スイスの首都「ベルン」、国際機関がありベルン旧市街がユネスコの世界遺産に登録されているここはアインシュタインが特殊相対性理論他の論文を執筆したアインシュタイン・ハウス、時計塔、大聖堂などが有名で
またヨーロッパ最長(約6キロ)といわれるアーケードもある,そのベルン中央駅にライ達は定時どうり到着した
(5番線到着の列車は、16:15発ローマ行き寝台特急オリエントエクスプレスです。なお機関車点検のため切り離し作業を行います)
このベルンに到着したオリエントエクスプレスは機関車「クラブ」と客車をいったん切り離す作業が行われていた。
「ここを外して・・・・ここはこうして・・・・よし、アーニャ!前進良いよ」
「解った!」
ライの合図でアーニャはクラブを10kmもの低速で客車と切り離し操車場へと向かわせた。
それと同時に太い汽笛の音がライのみみに届き、目をやると6重連結の貨物列車が発車したところだった。
「玉城の貨物列車だ、1500mの大編成だって聞いてるけど大変だなぁ」
脱線なんてした時にはそれはもう大変なものだ、その被害総額の何割かを給料から引かれるし始末書なんてそれはもう天にも昇る位の枚数を書かされるなんて言うおまけ付きだ!
あ、でも運転士に原因が有る場合のみの事だけど。
「玉城のやつ大丈夫か?始末書の数ダントツトップなんだぞ」
ニヤニヤとノネットは玉城を冷やかす、当の本人は汽笛を鳴らし出発した貨物の機関車だから聞こえてないけど。
「でも玉城だって一生懸命に働いてるんですから、そこは解ってあげないと」
「いやいやライ、もしかしたらと言う事もあり得るぞ?あのミスター始末書男」
「あは・・あははははははは」
苦笑いを浮かべるライの脳裏にはまだ部長の座に就いていた時の事を思い出す、玉城は軽くではあるが3回の脱線を起こしている(車輪がレールからずれたとか)。
他の機関士達は殆ど無いから玉城の運転が雑だと言う何よりの証拠だ・・・いたたまれる。
「「ライ、ノネット」」
「ああ、ジェレミアさんにアーニャ、激務お疲れ様」
「おつかれ2人とも!!」
クラブを操車場に置き戻ってきたアーニャとジェレミアに労いの言葉をライとノネットはかける。
「ここからが正念場なのだな」
「はい、ここからが本当の戦場ですから」
ジェレミアの呟きにライが賛同し、アーニャとノネットは力強く頷く。
アルプス山脈越え
ヨーロッパの広大な鉄道網を取り締まるブリタニアにおいて最大最凶の難所であり難関だと言われる路線だ。
アップダウンが激しく急勾配が多い坂、連日連夜の雪と低い気温で線路は凍り滑りやすくそのせいで並みのブレーキの力では止まる事などまず不可能だし
きつい勾配が長く険しく続くため牽引する機関車はかなりのパワーが必要。
その路線を創業当初から今に至るまで支え続け、今日のイタリア方面の利用客が多い要因を創りだした会社としては英雄とされるのがライ達が運転するオリエントエクスプレス。
この運行に関係する総ての人員は、胸に会社の紋章ともいえるライオンの形をした黄金のバッチを胸につける事を許され
それだけで他の社員とは違う特別な待遇がなされるいわばエリート中のエリートと呼ばれるのだ。
7号車のキッチン専用車にある食材搬入の為のドアではC.Cとルキアーノが運び込まれてきた食材やお酒等の確認作業を行っていた。
「食材はこれで全部か?」
「いえ、まだ肉類と調味料の類が届いていませんね」
「しっかり数量を確認しろ、足りなかったなんてシャレにならないからな!!」
2日をかけてアルプスを越えるオリエントだが今まで何百と言うイレギュラーで遅れたりと困難が絶えなかった事から食材の数量を徹底するのが決まりだ。
「料理長、緑の野菜が少ないです!」
「なに・・・・業者に確認を取れ、大至急だ!他の食材も同じ様に確認をしっかりとしろ!!」
「「「「はい!!」」」」
C.Cは的確に指示を出していく、全力で働いているからか額には汗が伝う。
