041-111 反逆のルルーシュ。覇道のライ TURN03 「ナイト オブ ラウンズ」 02 @POPPO

01


「で、マリーカ。ライ様と寝たの?」

「ぶっ!?」
マリーカがシャンパンを噴き出した音によって、周囲の人々から奇異な視線を向けられた。彼女を取り囲んでいるドレス姿の女性たちの一人からハンカチをもらい、マリーカは口を拭った。
王都ペンドラゴンのパーティー会場で、美しい音色を奏でるオーケストラが近くにいるテーブルに、ドレスを着た10人ほどの女性たちがいた。
その中心には一人だけ、赤と白で基調された軍服を纏った少女がいた。名をマリーカ・ソレイシィという。貴族や皇族が行き交う中、軍服のままで出席している彼女は、周囲に溶け込めず、多少の違和感が残る。
「ご、ごほっ…ちょ、ちょっと何てこと言うんですか!リーライナ先輩!」
「そうそう!私も気になってたんだよね~。整備室で堂々と抱き合ってたって聞いたけど」
「なっ!どこからそんな情報が!?…あ、あれはライ様がコクピットを降りたときに、気を失って、倒れこんできただけで…それ以上は…」
「それ『だけ』?…つまんなーい!マリーカ。そのまま、弱ってるライ様を美味しく食べちゃえばよかったのに、千万一隅のチャンスを逃したの!?」
「た、食べっ!?そっ、そんな破廉恥な、(羨ましいこと…)ライ様に出来ません!わ、私は2日間つきっきりで熱にうなされたライ様に…」
「2日!?」
「2日目の夜に目を覚まされて、ぎゅっと私の手を握って、優しく頭を撫でてくれて…」
「「「「「それで!?」」」」」

「『ありがとう』って笑顔で…」

頬を染めながら言うマリーカを見ながら、彼女の元同僚、ヴァルキリエ隊のメンバーが深いため息をついた。ここまで話を引っ張って置きながら、いつも通りのパターンに彼女たちは気落ちしてしまった。
「「「「「…はぁー」」」」」
マリーカは元同僚たちのリアクションの真意が見抜けず、あたふたしていた。そして、いつの間にかマリーカは、いつも通りのネガティブな発言をし始め、
「でも、ライ様はラウンズ様でありますし…私みたいな一士官が…」
青色のドレスを着たリーライナ・ヴェルモンはいきなりマリーカの肩を掴んだ。ビクッとマリーカは体を震わせた。
「ん~、あーっ!そんなこと言ったら駄目よマリーカ!ウチの後輩でも狙ってる子も多いし、カリーヌ皇女殿下を筆頭とする皇族も狙ってるっていう噂じゃない!」
「!?う、うそっ!カリーヌ様が…!」
「え?知らなかったの?アルメル」
「そ…それは、知ってますけど…でもっ」
「でも…じゃないのよ。マリーカ。結婚は別だけど、恋に貴族も平民も無いわ。好きな人は好きなんだもん。仕様が無いじゃない。恋心だけは本人の自由よ。だから、あきらめちゃだめ!わかった?マリーカ」
リーライナの激励に勇気づけられたマリーカは握り拳を作り、軍人らしい彼女の大きな声で返事をした。
「はっ、はい。私、頑張ります!」
「そうよ!それでこそ私の自慢の後輩!」
そう言ってリーライナがマリーカの肩をたたくと、他のヴァルキリエ隊のメンバーも彼女に微笑みかけた。
「ありがとうございます!リーライナ先輩!…それに皆、ありが…」
「アンタがくっつくって、わたし月給掛けてるんだから!」
「……え?」
リーライナはハッと口に手を当て、他のヴァルキリエ隊も何故だかマリーカから目を逸らしていた。不審に思ったマリーカはリーライナ先輩に問い詰めようとして、

