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闇が夜の主役で無くなってからどれほどの年月が経ったのだろう。
下品で扇情的なネオンライトは、かつてあったはずの歌舞伎町の闇夜を殺し尽くし、光が全て平等では無いことを表すかのように、月と星の微かな光を消し去った。
昔は良かったなどと言うつもりはない――誰がこの平成の世になって、ガス灯を望むだろうか。
全ては強い輝きの中に消えるだけ、時代の流れとはそういったものだ。
昔を思い出すものが無くなってしまうのが悲しい、それだけだ。

「たまにの、浦島太郎について考えるんじゃ」
「浦島太郎と言うと、助けた亀に連れられた」
本来ならば客で賑わうであろう時間帯であったが、稼ぎ時などという言葉を忘れてしまったのか、そのバーには客が二人しかいなかった。
黒ずくめの青年が一人とショートカットの少女が一人、カウンターに隣り合って座っている。
魔性の美――その言葉が相応しいであろう、その青年は男――否、人間というにはあまりにも妖しい色気を放っていた。
それに対しては、少女の美は常識の範疇に留まる。
最も、その存在そのものが夜のバーに相応しくないということを除けば、であるが。
如何に見方を変えたとしても彼女を成人、否――大学生としてすら視ることは不可能であろう、どう足掻いても高校三年生が良いところだ。
だが、変に老練した雰囲気があり、背筋を正して会話をしたくなるような、不思議とそのような気配を持った少女であった。

「開けてはならない玉手箱と言うがの、浦島太郎は玉手箱の中身がわかっていても……それでも開けてしまうのではないか」
「それはつまり、独りで生きるぐらいならば老いて早々に死んでしまいたいと?」
「否……」

そう言って、少女は目の前のカクテルを軽く口に含む。アルコールが入っているかを気にする必要はなかった。
懐かしい味のする酒だったが、彼女は今までにそのようなカクテルを飲んだことはなかった。
その懐かしさは、きっと何一つとして変わらない隣の男がいる所以だろう、と少女は思った。

「空っぽになってしまった数百年を、無理矢理にでも埋めてしまいたいのじゃ。失ってしまったものに間に合うと信じて……」
「……成る程」
男もまたカクテルを呷り、そして少女へと向き直った。
最後に会ったのは、大正時代であったか、昭和時代であったか、しかしかつてあった姿のままの少女を見た。

「あなたは、玉手箱を開けたいのですか?」
「……わしが開けなくても、わしの身体が勝手に開けてしまうよ」
少女もまた、男を見た。
かつて日本国が大日本帝国であったころの思い出、しかし目の前の男は思い出から飛び出してきたかのように何一つとして変わっていなかった。

「あなたは何一つとして変わらないな、首藤涼さん」
「あなたもね、帝都の小悪魔さん」


首藤涼という少女の身体は、何時の頃からか老化という現象を忘れてしまっていた。
その始まりが明治であったか、大正であったか、彼女すらも覚えてはいないだろう。
彼女の中にあるものは具体的な年代ではない、思い出だけだ。

友人は首藤涼よりも先に老いて、先に死んでしまった。
首藤涼は友人と初めて出会ったその姿のまま、葬儀に参加した。

友人の子どもは首藤涼よりも大きくなり、先に老い、先に死んだ。
首藤涼は子どもを生まなかった。

かつて、恋人がいた。
恋人が歳を重ねても、首藤涼は出会った頃の姿のまま。
恋人が歳を重ねても、首藤涼は出会った頃の姿のまま。
恋人が歳を重ねても、首藤涼は出会った頃の姿のまま。

恋人は首藤涼を追い越して、それでも首藤涼は出会った頃の姿のまま。
恋人は首藤涼と人生を歩むことは出来ず、それでも首藤涼は出会った頃の姿のまま。
恋人は新しい恋人を作り、それでも首藤涼は出会った頃の姿のまま。
恋人は人生を同じ速度で歩める家族を作り、それでも首藤涼は出会った頃の姿のまま。
恋人は首藤涼よりも先に死に、それでも首藤涼は出会った頃の姿のまま。

首藤涼は恋人と出会った頃の姿のまま、独りぼっち。


首藤涼が夢幻魔実也と出会ったのは、やはり東京が帝都と呼ばれていた時代のことだった。
彼は帝都でも有数の探偵であり――そして、文明の時代にあって、霊や妖怪といったオカルティズムの怪物を相手取れる有数の人物であった。

しかし、彼女と彼が遭遇したのは老化しない病――ハイランダー症候群が関係していたわけではない。
つまらない怪現象が彼と彼女を巡りあわせたに過ぎない。

夢幻魔実也という男ならば、あるいは自分と同じように死ぬその日まで、老いというものを知らぬままに、共に歩めるかもしれない。
首藤涼がそう思ったことは否定出来ない。
だが、今となっては自分の人生の速度で歩んでしまった恋人が忘れられず、そして、自分自身が普通の人間の速さで生きることを諦めきれなかった。
故に、夢幻魔実也とは何事も無く、ただその事件だけの付き合いで終わった。

