アットウィキロゴ
 日本はとてもユニークな国だ。

 なにせ国際的な犯罪結社が堂々と名前を掲げて事務所を構えていられるのだから。



 悲鳴があがった。
 男が逃げた。
 男――NPCとしてヤクザの役割を与えられた男は、死に物狂いで逃げていた。

 背後からは奴が追ってくる。
 かつ、こつ、と血染めのバットで床を叩きながら、一歩ずつ着実に追ってくる。
 走らなければいけない。急がなければいけない。
 だけれど、ああ、なぜだろう。
 血溜まりに足をとられるせいか、日頃の運動不足が祟ったか、足は遅々として進まない。
 勝手知ったるはずの事務所の中なのに、まるで迷宮のように目が惑う。

 やがて、男は限界点にたどり着いた。

 消防署から何度も何度も開閉できるようにしろと指導され、無視してきた非常扉。
 今ほどそれを後悔したことはなかった。
 重く錆びた扉はノブを掴んで回しても押しても引いても開く気配がなく――

 ――かわりに、かつ、こつ、という音が、すぐ真後ろで止まった。

「ま、や、やめろ、やめてくれ……! 俺は何もしない! あんたの事も言わない!」

 ニワトリ男は、答えない。

 ――そう、ニワトリ男だ。

 男の背後には、ニワトリ男が立っていた。

 ゴム製の愛嬌あるニワトリのマスクを被った男。
 それだけなら、何かのジョークかと思ったに違いない。

 ジャケットを着こみ、手には赤黒く血で汚れたバットを手にしていなければ。
 そいつが事務所に詰めていた組員たちを皆殺しにしてさえいなければ。

「う、あ、あ、あ、あ……」

 まさか。
 話には聞いていた。噂は聞いていた。ただのバカ話と思っていた。

 取引相手のロシアン・マフィアが、その話をする時、怯えた表情をしていたのに。

 なぜ気にしなかったのか。気づかなかったのか。

「まさか、本当に、いたなんて……」

 何が起こったのか。
 男にはわからなかった。

 いつも通り、事務所には皆がいて、適当な猥談で盛り上がっていて。

 気がついたら、一人がバットで殴り殺された。
 チャカを取り出そうとしたやつが殴り殺された。
 悲鳴を上げて逃げようとしたやつが殴り殺された。

 殴って、殴って、殴って、殺された。

 彼――今や無様に腰を抜かし、喚きながら手を振り回すヤクザ。
 彼が生き延びることができたのは、ただ単に、後回しにされたからだ。

 その事実を、ヤクザは嫌になるほど理解していた。
 目の前のニワトリ男はそういうものだと、彼は理解してしまった。

「ま、待て、よせ、やめてくれ! 金なら幾らでも払うから!」

 ニワトリ男は答えない。

 今日は給料日(ペイデイ)。支払いの日(ペイデイ)。報復の日(ペイデイ)。
 頭の中でぐるぐると言葉が渦を巻く。意味の無い言葉。走馬灯なんて嘘だ。

「電話(ホットライン)を繋げてくれ! あんたのボスと話がしたい、だから――」

 ニワトリ男は答えない。

 かわりにバットが振り上げられ、振り下ろされた。

 悲鳴があがった。
 男が死んだ。
 男――NPCとしてヤクザの役割を与えられた男は、頭を砕かれて無惨に死を迎えた。

 他も、同じ。

 ヤクザの事務所には死屍累々と、NPCたちの遺体が転がっている。
 その誰も彼もが頭蓋を一撃で打ち砕かれ、血と脳漿を撒き散らして死んでいる。
 本来NPCの死体はすぐにでも消滅しそうなものだが……。
 まるで誰かに魅せつけるかのように、この殺人現場の痕跡は薄れる事がない。

 ――暴力は好きか?

「ふう。ふふふ。魂喰いなんて似たようなことは昔もやっていたけれどさ」

 不意に、その血染めの事務所に不釣り合いな可憐な声が響いた。
 少女の声だ。

「まったく、たまらないよね。あーあ、前にもこれくらいパワーアップできればなぁ」

 ニワトリ男は答えない。

 だが、彼はそこに現れた少女が何者かは知っていた。
 燕尾服のような服装にタイトのミニスカート、右目側に眼帯。
 男の子っぽい口調だけれど、十代の女の子特有の愛らしさばかりは隠せない。
 ゴシックロリータ調の衣装を内側から押し上げる身体の線ばかりは――……。

「そうしたら、織莉子にもあんなに苦労をかけずに済んだと思うんだよ、私は」

 ニワトリ男は答えない。

 「狂戦士(バーサーカー)」。少女がそう名乗っていることを彼は知っていた。
 彼女が自分を「ご主人(マスター)」と呼ぶことも彼は知っていた。
 これが「聖杯戦争」とかいう代物であることも、彼は知っていた。

 ――だから何だ?