「マリーカ?」
唐突に後ろから声がかかった。
「ひゃっ、ひゃい!な、なんでしょうか!ライ様」
話題の中心にいた男、ライ・アッシュフォードの声にマリーカは過剰反応をしてしまった。袖で口元を拭いながらライに向いた。ヴァルキリエ隊の面々は一歩足を引き、頭を下げようとしたが、
「今はパーティーだから、楽にしていいよ。それにヴァルキリエ隊の皆さんも」
『は、はい!』
緊張した大声に、周囲からまたもや視線を集めてしまった。ライはヴァルキリエ隊の人々に微笑みかけると、マリーカの目の前で、片目を瞑って手を合わせた。
「マリーカ。ごめん」
「え?」
「休暇が無くなっちゃった」
マリーカは驚いた。彼女はナイトオブツー、ライ・アッシュフォードの副官であり、この就任式の前は、ライと共に北アフリカ遠征から帰国してきたばかりだったのだ。休暇の時間を使って、彼女は長く空けていた部屋をどうしようかと模索していたのだが、その計画は、今の一言で無に消えた。
「シュナイゼル殿下と共に、EUに行くことになったんだ」
「…ということは」

「うん、今回はヴァルキリエ隊の皆さんと一緒に、参戦することになったから」

『え?本当ですか!?』
ヴァルキリエ隊のメンバーから声が上がった。彼女たちの表情に嬉しさが浮き上がっている。
「うん。後でブラッドリー卿から正式な報告があると思うけど、よろしくね。皆」
『は、はい!』
ヴァルキリエ隊の女性陣は即座に敬礼した。ドレス姿の彼女たちの敬礼する姿は、何とも奇妙だ。その姿を見たライは苦笑した。
「あと、マリーカ。報告書の件、マリーカには本当に感謝してる。だから、今日くらいはゆっくりしてくれ。これは命令だぞ?」
「い、イエス。マイロー…」
ライはマリーカの柔らかい唇にひと指し手を当てた。吸い込まれそうな蒼い瞳と、柔和な笑顔にマリーカは胸を高鳴らせた。
「はい、でいいんだよ?マリーカ」
ライも唇に人差し指を当てる。首を少し傾げ、銀色の髪を揺らしながらウインクをした。見たもの全てを虜にするような微笑みで、マリーカを気遣った。マリーカの顔に一気に血が上る。
「は、はいぃ…」
俯いてしまったマリーカに、ライはそっと彼女の栗色の髪を撫でた。少しずれていたマリーカの花飾りのヘアピンを整え、ライはヴァルキリエ隊に「マリーカをよろしく」と一礼すると、貴族たちの応対に戻っていった。
マリーカは顔を赤くしたまま、一言も先輩たちに話せない。
「平気であんなことをいつもしてくるんです…」と言いたかったが、舌が上手く回らない。というか、先ほどのやり取りがあまりにも恥ずかしくて、嬉しくて、ライの手の感触から夢心地に浸っていたのだ。
真紅のマントをなびかせる彼の後姿を、ヴァルキリエ隊のメンバーは羨望の眼差しで見つめていた。
「ライ様って素敵ね…近くで見ると本当に綺麗…」
「私、結構タイプかも…」
彼に魅了された者がまた一人…
「…アルメル?」