「ワインが少ねぇな、補充の分はちゃんと有るんだろうな?」
「はい、ですけどウオッカがまだ届いてなくて」
「んったく業者は何やってんだ!?だれか確認に行ってくれ!!いいか、一つ残さず完璧にしとけよ!?」
「「「「はい!!」」」」
額の汗を拭いながら細かく品物の納入表を事細かにチェックしては大声で指示を出したりと大忙しだった。
ライ達が停車したこのベルン中央駅にも先のストラスブール同様数多くのカフェがある。
「いつも当店の紅茶の葉をご注文ありがとうございますマリアンヌ様」
「いえいえ、ここの紅茶は主人もお気に入りですから」
マリアンヌは今楽しんでいるティータイムでここ「マドリード」と呼ばれるカフェを利用している。
「旦那様はどうされているんです?」
「シャルルはベルンにある孤児院に行ってます、沢山のお土産をもって」
ニッコリというマリアンヌの顔は幸せいっぱいと言う顔だ。
「子供好きですねぇシャルル様は」
「ふふふ、昔からですよ。シャルルの夢は“子供に夢を与えてやる事”ですから」
で、その頃シャルルはと言うと
「いつもありがとうございますシャルル会長、多額の寄付金に加えこんなに沢山のお土産やお菓子を」
「いやいや、礼には及びませんぞ!!私は将来を担う子供達に少しでも夢と希望を持ってほしいだけですから」
孤児院の院長と対面しているシャルルはそう笑顔で語る、そもそもシャルルが鉄道王と呼ばれる所以はここにある。
常に乗客の目線で物事を考えいかにして金を落とすのかを考えるのではなく
いかにして乗客に何度も列車に乗ってもらうかを考える、そして子供には心の底から
列車の旅を楽しんでもらいまた来たいと思わせるような素晴らしい旅を提供する
これらがシャルルが今日に鉄道王と呼ばれる訳なのだ。
「シャルルおじさん!!一緒にあそぼ!!」
「おおお、勿論だとも!!」
と大勢の子供達に引っ張られシャルルは院長のもとを後にする。
「シャルル会長は本当に子供好きでいらっしゃる、そのおかげでここの子供達も元気いっぱい!!ありがたい事だ」
ベルンに着いてから数時間後所変わってベルン中央駅近くにあるデパートの洋服屋さんで
「うーーーーん、これ本当に似合ってるのか?」
「似合ってるじゃない!!このミレイさんの目に狂いはナッシングよ!!」
「それより、こっちの方なんかどう?」
「もう一味何か欲しいところだな・・・・何かいい物は―――」
などとノネットの洋服選びにミレイ、アーニャ、C.C、別の服を探しているナナリーのオリエント5人娘がわいわい楽しくショッピングの真っ最中。
「お客様、こちらなんていかがでしょう?」
「これですか?デザインは良いんですけど・・・・違った色は有りますか?」
「もちろんございます、少々お待ち下さい」
ナナリーの要望に店員は他の服を探しに行った、その間も洋服選びは続き選んで試着した洋服の数のべ60以上にもおよびお店の洋服全てと言ってもいいくらいだ。
「それにしても良くこんな穴場を知ってたわねーーー?」
「ふ、世界のファッション、料理の事ならこのC.C様の右に出る者はいない」
得意げなポーズで自慢するC.Cだが実際そうなのだ、なにしろ世界でも5本の指に数えられるほどの料理の腕に美的センスも中々だし世界中に情報網をもつだけにこういった穴場を見つけるのは容易い。
おかげでネット内では情報網の女帝などと呼ばれている。
「ですけど最近頭角を現した人がいるんじゃないですか?」
「ああその通りだナナリー、しかも目の前にな」
ニヤッと笑って見せるのはアーニャだ。
「いつか世界一の座から引きずり下ろす、そして私がなってみせる」
「なれるものなら、な」
「おーーーーい、この服どうか見てくれーーーー?」
待ちぼうけのノネットは唸るように声をかける、女と言うのは戦わずにはいられない者なのだろうか
けれども仲が良いのは変わらないんだけどね。
