
リヴァルが、僕の言葉を待つかのように、じっと僕を見ていた。
僕は胸を張って宣言した。
「この手紙には、腹黒さが微塵も感じられないという事だっ!!」
ずざーーーっ……。
もちろん、この音は、リヴァルのコケた音である。
「あ、あのさ……一つ聞いていいか?」
「あ、ああ、いいよ。なんだい、リヴァル」
僕は胸を張ったまま、リヴァルを見下ろす。
「お前とナナリーってどういう関係なんだよっ……」
僕は、その言葉に苦笑でしか答えられなかった。
そして、翌日……。
「あれっ?今日はカレンはどうしたの?」
最近、毎日のように来ていたカレンの姿がない事にちょっと驚き、先に生徒会室に来ていたシャーリーに聞き返す。
「ああ、カレン、今日は風邪でお休みだって……。どうしたんだろうねぇ」
その言葉に、僕は「ふーーーん。そうなんだ……」と言うだけだった。
なぜなら、今の僕に深く考える余裕などまったく無かったのだ。
くうううっ……。
間に合うかなぁ……。
そう、ナナリーに言い付けられた用事で頭がいっぱいだったからである。
ちゃんちゃん
《おわり》
最終更新:2010年02月23日 00:34