だが、まさか別れ際に彼の言った「また、お会いしましょう」という言葉が現実のものになろうとは。
そして、今日が思い出の中の昨日であるかのように、彼と酒を飲み交わすことになろうとは。

帝都での怪異といい、自身がかつて身を置いた裏社会の事といい、そして10年黒組の事といい、
長く生きようとも、世に不思議の種は尽きぬものである。


「聖杯とは叶わぬ望みのない願望機、あなたが望むならば……今からでも普通の身体に戻ることも、あるいはあの時代からやり直すことも出来るでしょう」
「……ああ、黒組よりはよっぽどオカルトで、現実味が無くて、しかし信用したいよ」
そう言って、首藤涼は自嘲の笑みを浮かべた。
とある少女を暗殺することによって得られる報酬は、最高位の医療チームにより自身の治療。
それに対し、あまりにも非現実的な聖杯というオカルト――そして、それを抵抗なく受け入れている自分。
いや、非現実的というのならば、自身の身体こそがとっくにそうであるのだ。

「じゃが、治すならば身体だけで良い……今更になって過去を直そうなぞとは思わん」
「いいのですか?」
「思い出は……」
彼女の脳裏に過ったのは、かつての恋人と過ごした日々であり、
あるいは、彼女が普通に老いるのならば、ありえたかもしれない、昨日だった。
目を閉じる。
酒に酔ったわけではない、ただ思い出に浸りたかった。

「美しいまま、それだけでよい」




【クラス】アサシン
【真名】夢幻魔実也@夢幻紳士(幻想篇、逢魔篇、迷宮篇)
【属性】中立・中庸

【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:A++ 幸運:A 宝具:A

【クラススキル】
気配遮断:B
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

【固有スキル】
女難の相:E-
 若旦那、あンた確かに女難の相だが
 難は違わず、女の方だ。

夢幻の魔:D(EX)
 夢幻魔実也としての能力そのもの、催眠術、影術、過去視、話術、詐術から、
 時間軸の超越、精神ないしは固有結界への侵入、冥府への侵入、その他諸々の能力、
 ある種、夢幻の願望機であるため、サーヴァントとして召喚された身ではその能力を十全に発揮することは出来ない。

【宝具】
『幻想紳士』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
あたかも本物であるかのように振る舞う幻想としての夢幻魔実也、周囲からは多重人格あるいは精神症における幻覚として扱われる。
常に霊体化した夢幻魔実也の分身であり、憑依相手がいなければ物理的な影響力を持たないが精神世界ないし固有結界への介入能力を持つ。

『逢魔紳士』
ランク:A 種別:対妖宝具 レンジ:10 最大補足:4人
アサシンが特定の建造物に長時間留まる際に自動的に発動する宝具。
その建造物を陣地作成:D相当のアサシンの結界として扱い、それと同時にアサシンと敵サーヴァント、そして魔力D以上のマスターのみを襲う妖怪を召喚する。
アサシン自身の力ではなく、アサシンがいる世界のために誂われたルールであり、この宝具の発動に魔力は必要としない。

【人物背景】
主人公。長髪の美青年。黒い背広と山高帽、上着に黒いインバネスを着た謎めいた人物。
人の心に幻像を見せ、怪異妖怪をも化かし返す超人的な能力を持つ。
鷹揚で特に女子供に優しいが、悪鬼・悪人に容赦はない。罪の無い悪戯で他者をからかい愉しむ癖もある。

【サーヴァントとしての願い】
???

【マスター】
首藤涼@悪魔のリドル(漫画)

【マスターとしての願い】
普通に年を取って死ぬこと。

【weapon】
特になし。原作において爆弾付き首輪を武器として使ったことがあったが、涼自身に製作技術があるかは不明。

【能力・技能】
不老・長命(ハイランダー症候群に起因するもの)
暗殺者であるが、詳しい手口や能力は不明。

【人物背景】
白髪が特徴的な少女。達観した性格や特徴的な口調(一人称がワシ、語尾にじゃをつけるなど)が目立ち、精神年齢は相当高い様子。
彼女はハイランダー症候群という不老・長命の病にかかっており、実際はかなりの高齢(少なくとも100歳以上)。

原作では暗殺の報酬として「普通に年を取って死ぬこと」を希望しており、自らの不老・長命を好ましく思っていないようだ。
しかし確実に暗殺を成功させることが出来る場面で敢えてゲームを仕掛けたりと、自らの願いに強い執着はないようである。
(希望を叶える方法が「全世界の高名な医師に研究を進めてもらい治療法を見つける」という不確実な方法だったために本気にならなかったという説もあるが、あくまで考察の一つ。)

過去に一つ年下の大切な男性がいたが、いつまでも年を取らない涼と段々と老いていく男性は最終的に離れてしまうことになる。
別れから数十年経った今でもその男性の誕生日を重要なパスワードとして設定したり、未練は完全に断ち切れていないようだ。

参戦時期は黒組参加以降、彼女の誕生日よりも前

【方針】
聖杯の入手を目指す……?



候補作投下順



最終更新:2016年03月03日 23:04