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佐々木と町歩き


プロローグ
さて、唐突だとは思うが高校生になった俺は、・・・あー、例のヘンテコな団の面子を除いてだが、
“友達”と呼べる存在はそれなりに居た。
谷口や国木田だってそうだし、いつぞやの件で世話になった阪中、
それにその他諸々(こういう言い方もどうかとは思うが)、
結構な人数だと思う。しかし、今日の待ち合わせの相手は、本人曰く“友達”じゃなく―――



「お待たせ」



―――おっと、待ち合わせの相手が来たようだ。
待ち合わせよりもちょっと早く来ていた俺よりちょっと遅れて来たそいつは、
可愛らしいピンクのカーティガンを身に纏い、大胆なミニスカートで登場した。



「待った?」



「いいや」



「なら、いい。それでは行こうか」
そいつは―――いや、もうぼかしもいらないか。佐々木は穏やかに微笑んで、歩き出した。
さて、何故俺が佐々木と肩を並べて町を歩いているのかというと、話は昨夜に遡る。



1.
俺が風呂でのんびりしていた時の話だ。
最近お気に入りのバラードを発見した俺は、そのバラードの鼻歌を歌って非常にリラックスしていた。
その俺の安らぎの時間に入りこんで来るのが、



「キョンくぅん、電話―」



我が妹だ。もう慣れているし、どうでもいい事なんだがな。



「誰からだ」



妹はにへら、と笑い



「女の人―」



あー、分かったよ。さっさと代われ。妹の言い草からだと、
ハルヒではないな。あいつなら俺の携帯電話に俺が出るまでかけ続けるだろうし、
ついでに我が妹は「ハルにゃん」とか言うからなぁ。同じ理由で朝比奈さんも却下。
長門も俺にかけるということは滅多にしないし、古泉は女ではない。
その電話が誰からだ、という推測はついていないが、
俺は妹から子機を受け取った。妹が浴室から出て行くのを確認して、ようやく電話に応答した。



「もしもし」



『やぁ、入浴中にすまないね』



なんだ、佐々木か。



『親友に向かってなんだとはないだろう?キョン』



ああ、悪かったよ。それで、何の用だ?



『実は明日、ちょっと僕に付き合って欲しいんだが』



ふむ、明日か。そりゃまた何で。



『それは会ってから話そうじゃないか。それでは明日午前9時、いつもの駅前で』



それだけ言って佐々木は電話を切った。いつもの、というのは無論、
我がSOS団の集合場所の事だ。何故俺を呼ぶのかは知らないが、
断る理由も無いだろう。珍しく明日はSOS団的活動は休みだからな。



―――以上が今佐々木と肩を並べて町を歩いている理由となる。
理由はまだ聞いていないが、それはまぁいつでもいいだろう。
どうせ俺も暇な休日だったんだ、女子と歩くのも悪くは無いだろう。



「それは幸いだね。僕もキョンとのんびり歩けて楽しいよ」



“友達”じゃなくて“親友”と言ったな。そこまでの付き合いをしてきたから、
俺はこんな事を言われても別に脈拍が景気良くハイテンポに音を奏で始めるわけじゃない。



「ふむ、それはつまらないな」



何がだよ。



「君が僕のような女子と触れ合って、慌てふためく姿を見れないからね」



それをしようとするのは遠慮していただきたい。
お前が相手だろうと、俺が朝比奈さんや長門を前にして
慌てふためく姿を見られるのはプライドが傷つくと言うものだ。



「くっくっ、そうか」



「ところで佐々木、これからどこへ行くんだ?」



「じきに分かるさ」



曖昧に言葉を濁しつつ、佐々木はどんどん歩いて行く。
しばらく歩き続けて、佐々木はいきなり歩みを止めた。



「この店には前々から興味があってね」



佐々木が立ち止まった所には、最近出来た衣類の専門店があった。
ふむ、服とかに気をかけない俺にはあまり縁がなさそうだな。



「そうかい?キョンも外見を綺麗にすれば、もっと女の子が近寄ってくると思うよ」



ほっとけ。お前な、その言い方は今の俺の外見が汚いみたいじゃねぇか。



「くっくっ、失礼。では入ろうか」



佐々木は古泉と張り合えそうな微笑をして、店内へと入っていった。
店内ではカップルやら女友達の集団やらで結構混雑していた。
そのカップルの類に俺達が入ってもいいのかね?佐々木は入るやいなや、
さっさと目当ての売り場へと向かって行った。



