ここは、EUのある海沿いの町、エメラルドブルーの海、白い砂浜、歴史を感じさせる家々、ぱっと聞けばリゾート地などを思い浮かべるであろう。
しかし、ここはそんな良いとこではない、砂浜のあちらこちらには黒煙をあげ鉄屑となった、鋼鉄の巨人たちがいる、
ブリタニア軍の主力ナイトメアであるサザーランドや量産型のグロースターである。
この地域一体をかけて、ブリタニア軍とEU軍による戦闘がおこなわれているのだ。
現在はEU軍のほうが圧倒的に優勢である、EU軍は丘の上に陣取り高低差を利用した攻撃により主力ナイトメアである
パンツァーフンメルで上陸しようとしてくるブリアニア軍に弾丸の雨を注いでいた。
「ブリタニア軍の残存部隊、残り40%です」
EU軍の司令官はオペレーターからの報告を聞き心の中で「勝ったな!」と思い隣の参謀に話しかけた。
「今夜の晩餐は勝利の美酒になりそうだな」
それ対して参謀はニヤリと笑いながら。
「まったくですな、そういれば当たり年の 良いワインが手に入りました、いかがですかな?」
「ほう、それは楽しみだ」
司令官もまたニヤリと笑った、しかしその笑いも長くは続かなかった。
上陸部隊の隊員たちはあっせていた。
「くっそ!、エリオール2、グルト5もやられた」
現在なんとか砂浜までは来てはいるが、この先の斜面を登ろうとした機体はことごとくEU軍の攻撃をくらいすでに上陸部隊の半分以上が撃破されてしまっている。
隊員が悲痛に叫ぶ。
「くそー、援軍はまだなのか」
「本国は俺達にここで死ねというのか?」
兵士達の悲痛な叫びが響く。
その時だった。レーダに味方の反応が現れた。
「援軍だ!援軍が来たぞ!」
「どこの隊だ!数は!」
援軍が来たその一言でわずかだが士気が上がった。
「機数は………1騎!?」
「なんだとたったの1騎だと、本国はふざけているのか!」
隊の隊長は思わず怒りをあらわにした。ここでむざむざ部下を死なせたくはないという彼の思いが爆発したのだ。
しかし、次の言葉を聞いた時に怒りは消えた。
「識別信号は、クラブ?、援軍はランスロット・クラブ!、ナイト・オブ・ツーのレイナス・アルヴィン・イクス卿です!!」
「イクス卿だと、ラウンズのナンバー2か!」
ラウンズが前線にきた、これよってブリタニア軍上陸部隊の士気と戦意があがった。そして上陸部隊の上空に白と青のカラーリングをしたナイトメア、クラブがきた。
クラブのコックピットにいる銀髪で額から鼻までを隠す銀色の仮面をつけた少年、レイナスは上陸部隊全機に通信をした。
「私は、ナイト・オブ・ツーのレイナス・アルヴィン・イクスだ、上陸部隊の皆よく持ちこたえてくれた。感謝する、
この前線を落とすことができれば後ろでふんぞり返っているEUのお偉いさんの喉に刃を突き付けることができる、
あとひと踏ん張りだ!、私が突破口を開く………皆の者!、私に続けー!」
レイナスがそう叫ぶと同時に。
「「「Yes My Lord!!」」」
全上陸部隊の隊員がそれに対して勇ましく答えた。
このレイナスの通信によって上陸部隊の士気はさらに上がった。
一方EU軍の司令室は。
「ランスロット・クラブ?、ナイト・オブ・ツーだと!」
「蒼い戦神!!」
「ラウンズが前線に?」
司令官は顔から笑いが消え、あせりをふくんだ声で叫んだ。。
「くっ!後方の基地に打電、援軍を要請をしろ、いかにラウンズであろうがたった一騎、数の前には無力だ!」
「りょ、了解であります」
そうだ、援軍され来れば勝ち目はある、それにここであいつを倒せば自分の出世は約束されたも同じ。司令官は自分の中の
恐怖を無理やり押し殺した。
前線で上陸部隊を攻撃しているパンツァーフンメルのパイロット達にもラウンズが前線来たと情報はすぐに届いた。
「ここでラウンズを討ち取ったものには一生遊んで暮らせるだけのボーナスをやる」と司令官が言ってきた。
この言葉に最初はラウンズと聞き恐れたが、相手はたったの1騎でこちらは皆我先にクラブに銃口をむけた。
「やつを討ちとれー!」
「金は俺の者だー!」
一斉にクラブに向けて弾丸の雨が襲う、しかしクラブはその弾丸には一発も当たらずにライフルを構えて突っ込んでくる。
雨のような弾丸をすべて回避しながら来るクラブを見てEUの兵士たちは叫んだ。
「なんで、あたらねーんだよ!うああああ!」
「ウソだろー、敵はたった一騎だぞ!ぎゃあああああ!」
「ありえん、ありえんぞ!」
ライフルを連射してクラブは敵陣の中心に着陸した。
「ひるむなー、囲んで討ちとれー」
パンツァーフンメルは一斉にクラブ銃口をむけた、しかしそれよりも圧倒的に早くクラブは腰につけた日本刀タイプのMVS
「夜照光」を掴み抜刀した、ガキン!、ベキン!、バキン!という音が戦場に響き渡った、クラブの周りにいた10騎近いEUのナイトメアは
ただの鉄屑へと姿を変えていった。