その後もわいわい楽しくお買い物に勤しむノネット達でありました。
一方、ベルン中央駅の5番線ではオリエントを一目見ようとカメラを持ったマニアなど様々な人がここに集まる。
「出発2時間前なのにこの人の数、写真を撮るだけだけど笑顔だって言うのはいいなぁ」
子供の写真をオリエントのマークを背に撮る家族や記念撮影を撮る団体客など、その光景を見るだけでニッコリとなるライは先頭1号車の車体に背を預けながら眺めていた。
「あーーーーら誰かと思えばライ、貴方だったの?」
この場に全く合わない冷たく相手を見下すような声をかけてくる奴が現れた・・・・
「・・・・カレン」
誰であろう3年前の悪夢の中にいた人物の一人紅月カレン“スペイン支店支店長”
他の会社から見れば支店長でも大企業の社長に匹敵するレベルの存在だ。
「何しに此処に来た?」
「今だに古臭い物を運転している物好きな人間を見物に来たのよ」
古臭いと言われライは黙ってはいられなかったが此処には沢山の笑顔な人がいる
その笑顔を壊したくないとカレンを鷹の目のように睨む。
「君こそいいのかこんな所にいて、ゼロの処女運転だろ?」
「もちろん、これから到着するゼロに乗る為にここにきてるのよ」
得意げに話すカレンにライは心中穏やかではない。
「無様なものね、かつては本社の中でもエリート中のエリートであり出世街道を進んでいたお方が石炭の煤まみれで働いているなんて!!お笑いものだわ」
「君はその空間に有る特別な物を掴む事が出来ない悲しい人だ、それを解っていないだなんて可哀そうな」
お互いに睨みあったままのこの状態、ここに更に拍車をかける人物が現れた。
「よしなよカレン、下っ端の人間には僕達の事なんて理解出来ないさ」
「スザク・・・・」
カレンを後ろから現れたスザク“副社長補佐”も同じ様な事を言う。
「相変わらずあんなところで働くなんて、ライも物好きだね」
「ふ、汚れ仕事を知らないお坊ちゃんみたいな男に何を言われても利かないな」
スザクに対してもライは態度を緩めたりはしない。
「何時までも過去の遺物にこだわっているような人が言う事じゃないね、古い人間は
去っていくものだよ?」
「・・・・・・・・」
あまりの言いように言葉も無いライはその場を去るように操車場の方に向かった。
「覚悟しておくことね、ゼロの価値が認められればあなた達はお払い箱なのよ」
「残り少ない時間を大切に使わなきゃね、時間は大切だよ?」
2人の横を通り過ぎる時に言われた捨てゼリフに反応する事なくライはその場を後にした。
出発の1時間前、1号車の自分達の部屋に買ってきた荷物を運んでいる5人は後悔していた。
「これならジェレミアさん辺りをつれて荷物運びさせるんだったかしら」
「そうだな、そうすればもっとたくさん買えたのにな」
「私とした事が家畜を置いて来るとは情けない」
ミレイ、ノネット、C.Cは口々に後悔の念を言いながら大量の袋を抱えて客車に乗り込んでいく。
「アーニャさん、どうしたんですか?」
「機関車が来てない、出発の1時間前にはもう連結されてるはずなのに」
言われてナナリーは気がつく、ここベルンで最終点検を終えていつもなら1時間前にはもう出発準備が整っているはずなのに肝心要の機関車が来ていなかった。
と
「・・・・・・・」
「お、どうしたジェレミア。そんな難しい顔をして」
操車場から戻ってきたジェレミアを見たノネットが不思議そうに聞くと
「いやな・・・・その、ちょっとした問題がな」
「問題?何かあったの」
「うむ、それがなアーニャよ・・・・・・・・クラブが動けんそうなんだ」
「「「「「えーーーーーーーーー!!?」」」」」
その驚き様と言ったらもうそれはすごいものが有った、普段はクールなC.Cやアーニャでさえも仰天なのだから。
クラブが動かなくなった、それすなわち――――
「ど、どうするんだ!?クラブ以外にこの大編成を引っ張れる機関車なんて数機しかいないんだぞ!?」
