その男は、自分の体型を気にしていた。単純に言うと、太っているからである。それのせいで、辛い思いもした。
だから、男は変わろうと思った。だけど、努力する事をしなかった。まぁ、それが太った理由な訳だが……。
そんな男に、一つの噂が届いた。『絶対に痩せる事の出来る』というエステがあるという噂。
エステ。それなら、努力も必要ないだろうと安易な考えを持っていた男は、早速噂のエステへと向かった。
そのエステは何だか怪しい、狭い路地の奥にあった。看板を見れば、『エステ』と簡潔に書かれているだけである。男は一瞬入るのをためらったが、痩せられるなら何でも良い、と藁にもすがる思いで入った。
入ってみると、割と雰囲気の良い店だった。快適とまでは言わないけれど、壁のシンプルな灰色が良い感じを醸し出しており、隅に置いてある観葉植物、更に、大きな熱帯魚が泳いでいる巨大な水槽まであった。
噂を信頼して良かったと、男は胸を撫で下ろす。
「いらっしゃいませ」
気づくと、まだ16歳くらいだろうか、少女が男の前に立っていた。そこら辺の少女と違うのは、メイド服を着ているところ、そして今まで見た事の無い位の美人である事だ。
「この店に来てくださったのは初めてですよね? でしたら、初回はお試しで無料なんですよ」
驚いた事に、この少女は来た客の顔を全て覚えているらしい。何でこのエステは(一見)良い店なのに、(一見)繁盛してないのだろうか?と男は首を傾げた。そんな男の疑問をよそに少女は、
「本店には5キロ減量出来るコースから、10キロ、15キロ減量出来るコースがございます」
最低でも5キロ、一日で減量出来る。しかも今回は無料。15キロ減量コースを選びたい男だったが、
「ですが、初回お試し無料コースですと、5キロ減量コースのみとなっております」
と、言われたのでは仕方が無い。男はしぶしぶ5キロ減量コースを選んだ。どんな部屋に案内されるのかと期待した男に、少女から意外な一言を告げられた。
「お客様には、今から私を捕まえて頂きます」
男は、流石に驚きを隠せない。
「ですが、私は逃げます。その逃げる私を捕まえたら、今夜は私を自由にしてください」
16歳の少女を自由にしよう、なんて言ったら犯罪だが、今回は別だ。何故なら、少女が承諾しているから――
男は、一晩中少女を追い掛けた。暗い夜道を、男は必死に駆けた。ゴミ箱に頭を突っ込もうとも、窓ガラスに全身突っ込もうとも、結局捕まえることは出来なかった。少女は、恐るべき体力の持ち主だった。
翌朝、男が体重を測ると5キロの減量に成功していた。
人間、誰でも欲望は湯水の如く沸くものである。男は性懲りも無くまたそのエステに向かった。最早男の目的は、ダイエットではなく華麗な少女をお目にかかる事となっていた。
男が店に入ると、昨日の少女がカウンターに居て、
「いらっしゃいませ。昨日はお疲れ様です。今日はどうしますか?」
5キロ、ともう一度頼もうかと思ったが、「10キロならもっと凄い美人が見られる」と浅はかな考えを持っていた男は、10キロコースを注文した。
「かしこまりました」
注文を受けた少女が、パチンと指を鳴らした。すると、店の奥から黒人のアメリカ人っぽい男性が出てきた。見た所、体つきががっしりとしていて、腹筋も綺麗に割れているような男だった。
これはどういうことなのか、男が少女に尋ねた所。
「一晩彼から逃げないと、貴方は彼に自由にされます」
男は即座に逃げ出した。後ろを振り返れば殺られる……!その位の覚悟で。
この日以来、男は行方不明になった。
~END~
一人称小説に染まった私ですが、
今回は3人称に挑戦しました。
力作だななんて友達に見せたら、
「某大型掲示板で見たぞ?」
って言われてぎゃああああ(ry
でも、書いたもん勝ちだもんね!
故意じゃないもんね!(滅
いや、誤解しないでくださいね。本当に被っただけなので……。
最終更新:2009年05月02日 22:41