「いだっ!なんで足を踏んづけるんだい!?アーニャ!」
「……ライのばか」



午後の昼下がり、アッシュフォード学園の一室でルルーシュはパソコンを開いて、書き換えられた記憶との誤差を確かめるために、あらゆる情報を集めていた。
キーボードをたたき、ロロが写っている写真を閲覧していたが、ふと手が止まる。先日放送されたライの就任式が頭を過ぎり、思考が停止してしまった。
「ライ…」
単に気が合う友達だからではない。互いの過去を知り、苦しみを知り、偽りのない本当の自分をさらけ出せた唯一の友。彼と真の意味で親友であった記憶を思い出した。
ライが敵になった。
この事実が、彼の心に重くのしかかっていた。
就任式をもって公開されたライの功績は輝かしいものばかりだった。
わずか一年で9つの国家を支配下に置いただけではなく、没落貴族だったアッシュフォード家を公爵に押し上げ、今、この学園も大騒ぎだ。
ルルーシュは目元に手を当てた。昨日のバベルタワーの一件から緊張感が体から抜け切っていない。全身をリラックスさせ、椅子に深く腰掛けた。
「ライさんが、どうかしたの?」
そのとき、扉が開き、少年の声がルルーシュの耳に届いた。ルルーシュの体に再び緊張感が走った。
彼が心休まるはずの学園は、静寂たる戦場に成り果てていた。
素敵な『真実』をプレゼントする。
彼女はそう言った。
これが、嘘の平和から目を覚ましたルルーシュが見た現実だった。
「どうしたの?兄さん」
「…ロロか。いや、なんでもないんだ」
「なんでもないって顔じゃないよ」
「はは。やっぱりロロには分かってしまうか……いや、本当に大したことじゃないんだけどな」
ルルーシュはロロに優しく微笑みかけた。髪と額に手を当て、疲労しているというポーズをとりながら、指の間から弟の顔を見る。彼はロロの表情が一瞬変わったのを見逃さなかった。
昨夜、
リリーシャとルルーシュは中華連邦総領事館の地下ルートから抜け出て、リムジンに乗り込み、トウキョウ租界の都市高速を走っていた。
大きな車の中で、制服姿のリリーシャとルルーシュは向き合って座っていた。ルルーシュは、ヴァルハラの司令官が持っていた分厚い手帳を閉じた。カバンを隣に置いて、長い髪をヘアブラシで整えているリリーシャに話しかけた。
「俺に妹はいるが弟はいない。あいつは誰なんだ?」
リリーシャはルルーシュと目を合わせず、ヘアブラシを動かす手を止めなかった。だが、ルルーシュの問いにはすぐ答えた。
「貴方の弟、ロロ・ランペルージはギアスを持った暗殺者です」
「ギアスを?」
リリーシャはヘアブラシを鞄の上に置くと、髪を手にとって枝毛を確認していた。二人は視線を合わせることなく、話は続けられる。
「私のほうから数人調査員を送ったんですが、全員殺されました。それも貴方の身辺調査を担当した調査員ばかり…」
ヘアブラシを逆の手に持ち返ると、今度は反対側の髪を手入れし始めた。ルルーシュは彼女の態度に表情を変えることなく、リリーシャの言葉を待った。
「殺害時刻や状況から判断して、暗殺に特化したギアスだということは想像が付きました。そして、バベルタワーの件で、能力の性質、範囲も特定できましたよ」
ルルーシュはギアス、という言葉に思考を巡らせた。今までのことで、一つ思い当たることがあった。言葉を放とうとした時、微笑んでいたリリーシャの声にルルーシュは遮られた。
「気がつきませんでした?先輩の最後の一手…実は私のギアスで操っていたんですよ?」
予想外の事実に、ルルーシュは思わず声が出た。
「なに?では、あれは俺のミスではなく…」
その表情を見ていたリリーシャは目を細めたが、一瞬で笑顔を消した。
「…私のギアスは、対象者から一秒以上目を離していないと効果は失われません。あの時、私は先輩に気づかれることなく身体を支配していました。私はあの場所で先輩を捕まえるはずだった。
……にも拘らず、私のギアスはいつの間にか解かれていたんです」
ルルーシュは思考を一旦停止し、リリーシャの顔を見た。その時、はじめて彼らは視線を交わった。
「あのナイトメアの瞬間移動…そして、お前が下した不可解な戦略…その情報から分析するに、ギアスの能力は24パターン予想される。その中で一番に考えられるのは…」
「ロロのギアスは、『人間の体感時間を止める』ギアス。最大範囲は直径約25,4メートル。停止時間は最大5秒。能力の強弱はコントロールできるようです」
「…ふん。ゼロを演じていただけのことはあるな」
「褒め言葉として、受け取っておきますね……それと、ルルーシュ先輩」
リリーシャはバッグに化粧箱を仕舞った。ルルーシュは彼女の顔が暗闇で見えなかったが、リリーシャが笑っていることだけは分かった。闇夜に照られるリリーシャの微笑みに、何か邪悪めいたものをルルーシュは感じた。
「気を付けてください。学園は今や、敵の巣窟ですから」
昨日のリリーシャとのやり取りがルルーシュの脳裏に浮かんだ。穏やかな瞳に奥に、溢れんばかりの敵意が秘められていた。
(こいつは、ナナリーの居場所を蹂躙した男…)
そして、ロロもルルーシュに穏やかな表情を向けていたが、冷たい視線から暗殺者の顔が覗いていた。
(ルルーシュ。お前は記憶が戻ったのか?)