「それに代わりの機関車なんて待ってられないし、と言うか一体どうして?」
機関士であるノネット、アーニャが問い詰めると
「と、とりあえず落ち着いてくれ、実は――――」
さかのぼる事数時間前、ジェレミアは操車場にいた仲間と談笑していた時の事
クラブの点検を終えた整備員が深刻な事を伝えて来た。
「なにぃぃぃぃぃぃ!!?クラブが動けないだとぉ!!?」
「お、落ち着いて下さいジェレミアさん」
「これが落ち着いていられるものか!?オリエントの牽引機関車がここに来て動かないじゃ話にならんのだぞ、なぜ動かんのだ!?」
ジェレミアはもう掴みかかり首を思いっきり閉めんとする勢いだ。
それはそうだろう,オリエントのあの大編成大重量の客車をこれから山脈越えと言う大仕事を行える機関車なんてわずかに数機しかない。
「ブレーキパイプの老朽化が酷過ぎるんです、それに肝心要のブレーキ自体も擦り減りが酷くて本来の性能の60%も出せませんよ。
そんな状態の機関車をアルプス山脈越えになんてとてもじゃありませんが出せません!!今すぐにでも総点検しないと」
つまり今までの疲労がたたり入院させなきゃいけないと言うことなのだ。
「むぅ・・・・だが代わりの機関車はどうするのだ?」
「それについては技術部のロイド氏からこの機関車を使うようにと言われています」
と整備員についていったジェレミアの目の前の機関車を見て唖然となる
「・・・・・・・・・これを使えと?」
「はい・・・・使えと」
「・・・・真面目にか?」
「はい、真面目に」
「と言うわけなんだ、そろそろライがそれを連れてくるはずだぞ」
と言った時に
ポーーーーーーーッ!!
蒸気機関車特有の汽笛が聞こえてくる、その音に反応して大勢の人がカメラを機関車に向け一斉にシャッターを切るも―――
「「「「「・・・・・・はい?」」」」」
ガシャンと客車と連結した機関車をみたノネット達5人娘は一斉に
「本気ですかジェレミアさん」
ナナリーが
「冗談?それともこれは夢?」
ミレイが
「いくらなんでも・・・・なぁ」
ノネットが
「誰かのお遊びか?」
C.Cが
「・・・・記録」
アーニャがそれぞれこう反応するその視線の先にあるのは黒い鋼鉄に身を包む生き物
C62 50
ナンバープレートにはそう書かれていたし炭水車にはしっかりとオリエントの紋章が書かれていた。
これをお読みになった方は少なからずC62と言う蒸気機関車を聞いた事が有るだろう。
日本最大最強を誇る旅客用蒸気機関車、漫画やアニメにもこの機関車が出てきた作品は多い。
かつては栄光の超特急「つばめ」を牽引し、今は無きブルートレインの元祖「あさかぜ」など60年代を代表する急行を引っ張ってきた機関車だ。
「とわ言っても50号機って・・・・パクリになるんじゃあ」
ミレイのこの反応にジェレミアは
「それはそうだが、そう言った文句は作者もしくはシャルル会長に頼む」
「それでちゃんと引っ張れるのか?こいつは」
ノネットが問うとジェレミアは答える。
それによればこのC62 50号機はクラブの後継機としてロイドと同じ部署のラクシャータが共同で開発した物で最大25両の客車を牽引する事が可能で
その際の最高速度は180kmだそうだ、また超小型ではあるが核融合炉を搭載し緊急時に限りだが最大230kmを出せると言う。
「ただし融合炉を使用すると機関車の寿命は大幅に減ってしまうし事故を起こした場合
その全責任は機関士に有り有無を言わさず独房行きだそうだ」
「うわっ、それきつ」
「それほど我々が信頼されてるって言う事の表れなんでしょう」
ノネットがげっとなるもミレイが機知をきかせて言うと皆納得する・・・・が
「なんだか空を飛べそうですね」
「こらナナリー、喜ぶんじゃない。どこかの会長のやる事は子供みたいだな」
「そういった心が有ったからここまで巨大な企業になったんでしょ?」
C.Cとアーニャのシャルルに対しての評価はけっこう高い。