「佐々木、お前は何が欲しいんだ?」



「ふむ、そうだね。最近よそ行きの服が破れてしまってね。代わりの服を探しに来たんだよ」



ふむ、お前もそれなりに服を気にして居るんだな。



「バカにするなよ、キョン。僕だってファッションは結構気にして居るんだ。一応女の子だもん」



口調を変えるな。いきなり変えるもんだから笑っちまいそうになっただろうが。



「む、またバカにして。僕も女の子だからね。たまには甘えたくもなるものさ」



相手を考えて欲しいね。お前だって俺が女子の前で挙動不審に陥りやすい事を知って居るだろう。



「知らなきゃさっきのような口調の変化はさせないさ」



コノヤロウ。お前は俺を弄んでそんなに楽しいのか。



「さっきも言っただろう?僕は君が慌てふためく姿をこの目で見たいと思っていると」



なんじゃそりゃ。今現時点で俺が言える言葉はこれだけだな。
やれやれ。



2.
「ふむ、そうだな。これなんかどうだろう」



さっきから俺は佐々木の服選びに付き合っているのだが、これがまた長い。
俺の妹ならばシュパッと決めてしまうもんだが、佐々木ぐらいの年頃なら時間がかかるのも頷けるな。



「店員さん、これ試着しても?」



「どうぞ」



律儀にも佐々木はいちいち店員さんに試着許可を頂いている。
試着室に消えた佐々木を待つべく、俺も適当にその辺を眺めていたが、
女物の服しかなく、俺はやむなく目を閉じた。



壁にもたれかかって、どれくらいの時間が経っただろうか?



「キョン。起きなよ。立って寝るなんて、君も器用なものだ」



そんな事を言っている佐々木を目の前にして、俺は口を開けたままぼんやり突っ立っていた。



「どうした、キョン?そんなに似合うのかい?ならば、買って良かったと言うものだ」



俺の目の前にいた佐々木は、俺が今日最初に出会った佐々木とは全く違う印象だった。
佐々木は真っ白なドレスで身を包んでいたのだ。



「さ、佐々木・・・?」



「くっくっ、そういった状態の君が見たかったんだ」



ウエディングドレスと言っても差し支えなさそうなその衣服は、佐々木曰くパーティー用らしい。
俺はしばらくぼんやり突っ立っていた。



3.
「ほら、行こう」



着替えた佐々木を見て、俺はようやく正気を取り戻したようだ。
佐々木に連れられて、また外を歩いていた。



「しかし、キョン」



佐々木は笑いをこらえる様な表情で俺を見つめている。



「何だよ」



「慌てふためく、といかなくても君の精神状態にちょっと影響が出る程度も良いものだ」



お前はオタクか。



「おっと、誤解しないでもらいたい。僕は君の貞操が崩れるのを見るのが楽しみなんだ」



うるせぇよ。親友の縁を切るとまではいかなくても、お前としばらく顔をあわせる気が失せるだろう。



「・・・それは嫌かな。キョンともう会えなくなるなんて、私・・・私・・・」



おい、佐々木?



「なんてね。今のキョンの表情も中々のものだったよ」



くそっ、してやられた!



さて、俺と佐々木はあの後、
「お腹が空いたね。キョンもそうじゃないかい?」
という佐々木の一言でファストフード店へと入っていた。昼ごろなのでかなり混雑していたので、
佐々木が注文、俺が席取りという役割分担だ。
購買のヤキソバパンを奪いあうような感覚で席を奪取した俺は、
佐々木が持ってくるであろうダブルチーズバーガーを期待してのんびりと待っていた。
5分くらいかかって、



「やぁ、お待たせ」



ジュースやらポテトやらのセットをトレーに乗せて、ウェイターといっても差し支えない営業スマイル(ではないのだが)でやってきた。



「ああ、俺も腹が減ったんだ。さっさとくれよ」



「そうか」



佐々木はにこやかに俺に注文した品を差し出してくれた。
俺は早速渡されたハンバーガーを開封すると、黙々と食い始めた。
うん、たまにはハンバーガーも悪くないな。



「くっくっ」



なんだよ。気味が悪いぞ。



「失礼。食べる事に集中したキョンが可愛くてね」



ごふっ!いきなり何を言いやがる!
俺は喉に詰まらせたダブルチーズハンバーガーをなんとかすべく、
ジュースが入ったカップに手を伸ばした。



「おっと」



おい、俺のジュースだろ!取り上げるな!俺の今の状態が分からないのか!