ロロの脳裏には、昨夜のヴィレッタとの地下室での会話が浮かんだ。
「ギアスがばれた?」
「ええ。ルルーシュが、いえ、ゼロは僕のギアス能力に気付いている可能性があります」
「だが、お前がルルーシュに使ったのは紅蓮が現れたときの一度きりなんだろ?」
「でも、それならあの時のナイトメアの戦闘は説明が付きません。あれは明らかに僕のギアス能力を知った上での戦術でした。ヴィンセントの機動性がなければ、今頃僕は…」
「…分かった。ゼロがルルーシュではないのは確かだ。だが、バベルタワーの一件でゼロと接触し、何らかの手段で記憶を取り戻した可能性がある。それが確認でき次第、殺せ」
「Yes, my lord…」

ロロは兄を心配している表情を取り繕いながらも、殺意を秘めた視線で血の繋がらない兄を見据えた。ルルーシュはロロに微笑みながら、言葉をつづった。
「スザクもライも、世界で活躍して、賭けチェスなんかやってる俺は一体何をしていたんだって思ってね。
…バベルタワーの件で思い知ったよ。俺は弟すら守れない兄で、すまない。ロロ」
「そんなことない!頭を下げて兄さん!
に、兄さんはすごい人だよ。兄さんは、いつか絶対にライさんやスザクさんを超えるんだから」
「…ありがとう。ロロ。嬉しいよ」
そういってルルーシュとロロは微笑い、兄は弟を抱きしめた。
不意に受けた抱擁に、ロロはぎこちなく受け入れた。妙な安心感が、彼の冷たい心の奥を、ゆっくりと溶かしていく。そんな感覚がロロの心を余計に揺らせた。いつの間にか、ルルーシュに対する警戒を解いてしまった。
そして、弟の視界の外で、ルルーシュは冷酷な瞳を宿らせていた。身も心も不快感と殺意に染められていたとしても、ルルーシュは「ロロの兄」を完璧に演じていた。
一見、仲の良い兄弟の会話に見えるが、裏では冷徹な命の駆け引きが行われていることを、誰も知らない。




「ただい………ま?」
リリーシャは部屋に入った途端、肩からかけていたカバンを落としてしまった。生き生きとしたヘンリエットを目にした。
「あら!リリーシャ!お帰りなさい!」
妙にハイテンションなヘンリエットに若干引きつつ、リリーシャは冷静に状況を聞いた。
「いや…あの、これは何?」
「何って、ライ様の写真に決まっているじゃありませんか!」
リリーシャは部屋を見回した。
ヘンリエットのベッドがある壁側から天井にかけて、ライの写真がところ狭しと張っていた。アシュフォード学園にいた頃の写真が大半であり、制服姿のライが多く、明らかに盗撮まがいの写真がちらほら見受けられる。ヘンリエットの机には、週刊誌や雑誌類が並んでいた。
(黒の騎士団の情報網より凄いかも…)
「聞きまして!?ライ様って今度の功績で公爵の爵位を授けられたとか。ライ様はわずか1年足らずでラウンズとなり、一族は公爵を授けられるなんて…これで正々堂々、父上に私の心を進言できますわ!」
「公爵!?…それはすごいわね」
リリーシャは既に情報をつかんでいたが、私は海外から帰国してきたばかりで、ブリタニアの情勢に疎いことになっている。彼女は、ヘンリエットの聞き手にまわり、驚くそぶりを見せた。
「ええ!今、我々の部活動はすさまじい勢いで活性化しておりますわ!次期ファンクラブ会長のこの私こそが!」
リリーシャはヘンリエットの優秀さは認めているのだが、これが無ければ、といつも思うのであった。
それもそのはず、彼女がなぜそこまで異性に熱を上げるのか理解できなかったからだ。軍人の家系で育った彼女は、理数的な思考が人一倍強く、幼いころから損得勘定と論理的な基準で物事を冷静に分析していた。そして、裏で『ゼロ』を演じる彼女は、組織の長として、その傾向が益々強くなっていた。
彼女が恋愛関係に疎い理由はそれだけではない。昔から頭が良く、何でも器用にこなせた彼女にとって、心を震わせる男性はいなかった。

彼女はまだ、本気の恋を知らない。

「これ、土産よ」
リリーシャは黒い包みに入った長方形の箱をヘンリエットに手渡した。彼女はそれを机の上で開けると、一本のワインが出てきた。
「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ?イタリアに行ってたの?」
「ええ」
リリーシャはバッグから数枚の紙が入ったファイルを取り出し、右手にはボールペンを持ってチェックを入れていく。ヘンリエットとは目を合わさずにB5の用紙に目を通していた。その姿を見たヘンリエットは小さくため息をついた。
「自分探しの旅もいいけど、ほどほどにしなさいよ……それに貴方、次は何所にいくつもり?」
ふと、リリーシャはペンを止めた。何事かとヘンリエットはリリーシャを見て、彼女はヘンリエットに柔らかく微笑んだ。