 眼帯の少女。
 黒いゴシックロリータ調の男装をし、両手に大仰な鉤爪を構えた少女。
 身に満ち足りる生々しい魔力の感触に、彼女は陶然と蕩けた息を吐いている。

「しかし、やあやあご主人、なかなか私たちは良いコンビじゃないかい?」

 ニワトリ男は答えない。

 だが確かにそうだった。
 少女の操る「低速化」の魔法とやらは、彼と相性が良かった。

 そもそも最初から銃器で完全武装した奴らのところに一人で殴り込めるというのに、
 連中の動きがのろのろと遅くなったら、どれほどのことができると思う?

 答えは「たくさん殺せる」だ。

「もちろん織莉子とのコンビこそが最強だから、私とご主人は準最強!ってところかな」

 ニワトリ男は答えない。

 返り血で凄惨な赤黒に染まったニワトリの覆面。
 手には脳漿を滴らせたバット。無表情に少女を見返すゴムの顔。 
 一言も言葉を発さぬこの男こそが、淡々と殺戮を繰り広げれた惨劇の主。
 気が狂っているとしか言いようが無い。

 もっとも――……。

「そうさ。織莉子がいるから私の世界は輝くんだ。織莉子のいない世界なんて意味が無い」

 それを言ってしまえば、血溜まりで踊り狂う、鉤爪のゴスロリ少女も似たようなものだが。

 眼帯の少女、魔法少女、魔女、バーサーカー。
 彼女はにっこりと、満面に空虚なほほ笑みを浮かべ、首を傾げる。

「君もそうだろ、ご主人?」

 それは目にする者をどきりとさせるような、とても愛らしい仕草だった。
 淡い燐光を紐解くようにして、バーサーカーの衣装が消え去り、中学の制服が露わになる。
 彼女は男の血まみれの手を取ると、まるでデートにでも行くかのようにスキップを踏んだ。

「さあ、行こうか。こんなところに長居は無用さ。先はまだまだ長いんだ」

 ニワトリ男――ジャケットは答えない。
 答えないが、互いに相手の想いは痛いほど理解していた。

 愛は無限で有限だ。
 死んだ者は蘇らない。
 お前の大切なものは奪われた。

 これは茶番だ。
 愛する者はいない。
 憎むべき敵もいない。
 聖杯? そのために戦え?

 だが安心しろ。
 これから何をやったとしても、損はない。
 たとえ真実はわからないとしても。
 なら答えは一つ。

 ――俺の時間を無駄にするな。



 ――――日未明、指定暴力団竹組の事務所から悲鳴が聞こえたとの通報があり、
 かけつけた警察官が、組員二十五名が頭から血を流して倒れているのを発見。
 救急車により病院へ搬送されましたが、まもなく全員の死亡が確認されました。

 被害者は頭を鈍器のようなもので強く殴られており、警察は殺人事件と断定。
 監視カメラの映像に残されていた、ニワトリの覆面を被った男の行方を追っています。
 また先日都内角川組事務所で発生した殺人事件との関連を調べています。

 では次のニュース。先日発生した警察官連続殺人事件についての続報が――……




【サーヴァント】

【クラス】
 バーサーカー

【真名】
 呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯戦争を叩き潰す

【属性】
 混沌・狂

【パラメーター】
 筋力:B 耐久:C 敏捷:A 魔力:C 幸運:D 宝具:B

【クラススキル】
 狂化:C
  魔力と耐久を除いたパラメーターをランクアップさせるが、
  言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。
  しかしバーサーカーは精神汚染スキルにより、このデメリットを打ち消している。

【保有スキル】
 精神汚染:A
  狂的な精神により他の精神干渉を完全遮断する。
  同ランクの精神汚染を持たない者とは意思疎通が困難。

 戦闘続行:A+
  往生際が悪い。
  霊核が破壊された後でも、最大5ターンは戦闘行為を可能とする。

 魔術:A
  後述の宝具「ソウルジェム」によって獲得した技能。
  バーサーカーが有するのは「身体強化」および「低速化」。

【宝具】
 『いずれ魔女となる少女の卵(ソウルジェム・マルゴット)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:100人
  青紫色をした卵型の宝玉。バーサーカーの霊核。
  これを破壊されない限り、バーサーカーは消滅しない。
  また真名を開放しない限り、バーサーカーはサーヴァントと認識されない。
  真名を開放することによりバーサーカーは魔法少女の姿へと変身する。
  燕尾服のような服装にタイトのミニスカート、右目側に眼帯、ソウルジェムは背腰部。
  また服の袖から鉤爪を伸ばし、切断、 投擲、連結させて盾化など攻防に活用する。
  加えて固有魔法として「身体強化」「低速化」の能力を有している。
  範囲内に存在する任意対象の速度を急速に低下、相対的に自身の速度を上昇させる。
  その効果は絶大で、瞬間移動したのではないかと錯覚させるほどの相対速度となる。
  なお鉤爪の本数に反比例して、固有魔法に使用可能な魔力は低下する。

