「な、ナナリーぃぃぃぃぃっ……。も、もみ●饅頭だよっ……。はぁっ…、はぁっ…」
息を弾ませ、ルルーシュはナナリーのいる部屋に駆け込む。
そう、彼はナナリーの願いをかなえるため、ガウェインで廣島エリアまで買いに行っていたのだ。
もちろん、C.Cにはぼやかれたものの、ピザ10枚という約束で黙らせる。
たしかに痛い出費だが、ナナリーのためならば安いものだ。
そう、彼にとって、ナナリーこそすべてなのだ。
だが、部屋に駆け込んだ彼の目に入ったのは、おいしそうにも●じ饅頭を小さな口でかわいくほおばるナナリーの姿があった。
「ふぁ…、ふぉにーふぁまっ……」
驚いて、口をもぐもぐさせるナナリー。
ふふっ、我が妹ながら、なんと愛らしいことよ。
カメラが今ここにあったら、間違いなく激写していた事だろう。
そんな事を考えてしまうルルーシュ。
い、いかんっ……。
そ、それどころではないっ。
慌てて、思考を蕩けモードから切り替えようとする。
だが、それを先読みしたかの様なナナリーの行動と言葉。
「ご、ごめんなさい、おにいさま。失礼なところをお見せしてしまって……。恥ずかしいです」
頬を朱に染めて、恥ずかしがるナナリー。
ずっきゅーーーーーーーーーんっ。
今、ルルーシュの心は、強烈な電撃に撃ち抜かれていた。
持ち直していた思考が、蕩けモードへと再び戻っていく。
「さぁ、おにいさま。一緒に食べませんか?」
可愛らしく軽く首をひねって、微笑みながら提案するナナリー。
「そ、そうだな……。俺も頂こう……」
そのまま、なし崩し的にお茶会に参加するルルーシュ。
「ルルーシュ様、そちらは私がお預かりいたします」
そう言われ、渋々買ってきたも●じ饅頭の箱を渡す。
「そういえば、咲世子さん、ライさんは帰ってこられました?」
思い出したかのように咲世子に聞くナナリー。
「ええ。ライ様なら、先ほど買出しから戻られまして、ナナリー様が食べたがっていた生八橋を買いに行かれましたわ」
まるでいつもの事と言うように答える咲世子。
「うふふふっ。ライさんは、やっぱり素敵な方です」
頬をますます朱に染めて、うっとりとするナナリー。
「本当に、すばらしい方です。ナナリー様を支える方として申し分ない方だと思いますわ」
咲世子も相槌を撃つ。
で、面白くないのはルルーシュである。
いくら蕩けモードとはいえ、自分以外の男にうっとりとするナナリーを見てて楽しい気分になるはずもない。
それどころか、激しい競争心さえ芽生えてくる。
だからだろうか。
ルルーシュは、立ち上がると宣言した。
まずは、咲世子の方を向く。
「咲世子さん。何かあったら、ライではなく……」
そこまで言うと息お吸い込み、声を大きくして言う。
「この俺に言いつけてくれ。喜んで何でも引き受けよう!!」
そして、次にナナリーの方を向く。
「ナナリー、何か欲しいものがあったら、ライではなく……」
ここでも息を大きく吸いこんで、声を大きく強調して言う。
「この兄に言いつけてくれ、何でもいいぞっ!!」
その宣言に、ナナリーも咲世子も驚きの声を上げる。
「さすがですわ、おにいさまっ」
「りりしいですわ、ルルーシュ様っ」
二人の声に、自ら指で前髪をかき上げ、ふふっと微笑むルルーシュ。
さすが、ポージングはばっちりだ。
「当たり前だよっ……」
だが、それで終わったわけではなかった。
そう、ルルーシュが言い終わらないうちに、一枚の紙がルルーシュに手渡される。
その紙には、店の名前と住所、そして、こう書かれていた。
1日限定800個 スペシャル・プリン 30個(絶対)
それをわなわなと震えながら読むルルーシュ。
文句を言おうとした瞬間、それをさえぎるかのようにナナリーが話す。
「おにいさまには、やはり……無理でしょうか……」
その声は、実に残念そうだ。
「ぐぅぅぅぅぅっ……」
ルルーシュのうめき声が漏れる。
そして、その後に駄目押しのごとく咲世子の声が続く。
「ライ様でしたら、即答で了解されるのですが……」
その声は、呟きのように小さいものだったが、間違いなくルルーシュの耳に入っていた。
「ぐっっっっっっっ……」
搾り出すようなルルーシュの声が続き、ぴたりととまったかと思うと、ゆっくりとルルーシュは二人の方に顔を向けた。
「あははははははっ。任せていただこう。このルルーシュ・ランペルージにっ!!」
引きつった笑顔でそう言い切ると、ルルーシュは紙を受け取り、部屋を飛び出した。
その様子を見ていた二人は、ついに我慢できなくなったのだろう。
声を出して、笑いあう。
「さ、咲世子さんっ、い、今のおにーさまの声っ……」
「声もよかったのですが、あの表情も傑作でございましたっ」
「えーーっ、どんな感じなんですかっ」
そう聞かれ、事細かに説明する咲世子。
その言葉の描写はあまりにもリアルであり、目の見えないはずのナナリーにも十分想像できるものであった。
「うふふふふふっ……。だ、駄目ですっ、わ、私っ、死んでしまいますっ……」
ナナリーももう我慢できなくなったのだろう。
普段には見られないほど、大笑いをしていた。
もちろん、咲世子だ。
こうして、今や、完全にルルーシュは彼女らの玩具状態になっていた。
●おまけ
その頃のライ。
「えーっと……。どうやって持って帰ろう……」
また買い物を言いつけられ、大量の荷物に呆然とする彼の姿がバス亭の前にあった。
●おまけ その2
「いいかっ、今言ったものを至急用意せよ。いいな……」
逼迫したゼロの声が電話から流れる。
「し、しかし……」
「言ったはずだ。どうしても必要だと。必ずだっ」
反論も聞かずに一方的にまくし立てると、ゼロからの連絡は一方的に切られた。
「はぁぁぁっ……」
電話を置くと、井上は深くため息をついて机の上を見る。
そこには、ゼロから用意するように言われたものを書き出したメモがある。
そのメモには、店の名前と住所、それと1日限定800個のプリンを最低でも30個確保と書かれていた。
それに再度、目を通すと、またため息を吐いてつぶやいた。
「うーん、余計にゲットしたら、貰っていいか聞きそびれちゃったわ」
だが、すぐにぐっと握りこぶしを強く握る。
「まっいっか……。ゼロの命令なんだし、これで大手を振って買いにいける。それに、黒の騎士団を総動員して、全部頂けばいいんだし……」
そう言い切ると、幹部達の集まる部屋にスキップしながら向かったのだった。
そして、翌日の新聞の1面には、とある一団に有名店の限定プリンが買い占められた事が記事としてでかでかと載っていたのだった。
ああ、エリア11は、今日も平和だ……。
ちゃんちゃん~♪
最終更新:2010年02月23日 00:35