「何と言っているのか分からないな。なんたって、今のキョンは喉にハンバーガーを詰まらせているからね」



お前・・!俺を殺す気か!
佐々木はニヤニヤしつつ、俺にオレンジジュースを手渡した。
俺はそれを一気に飲み干してから、佐々木に向かって



「お前な!三途の川が見えたぞ!」



佐々木はなおも表情を崩さず、



「くっくっ、今のキョンも可愛いものだったよ」



おい・・・弄ぶなよ・・・・



4.
「やはりキョンは僕をちゃんと異性として見ているのかい?」



「うるさい」



ファストフード店を出た俺は、さっきから佐々木の嫌味な質問攻めに適当な返答だけをしていた。やれやれ、お前はいつからそんなにいたずら好き(?)になっちまったんだ?



「キョンと出会ってからかな」



あーそうかい。んでもってそのいたずらは俺にしかしないのか。
ふぅ、と俺がやるせない溜息をつくと佐々木が、



「キョン・・・溜息をつくと幸せが逃げていくって知っているかい?」
と言うので俺は即答した。



「知らん」



「くっくっ、そうか」



また嫌味な笑い方をするが、不思議と俺は嫌な感じがしなかった。
んー、これは多分いつもの事だからだろうね。
思えば昔からこんな感じだったか?塾へ一緒に行く時も自転車の鍵を隠してみたりな。
あの時のお前は―――



「おっと。キョンは公道で他人の昔の失態を明かすような酷い人だったかい?」



俺は素直にその先を言うのをやめた。佐々木からは静かに殺気が滲み出ていたからだよ。
おー怖い。そういやこいつは怒ると怖いタイプか。



「それくらいの事が出来なければ人間社会では生きていけないさ」



という佐々木に俺は素直に賛同しておくことにした。さて、次はどこへ行くんだ?
「そうだね。次は・・・あそこなんてどうだい?」



佐々木が指を指した先には、何やら純洋風のカフェがあった。ふむ、のんびりするにはうってつけだな。
 店内は落ち着いたちょっと中世の時代を思わせる雰囲気を漂わせていた。
穏やかなクラシックが流れていて、カフェとしては中々良いところだった。これは意外な穴場だな。



「ふむ、そうだね。僕も適当に目に付いたカフェに入っただけだったんだが、ラッキーと言うべきか。今度からここで落ち着くこととしよう」



佐々木も気に入ったのか、やたらと褒めている。
俺と佐々木は席につくと、コーヒーを注文した。俺がぼんやり窓の外を眺めていると、



「キョン。今日はどうもありがとう」



なんだ、改まって。
「僕だって礼くらい言うさ。いきなり人を呼び出しておいて何も礼を言わないほど僕も愚かではないよ」



愚かって。それは言いすぎじゃないか?



「そうでもないさ。僕はキョンに本当に感謝しているよ」



佐々木は微笑むと、ウェイターが運んできたアイスコーヒーを俺に渡した。
俺はそのアイスコーヒーをすすりながら、



「ま、どういたしまして、だな」



と言ってやった。



「くっくっ」



なんだよ、また。



「いや、素直に喜んだだけさ。キョンに迷惑をかけてしまったのではないかとね」



ふん、どうせ暇なんだよ。俺としては暇が潰せて大助かりさ。



「くっくっ、なら良いんだよ」



佐々木はまた笑うと、コーヒーにストローをさした。
俺はまだ残っているコーヒー置いて、改めて佐々木を見てみた。
良く見てみれば、凄く可愛いんだよな、こいつ。
でも、どこかが風変わりで男子からは不気味がられているんだったな。
でも、塾が同じだった俺と仲よくなっていたんだよなぁ。
そこから俺は「変な女が好き」っつーどうもアレな印象が植え付けられたみたいだった。



「ふむ、もう底が尽きた」



そう言った佐々木は、俺のカップに自分のストローをさして、



「これ、貰うよ」



と言って飲みだした。別に構わないけどな。お前そんなに飲む奴だったのか?