 『人形の魔女(マルゴット・ガーデン)』
 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:100人
  ソウルジェムを自らの意思で廃棄、あるいは魔力が完全枯渇した際に自動で発動。
  狂化A、単独行動スキルA、自己改造Aを獲得、バーサーカーはサーヴァントとして離脱する。
 『人形の魔女』は固有結界を展開し、中に閉じ込めた者の魂を喰いつつ成長を続ける。
  本来この宝具を発動した時点でバーサーカーの理性は完全消滅、反英霊となるのだが、
  彼女の保有する精神汚染:Aの効果により、バーサーカーは理性を保ったまま活動を続ける。
  なおこの時点でバーサーカーはサーヴァントでないため、聖杯を手にする権利は喪われる。

【人物背景】
 インキュベーターなる宇宙人との契約によって生み出された「魔法少女」。
 元来内気で人見知りな性格だったキリカは、ささいな理由から美国織莉子へ恋慕を抱き、
 彼女に相応しい「違う自分になりたい」という願いを抱いて契約、魔法少女となる。
 現在のアッパー気味な性格は、これによって獲得した新たな人格である。
 織莉子と行動を共にする過程で「魔法少女がやがて魔女となる」事実を知ったキリカは、
 鹿目まどかという少女が最終的に「世界を滅ぼす魔女となる」のを阻止するべくに奔走。
 織莉子の指示を受け「魔法少女狩りの黒い魔法少女」として暗躍を続ける。
 そして最終的にまどかを殺害するため見滝原中学校にて大量殺戮を引き起こした。
 戦いの中で致命傷を受けて自身も魔女化するが、織莉子への想いから理性を保ち、
 最後の最後まで織莉子を守って戦い続け、まどかと織莉子の死を見届けて消滅した。

※平時は見滝原中学校の女子生徒というNPCの皮を被って行動している。
 マスターないしサーヴァントとして美国織莉子が参戦した場合、その支援を最優先する。


【マスター】
 ジャケット@Hot Line Miami

【マスターとしての願い】
 聖杯戦争を叩き潰す

【能力・技能】
 ・精神汚染:A
  社会病質者(ソシオパス)。精神干渉系の効果を完全遮断する。
  また彼の犯行を目撃した者はSANチェックを行い、失敗すると恐慌状態に陥る。
  さらにアイデアロールに成功してしまった場合、強い影響を受け感化されてしまう。
  同ランクの精神汚染を持たない者とは意思疎通が困難。また失語症を患っている。

 ・戦闘技能
  元米国海兵隊特殊部隊員として極めて高度な隠密白兵戦闘能力を有する。
  また「現代社会に存在する」銃火器の扱いを完全に習得している。

【Weapon】
 ・ニワトリのマスク
  ゴム製のマスク。着用している間、正体がわからない。

 ・スポーツカー
  デロリアンとして知られるデロリアン社製モデルDMC-12。

【人物背景】
 80年代末期、アメリカ合衆国マイアミ市で惨劇を繰り広げた連続殺人鬼「ニワトリ男」。
 元米国特殊部隊隊員で、街にはびこるロシアン・マフィアをただ一人で皆殺しにした。
 近年は国際窃盗団「ペイデイ」の一員として、ロシアン・マフィアへ強盗を繰り返している。
 親友と恋人がロシアン・マフィアに殺されたのが動機と思われるが、詳細は不明。
 彼の活躍は都市伝説化しており、映画「ミッドナイト・アニマル」の題材となったが、
 影響を受けたフォロワーがマフィア狩りの末、報復を受けて惨殺される事態にまで発展した。

【方針】
 マフィアは潰す。ヤクザも潰す。サーヴァントも潰す。マスターも潰す。黒幕も潰す。
 聖杯戦争の真実、聖杯、この世界からの脱出に興味もなく、聖杯戦争を潰すために動く。
 それ以外の無関係なNPC、ただ脱出を目指すだけの組を積極的に害する事はない。
 戦闘ではバーサーカーの速度低下・身体強化をかけて、マスターがステルスで殴り殺す。
 あるいは主従ともどもバーサーカー状態で正面から暴れまわる。

※警察関係者、映画ファン、その他の現代犯罪知識保有者は無条件で正体を看破できる。
 同時にその精神汚染の影響を受ける為、SANチェックとアイデアロールが強要される。



候補作投下順



最終更新:2016年03月03日 23:46