「中華連邦…かしら?」

彼女が持っているB5の用紙には、ノエルの汚い文字で『ここ重要!テストに出る!』と大きく書かれていたノートのコピーが写っていた。

翌日。
生徒会室は新たなる展開があった。
「彼女を生徒会の新メンバーに推薦したいんですが…」
「あ!その娘、もしかして!」
アッシュフォード学園の生徒会室には生徒会のメンバーの他に、一人の少女がいた。ルルーシュ・ランペルージは、驚いている他のメンバーに彼女を自己紹介させた。
黒に近いダークブルーの長髪に琥珀色の瞳、整った容姿に180cm弱の長身を持つ美少女だった。隣にいたルルーシュと並んでも背丈はほとんど変わらない。新品に近いアッシュフォード学園高等部の制服を着た少女は、上級生である生徒会のメンバーに挨拶した。
「初めまして。皆さん。高等部1年Aクラス、出席番号16番。リリーシャ・ゴットバルトです」
「ゴットバルト…?」
ミレイは首をかしげていると、ルルーシュはミレイに声をかけた。
「会長。俺たちは後数ヶ月で卒業ですよ。ルックスはもちろん、頭も切れるし、次期生徒会長候補がいるでしょう?」
(…ええ?そんな話は聞いてませんよ。先輩)
(いいから俺に合わせろ…)
リヴァル・カルデモンドとミレイ・アッシュフォードはルルーシュと一人の美少女を交互に見あわせて、ニヤニヤと笑っていた。
「…へえ、ルルーシュが女の子を連れてくるなんて、ねぇ?」
「ふーん…なんか仲良さげじゃない?二人とも」
「「な…っ!」」
会長の言葉に、ルルーシュとリリーシャは敏感に反応した。その二人の姿を、不審な表情でロロが見つめていた。だが、いきなりリリーシャと目が合い、彼女は微笑んだ。
「教室以外の場所で会うのは初めてね。よろしく。ロロ」
リリーシャは遠慮がちのロロの手を掴み、握手をした。リリーシャの笑顔を近くで見たロロは頬を染める。
「えっ…あっ、こ、こちらこそ」
「クラスメイトだろう?ロロ。なんで初対面みたいに畏まってるんだ?」
「あらー?まさか、兄弟そろってリリーシャちゃんが気になる?」
「「なっ!!」」
今度はルルーシュとロロが会長の言葉に反応した。
「リリーシャちゃんみたいな可愛い娘だったら、いつでも大歓迎だぜ!」
「嬉しいです。リヴァル先輩。ルルーシュ先輩と違って、とっても優しいですね」
「…お前、どこまで俺が嫌いなんだ?」
「あら?別にルルーシュ先輩のことは嫌ってはいませんよ。まあ、好きでもないですけど」
「…言いたいことはわかった」
ルルーシュとリリーシャが軽口を言い合う姿を見て、シャーリーはとてつもない危機感を抱いた。
まさに「女の勘」というやつである。
「オッケー!いいわよ。ルルーシュ直々の推薦なら異論なし!いいわね?皆」
「俺はいいよん」
「…僕は、兄さんがいいって言うなら…それにリリーシャさん、頭良いし」
「……ルルが言うなら」
生徒会の了承を得て、リリーシャはめでたく生徒会のメンバーとなった。リリーシャは皆に挨拶と握手をした。洗練された彼女の振る舞いに、ルルーシュを除くメンバーは彼女に好印象を持った。
「またもや、ビッグニュースがあるのよ!」
そして、ミレイは親指を立てたまま、生徒会のメンバーに声高らかに発表した。リヴァルやシャーリーはその報告に心から喜んだ。ルルーシュやロロ、リリーシャもその知らせに笑顔を浮かべる。
皆、様々な思惑を持ったまま…





「本日を持って、アッシュフォード学園に復学することになりました。枢木スザクです」


最終更新:2009年06月20日 22:44
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