「これでもコーヒーは大好きなんだ。家にコーヒーメーカーがあってね」



ふうん、かなりの通らしいな。



「そうさ」



そこから俺と佐々木の会話の層は広がっていったんだ。



5.
「キョン、今日はありがとう」



佐々木の奢りで喫茶店を出た。
喫茶店では、昔出会った頃の話、塾での話とか色々して、何だか久々に和んだような気がするぜ。



「それは幸いだ。キョンが不愉快にならなければ良いと思っていたからね」



別に。お前を相手にして不愉快なんかにはならないよ。



「そうか」



佐々木は機嫌が良いのか、さっきから笑いっぱなしである。
ま、お前も不愉快じゃなきゃいいんだけどな。



「愚問だよ、キョン。僕が不愉快なんかになるわけないだろう?」



佐々木はニヤリと笑って、俺の手を掴んだ。



「佐々木?」



「くっくっ、こうすれば僕達も立派なカップルに見えるんじゃないかい」



お、おい。急にどうしたんだ。機嫌が良すぎて逆にハイになったんじゃないだろうな。



「それなら機嫌が悪すぎて、じゃないか?どっちでもいいけどね」



佐々木はよく分からんことを言って、俺を引っ張った。



「ちょっ・・・」



あんまり強く引っ張るもんだから、俺はバランスを崩して倒れてしまった。



「うわっ!?」



俺が倒れて来るとも分からなかった佐々木も一緒に倒れた。



「あ・・・」



気付いたときには俺が佐々木の上に馬乗りというなんとも言えない体勢になっていて、
朝比奈さんが「私何も見て居ませぇん!」とか言って逃げ出していきそうなそんな感じになっていて、
不覚にも俺の脈拍は軽やかなテンポですごい演奏をおっぱじめていやがった!



「・・・ごめん、キョン。とりあえず早くどいてくれないかい?」



佐々木の一言で我に戻った俺は、神速の早さで飛びのいた。
佐々木は自分の服についた砂埃を払いながら、



「今のキョンの顔も可愛いものだったよ」



結局、俺は弄ばれただけだったな。



6.
俺は佐々木を家の前まで送っていた。



「キョン、今日は本当にありがとう」



何度も念を押して礼を言う佐々木も可愛いんじゃないか?と仕返しのつもりで言ってやったのだが、



「くっくっ、やはり君は僕を異性として―――」



ええい、うるさい!その台詞は反則だ!



「くっくっ、必死になる君もいいね。昔出会った頃を思い出すよ」



中一の俺は・・・ダメだな、ありゃ。アレは俺じゃないんだ。



「よく言うよ。キョンはあの時からキョンだったじゃないか」



分かった分かった。どうせあの時の俺も俺なんだろ。



「だからそう言ってるじゃないか、くっくっ」



やっぱりこいつに口で勝てる日は来そうにないな。



「じゃあね、キョン」



佐々木は割とあっさりと家に入って行った。
俺も家に帰る事とした。いつまでも家の前に居てもアレだからな。



エピローグ
その後の事だが。
俺が風呂でのんびりした後に、携帯のメールの着信履歴に「佐々木」という文字があった。
念押しに、まだ礼を言い続けるのかと思いきや、少し違うものが書かれていた。



件名:可愛いキョンへ



今日のキョンは可愛かったよ。
普段ならあんな姿、僕の前じゃ見せないだろう?
今日君を誘った理由を教えようか。
慌てふためくキョンの姿を写真にでも収めようと思ってね。
色々ヒントの種も捲いたつもりだったんだけど。
全く気付かなかったようだね。ま、それもまた君の可愛いところさ、キョン。
ドレスをあえて今日買ったのも、その為なのさ。
さて、僕はもう寝るから。
おやすみ・・・・



へー・・・ほー・・・やっぱりあいつは俺を弄びたかっただけなのか!
しかし、不思議と悪い気分じゃないな。俺もヤキが回ったのかもしれないが、
“親友”だから許してやろうか。ドレス姿は悪くなかったからな。



END

あとがき

いつもと書き方を変えてみた結果がこれだよ!(滅
佐々木さんは個人的に好きなキャラクターなので、美化せねばと思っていたのですが・・・
\(^о^)/(ちょ

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最終更新:2009年03月20日 20:20