「さて、出発45分前!!皆持ち場に戻りましょう?頑張るわよーーーーー!!!」
「「「「「おーーーーーー!!」」」」」
「・・・・・仲間に入り損ねた」
唯一人ライだけがあの輪の中に入り損ねてしまったとさ。
その頃とある高速道路で
「・・・・・・・・・・・」
マズイ・・・・本気で今そう思ってタクシーの中にいるシャルルは冷や汗をかいている。
「お客さん、急ぎかい?」
「ああ、あと45分以内に着かなければ乗り遅れてしまう」
「まいったねぇ、全然前に進まないんだよなぁ」
交通渋滞にどっぷりとはまってしまったシャルルの乗るタクシーはさっきから全然前に進まないでいる。
「むぅぅぅ、どうしたものか」
ベルン中央駅5番線16:58発ローマ行きオリエントエクスプレス
次々と列車に乗り込む乗客達の中にシャルルの姿は無いかと懸命に探すマリアンヌ
「・・・・・・・」
「お母様、どうしたのです?」
心配そうに顔を覗き込むナナリー、全員元の制服に着替え戦闘準備は万端だ。
「ええ、シャルルが来なくて・・・・」
「お父様が!?どうしましょう、何か事故にでもあったのかも」
「そんな事を言うものじゃありませんよナナリー、シャルルは必ず来ます」
とは言ってみるものの、心配の色は隠せていないマリアンヌにナナリーである、すると―
ポーーーーーーーー!!
「え、もう出発の時間?」
「いえ、あれは出発20分前の合図です」
「・・・・・・あなた」
ここまで来ると本気で何かあったのではと思ってしまう、そんな所にミレイが来た。
「どうしたのナナちゃん、元気ないわよ?」
「ミレイさん、お父様がまだ来てなくて」
時間が過ぎれば過ぎるほど心配の色は大きくなっていくナナリー。
「会長が?困ったわねぇ、列車の出発を遅らせるわけにもいかないし」
「ごめんなさいミレイ、私の主人がとんだ心配事を」
「大丈夫ですよ、会長は絶対に間に合いますから。ナナちゃんもお父さんの事信じるのよ良い?」
「はい・・・・」
ミレイの励ましに顔色を少し良くするもマリアンヌと同じようにまだ濃いままだ。
駅前広場 16:55
キーーーーーーッ!!とさながら漫画のように前のめりで突っ込む様に止まったタクシーが1台あった。
「まいど、お金はあとで会社に請求するから早く行きな!!」
「すまぬ!!この礼は必ずするぞ!!」
シャルルは両手に抱えきれないほどのお土産を持ち全速力で5番線に向かった。
さてその5番線では絶望を告げるアナウンスが流れる
「(5番線からローマ行き寝台特急オリエントエクスプレスが発車します、まもなく
ドアが閉まりますご注意ください)」
そのアナウンスを聞きマリアンヌとナナリーはここまでかと俯いてしまう、とその時
「マリアンヌーーーーーー!!ナナリーーーーーーー!!」
「「!!」」
大急ぎで駆けてくるシャルルの姿を見た2人はイッキにぱっと表情を明るくする。
「お父様、急いで!!」
「シャルル、早く!!」
シャルルはマリアンヌとナナリーのいる10号車のドアから駆け込みやっとオリエントに到着した。
「すまぬ2人共、子供と遊んでいるのに夢中で遅れてしまった」
「良いのですよ、こうして無事に帰って来てくれるそれだけで良いのです」
息を切らせながら謝るシャルルと優しく出迎えるマリアンヌを見てナナリーは笑顔でドアを閉め、無線でミレイに元気よく報告する。
「準備完了、出発OK!!」
「アイアイサーーーーー!!しゅっぱーーーーーーつ!!」
ポーーーーーーーーーー!!!!
けたたましい汽笛の音と共にライはレバーを手前に引き列車を出発させる、始発駅の発車時と同じようにガタンとC62は客車を引っ張りベルンを後にする。
ここからは険しいアルプス山脈が待ち構えている、ここから一体どんな出来事が待っているのか誰も想像できないがこれだけは言えよう。
楽しく、スリルのある旅になる事だろうと
続く・・・・
最終更新:2009年07月04日 13:08