クラブはランドスピナーを軋ませながら敵陣に突っ込んでいった、斬る、撃つ、斬る、撃つ、又斬る、そして又撃つという行動をクラブは
繰り返し、さらに後方からはクラブの開けた突破口を使いグロースターやサザーランドが迫ってきた、EU軍は総崩れになっていった。
EU軍の司令室の司令官は青ざめていた、いかにラウンズであろうがたった1騎だとしかしそのたった1騎は戦場を縦横無尽に駆け抜けて確実にこちらの戦力を奪っている
さらに、クラブによって引き裂かれた陣形の隙に上陸部隊が的確に攻撃をしている、おそらくクラブのパイロットが指揮をとっているのだ。
「防衛部隊の損害率70%をこえました」
「馬鹿な、そんな馬鹿な!、たった1騎に戦況がくつがえされているというのか、ありえんぞ!」
軽くパニック状態になっている参謀を横に司令官は絶望した。
不味い、本当に不味い。どんな手を打ってもすぐにそれに対して上陸部隊は対応してきている、
奴のレイナスの指揮と戦況眼は、まさに鬼才。司令官は、もはや打つ手なしということが頭の中に浮かんだ。
さらに追い打ちをかけるようにオペレーターから言葉が飛んだ。
「し、司令、援軍を要請していた基地から通信です」
「なんだこんな時に」
「それが、わが基地は4騎の敵ナイトメアにより壊滅状態、援軍は不可能」
「ば、そんな馬鹿な、まさか、あいつらか!」
司令官のこの言葉に参謀は信じられないという顔をして口を開いた。
「司令あいつらとは?」
「貴様も名前くらいは聞いたことがるだろう、4大騎士だ、レイナスの側近たちだ!」
上陸部隊の隊員達はレイナスの指揮に従いながら斜面を登ってきながら敵騎を破壊していった。
隊員たちは口々にしゃべり始めた。
「すごい!、イクス卿が前線をくつがえした」
「このまま行けば勝てるぞー!行くぞ、行くぞ!」
「まさに敵にとってはまさに戦神だな」
「敵はもう風前の灯火だ、このまま一気に倒すぞー」
ブリタニア軍の兵士たちは猛攻撃を開始していった、勝利は時間の問題となった。
戦場から少し離れた海に浮かぶ戦艦の司令官席に座っているシュナイゼルは静かに微笑んだ。
「すごい者だね、彼は」
それに対して横にいた参謀のカノンは。
「はい、事前情報が違い戦力差がありましたが、ここまでとは」
と驚きながらも答えた。
その直後、通信が入ってきてオペレータが叫んだ。
「イクス卿、及びディーテ卿から打電、両基地に白旗を確認、敵さらなる戦闘意思無しとのことです」
それを聞いたシュナイゼルは満足そうな顔して椅子から立ち上がり言った。
「カノン、全軍に戦闘中止命令をあと敵の基地に歩兵部隊を送り込んでくれたまえ」
それに対してカノンは片手を自分の胸の前に置き静かに答えた。
「Yes Your highness」
カノンに指示を出したシュナイゼルは再び椅子に座り静かにしゃべった。
「蒼い戦神、いやこちらでは仮面の騎士かな、君は一体何者だ?」
クラブのコックピットの中で通信を終えたレイナスは「フゥ!」と息を吐きながら自分の銀髪の髪をポリポリとかいた。
そうしていると通信が入ってきた、レイナスは通信ボタンを押した。
通信用のモニターに整った顔、肩まで届く藤色の髪をした少女が映し出され少女が凛とした声でしゃべり始めた。
「お疲れ様です主、シュナイゼル殿下から戦闘中止命令が出されました、さすが私の愛する主ですな♪」
いきなりの爆弾発言、それに対してレイナスは、銀色の仮面を外してその下の蒼い眼の目つきをすこし強くして返事をした。
「了解した。あとリーラいつも言っているけど、任務中は主とは呼ばないでくれ」
それに対しリーラと呼ばれた少女は、泣きそうな表情をし、瞳をウルウルさせながら。
「主は、私のことがお嫌いなのですか?」
と言った。
「はあ~、騙されないよその作り泣きには!」
リーラは、元の表情に戻りしゃべり始めた。
「おや、ばれてしまいましたか♪」
レイナスはため息まじりにしゃべった。
「最初のころは騙されたけど、だんだん君のことがわかってきたよ」
「おや、嬉しいことを言ってくれますな。それにこれは専用通信ですぞ、私と主の二人きりですぞ♪」
とリーラは頬を染めながら「二人きり」という所を強調して言った。
「もういい………引き上げるよ」
「了解ですぞ、ある…ブチッ」
レイナスは一方的に通信を切り大きなため息をつき、顔に仮面をつけて帰還していった。
リーラ・ディーテは愛機であるアスタルナの中で独り言を言っていた。
「まったく、いきなり通信を切るなんて主はひどい」
そう言いながらリーラはオートパイロットを作動させ自分の胸の前につるしたペンダントを開いた。
その中には先ほどのレイナスの素顔の写真があった。
「主、愛していますよ、誰よりも誰よりも」
レイナスの素顔の写真を見ながら彼女は静かにそう言った。
第1話 「蒼い戦神」
End
最終更新:2009年06月20日 22:41