042-157 ○ささやかな願い その2○



僕が何気なく廊下を通りがかった時だった。
何やら嗚咽の声が聞こえたような気がする。
気になって、その音のする所に行った時、僕は見てしまった。
一人、誰もいない部屋で涙を流すナナリーを……。
「ど、どうしたんだ、ナナリーっ」
僕は慌てて、彼女に駆け寄った。
それで、彼女も僕の事に気が付いたのだろう。
ゆっくりと僕の方を向く。
その顔は、涙に濡れ、ぐちゃぐちゃだった。
だが、それでもナナリーの可愛さはかわらない。
それどころか、泣いているナナリーの顔を見た瞬間、僕が守らなくてはと思ってしまうほど魅力的だった。
「大丈夫っ、僕がいるよ」
そう言って、ナナリーを優しく抱きしめる。
「ライさんっ……。私っ……」
抱きしめられたナナリーが僕のほうを向いて呟く。
「私って……やっぱり不幸なんでしょうか……」
その言葉には、ナナリーの思いが強く込められていた。
その言葉と泣き顔が、僕の心にズキリとした痛みを生む。
僕が何とかしないと……。
その思いだけがどんどん強くなっていく。
「僕は、ずっと君の傍にいる。どこにも行かないよ……」
僕の言葉に、少しナナリーは落ち着いてきたようだった。
そんな彼女の様子がうれしくて、僕ははっきりと宣言する。
「僕に出来ることなら、何でも言って。君の望むことなら、なんでもしてあげる」
そう。それは僕の決心。
今、僕の心に沸き起こった真実の思い。
彼女の為なら、何でも出来そうな気がした。
だから、僕は、その後にナナリーが言ったことを深く考えないで即答した。
「じゃあ、お昼はチャーハンをお願いしますね」
「ああ、任せてっ」
………。
あれ?!
僕は、道を踏み外してしまったのかもしれない。
今、まさに、そう実感してしまっていた。

ちゃんちゃん


:おまけ
そして、僕が後悔に駆られている頃、ナナリーは……。
ライさんは、使えますわね。
きちんとキープしておかなければ……。
そんな事を密かに思っていたとか、いなかったとか……。


最終更新:2010年02月23日 00:34
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